ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。   作:湯川彼方

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当作品では馬のノド鳴りをウマ娘的に表現のに、喘息と言う事で表現しています。
実際のノド鳴りは喘息とは別物ですけど。


Intermission~黄金世代?

『お姉ちゃん、G1勝利おめでとう!』

 

 全日本ジュニア優駿の優勝直後、アルフィーの元に電話がかかって来ていた。

 電話の相手は妹であるアルフィーセカンド。

 双子の様に容姿がアルフィーにそっくりであるが、1歳年下のウマ娘である。

 

「ありがとうセカンド。でもちゃんと勉強してるの?もうすぐトレセン学園の入試よ」

 

 スペシャルウィークの様に、どこのトレセン学園にも所属せずに居るウマ娘もいる。

 この娘もまた、高等部に入る年齢が近付く今まで、トレセン学園に所属していなかった。

 

『ちゃんとやってるよ~、お姉ちゃんは心配し過ぎなんだから』

「…高等部の入試は中等部の入試より難しいですから、心配して当然です」

 

 中等部の入試は素質を重視されるが、眼に見え難い素質もあるため割と基準が緩かったりする。

 だが、高等部の入試はデビューまでの期間も短いため、ある態度の完成度が求められる。

 

 その分、基準が高いのだが…

 

『安心して、何ならトップで入学するから!』

 

 自分と容姿が瓜二つの妹。

 

 素質に関しては自分以上かも知れない妹の言う事だけに、否定を出来ないアルフィーが居た。

 

 

 

 

 トレセン学園のとある練習場。

 そこでは3人のウマ娘が練習をしていた。

 

「はっはっはっ、ここの所デネブとアルタイルとベガの話題ばっかりだな」

「そりゃあ有馬記念が近いですし、三強に注目が集まってもおかしくないですよ」

「それに、ジュニアG1もホープフルで人気のブルーエンブレムさんが勝てば、その3チームで4戦3勝ですからね。阪神JFはそもそも出てなかったですけど」

 

 走りながらも軽口を叩く3人。

 彼女たちの顔立ちは似ており、傍目にも3人が姉妹である事が理解できる。

 

「だが、来年はそうはいかんぞ!我がチーム“アルデバラン”が天下を取る時が近付いているのだ!はーっはっはっはっ!」

 

 先頭を走るウマ娘が高笑いを始めるが、後ろの2人はやや冷めた目で彼女を見ていた。

 

「…姉さんもまだ来年はジュニア世代だから、そこまで注目されないんじゃない?」

「まぁ、チーム名に自分の名前つけちゃうくらいだから、注目はされるかも知れませんけど」

 

 そんな彼女たちに激を入れる女性が1人。

 

「こら、アルデバラン!しっかり練習しなさい」

「わかってますよ、母さん」

 

 そのトレーナーは、彼女達3人の母親であるウマ娘。

 名前をダイゴアルテミスと言った。

 

「ブロキオンとノクターンもよ!」

「「はーい」」

 

 チーム“アルデバラン”。

 それは現在は家族だけで構成されたチームだが、その全員が高い素質を持っていた。

 

 

 

 

 チーム“ベガ”の練習前の光景。

 トレーナーのはるかとコーチのホクトベガが、芦毛のウマ娘に声を掛けていた。

 

「ハーちゃん、喘息の調子は大丈夫?」

「はい、はるかさん!最近は凄い調子良いです!」

「油断は禁物、ちゃんと治療を続けるんでぃ!」

 

 彼女は喘息持ちで度々練習を休んでおり、夏の合同合宿も一人で休養していた。

 しかし、現在は徐々に体調が良くなっており、積極的に他のチームメンバーの練習に参加していた。

 

「来年はボーク先輩やヘルメス先輩に続いてG1に勝てる様に頑張りますから!」

「私も来年デビューだから、そう簡単には勝たせない。妹にも頑張るって約束してる」

 

 このウマ娘は、同じチームのピーターツーと共に来年デビューを予定している。

 その能力はトレーナー達も信じているが、身体の弱さを心配していた。

 

「いつも言ってるけど、健康第一よ~。無理だと思ったらレースに出さないからね~」

 

 他の娘達は黙っていても無理をせずに勝手に休むが、このウマ娘だけは無理をして練習してしまうため、はるかとホクトベガは特に注意して見ていた。

 だが現在は特に体調に問題ない様子であるため、2人が止めない様子を見てヒヌマボークが声を掛ける。

 

