私がソレを自覚したのは、小学校高学年のころだと思う。
『前世』の存在だ。
ある日、なんとなく自覚していた。私はすこし前、ヲタクな男のおっさんだった、と。
まぁそれでなにが変わるわけでもない……いや、自分がわりと綺麗系な顔立ちで、「美人になるぜ自分!」と自覚できたのはいいのか。
おまけに魂が命じるままにヲタク趣味に走ってしまったのもアレなのか……
コンテンツからすると、私の前世の記憶からは何年かさかのぼっているらしい。
前世では女っ気がまったくなかったため、TS化したら大興奮するかなーとか思っていたがそこまでではなかった。まったくないわけでもないけど。
幼少期は「解放」されていなかったのがよかったんですかね。男より女の方がかわいいからいいよね!
閑話休題。
どうにかこうにか高校生活を終えようとして、さぁ大学受験だというところで「世界」が分岐した。
そう。深海棲艦の登場である。
最初はそこまで話題にのぼらなかったように思う。
だが、あれよあれよという間に世界の海は人類の手から奪われた。
特に甚大な被害を受けたのはやはり海上施設。海底油田のくみ上げリグ、海底トンネルや海峡橋などが破壊された。
当然、洋上船舶も被害を受け、海上物流が完全に停止。
また海底通信ケーブルなども切られたが、幸いにも衛星回線は生きていた。
さすがに海上200キロ以上の衛星までは手が出せなかったのだろう。同様にGPS衛星も生きてはいた。
航空物流はというと、こちらも深海棲艦の航空機に被害をうけてこちらも一部停止。ただし海上航路のみがつぶされていて、地上の上を通る航路は被害はなかったらしい。
沿岸部も海上の深海棲艦からの砲撃を受けて被害が出ていた。とはいえ、海岸線から1kmも離れた地域では被害はおよばなかった。
沿岸地域では一日に1~2回は深海棲艦が姿を見せ、動目標に対して無差別に攻撃が行われていた。
当然だが、時の政府も黙ってはいなかった。
特に当時の日本の総理大臣は、初期段階で国会も閣議決定も待たずに3自衛隊に防衛出動を命じ、離島地域からの引き揚げを命じたとか。
後で相当突き上げはあったらしいが、結果的には人的被害はかなり抑えられたと後に分析されているとか。
反撃が始まったが結果としては芳しいものではなかった。
攻撃の効果がないわけではない。しかしその効果がかなり限定的だったのだ。
想定している威力の1/4、いや1/10も与えられない。小さな最も数の多い深海棲艦────後にイ級と呼ばれる────を一隻破壊するのに対艦ミサイル10数発を要したとかそれでも足りなかったとか。
とうてい費用対効果か釣り合わず、さりとて攻撃しなければこちらがやられる、というジレンマ。
英欧米露が戦略核を持ち出さなかったのは幸いだろう……戦術核は噂では……
だが「世界」は人類を見捨ててはいなかった。そう、妖精さんと艦娘である。
「オカルトかよ!」というツッコミは当然あったらしいが、効果によって世論は黙らざるをえなかった。
実際に深海棲艦はオカルトに片足突っ込んでいる存在なのだから仕方がない。
そして志願兵と徴兵がはじまった。
私は志願兵の方だ。行くべきだと思った。
その理由は名前。私の本名は「
転生者としての記憶もあるし、これで無関係とは思えなかった。
予想通り、私は金剛型戦艦4番艦「霧島」として、金剛型の姉たちや他の艦娘たちとともに戦場を駆けた。
それから6年。日本近海はほぼほぼ取り戻し、亜、欧、米との航路もほぼ確立し、海上物流も艦娘の護衛があれば開戦前の3割ほどのレベルまで復興しつつあった。
なお、艦娘の損耗は出ていない。少なくとも人的損耗はないという公式発表である。
「そこに来てコレか……」
私の目の前には、ミサイル護衛艦こんごう型2番艦「きりしま」の艤装と思われる物体。
ちなみに、この世界にも護衛艦きりしまは存在していた。
深海棲艦との初期の戦闘で大破、除籍処分となっていることを資料で見たことがある。
「使えるんですかね? これ」
明石さんはかなり懐疑的だ。まぁ、初期の自衛隊の体たらくを知っているからだろう。
だが私はそこらへんは楽観視している。
「使えると思うわよ? 妖精さん謹製だし」
要はそこなのだと思う。単純な物理的存在ではなく、霊的、多次元的な存在である深海凄艦に対しては同様に多次元的存在である妖精さんの存在が不可欠なのだと。
残念ながら、現在はまだ、人類は妖精さんの助力がなければ、深海凄艦に有効打を与える術はない。
「問題は補給か……? そこらへんも妖精さん頼みだし大丈夫だとは思うが……」
鎮守府の運営面からの懸念を口にする提督。
まぁわかる。私も前世では艦これプレイヤーの端くれだ。エンジョイ勢でアーケード専門ではあったが。
「で、使うんですか?」
「使うよ。当然だろう」
明石さんの問いにノータイムで答える提督。
「戦艦艤装の修復にも時間はかかる。その間、霧島という人材を遊ばせずに済むのだしな」
この世界、同じ艦娘は二人存在しない。
前世で数多あった艦これ二次創作のように、別の鎮守府に同じ艦娘がそれぞれ存在するのではなく、世界に一人だけ存在する。
つまり、私以外の「霧島」は存在しないのだ。
なので艦娘は全世界規模でみても決して多くはない。前世の艦これに実装されていなかった艦もいるが。
だがやはり第二次大戦期の艦が多く、中東や印、中韓などには艦娘は現れていないらしい。いわゆる大東亜圏は日米で警備している状況にある。
「まぁとにかく、明日演習して、性能を調べんとなぁ」
「ですね。あと、金剛お姉さまにも連絡とったほうがいいと思います」
私は提督にそう返す。
「そうだな。2番艦の『きりしま』がここにある以上、一番艦の『こんごう』も現れているかもしれん。三番艦はだれだったっけ……?」
「三番艦が『みょうこう』、四番艦が『ちょうかい』ですね。妙高さんと鳥海さんには私から連絡してみます」
明石さんが連絡を受け持った。
「あ、それから霧島さん」
「ん?」
はいこれ、と明石さんから袋を渡される。
「なに?」
「新しい制服です」
「……そゆこと」
「そゆことですね」
ストックはここまで。次は艤装の説明回でその次が演習回かな~