ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。 作:湯川彼方
3月に入りましたが、すぐにアルさんの弥生賞がありました。
芝のレースが初めてと言う事で、やや懐疑的に見ている人も居たみたいですが、結果は大楽勝でした。
と言うのも有力ウマ娘が、ほとんど弥生賞に出なかったのが大きいですけど。
ホープフルS組はブルーエンブレムさん同様に無理に皐月賞の予行演習をしなくても良いだろうと言う事で他のレースに行った事。
それと、朝日杯を走ったカザマエメラルドさんはマイル路線のニュージーランドトロフィーに、ユキノテイオーさんは原作同様に若葉Sに出るようです。
ユキノテイオーさんは原作同様に後門の狼が手ぐすねを引いて待っていますが、無事に逃げ切れるでしょうか…
…
3月の3週目、トレセン学園は春休み(学業のみ休みで、トレーニングは普通にしています)に入りまして、ひびきさん達はチームでドバイに向かいます。
現地では、マキシマム先輩とラシューバさんが併走トレーニングしているらしい事をフェアちゃんから聞きまして、「何それ見たい」って思わず口に出ました。
ひびきさんには、ザンジヴァルさんの事をそれとなく話をしましたが、ジェシカ・カルバンの事に関してはひびきさんの方が理解している事もあり、「心配しないで、大丈夫だから」と言われました。
でも心配しないでと言いつつも、ひびきさんの顔は険しく見えました。
そして、うちのチームはシルさんの阪神大賞典が間近になっています。
阪神大賞典は、原作ではいわゆる“ピーターツーペース”と同様の事をする“魔術師”と呼ばれる騎手との対戦が待っており、シルさんの騎手がそれを習得すると言うイベントがありました。
ですが、シルさん自身がすでにそれをマスターしていますし、その時の騎乗馬であるガルバルディはウマ娘として存在していますが、どうやら2500mの日経賞の方に向かう様です。
なので正直言って、ここは調整と言って良いレースになると思います。
阪神大賞典が終わったら次の週がドバイミーティングのため、私たちのチームもドバイへ向かう予定です。
…
『それでね、凄い練習場でトレーニングさせて貰ってるんだよ!』
「良かったですね、フェアちゃん」
私はスマフォを通して、フェアちゃんとビデオ通話をしています。
ラシューバさんと併走と聞いた時点である程度察していましたが、どうやらひびきさんの知り合いのトレーナーであるサラ・アルフィンさんは、この世界における“サラディン”の様ですね。
サラディン。
アラブのオイルダラーの息子であって、アメリカに留学した際の友人が金目当てで近づいて来たクズ野郎だった所為で人間不信になった人。
金を無駄遣いするために始めた競馬で思わぬ才能を発揮し、世界一と言って良い馬主になりまして、マキシマムの馬主でもある岡恭一郎さんの才能は認めつつも一歩引いた友人関係でいました。
そして、シルフィード陣営との関りや凱旋門賞での愛馬ラシューバの激走によって心から馬を愛する様になったのは、正に救われたと言って良いでしょう。
そして、この世界でのサラさんはトレーナーとして過ごしている様ですが、ひびきさんが言うには「彼女以上にウマ娘を愛する人を私は知らない」との事で、人間不信になるエピソードが起きずに過ごしてきたんでしょう。
その彼女の作り上げたチームは、現代で言うゴドルフィンの様な組織になっている様で、イギリスとアラブを拠点に世界中のレースへウマ娘を派遣している巨大なチームの様です。
所属するウマ娘も3桁にのぼるらしく、もはやチームと言うよりトレセン学園を丸々一つ所持している様な感じですね。
『でもね、何か今日は嫌な感じの人がひびきさんと話してたんだ』
「!?どんな感じの人ですか?」
私の心臓が、一つドクンとします。
まさかとは思いますが、あの人でしょうか。
『う~ん、遠くだから良くわからなかったけど、金髪の女性で多分英語でひびきさんと話してた』
…どうやらジェシカ・カルバンの様ですね。
私は努めて冷静に、フェアちゃんに質問をする。
「そうなんですね、何を話していたんでしょうか?」
恐らく、ジェシカの目的は妨害する事でしょう。
まさか衆人環視の中で嚙みついたりはしないと思いますが。
『ひびきさんが言うには、マキシマム先輩にレース前の最終調整の相手になって貰いたいって話らしいよ。』
「それで…それでひびきさんは受けなかったですよね?」
ひびきさんは私に「心配しないで」と言いました。
だったら、そんな申し出は受けるわけが無いと思いますが…
『マキシマム先輩に任せるって言ってたけど…受けたみたい』
何て事でしょう…
これは、もう何も起こらない事を祈るしか無いですね。
…
その週の木曜日。
ドバイから届いた連絡は…
マキシマム先輩が左目を負傷したという知らせでした。