ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。   作:湯川彼方

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人を探すのは、大変過ぎる。

 あの菊花賞から1週間。

 

 天皇賞(秋)は予想通りヒヌマボークさんがあっさりと勝ちました。

 ただ、本来のローテーションと大きく違っている事や、天皇賞後にジャパンカップ出走を表明するなど、やはり本来の歴史と違う事を認識しました。

 

 私は介入し過ぎる事で原作の流れを大きく崩す事を恐れていました。

 それは未来の予想が効かなくなるためと、余計な事をした事で誰かが不幸になる可能性があるからです。

 

 でも結局の所、私が歴史の流れをコントロールするなんて無理な事でした。

 何故なら、人間もウマ娘それぞれの考えを持って行動している。

 それを誘導する事は出来るかも知れないが、それにしてもあくまで私が関われる範囲の人たちに限ります。

 そして今回は私が関わらなかったヒヌマボークさんが予想と違う行動を取っている事を考えれば、僅かだと思っていた介入でも別の場所で大きな変更があると言う事だ。

 俗に言う風が吹けば桶屋が儲かるとか、バタフライ効果とか言う奴だ。

 

 

 その事実を知った私は色々と考え…

 

 

 

 そして吹っ切れた。

 

 

 うん、最初からコントロール出来ないなら、私が良いと思う事をやろう。

 

 

 

 

 まずは私は、知っている限りのウマ娘達の故障を減らしたいと考えました。

 この前考えたアルさんやアルタイルのメンバーは元より、現実の競走馬にも故障して引退する…もしくは命を落とす事もあります。

 

 前世知識から考えた靴は幸運にも開発が進んでいますが、それだけではまだ弱いでしょう。

 

 

 故障の中には、この前のマキシマム先輩の様な偶発的な事故もありますが、それ以上に日常的な疲労の累積から来るものが多いと思っています。

 ならば、それを解消する手段は無いのか?

 そう考えた時に思いついた事がありますが、どこを探せば良いのか解りません。

 

 人数をかけて探せば良いのかも知れないけど、まだどうなるか解らない事に他の人を巻き込む訳にもいかない。

 

 そんな事を考えながら歩いていたら。

 目の前にテントがあります。

 

『表はあっても占い』

 

 そう書かれた看板を見て、藁にも縋る思いで入る事にしました。

 

 

 

 

 テントに入ると、予想通りマチカネフクキタルさんとメイショウドトウさんが居ました。

 この人の占いは怪しい部分もあるが、当たっている部分もある。

 どうせ何も手がかりが無いのだから、相談してみても良いだろう。

 

「ふむふむ、それで何を困っているの?」

「ある人を探しているのですが、面識が無くて何処を探せば良いか解らないのです。占いで何とかなりませんか?」

 

 我ながら、とてもざっくりとした依頼です。

 まぁ当てがないんでしょうがないですが。

 

「救いは無いのですか?」

「むむむ…占ってしんぜましょう」

 

 探し人の特徴を伝えるべきかと思ってましたが、どうやら必要無いらしい。

 探偵じゃなくて占いだから大丈夫なのかな?

 

 そしてしばらく唸った後、マチカネフクキタルさんの口が開いた。

 

「ライバル…ライバルの居る所に探し人もあり!!」

「救いはあるのですね!」

 

 ライバルと言うと…アルタイルかな?

 

 

 

 

「あぁ~、マキシマムちゃん可哀そうに…何とか治してあげたいけど…でも失敗すると困るし、声を掛けるのも恥ずかしいし…」

 

 居た。

 

 でも私が思っていた印象と大分違う。

 

 その人は長い金髪をして、眼鏡をかけた清楚なワンピース姿の女性で、アルタイルの練習風景を眺めながら、まごまごしている様子。

 

「失礼ですが、安心沢さんですか?」

「ひゃ…ひゃい!!」

 

 その人は安心沢刺々美。自称笹針師…のはずだあ。

 ゲームとキャラが大分違うんで、本人である自信が無いですが。

 

「な…なんで私の名前を?」

「それは…まぁ有名ですから(現実世界で)」

 

 私の言葉に、蹲ってしまう安心沢さん。

 

「うぅ~、私が秘孔に失敗した娘達から聞いたのねぇ~」

「(なんでしょう…凄い調子が狂います)」

 

 

 

 

 私は安心沢さんを落ち着かせるため、静かな場所に移動して話をする。

 移動している迄に聞いた感じだと、笹針師としての格好は自分に自信をつけるためのマインドコントロール的な奴らしい。

 

 うん、予想外だ。

 

「それで…私に何の用でしょうかあ?」

「いや、笹針師に依頼するのは笹針に関してです」

 

 笹針の事と聞き、また暗い顔をする安心沢さん。

 

「…ダメなのよ、私ってば笹針師とは名ばかりで。師匠のやってたのを感覚で再現してるだけだから成功率も低くて…」

 

 なるほど、あれだけ失敗するのはそう言う理由なんですね。

 まぁ職人などは、師匠の動きを見ておぼえるのが普通らしいですし。

 

 だったら、この人に足らないのは自信と…

 

「あなたに足らないのは経験だと思います。なので、是非私に定期的に秘孔をうってくれませんか?」

 

 その言葉に、暗い顔をする安心沢さん。

 

「でも…それじゃ失敗し続けたらイッキちゃんの体調や能力が滅茶苦茶になっちゃうわ」

 

 ゲームの時も思ったが、この人は本当に善意で秘孔をうっているのだろう。

 だからこうして私の心配もしてくれる。

 

 でも、そもそもそんなに失敗してもらうつもりは無い。

 

「いえ、そんな難しい秘孔をうってもらう予定は無いですし」

 

 ゲームの中でも、難しい秘孔は2割程度の成功率だけど、簡単な秘孔なら9割成功したはず。

 それよりも更に簡単な秘孔なら、失敗率はさらに下がるだろう。

 

「えっ?シンボリルドルフより強くしろとか、レースでレコード勝ちできる様にしろとか、3600mを何本走っても疲れない様にしろとか言わないの?」

 

 安心沢さんは無茶苦茶な事を言ってくる。

 うん、頼んでくる方が悪いな。それは。

 

「頼みたいのは精々今日のトレーニングの疲労を軽くしてくれとか、調子が下がり気味だから上向きにしてくれとかぐらいですけど。」

 

 私の言葉に、笑顔が戻る安心沢さん。

 

「あら、それなら私でも9割9分成功するわよ。ただ、秘孔は一回うったらしばらくは打てないわ。せいぜい2週間に1回って所ね」

 

 ほぼ失敗なく、2週間に1回体力を回復したりやる気が上がる。

 それはゲームだったら超チート案件じゃないですか!

 

「是非、私のチームを助けると思って来てください!」

 

 安心沢さんの手を握ると、その手に涙が落ちるのを感じた。

 

「うぅ…こんなに必要とされるのは初めてよぉ…解ったわ。イッキちゃんの為に腕を振るうわ!!」

 

 

 こうして、何とか安心沢さんの協力を得られました。

 そして、この事がもたらす影響の大きさに、私はまだ気づいていませんでした。




「ところで、師匠ってどんな人なんですか?(もしも師匠の方が助けてくれれば、私の計画がもっと進みますが)」
「えっとぉ、自称だけど2858兆0519億6763万3865個のスキルを持ってるって人でぇ…」
「(あっ、ダメだ。その人には関わっちゃ)」
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