ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。   作:湯川彼方

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『先頭のアルフィーが最終コーナーを曲がり直線に入った!さぁ後ろからは誰もついてこない!ただ一人直線を駆け抜け、今アルフィーがゴールです!』

「…ひかりさん、確か先頭から何秒以上離れると、しばらくレースに出られないみたいな決まりがありましたよね?」
「地方レースはウマ娘の力の差が大きい場合も多いから、先頭からのタイム差じゃなくて、出走人数に応じて5着や8着と比べたり、距離別で決められたタイム以下だったりするわよ」
「へぇ~そうなんですね。」
「…まぁ今日出た娘達は、タイムオーバーじゃなくても、しばらくレースに出ないかも知れないわね」


先輩の激励は、突然過ぎる。

 10月、菊花賞が近づく中でアルさんが地方の大井レース場でデビューした。

 

 結果は圧勝。

 

 中央と地方の差と言うよりも、アルさんと他の娘達の力の差があり過ぎて、たまたま同じレースを走った娘達の事を考えると可哀想に感じる程でした。

 

 まぁ、レースの世界は弱肉強食。手を抜いて走れば明日は我が身と考えると、どうしようもない事です。

 

 

 アルさんが無事にデビューを果たした事で、チームはシルさんの菊花賞に向けて一丸となっています。

 

 神戸新聞杯以降、ひかりさんの愛の千本ゲートを無事に終わらせたシルさんは、練習では出遅れが無いレベルになっています。

 

 例の靴も馴染んできた様子で、本番用の靴もお願いする事にしました。

 これが吉と出れば良いですが…

 

 

 

 

 

 

「ゴルは菊花賞出ないんだね」

「あー、さすがに3000mは長いからね。マイルチャンピオンシップから香港マイルか有馬記念を目標にしてるよ」

「シャオは出るからね!本番は負けないんだから!!」

 

 食堂でクラスメイトと話をしているシルさん達。

 今日は私たちチームメイトは少し離れた位置で食事をしている。

 

 すると、その場に意外な人が来訪する。

 

「おー、ここに居たんかいな。」

 

 その人は小柄な体格に赤と青の鉢巻きをした、芦毛のウマ娘。

 

「タマモクロス先輩!?」

 

 元祖白いイナズマ タマモクロス先輩だ。

 ちなみにシルさんとマキちゃんの憧れの先輩らしく、私の隣で食事をしていたマキちゃんも固まっている。

 

「あー、そんな固くならんで気軽に“タマちゃん”言うてくれてえぇよ。」

「そんな!ボク…いえ私の尊敬する先輩に恐れ多いです!!」

 

 流石のシルさんも、普段から憧れている先輩の前では緊張している様子だ。

 

 

「それで、ご用件は何でしょう?」

「まぁ菊花賞前の激励っちゅう奴や」

 

 かろうじて要件を聞き出そうとしたシルさんに、タマモクロス先輩は真剣な顔をして話をする。

 

「芦毛のウマ娘は走らない。聞いた事あるん?」

「いえ、初めて聞きました。」

 

 私は聞いた事がある。

 

 それは単純に芦毛と言う毛色が他に比べて絶対数が少ないのもあり、活躍馬が長く出ていない時期があった。

 芦毛に対する執念が強いメジロ牧場等もいたが、大半はそんな迷信に釣られ、芦毛と言うだけで下に見たのだ。

 

 そして現実でそれを変えたのが、芦毛のライバル対決。

 つまりは…

 

「そうやろな。そんなアホな事ぬかす奴は、ウチとオグリんが全部倒してきたからなぁ。そやろ?オグリん!」

 

 勢い良くオグリキャップ先輩のいる方を見るタマモクロス先輩。

 だけど、オグリキャップ先輩は目の前のB定食を食べるのに夢中のようだ。

 

「(もぐもぐ)タマ、何か言ったか?」

「呑気に飯食っとるやんかーい!!」

「タマ、食堂は食事をする場所だぞ」

 