「有馬記念の調整、付き合ってくれる?」

「はい!ボーク先輩!」

 

 ヒヌマボークとしても、チームで唯一芦毛と言う共通点がある後輩を気に入り、特に可愛がっていた。

 まぁ可愛がっている理由もあるのだが…

 

「…他の娘達と違って積極的で助かる」

「先輩!ちゃんと調子良い時は付き合ってるじゃ無いですか!」

「「ブー!ブー!」」

 

 ヒヌマボークの言い様に、他の後輩達がブーイングをしていた。

 だが、ブーイングは言うが練習は手伝わない様子であり、ヒヌマボークはため息を吐く。

 

「はぁ…でも無理はしないでね。バトルハート」

「はいっ先輩!」

 

 

 

 

 学園最強チームとの評判も高い“リギル”。

 ここの所は有力なウマ娘に恵まれていないが、ルドルフやブライアンが所属するそのチームの評判は揺らいでいない。

 

 そんなリギルの練習をトレーナーと共に見ている男。

 男は練習中に前が壁になったため、大きく外に出してスパートをかけるウマ娘の様子を熱心に見ていた。

 

「おハナさん、あの娘はデビュー前だっけ?かなり良いんじゃ無いか?」

「あぁ、あの娘ね。時々あぁやって思い切ったことをするのよね…うちのチームカラーには合わないから直そうとしてるんだけど」

 

 リギルの方針は、どんな展開でも対応できる柔軟性を持ったウマ娘を育てる事。

 そのチームカラーから好位先行を得意とするウマ娘達が集まっており、差しを得意にするウマ娘にしても位置取りが上手い娘達である。

 一か八かで思い切った事をするのは、チームカラーとは違う。

 

「いや、あの娘はあのまま伸ばすべきだと思うぞ。アレはあの娘の持ち味だ」

 

 その男の発言に、苦い顔をするトレーナー。

 

「ご忠告、参考にさせてもらうわ」

 

 彼女の頭の中には、自分のやり方と合わなくて男のチームへ移籍した、現在アメリカ遠征をしているウマ娘の姿が思い浮かんでいた。

 別にそのウマ娘の事を失敗とは思わないが、自分では引き出せなかった素質の事を思えば、その助言を一考すべきと考えた。

 

「さて、うちのチームもそろそろ良い娘が入らないかね~。コレはって娘の勧誘に全然成功しないからなぁ」

「…それは、あなたの勧誘のし方に問題があるんじゃない?」

 

 ちなみに彼が勧誘に失敗したウマ娘達は、ヒヌマボーク、マキシマム、アルフィーなどであり、全員見事に現在活躍している。

 ウマ娘の能力を見る力で言えば、トレーナーの中でも群を抜いている。

 

 ただ、セクハラと思われる行動から第一印象が最悪のため、チームへ入って来る率が極端に低いのだ。

 ウマ娘達がチームを選ぶ基準はそれぞれなので、例え一時代を築いたチームであっても、中々有力なウマ娘が入らない時期もあるのであった。

 

 

 

 

 そのウマ娘は、地方シリーズの大井トレセン学園に所属していた。

 彼女は自分の能力に自信を持ち、同期のレベルの低さから適当にやってもG1に勝てると思い、これまで真面目にやっていなかった。

 

 だが、来年の参考にと見に行った全日本ジュニア優駿で、衝撃的な光景に出会う。

 

 他のウマ娘を大きく引き離す黒い弾丸。

 自分と姉妹と思えるほどに容姿が似ているそのウマ娘の強さに、彼女は今の自分では絶対に勝てないと感じた。

 

 中央のレースに興味を持たず、ただウマ娘の義務として適当なトレセン学園に入学した彼女が始めて見る存在に対して、本来持っていた負けず嫌いの気質が眼を覚ましていた。

 

「アルフィーとやるなら、トゥインクルシリーズだな」

 

 地方シリーズのウマ娘でもトゥインクルシリーズに出る事は出来るが、色々と限定されてくる。

 ましてや世代が違えば一緒に走れる可能性は余計に低くなる。

 

「…あたいも中央への編入、目指してみっかな」

 

 素質だけなら、世代どころか世界でもトップクラスのウマ娘が、やる気を出した。

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