ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。 作:湯川彼方
週末、カザマゴールドさんやシャオツァンロンさん達が参加する香港国際競争と阪神JFが行われるので、私たちデネブとアルタイルのメンバーが集まって観戦しています。
香港国際競争は、午後から香港ヴァーズ、香港スプリント、香港マイル、香港カップの順に行われます。
阪神JFは、時差もあり香港カップの少し後に発走です。
シルさんは友人達の活躍を期待して、鉢巻きとかうちわとか応援グッズをたくさん作って私たちに配っています。
当然アルタイルのメンバーも巻き込まれ、マキシマム先輩は『必勝!小蒼竜』と書かれた鉢巻きを巻かれています。
さて、レースの方ですが…
まず行われた香港ヴァーズは、ユメノタローさんが参加しましたが、残念ながら優勝は地元香港のウマ娘でした。
ですがユメノタローさんは3着に入っており、表彰台ではやり切った顔をしていました。
何気に大レースでも堅実に掲示板に入る所は、ナイスネイチャさんやマチカネタンホイザさんを思い浮かべますね。
香港スプリントは、シルさんの同期からは参戦していませんでしたが、先輩のメタルガンさん等の数人が参加していました。
最高順位はそのメタルガンさんの4着。優勝はオーストラリアのウマ娘で、2着3着は地元のウマ娘でした。
香港で走っているウマ娘の出身地は、オーストラリアやニュージーランドが多いので、環境が近いものがあるのかも知れません。
香港マイルは、カザマゴールドさんが一番人気で登場。マイルチャンピオンシップを勝って、絶好調で乗り込んだカザマゴールドさんが無事に逃げ切り優勝しました。
シルさんは大喜びしてますし、マキシマム先輩も拍手を送っています。
成長前とは言え、マイル戦の朝日杯でシルさんより先着してますし、やはりこの距離がカザマゴールドさんには合ってるのでしょう。
来年は間違っても天皇賞(春)には出ないでしょうし、思い切ってアジアマイルチャレンジ完全制覇でも狙って欲しいですね。
そして、シャオツァンロンさんの香港カップです。
G1を勝って乗り込んだカザマゴールドさんと違い、実績が菊花賞3着と重賞2着2回のシャオツァンロンさんは人気薄です。
モニター越しにも、期待されてない事が不満げな顔が見られます。
ですが、チーム全員で現地入りしているカノープスの皆さんの顔を見て、やる気ある表情に変わりました。
レースは、地元香港のウマ娘が逃げる展開。1番人気のドバイのチームゴドルフィン所属のウマ娘が好位でそれを追う展開。シャオツァンロンさんは中団の先頭と言った位置です。
向こう正面に入り、シャオツァンロンさんの走り方が大きくなります。全身を一杯に使い、先頭との差をグングン縮めていきます。
第3コーナーから第4コーナーで先頭のウマ娘に追いつき、着いていかなければ不味いと感じた1番人気のウマ娘も速度を上げますが、シャオツァンロンさんの速度はまったく落ちません。
結果、なんとシャオツァンロンさんはレースレコードを出して勝ってしまいました。
カザマゴールドさんに続いての同期の勝利に、シルさんはマキシマム先輩に抱き着いて喜んでいます。
そして、勝利者インタビューに上ったシャオツァンロンさんが、大声で宣言しました。
『やったぞ~!!次は有馬記念でシル達に勝つよ~!!』
ちなみに有馬記念の出走登録はもう締め切られています。
そしてシャオツァンロンさんは有馬記念に登録していません。
カノープスの皆さんも、この発言には頭を抱えるか苦笑していますね。
興奮も冷めやらぬ中、阪神JFも発走しますがこちらを勝ったのはシズカさんでした。
