ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。 作:湯川彼方
このレース、シルに勝つためにはレコードを更新するぐらいのつもりじゃないと無理。
そう考えた私は、ここまで飛ばしてきた。
ここまでは自分が思った通りのペース。
並の相手なら、着いてくることも出来ないと思う。
それでも必ずシルは来る。だから私は少しでも差をつけておく。
最後の直線、後ろから迫る気配を感じる。
やっぱり彼女は凄い。
ふと、眼の前に大きな水たまりがある。
あれを踏んだら、滑ってしまう。
その瞬間、水たまりを回避しようと脚を踏み出す。
だけど、私の脚は思い通りに動かなかった。
…
レースを観戦する二人組。
その目の前でマキシマムがよろけた後、その一人が思わず声を荒げる。
「馬鹿野郎!!無理すんじゃねぃ!!」
「!?先輩、どうかしたか?」
急に大声をあげるホクトベガの様子に、横で見ていたヒヌマボークが驚く。
「さっきよろけたろ?ありゃ恐らく捻ったわ。あのまま無理をすれば、最悪転げるぜぃ」
その言葉に、目を丸くするヒヌマボーク。
時速60kmで走るウマ娘にとって、転げると言うのは命にかかわる事だ。
最悪の事態を考えたのか、思わず胸の前で手を握る。
「マキシマムさん、私と闘う前に無理をしないで」
「…まったく、自分勝手な奴だぜぃ」
素直に心配する事が出来ないのかと、ホクトベガは呆れた顔をした。
…
恐らく捻挫したか。
しまったな、こんな重要な所でやらかしてしまうとは。
それでも…まだ行ける!!
例え足が折れてでもシルに勝つ!
私は覚悟を決めて足を踏み出す。
『馬鹿野郎!!無理すんじゃねぃ!!』
どこかから、声が聞こえた気がする。
その瞬間、頭の中に浮かんだ言葉がある。
『怪我をしては何も得られないんでぃ。そんなんで競い合って怪我でもしたら、競い合った相手の方がへこんじまう』
…そうだな。足が無事ならまた競う事も出来る。
シル、すまない。
そう思った瞬間、私の足は痛みを認識する。
気が付けば、私の身体は…
…
マックスが延びてこない?
ボクはその事を認識した瞬間、頭の中を故障という最悪の展開がよぎる。
ゴール板を過ぎた瞬間、振り返るとマックスがよろける様子が見えた。
あのままじゃ転んじゃう!
そう思った瞬間、ボクの身体が反応する。
…
マキシマム先輩の走りがおかしい?
「不味いな、脚をやったか?」
ひかりさんのその言葉に、私たちは顔を見合わせる。
ふと、横を見るとアルタイルのメンバが、一斉にレース場に足を踏み入れる様子が見える。
レースの方はシルさんがゴールして、少し遅れてマキシマム先輩もゴールする。
その瞬間、マキシマム先輩の身体が前のめりになる。
危ない!?
最悪の展開が頭をよぎった、次の瞬間。
ガシッ
マキシマム先輩を抱きとめる白い影。
「すまない、迷惑をかけた」
「ううん、マックスが無事で良かった」
ゴールした直後のシルさんがマキシマム先輩を抱きとめる姿が見えた。