ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。   作:湯川彼方

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日程に余裕があると、浮かれ過ぎる。

 この園田で、私に勝てるウマ娘は居なかった。

 ジュニアクラスの娘達は元より、今すぐに上のクラスで戦っても勝ち負けできる自信が私にはあった。

 

 私は元々身体が小さく中央のトレセン学園の入試では落ちたけども、このソノダトレセン学園に入学してから、大きく成長した。

 

『ここで頑張れば、いずれは中央からスカウトが来るんじゃないか?』

 

 そんな夢は園田の重賞である、兵庫プリンセスカップと兵庫若駒賞を連勝した事で、現実に近づいていると感じた。

 

 そんな私が出走することにしたのは兵庫ジュニアグランプリ。

 トゥインクルシリーズのウマ娘も参加する重賞で、これに勝てばG1である全日本ジュニア優駿へ優先的に出られるのだ。

 

 

 G1ともなれば注目度は段違い。ここで勝てば一気に中央への道が開ける。

 

 

 そんな事を考えてパドックにでると、私の眼にあるウマ娘が写る。

 

 

 その娘を見た瞬間、身震いがしました。

 艶やかな黒い髪で、前髪の真ん中が白く輝くウマ娘。

 

 たしか、あの娘は中央からの遠征ウマ娘のアルフィーさん。

 

 そう言えば、コーチをしてくれている先輩から聞いたことがある。

 

『本当に強いウマ娘はオーラが違う。私はホクトベガやアブクマポーロを見て来たから解る』と。

 

 その雰囲気に気圧されながらも、夢への道を切り開くために気合を入れなおす。

 

 

 

 そしてレースが始まった…

 

 

 

 後でレースを見直した時に気づいた。

 始まったその瞬間には、もうレースが終わっていた事を。

 

 

 勢いよく飛び出したその黒いウマ娘は、私を含めた他のウマ娘達との差をどんどん広げていく。

 

 “あれだけ無理したら、どうせペースが落ちてくる。”

 

 胸を過ぎるざわめきを、そう言って無理やり抑え込もうとするが、その黒いウマ娘は更に加速していく。

 

 私たちが最終コーナーから直線に入った時、眼に見えたのは遥かに先でまったくペースが落ちないその娘の姿。

 

 

「ま…まるで、黒い弾丸…」

 

 誰かが呟いた声が妙に耳に残る。

 本当に強いウマ娘と言うのはこんな人なんだ、と…私は先輩の言葉を実感するのだった。

 

 

『直線に入ってもまだ加速する!強い、強い。最後は流したままゴールイン!一着はアルフィー。やはり中央のウマ娘は強かったか!2着は地元の…」

 

 

 ゴールの後一つ切らさずに帰っていくその人の姿を、息も絶え絶えの私は横目に見送るしかなかった。

 

 

 アルフィーさん。

 きっとこの娘は凄いウマ娘になる。

 

 

 

 

 

 兵庫県は園田レース場まで遠征してきた、私たちチームデネブ。

 兵庫ジュニアグランプリは、やはりと言うかアルさんの圧勝だった。

 

 前にも言いましたが、トゥインクルシリーズと地方のレベルの差以前に、アルさんと他の娘との差が大きい。

 現に2着に入った地元のウマ娘は、他の中央から来たウマ娘に先着している。

 

「アルちゃん、よく頑張ったね!」

「うん、おめでとうアルフィー」

「いえ、約束を守れて良かったです」

 

 シルさんとひかりさんの祝福の声に、照れつつも尻尾をパタパタと振るアルさん。

 

 

 

 

 地方でのウイニングライブを終え、アルさんの祝勝会となった夕食も済ませた私たちは、ホテルへ戻っていた。

 

 

「みんなはまだ兵庫に残るの?」

 

 ホテルでは、チーム全員の今後の予定を確認していた。

 私とシルさんは明日東京へ戻りますけど、他の皆はしばらく関西を楽しむ予定の様です。

 

 いつもの遠征の時は移動やら何やらで楽しむどころでは無いのですが、今回は地方シリーズのため木曜開催。

 少し状況が違います。

 

「地方のレースの出場と付き添いは公休扱いですし、せっかくだから観光して行きます」

 

 アルさんはそう言って兵庫のスウィーツマップを握りしめる。

 そう、木曜開催のため金曜も移動日で公休を貰えるため、土日も含めて3日間の余裕があるのだ。

 

 ちなみに兵庫のスウィーツマップは、今回のレースで2着になった地元の娘から貰ったらしい。

 何気に連絡先を交換している様で、仲良くなっていました。

 圧倒的な強さを見せられても心が折れてないその娘は、これから強くなるかも知れません。

 地方については元々そんなに詳しく無いですけど、やっぱり隠れた名馬が居てもおかしくないから注意すべきですね。

 

「んあ~、この前の京都はほとんど見れなかったから、京都も観たいのね~」

「まぁトゥインクルシリーズは土日開催だからなぁ。前後の日は移動日で公休くれるって言っても、ほとんど時間ないよな」

 

 マキちゃんは京都の甘味名店ガイドと書いてある本を見ており、ストさんは大阪うまいもん名鑑にチェックを入れている。

 

 ストさんとマキちゃんも、アルさんのレースが無事に終わった事もあり、旅行気分の様だ。

 まぁアルさんがレースで負けてたら、こんな浮ついた雰囲気になって無いでしょうから、多少はしょうがないですね。

 

 うん、と言うか見事にみんな食べる事ばかりを考えてますけどね。

 

「はぁ…まぁたまには息抜きも必要ね」

 

 そんな浮かれた様子に、ひかりさんはため息をついていた。

 ですが、トレーナーとして私たちの事も気にしてくれていた。

 

「私も引率で残るけど、二人で大丈夫?」

「えぇ、レースの見学に行くだけですし。それにマキシマム先輩も一緒に行く予定ですから」

「そう、それなら大丈夫ね」

 

 マキシマム先輩は品行方正で、ひかりさんの評価も高かった。

 何ならシルさんや私より。

 

 解せぬ。

 

「じゃあ私たちは、こっちでジャパンカップの中継を見てから帰る様にするわ。みんなそれで良いわね?」

「「「は~い」」」

 

 私とシルさんは帰り支度を始めますが、実は私も旅行組に負けず劣らず浮かれています。

 

「イッちゃん、何か楽しそうだね」

「そうですね、凄いレースになると思いますからね!」

「うん、ジャパンカップはルドルフ会長でも一回負けてるレースだからね。世界のレベルを体感できるよ」

 

 世界云々よりもヒヌマボークさんのレースを、

 それも原作と違った展開のレースを見られる。

 

 その事に一ファンとしての私の魂が浮かれているのだった。




~次回予告~
観光を先に切り上げて東京へ戻るイッキとシルフィード。
マキシマムと合流して向かった東京レース場には、世界中から名ウマ娘達が集まっていた。

「頑張ってください、ヒヌマボークさん。あなたが今年の日本代表です」

1人のウマ娘に襲い掛かる苦難に絶句するイッキ。

果たして、イッキの眼にした残酷な光景とは?

次回、「ヒヌマボークさんは強過ぎる」
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