原作では6戦4勝としか戦績が書かれていませんでしたが、この人はマイル戦ならかなり強いですね。
まぁ原作でシルさんのお嫁さんとして厳選された方ですから、元々実績はあると思ってましたけど、この感じだと桜花賞まで無敗で、オークスと(当時の牝馬三冠の)エリザベス女王杯で負けて繁殖入りとかあり得そうです。
ちなみに私としては、レースの後で原作効果からかシズカさんの事を「あの娘可愛いね」って言ったシルさんを、マキシマム先輩が少しムッとした表情をして見ていたのが印象的でした。
あと、第4コーナーで逸走しているウマ娘がいましたが、良く見るとキュータさんでした。
うん、アレはゴールドシップさんを超える癖ウマ娘になりそうです。
…
週が明け、今週はついにアルさんが出走する川崎競馬場の全日本ジュニア優駿があります。
ジュニアクラスのダート日本一決定戦のこのレースですが、アルさんの強さが知れ渡っているのか、G1レースなのに出走人数が9人と少ないです。
今回も地方シリーズのため水曜にレースがあるので、アルさんは月曜に軽めの最終調整を行いました。
「アルさん、お疲れ様です」
「ありがとう、イッキちゃん」
調整を終えたアルさんに、タオルを渡すと笑顔で受け取ってくれた。
今日も見た目から軽めに流しているのにかなり良いタイムでしたし、アルさんの調子はかなり良さそうだ。
「いよいよG1ですけど、調子良さそうですね!」
「ふふふ、まだまだ先は長いけどね」
以前にひかりさんにも言われた事ですが、あくまで目標は来年の三冠ですからね。
例えばアニメの天皇賞のライスシャワーさんの様な、鬼気迫る様な調子ではない。
もしかしたら、このレース一本に合わせてそれだけ仕上げてくるウマ娘が他に居るかもしれないが、それでも勝つのはアルさんだろうと私は思っている。
「他の娘達の情報も観ましたけど、断然アルさんが強いと思いますよ」
アルさんを激励する意味もこめてそう言う私だが、アルさんの答えは思っていた物と少し違った。
「…私は強くなんか無いわ。ただ速いだけよ」
アルさんは、シルさんの姿をチラリと見た。
そうだ、アルさんは私よりもずっと長くシルさんの姿を見て来た。
何度もマキシマム先輩に負けて、それでも努力して勝ったシルさんの姿を。
そして、そのシルさんと真っ向から闘ってきたマキシマム先輩や他の方々の姿も見て来た。
だからこそ、アルさんは慢心しないのだろう。
「本当に強い人達を知っているから…私はその人達に追いつきたい」
でも、私は知っている。
「…出来ますよ。私はアルさんの強さを知っています。だから出来ると、そう信じています」
本来の世界で恐怖に打ち勝った、アルさんの心の強さを。
人の思いを受けて、どこまでも強くなれるその性格を。
…そして、それ故に起こってしまう悲劇を。
私の言葉に穏やかに微笑むアルさんの姿に、『必ずこの人を助けるんだ』と改めて誓うのだった。
ウマ娘名鑑その7
アルフィー(優駿の門)
あのサンデーサイレンス産駒で、当初は中央でデビューを目指していたが、仔馬時代に心無い観光客の虐待を受けたことから人間を怖がるようになり、地方競馬に回された馬。
主戦騎手となる光優馬の荒療治もあり、逆に人間に懐くようになるが、その結果人間の思いを背負い込んで悲劇の馬となってしまう。
作者は、最後に小林さんの元へアルフィーが辿り着くシーンを、未だに涙無しに見れません。
容姿(ウマ娘)
腰まで伸びた黒い綺麗な長髪だが、前髪の中央が白色が入っている。右耳に弾丸の形の飾りを着けている。
顔立ちは涼しげな目元が印象的な美人で、体格は長身でスレンダーなモデル体型。
普段着はブラウスに膝下まであるロングスカート。
勝負服は着物の様な形の桜の刺繡が入った薄い桃色の上着に。薄い緑色のショートタイツ。