ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。   作:湯川彼方

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ドバイの地で嵐の予感がよぎる

 2月半ば、共同通信杯がブルーエンブレムさんの勝利で終わった後。

 私はアルタイル主催のマキシマム先輩の壮行(兼ブルーエンブレムさんの勝利記念)パーティーに呼ばれています。

 

 何だかんだでトレーナー同士だけで無く、メンバー同士が仲が良いデネブとベガのメンバー。

 それと帯同してドバイへ行くカザマゴールドさんやクラスメイトのシャオさん等も参加して大人数です。

 

 シルさんとヒヌマボークさんは主役のマキシマム先輩を労っており、もう一人の主役のエンブレム先輩の元にもアルさん等が集まっている。

 マキシマム先輩の近くには、海外遠征と言う事でルドルフ会長等の姿も見られており、中々気楽に話しかけられる空気では無いです。

 

 会場は広く、フェアちゃんやランちゃんとも今日はバラバラに過ごしており、私は料理を食べながら知り合いを探して歩いています。

 

 すると、トレーナーの3人が話をしている様子が目に入ります。

 

「ひびきちゃんに海外遠征の先を越されちゃったわね~」

「何を言ってるんだ。やる気になればヒヌマボークの方が先に行けただろうに」

「ヒーちゃんは、そのやる気にさせるのが大変だから~」

 

 はるかさんが言ってますが、どうやらヒヌマボークさんに全力を出させる条件はやる気になる程強いウマ娘がいる事の様です。

 原作だと、騎手との信頼関係でコンスタントにやる気を出す様になりましたが、騎手と言う概念が無いこの世界ではどうすれば良いのか難しい所です。

 

 まぁ、そもそも全力を出さなくても大抵の相手に勝てるくらいに強いウマ娘ではあるのですがね。

 

 そんな事を考えているとひびきさんが飲み物を取りに行き、はるかさんはひかりさんに絡んでいる。

 

「ひかりちゃん、何を考えてるのかな~?」

「いや、そりゃ私も考えてる事ぐらいあるわよ」

 

 マキシマム先輩の海外遠征の壮行と言うこの場で、ひかりさんが考えるとしたら?

 

 そりゃあ海外遠征についてでしょうね。

 自慢じゃないですが、うちのチームのメンバーは(私を除いて)全員が海外でも通用すると思うウマ娘ですからね。

 

 そして、その中でも一番に考えるのは…

 

「それってシルちゃんの事でしょ?私は、彼女はヨーロッパ向きだと思うわ~」

「…それくらい、私にもわかってるわよ」

 

 はるかさんに先に言われましたが、スタミナとパワーに優れたシルさんは、ヨーロッパの芝が合っていると思います。

 それは原作知識だけでなく、ウイニング〇スト的な知識からもそう思います。(つまりにわか)

 

 個人的に考えるシルさんの適性距離としては、日本やアメリカの様な短い高速芝なら2800m以上。ヨーロッパの長い芝でも2400m以上は欲しい所です。

 そう思う理由は、クラシック三冠を思い返せばわかります。

 

 2000mの皐月賞はアクシデントがあったとは言えマキシマム先輩に引き離されて負け。

 2400mのダービーは秘密兵器を切った上で同着。

 3000mの菊花賞はマキシマム先輩にアクシデントがあったとは言え普通に勝ち。

 

 それが2000mの大阪杯でのヒヌマボークさんとの決戦を避けた理由でもあり、ひかりさんも当然解っています。

 

「でも、まずはシルフィードの失った自信を取り戻すのが先よ。その為に…天皇賞は勝たせてもらうわ」

「あらあら、ヒーちゃんはそう簡単に勝てないわよ~。まぁでもそれなら一つ賭けをしましょうか~」

 

 はるかさんがひかりさんに賭けを持ち出します。

 私は、その内容に驚きます。

 

「天皇賞に勝った方が、凱旋門賞に出るって」

「…良いわよ。あの娘ならきっとやってくれるわ」

 

 まさか、ここで凱旋門賞と言う言葉が出るとは…

 

 私からどう切り出そうかとも思っていましたが、これは原作による強制効果でもあるんでしょうか?