 何やら漫才の様なやり取りをしているが、空気を変えたいタマモクロス先輩が、咳払いをした。

 

「んんー。まぁオグリんは置いといて、ウチらやマックイーンやハヤヒデ何かが頑張ったおかげで、今はそんな事言う奴はおらん。でもウチとしては芦毛のウマ娘にシンパシーを感じとるんよ。」

 

 迷信は払拭しても芦毛の絶対数が少ないのは間違いなく、少ない故の共感的な物があるのだろう。

 シルさんとマキちゃんは特にタマモクロス先輩に感じてる様子である。

 私も何となくそういう感覚があるが、どちらかと言えばオグリキャップ先輩に感じてるかな?

 

「だから、シルるんには期待しとるで!それを言いたくて来たんや。」

 

 激励の言葉に一瞬眼をつぶるシルさん。

 そして次に眼が空いた時には、その表情に決意を感じた。

 

「ありがとうございます。マックスは強いですけど、絶対勝つ気で走ります!」

「その言葉が聞きたかったんや」

 

 その言葉に、タマモクロス先輩はニヤッと笑顔を見せた。

 

「えらい邪魔したな〜。それにしてもここん所、やれそうな芦毛が多くて嬉しいわぁ。」

 

 そしてシルさんの言葉に満足したのか、手をヒラヒラさせながら去っていこうとする。

 だがそこでタマモクロス先輩の言葉から何かを思い出したストさんが話す。

 

「そう言えば芦毛と言えばマックスパイセンの所にも居るよな」

 

 その言葉に少し複雑な顔をするタマモクロス先輩。

 

「あ~、あの娘らはどっちか言うとハヤヒデとマックイン寄りの娘やろ。一人はハヤヒデの妹やったし」

 

 どうやら芦毛のシンパシーの中にも、派閥的なのがあるようだ。

 まぁ先行押切派閥と直線一気派閥とでも言えるでしょうか。

 

「どっちかと言えば、君んとこのミドリマキバオーやシンガリイッキには期待しとるで〜」

 

 !?タマモクロス先輩が私の名前をおぼえてくれていたと言うのには驚きました。

 マキちゃんは感極まったのか、タマモクロス先輩に抱き着いている。

 

「んあ~、タマちゃん先輩ありがとうなのね!」

「おぉー、マキバオーもしっかりやるんやで」

 

 マキちゃんの頭を撫でるタマモクロス先輩。

 小柄な体格をいじられる先輩だけに、更に小柄なマキちゃんの存在が珍しいのか、猫かわいがりしている。

 

 そして可愛がられながらも怪しく眼が光るマキちゃん。

 きっとマキちゃんの頭の中で芦毛皆姉妹計画が進められているだろう。

 

 そのまま、ほのぼのとした空気が食堂に溢れていますが、一人だけ妙に冷静になっているウマ娘が居ます。

 

 

 

 

「あれ?何かボクよりもマキちゃんと仲良くなってない?」

 

 自分の激励の筈だったのに、いつの間にか輪の外に置いて行かれている。

 予想外の展開に、やや呆然としているシルさん。

 

 

 そんなシルさんの肩を叩くウマ娘が居た。

 

 振り向くシルさんに対して、真剣な顔をしているのはオグリキャップ先輩。

 

 その手には、何故かニンジンを持っている。

 

「レースに勝つには、一杯食べた方が良い」

「…ありがとうございます」

 

 そう言って、シルさんにニンジンを渡して去っていく。

 きっとオグリキャップ先輩なりの激励なのだろう。

 

 

 何はともあれ、多くの人の期待を受けつつ、シルさんの菊花賞当日を迎える。




原作キャラもどんどん出したいんですけど、ただでさえキャラが多いんで扱いきれないため中々出てきません。
それでも芦毛組や、他にも絡めたい組み合わせを色々考えてます。
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