ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。 作:湯川彼方
私の行動の結果、色々と変化が来るのは解っていた。
先週行われたセントライト記念は、マキシマム先輩の圧勝。
その理由の一つに、原作でレースに出ていたシャオツァンロンさんが出ていない事がある。
まぁ今のマキシマム先輩が舐めプして負ける事は考えられないけど。
じゃあシャオツァンロンさんがどこに出てくるかと言えば…
「シャオちゃん、神戸新聞杯に出てくるんだ。」
「シルさん、その先輩は強いのね?」
「函館記念じゃ去年のダービーウマ娘に先着したって話だよ。」
早くも大きく歴史が変わってきているのを感じる出来事だ。
まぁシルさんのダービーが同着だった時点で、今更だが。
…
神戸新聞杯当日の阪神レース場。
「「「「シャオツァンローン!!」」」」
青い髪をお団子にした、小柄なウマ娘。
シャオツァンロンさんの登場に、近くで声が上がる。
「ねぇ、シャオツァンロンって長いよね?」
「やっぱりいつも通りシャオって呼ぶ?」
「ならシャオロンで良いんじゃない?」
どうやらシャオツァンロンさんの所属する、カノープス一行も来ている様だ。
うん、カノープスって本当に仲が良いのが解りますね。
そんな風に思っていると、シルさんも入場してきた。
「「「「シルさーん、頑張ってー」」」」
私たちが声を掛けると、シルさんはこっちを向く。
そしてひかりさんがシルさんに来るように手招きをしていた様で、私たちの方に駆け寄ってくる。
「シルフィード、解っているとは思うが目標はあくまで菊花賞だ。無理はするなよ」
「解ってるよ、ひかりさん」
元々ダービーや他のレースを勝っているシルさんは、菊花賞に出られないことは無い。
あくまで神戸新聞杯はレース間隔が空いたための調整が第一である事を確認する。
「でも、ボクは負ける気で走らないよ」
でもウマ娘の本能的には、解っていても負けて良いレース等無いのだ。
…
ファンファーレが鳴ってレースがスタートした。
シルさんは今日も出遅れている。
もっとも、いつもよりは悪くないスタートに見えますけど。
「シルフィードってばロケットスタートを狙って失敗したわね…普通で良いって言ったのに…」
どうやらひかりさんの見た感じだと、良いスタートを意識し過ぎての失敗のようだ。
いつも出遅れているシルさんからすれば、普通のスタートでも十分にプラスなので、ひかりさんは繰り返し「普通で良いのよ!普通で!」と指導している。
これは菊花賞まで、またゲート練習が増える事だろう。
一方、良いスタートを切ったのはシャオツァンロンさん。
先頭から2~3番手の好位置についた。
「あのちっちゃい先輩、走り方が大きいな」
「上半身をバネの様に使って、全身で走ってる感じですね」
観戦している他の先輩達も、シャオツァンロンさんを見ている様子だ。
やはりダービーウマ娘に勝ってきたと言う前情報から、気になっているのだろう。
レースはあっという間に向こう正面から第3コーナー。現在、シルさんは6~7番手あたりで、シャオツァンロンさんはスパートかけて先頭に出ようと言った所だ。
『はっはっはー!今日はシャオが勝つんだからね!!』
『簡単には勝たせないよ!』
ターフビジョンが音声を拾うが、阪神レース場は直線が短い事もあり、シルさんもロングスパートをかける。
だけど…中々シャオツァンロンさんとの差が縮まらない。
私や先輩達は、まさかこのまま負けるのでは?と少し心配になる。
だけど、ひかりさんは凄い落ち着いている様子だ。
「ひかりさん、シルさん負けちゃうのね?」
「あのシャオツァンロンにもう少し経験があれば、その可能性もあったわね」
辛抱たまらずに聞いてきたマキちゃんに、ひかりさんが冷静に解説する。
「あの娘の走り方は恐らく凄い体力を消耗する。シルフィードより前につけていたんだから、体力を温存してシルフィードが動いてからスパートをかければ良かったのよ。それが出来なかったのは性格とレース経験の少なさからかしら?」
ひかりさんの指摘通り、残り200mあたりで急に走り方がヘロヘロになっているシャアオツァンロンさん。
それでもシルさんとの間に少し余裕があったのだが、シルさんはここから2度目の加速をする。
結果、ゴールする頃には3バ身の差がついていた。
…
「「「「シャオツァンロン~…」」」」
「あの~、呼び方が…」
カノープスの面々は、シャオツァンロンさんの敗北に気落ちしている様だ。
原作でも菊花賞の途中、残り600m~800mの第3コーナーの上り坂で急に失速したシャオツァンロンさん。
本来走るはずだったセントライト記念は2200m。200m分延びた神戸新聞杯で距離の壁があったのだろう。(それでもひかりさんの言うように、体力を温存していれば最後まで持っただろうが)
シャオツァンロンさんは両親ともに長距離が得意な馬と言う設定だったが、私は恐らく2000m前後までが理想距離の馬だと思っていた。
血統だけじゃその馬の資質が見えないのは実際の競馬でも多々ある事で、アーモンドアイやキタサンブラックを見れば良く解るだろう。
そして、私が“風のシルフィード”と言う作品の中で最も長距離適正が高いと思うのは、初期では2000mの距離の壁があるとまで思われていたシルさんなのだ。
血統だけじゃ馬の、そしてウマ娘の資質は解らないと言う事だ。
「う~ん、奥が深い」
「イッキ、何言ってるんだ?」
おっと、思わず口に出てしまいました。
「はぁ、はぁ…本番、では…負けない、からね…」
息も絶え絶えのシャオツァンロンさんがシルさんに話しかける。
「うん、ボクも負けないよ。誰が相手でもね!」
何はともあれ、これでシルさんは菊花賞に向けていい感じと言えるでしょう。
マキシマム先輩が無敗の三冠馬となるか、それとも史上初めて2頭の二冠馬が誕生するのか。
申し訳無いですが、他の方々が勝てる気がしないです。
ウマ娘名鑑その5
小蒼竜(シャオツァンロン)(風のシルフィード)
大きくストライドをとった、バタフライの様な走法が特徴的な馬。
夏の上り馬でマキシマムをセントライト記念で破るが、マキシマム陣営の舐めプのせいで、本番では調子にのってバテバテになる馬。それでも3着に入ってるんだけどね!
原作では菊花賞後にどの路線を通ったか不明だが、最後のジャパンカップに出走出来ている(当時は日本馬は3頭くらいしか出られなかった)ため、相手が手薄な宝塚記念くらいは勝ってそうな気はする。
容姿(ウマ娘)
青色の長い髪を、両側でシニョンにまとめている。右耳に龍を象った耳飾り。
やや生意気そうな顔立ちで、小柄な体格。
普段着はカラフルなTシャツに、ミニスカートを合わせた格好が多い。
勝負服は青色のチャイナドレス風の上着に白い短パン。