ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。   作:湯川彼方

25 / 65
菊花賞(中等部1年)~両雄並び立たず

大雨の中、いま全員がゲートに入りました。

 

スタートしました!

二人がポンと飛び出した…

 

これは、飛び出したのはマキシマムとシルフィードの二人だ!

他の馬は控えて行きました。

 

先頭はマキシマムとシルフィードが並んでいる。

2番手集団の先頭はシャオツァンロン。

ですが、先頭との差が徐々に開いている!

 

先頭の二人はこのペースで持つのか?

 

 

 

 スタートは上手く行った。新しい靴の効果もあるのかな?

 そうだとしたら、イッちゃんが言ってたけど重心って重要なんだね。

 

 

 ボクの隣にはマックスが着いている。

 今回はボクの方が内枠だから、スタミナ的には有利かな?

 

 …本当にそうかな?

 

 内側になるほど雨の影響で荒れている。

 ひょっとして外に行った方が、距離は損するけど走りやすい?

 

 

 いや、マックスを相手に少しでも無駄な力は使えないよ。

 

 

 

 600メートルを通過した。まだまだ序盤だけど、ペースはかなり速い。

 

 

 ふと、夏合宿の時のピーターツーさんを思い出す。

 

 そうだね、ただでさえ雨のレースだから息を入れないと最後まで持たない。

 マックスに置いて行かれる訳にはいかないと思っていたけど、今日はクレバーに勝ちを狙いたい。

 

 

 ボクは、意識してペースを落とした。

 

 

 夏以降、練習してきた事を全部出してやる。

 

 

 

 

「シルさんはペースを落としましたね」

 

 スタートに成功したシルさんは、マキシマム先輩と競うように逃げていた。

 出遅れ癖さえ無ければ、シルさんは実は脚質を選ばないウマ娘なのだ。

 

 とは言っても…今日のレースはそう言うレベルの話じゃない。

 

「えぇ、けど今日のペースは速過ぎます。もうすぐ1000メートルを通過するけど…」

「タイムは60秒ジャスト…2000mのレースじゃ無いんだぜ?」

 

 アルさんとストさんがタイムを確認しているが、恐ろしいタイムである。

 

 一般的に2000m~2400mぐらいのレースでは、1000m通過タイムを60秒基準に速いか遅いか判断する。

 

 だけど、今日のレースは3000mの超長距離だ。

 しかも雨の不良馬場。

 

 悪条件の中でこのまま行けるとは思えないけど…

 

「シルさんも61秒行くか行かないかって所ですね。このままのペースなら二人とも世界レコードですかね?」

 

 現実世界の3000mの世界レコードは、3分1秒ジャスト。

 この世界の現在のレコードは3分2秒5らしい。

 

 つまり、マキシマム先輩のペースなら現実世界のレコードを更新し、シルさんのペースでもこの世界のレコードを更新しそうな勢いだ。

 

「まさかとは思うけど、二人とも潰れるなんて無いのね?」

 

 マキちゃんが不安そうに話すが、すぐにひかりさんがマキちゃんの頭に手を置いてから話す。

 

「…信じよう、シルフィードを」

 

 その言葉に、チームの皆が頷いた。

 

 

 

 

 ふふふ、シャオは学習したのよ。

 

 シルもマックスも飛ばし過ぎよ。

 だから今は力を溜めて、後半勝負よ!

 

 あれ?シルとの差が縮まってる?

 少しペースを落とそうかな…

 

 

 あれれ?今度は差が開いている?

 ペースを落としすぎたかな…

 

 

 あれあれ?

 

 

 

 

 ターフビジョンを眺めるウマ娘二人。

 チーム“ベガ”の二人だ。

 

「あの娘、あんま起用なタイプじゃねぇと思ってたけど、ピーターツーのペースチェンジを完全に物にしてやがるねぇ」

 

 その内の一人、ホクトベガはシルフィードの走りに驚いていた。

 合同合宿の際に1度一緒に走ったきりのピーターツーの走り方に似ているからだ。

 

 アルフィーが引っ掛かったように、今のシルフィードを基準にペースを合わせようとすると、ペースの変化に振り回されて気が付けばスタミナを消費してしまう。

 一方のシルフィードは、自分でペースを作っており、適度に息を入れているので見た目ほど疲れていない。

 

「自分の感覚に自信が無いから惑わされるんです」

「厳しいねぇ。まぁこれで自分のペースで走れてるのは…」

 

 そう。

 シルフィードのペースに惑わされていないのは、前を走っているマキシマムのみ。

 

 マキシマムはシルフィードを気にする事なく、ただ前を向いて進んでいる。

 

 シルフィードはマキシマムに勝つために、スタミナを残す様にペースを変化させ、

 マキシマムは必ず後でシルフィードが来ると考え、後ろを気にせずに自分のペースを守る。

 

 ある意味でお互いの強さを信頼しきって居るからこその行動。

 その様子を見ていたヒヌマボークは身震いする。

 

「あぁ、私も走りたくなりました。」

「焦んじゃねぇよ。来週には嫌でも走って貰うぜぃ」

 

 来週は天皇賞(秋)。

 重賞を連勝中のヒヌマボークは、当然出走できる。

 

 だが今はそんな事より…

 

「それに、今はこのレースを楽しもうぜぃ」

 

 そんな事よりも、眼の前のレースが、

 シルフィードとマキシマムの二人が、気になっていた。

 

「えぇ、見に来て本当に良かったですよ。このレースは伝説になります」

 

 レースはすでに第4コーナーに差し掛かっていた。

 

 

 

 

 もう最後の直線。

 足は軽い。

 新しい靴は距離が長くなるほど、疲労が減っている気はする。

 

 

 だから、まだここからスパートをかけられる。

 

 

 マックスが植え込みをえぐる様に内へ切り込む。

 私はその外側に着けてスパートをかける!

 

 

 

 一瞬、マックスがよろけた様に見える。

 水たまりで足を取られた?

 

 すぐにマックスは体勢を整える、でも悪いけどその隙に一気に距離を詰める。

 

 

 このレース私が貰う!!

 

 

『馬鹿野郎!!無理すんじゃねぃ!!』

 

 

 ふと、誰かの声が聞こえた気がする。

 一瞬胸がざわつく感じがしたけど、レースに集中しなきゃと思いなおす。

 

 もうすぐ、長かったレースが終わってゴールだ。

 

 このゴール前、渾身の一蹴りで一気に抜け出す。

 でも、必ずマックスが差し返して来る。

 ボクはそれよりも前に行くんだ!!

 

 

 

 

 …えっ?

 

 

 

 

 

 

ゴール前、最後の叩き合い!

 

さぁ、意地の張り合い。

無敗の三冠馬の誕生か!?

それとも今年は二頭の二冠馬が出るのか!?

 

 

 

 

抜け出したのはシルフィード!

今、一着でゴールイン!!

 

 

そして今…

 

 

あーっと!!…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。