俺達
現代人からすると貴族とは食っちゃ寝の生活をしているという凄まじく偏った知識を持っているだろう。
残念ながらそれは非常に偏ったなんてものではないレベルの偏見だ。そう、とっても忙しいです。
俺はまだ15歳だ。しかし、この世界ではもう成人として扱われる。それに次期の領主になるということでかなりの量の勉強をしなければならない。勉強することは経済学に統計学、数学や法学、魔導学など多岐にわたる。
勉強以外にも魔法の実践、武術など体を動かすことも多い。
そんなため一日のスケジュールはかなりタイトだ。
一応休日は設けられているため息抜きができないわけではない。しかし、残念なことにこの世界に娯楽はない。
いや、一応あるにはあるのだがそれは狩りや楽器の演奏といったものでスマホゲームや漫画というものたちと比べるとかなりつまらない。結局一番面白いのは魔導学だということになり一日中勉強することになる。同年代かつ同じ立場の奴がいないというのも理由の一つだろう。
同じ支配者階級でもヒエラルキーは明確に存在する。別にイジメや嫌われているというわけでもない。ただ、領主の息子ということもあり敬遠されている。小さい頃は仲が良かったらしい奴等ともかなり距離ができてしまった。
おかげさまで現在進行形絶賛ぼっちライフを謳歌している。
……孤独って結構心にクルんだな。
前世ではまあまあ友人がいたからいい体験かもしれないが正直したくなかったよ…。
△▼△
「
的へ狙いをつけて魔法を放つ。下級の魔法というのもあるが自分のスキルによる補助のおかげで威力を損なわずに詠唱を破棄に成功した。俺の放った魔法は的に直撃するが的には『魔法耐性』を持つ呪符を張ってあるため無効化されてしまう。
「ほう、無詠唱とはやるな。まだまだ粗削りだな。」
ちなみに魔法の今日の魔法の講義は俺の父親だ。
外見はおよそ40代に差し掛かったくらいの美中年といった外見をしているが、その正体は100年以上生きてきた上位魔人である。
"名前"は確か……ナスカ・ヴァレンタインだったっけ。
因みにこの世界で普通は魔物は"名前"を持たない。従って"名前"を持つということは大きな意味を持っている。
それは何故か? 答えはただ一つだ。名もなき魔物に名を与える行為――"名づけ"が重要な儀式であるからだ。
"名づけ"には代償が必要とされる。それは魔素だ。魔物にとって魔素は命と同じくらい大事なものだ。魔素で構成されている魔物にとって魔素を失うということは生命活動に直結する。つまり、最悪の場合死に至る。
いい例が今の俺の父親だ。
俺が生まれたころはなんと20代後半くらいの見た目であり、今でもこの領内どころか世界でも有数の強者だったらしい。しかし今では二十歳ほど老けており、実力も世界最強から領内最強にグレードダウンしている。
……それでもバケモノじみた強さなのは変わらないけどな。
そんな訳で魔物に"名前"を与えることは重要な意味を持つ。
"名"を持つ魔物は"
俺も生まれたときから凄まじい力を持っていたが、"名前"を得たことによりさらにその力は飛躍し、
……ただ、量が多いだけでそれを全く使いこなせていないのはご愛嬌だ。
「見本を見せてやろう。
父の放った魔法は空を裂き、呪符を貼り付けた的を砕く。
詠唱などしない、しかし威力は俺以上のものとなって的へ突き刺さる。
威力が高いという証拠として俺では破れなかった呪符に傷ができている。
「今の魔法で使った魔素はお前のものより少ない。私はお前と違い魔法を補助する
「俺よりも使い慣れているから…?」
「確かにそれもあるかもしれないが私の求める答えではないな。正解はイメージ力の差だ。」
イメージ力?
「魔法は魔素によって行使される。この魔素は意思に反応するのだ。より強固なイメージを持てば持つほど魔法は強力になる。逆にイメージがあやふやならばいくら魔素をつぎ込んでも効率が悪い。」
なるほど……。しかしイメージ力ってどうやってつければいいんだ?
「お前はよく地上へ行ってるのだろう? ならば自然によく目を向けると良い。そこから着想を得られるはずだ。風の流れ、炎をの勢い、木々のさえずり……例を挙げていけばきりがないな。」
「………」
「まあ、若者であるお前には難しいものかもしれないがやってみろ。案外向いているかもしれないしな。」
そう言って父は片づけを始めた。まだまだ教えてほしかったんだけどな…。
領主である父は多忙だから仕方ない。
長い時間がかかるがやってみよう。なあに時間なら腐るほどあるんだ。