ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。   作:湯川彼方

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新年度も、カオス過ぎる~その3

「そんじゃまぁ、お手並み拝見といきますか」

 

 ボムクレイジーさんは楽しそうに観戦体勢に入りますが、レース直前にゴルシさんが話しかけてきました。

 

「なぁイッキ~、お前は誰が勝つと思う~?やっぱ同じチームのストライクイーグルか?」

「そうですね。私の予想は…」

 

 

 私の答えを聞いたゴルシさんは、少し意外そうな顔をしました。

 

 

 

 

 皆さんがゲートに入り、エアグルーヴさんがスタートの合図を出そうとしてます。

 

「用意…スタート!!」

 

 

 スタートは綺麗に出ましたが、前で競争するウマ娘が多い今日のレースは、スタート直後から混戦となりました。

 

 先頭を狙うのは、ロンマンガンさん、ピーターツーさん、アルフィーセカンドさんの三人。

 その後ろの集団にストさんとハイネスさん。

 更に後ろからアルデバランさんとセンコーラリアットさんと言った位置取りです。

 

 

 先頭争いを制したのは、ピーターツーさんでした。

 得意の展開に持ち込むため、無理に前に出た感じはしますね。

 ロンマンガンさんはそれに突っかかってますが、アルフィーセカンドさんはやや抑えた様子。

 

 

 そして、早速得意のチェンジペースが始まった感じがします。

 ロンマンガンさんは並んでピーターツーさんの動きに合わせて前後する様子。

 アルフィーセカンドさんは、ピーターツーさんに近づいたり遠ざかったりを繰り返している様子です。

 

 …去年の合宿の模擬レースで、アルさんが負けた展開を少しだけ思い出しますが…天才型は恐ろしいですね。

 

「あんたの予想も外れるかもな、アレがあの娘の得意な展開なんだろう?」

 

 クレイジーさんはピーターツーさんが逃げる展開を見て、そのままピーターツーさんが勝ちそうだと感じたみたいです。

 

 

 ですが…

 

 

「…はぁ、流石にアレは解りづれ~か」

 

 ゴルシさんの言葉に、疑問の顔をするクレイジーさん。

 えぇ、一見展開だけを見れば気持ちよく逃げている様にも見えますけど、ゴルシさんは解っている様子です。

 

「クレイジーさん、ピーターツーさんとアルフィーセカンドさんの表情を見てください。それで、どっちが気持ちよく走れているかが解りますよ」

 

 私の言葉に、目を細めて2人の表情を見比べるクレイジーさん。

 

「…なんで先頭でペースを握ってる奴の方が、苦しそうな顔をしてるんだ?」

 

 そして、そこでようやく可笑しな点に気が付いた様です。

 

「それは、アルフィーセカンドさんがピーターツーさんとずらして、ペースを上下しているからです」

 

 私の言葉に頷いてゴルシさんが、クレイジーさんに説明してくれます。

 

「ピーターツーは自分のぺース調整に自信があるんだろうけど、後ろが迫って来たらペースが落ちすぎたかなと思うだろう?」

「それでもペースに自信があるなら、惑わされなきゃ良いだけじゃねぇの?」

 

 当たり前の疑問を言うクレイジーさんですが、ゴルシさんは首を横に振る。

 

「あぁ、でもピーターツーの横にはロンマンガンが居る。彼女がアルフィーセカンドの動きに釣られてペースを上げ下げするから、すぐ隣のピーターツーも思わず釣られるってもんだ」

 

 そう、実は一番釣られていたのはロンマンガンさんです。

 ピーターツーさんに釣られて、アルフィーセカンドさんにも釣られた彼女のスタミナは、もうほとんど残っていない事でしょう。

 

 それにしても、このチェンジペース返しは本来シルさん(の騎手)が阪神大賞典で披露する技術ですが、それをあっさりとやってるのが恐ろしいです。

 

「ところでイッキ、アルフィーセカンドはアレを意図してやってると思うか?」

「多分本人からすれば、極めて自然にどうすれば勝てるかを感覚で掴んでるんだと思いますよ。…これだから天才型は困ります」

 

 真の天才は、優等生の仕掛けた罠を簡単に食い破ります。

 あの有馬記念のテイオーさんとビワハヤヒデさんの様な感じとも言えるでしょうか?

 

 

 さて、レースは第3コーナーに差し掛かりますが、ストさんとハイネスさんが並んで上がっていきます。

 この二人は長く良い足が使えますし、この距離ならスタミナが切れる事も無いでしょうが…

 

 残念ながら最高速度はアルフィーセカンドさんに勝てなそうです。

 

 第4コーナーから最後の直線。

 ストさんとハイネスさんは、垂れて行くピーターツーさんとロンマンガンさんをかわして前に並びかけようとしますが、アルフィーセカンドさんはここで更に速度が上がります。

 

 更に後ろのセンコーラリアットさんは、思い切ってストさんとハイネスさんの更に外から追い上げ、2人をかわしそうです。

 後はアルデバランさんは…あっ、ピーターツーさんとロンマンガンさんが壁になって、スピードに乗り切れていません。

 

 

 

 そして、そのままアルフィーセカンドさんがゴールしました。

 

 

 

 私の予想は見事に的中しました。

 

 2000mと言う距離を考えて、アルさんと同等の力を持つとすればアルフィーセカンドさんを止められるウマ娘は現状で居ないと思いました。

 

 仮に距離があと400m長ければ、ストさんやハイネスさんもチャンスが有ったと思いますがね。(あと800m長ければストさんかハイネスさんの圧勝だとも思います)

 

 今後の事は解りませんが、勝てる可能性があるのはアルデバランさんでしょうか?今日は脚を余していた感じがしますし。

 

 そして私の考えからすれば、それは来週にせまる皐月賞でアルさんが勝つことを信じていると言う事でもあります。

 

 

「で、どうでしたか?ボムクレイジーさん」

 

 私は、当初の目的通りにレースのレベルに満足出来たかをクレイジーさんに問います。

 

「…悔しいがスゲーレースだった。俺が走っても、アルフィーセカンドどころか、他の奴にも絶対に勝てるって言えないくらいに」

 

 クレイジーさんの言葉を聞いて、ゴルシさんは「うんうん」と頷いています。

 あの方たちはこの学年で間違いなくトップを争うウマ娘達ですが、そのレベルを肌で感じてクレイジーさんの意識も少し変わったようです。

 

「クレイジーさんに、一つ贈る言葉があります」

 

 私は、この機会にクレイジーさんに知っていて欲しい言葉を話します。

 

「“野の花を見るな、天上の星を見よ”。私の大好きな人の言葉です」

 

 それは原作でクレイジーさんの騎手が言った言葉。

 大レースに勝って、調子に乗っていたクレイジーさんを戒めた言葉です。

 

 私の言葉にしばらく呆然とするクレイジーさんでしたが、その言葉を噛みしめるようにつぶやきます。

 

「…天上の星を見よか。中央に入って、ちょっとばっかし調子に乗ってたかも知れねぇな」

 

 

模擬レース 2000m結果

1着 アルフィーセカンド

2着 センコーラリアット 3バ身

3着 ストライクイーグル 1バ身

4着 ヤシロハイネス アタマ

5着 アルデバラン 1/2バ身

6着 ピーターツー 4バ身

7着 ロンマンガン クビ




ボムクレイジー覚醒フラグが1進みました。
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