ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。 作:湯川彼方
菊花賞当日、私たちデネブの面々は全員で京都レース場に応援に来ていた。
皐月賞の日ほどじゃないですが今日は雨が降っています。
それでも良い場所を取るために朝一で入場口の前に待機する私たち。
同じことを考えているのか、左にはアルタイルの面々も居ます。
「んあ~、シルさんのためにも負けないのね!」
「…先輩の三冠を一番良い場所で見ないと」
マキちゃんとカスケード先輩が凄い気合入ってます。
「ハイネス、うちの分も場所取っといてくれよ」
「え~、イーグルは自分で頑張りなさいよー」
「いーじゃん、バーベキューの時キャベツ取ったんだから、お返しに場所を取ってくれても」
「アルやん、デビュー戦見に行けへんかったけど、ぶっ飛んでたらしいやん。」
「エンブレムさんも、お姉さん達に負けない大器って言われてますよ。次は重賞ですか?」
「あ~、まぁホープフル出んのにもう一回くらいは走らんとなぁ」
他の人たちはそこまで気合入ってませんが。
「ぶひ~!イッちゃん、場所取りも負けないからね!」
あっ、もう一人気合入ってる娘が居た。
「おうおう、朝っぱらから気合入ってんねぇ」
「あっ、ホクトベガさん」
人ごみの後ろの方、背の高いホクトベガさんの顔が見える。
ベガの面々は見えないけど、来ているのかな?
「ホクトベガさんも観に来てくれたんですか?」
「まぁ、うちの奴がどうしも行きてぇって言うんでねぇ」
他の娘も来てるのでしょうか?
ホクトベガさんの隣に居るのは、頭だけだけど白い髪と耳の娘しか見えませんが…
『開場しま~す』
そんな事を考えていると、会場の合図が来ました。
一斉にゲートを抜けて走り出しますが、やはりマキちゃんとカスケード先輩。ついでにフェアちゃんが抜けて行きます。
他の人たちは…まぁそこまで急いではいません。
ひかりさんとアルタイルのトレーナーさんも居ますし、それに合わせてゆっくりと言った所です。
そして私たちがスタンドに着くと、マキちゃんとカスケード先輩(+フェアちゃん)がそれぞれ笑顔で手を振っています。
どうやらお互いのチームで目標の場所が違ったようなので、あんなに本気で走る必要無かったんじゃないかと思いますが。
…
レースが進んでいき、お昼を交代でとったりしつつメインレースを待ちます。
他の人の食事も終わったので、私も行く事にします。
「お~、朝以来だねぇデネブの」
すると、食事に来ていたホクトベガさんに会います。
そう言えばホクトベガさんは他の場所へ行ったらしく、朝以降見てませんでした。
すると、ホクトベガさんの元に白い髪のウマ娘が近付いてくる。
朝、ホクトベガさんの隣に居た娘だろうか?
「先輩。その娘は?」
「あ~、この前の合宿で一緒だったデネブの娘だぜぃ」
「あぁ、シルフィードさんのチームの…」
ホクトベガさんから私の事を聞くと、その人は急に顔を近づけて話しかけてきました。
「シルフィードさんはジャパンカップか有馬記念に出るんですか?どちらにせよ私は待ってますよ」
それだけ言うと、その人は後ろを向いて歩いて行ってしまう。
顔が近付いた際にチラッと見えたその紅い瞳に、私は寒気を感じました。
「あっ!…まったく、自分勝手ですまねぇな」
「いえ、大丈夫です。ところであの人は合宿で見ませんでしたが、なんてお名前ですか?」
私の予感が囁いています。あのウマ娘の名前を。
「あぁ、あいつの名前はヒヌマボークでぃ!」
予想通りです。
毎日王冠に出ていないのでまさか居ないのではとは思いましたが、やはり居ましたか。
“ヒヌマボーク”、原作においてはマキシマムの引退するきっかけの一因となった馬で、その実力はジャパンカップで当時のアメリカ・ヨーロッパ最強クラスの馬に競り勝つほど。
間違いなく、シルさんにとって最強クラスのライバルになるウマ娘ですが、それにしてもベガに居たのですね。
そう言えばもう一人合宿に来なかった娘も居ましたし、気になる所です。
「おぅ、引き留めてて悪いが、そろそろメインレースが近いからねぃ」
「あっ、そうでした!失礼しますホクトベガさん」
私はホクトベガさんに断りを入れ、みんなの元へ戻っていく。
…
『まもなく、メインレースの入場が始まります』
「遅れてすみません!」
「遅いぞ~イッキ」
「もうすぐシルさん入って来ちゃうのね!」
今回のシルさんの枠番は1番、何とか間に合ったようだ。
「「「「せ~の、シルさん頑張って~!!」」」」
私たちの声援が聞こえたか、スタンドの私たちの方を振り返る。
そして大きく腕を上げてVサインをするシルさん。
いや、あれはきっとVサインじゃなくて、二冠目を取るという意思だろう。
『『『『マキシマム先輩!!』』』』
アルタイルのメンバーの声が聞こえ、入場口を見るとマキシマム先輩が入場してくる。
ゆっくりとシルさんの横に並んでくるマキシマム先輩。
そしてシルさん同様に腕を上げるが、立っている指は3本。
必ず三冠を取るという決意表明。
一瞬、お互いの顔を見て微笑みあう二人。
だが、すぐに別の方へ歩き出すと真剣な表情へ変わる。
ここから先、ゴールまで笑顔はいらない。
何故なら勝者はあくまで一人なのだから。
三冠最終戦、菊花賞のレースが始まる。
ウマ娘名鑑その6
ヒヌマボーク(風のシルフィード)
菊花賞後、シルフィードの最大のライバルとなるウマ娘。
有馬記念ではシルフィードとマキシマムをまとめて蹴散らし、ジャパンカップでは描写はわずかながら、欧州編で出てきたライバル達にも競り勝った、間違えなく作中最強クラスの馬。
何気に対戦相手には荒れ狂うが、騎手に対しては優しさも見せる頭の良い馬。
容姿(ウマ娘)
白く長い髪の毛で、前髪が普段は目元まで隠している。右耳に青と白の玉の耳飾りをしている。
真剣に走る時は前髪を上げるため、紅い色の瞳が良く見える。
普段着はチェックのワイシャツに白いパンツルックがほとんど。
勝負服は白いワンピースに青いニーソックス。