 

 そんな事を考えていると、後ろから肩を叩かれます。

 

「こらこら、盗み聞きは良くないぞ?」

「あっ、ひびきさん。すみません、気になってしまって」

 

 私の言葉を、ひびきさんは笑って流します。

 

「ふふっ、君は本当に色々な事に首を突っ込むな。…あぁ、ずっと言おうと思ってたんだが、マキシマムの件では世話になったな」

「いえいえ、私が好きでやった事ですから。もっとも、敵に塩を送って負ける形になってしまいましたけど」

 

 私がマキシマム先輩を助けた事で、シルさんはマキシマム先輩に負ける事になったとも言えます。

 

 もっとも、助けないせいでマキシマム先輩が引退していたら、私もシルさんも、もっと後悔していたでしょうけど。

 

「いや、君も解ってるだろう?あのレースでマキシマムに勝ててたとしても、ヒヌマボークには勝てなかった事を」

「…そうですね、シルさんがマキシマム先輩に執着し過ぎてたのが一番の原因でしたからね」

 

 三強と呼ばれ、ヒヌマボークさんの強さを事前に見ていたにも関わらず、あくまでシルさんの第一の相手はマキシマム先輩だった。

 

 そんな甘い考えで勝てる程、死神は優しくない。

 

 私は終わった事を頭を振って振り払い、ひびきさんに今一番聞きたいことを聞く。

 

「そう言えば、マキシマム先輩の調子はどうですか?ドバイでは勝てそうですか?」

「うーん、まぁ現地に入ってからの調整次第ってのはあるが、1か月も先に現地入りするから大丈夫だとは思う」

 

 海外遠征に際して調整のしやすい日本で調整し、1週間~10日間程前に現地入りする方法もありますが、マキシマム先輩達は1か月以上前に前入りし、現地で調整する方法を取っています。

 

 こっちの方が現地の風土に慣れる意味もありますが、現地で調整するための場所の確保や、トレーナーをどうするかと言う問題もある。

 マキシマム先輩を現地のトレーナーに任せて、日本に残って他のウマ娘の面倒をひびきさんが見るのか。

 それともマキシマム先輩に着いていき、日本に残るウマ娘を他の誰かに任せるのか。

 

 ひびきさんはそれをハイブリッドし、2週間前に現地入りして直接最終調整をするが、それまでは現地の知り合いに任せるらしいです。

 

 ブルーエンブレムさんが共同通信杯の後に皐月賞に直行するのは、この辺の事情もあるのかも知れませんね。

 

「それに相手もアメリカ・ヨーロッパの強豪も出てきそうだからな」

 

 そうでした。

 

 元々アメリカ・ヨーロッパの競馬が休む時期に大レースを作って、世界中の有力馬を呼びたいと言う、金のある道楽者(誉め言葉)の思いから作られたドバイミーティング。

 高額な賞金も手伝って、当然アメリカ・ヨーロッパのウマ娘も出てくるのでしょう。

 

 そうなってくると、知ってる馬(ウマ娘)が居ないか気になります。

 

「他に出走するウマ娘って解りますか?」

「あぁ、予備登録ではあるが出走登録メンバーを貰っている。見てみるか?」

 

 そう言って、ひびきさんはバックを早くも探ってくれている。

 

「是非!」

「じゃあえーっと…あった、これだ」

 

 私は予備登録メンバーの紙を受け取り…

 

「えぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 しまった。

 十分に予想できる範囲だったのに、この想定が完全に抜けていました!

 

 

 

 

 パーティーから数日後。

 

 マキシマム先輩とカザマゴールドさんを見送る成田空港。

 シルさんを始めとした2人と仲が良いウマ娘達を始め、一般のファンの方々も来ています。

 

 皆がマキシマム先輩達の勝利を信じて送り出す中、私はどうか無事に帰ってきて欲しいと、そればかりを考えてしまいます。

 

 あの日見た予備登録メンバーの一覧が、私の脳裏から離れないから…




ドバイシーマクラシック 予備登録

Fairy Helissio

Maximum


Palace Cigar



Zanzibar
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