夜、父親の助言通り地上の森へ出ていた。
今日は風が強く、草木がたなびいている。それ以外はいつもと何も変わらない光景だ。
しっかし、自然を注視しろと言われてもどうしろっていうんだ…?
「おい、誰だ? こんな場所で一人なんて危ないぞ。……って、ありゃ領主様のご子息でしたか。」
不意に後ろから声をかけられる。声をかけてきたのは
「ああ、すみません。少し魔法の練習で……。」
「そうですか。しかし、ご子息様は勉強熱心ですなあ。全く、私の息子にも見習わせたいものですよ。」
そう言って兵士は笑う。因みに彼に名前はない。魔物はそれぞれが発する波長で見分けがつくから問題ないが、元人間の俺からしたらまだ違和感が残る。
それでは、と言って彼どこかへ飛び去って行く。霧のような靄へ変わり、蝙蝠となってだ。
そう言えば過去に俺の母親が言っていたことがある。『変身』を使う際には変身する生物についてキチンと理解しろと。曖昧に終わらせず、血管の一本まで気を配れと。強固なイメージであればあるほど高レベルになると言っていた。
一番分かりやすいのは火だ。物体の燃焼は長いこと理科で勉強してきたから一番イメージがしやすいのだ。
正直なところ森の中で火を使いたくないが……。まあ、低火力なもので後から魔法を使い消火すれば問題ないだろう。
「
頭の中で物体の燃焼を思い浮かべながら、魔法を放つ。
体内の魔素が体外へ流出し、流出した魔素が掌で火球に変わる。
生じた火球は勢いよく撃ちだされ、減速することなく直進し、進路上にあった木を燃やす。
火の勢いは予想よりも強く、他の木と距離があるにも関わらず燃え移りそうになる。
「マジか……。やっぱりいつも通り風の魔法にしとけば良かったな……。」
腰に佩いてあった剣を抜き、木の幹を斬り、木を倒す。
「
倒れた木に泥を被せ、消火する。火の勢いが強く、一回では完全に消化しきれず複数回魔法を使う羽目になった。
その後も幾つかの魔法を試して、日が昇る前に屋敷に戻った。
そして肝心のイメージの重要性だが、よく分からないというのが結果だった。
言い訳がましい言い方になるが仕方のない話だと思う。そもそも一日二日で魔法が上達するなら分厚い魔導書なぞ存在しないはずだしな。
それにイメージ以外にも魔素の扱いなどテクニックを磨くことも重要だ。
前に父親が魔法を発動した際の魔力操作は見事の一言に尽きた。
だからと言って焦るのは愚策だろう。
父は俺と比べ物にならない時を生きている。それと同時に様々な事柄を体験し、能力を培ってきたのだろう。
今の俺は十五歳とかなりの若輩者だ。まだ何も知らないひよっこと言っても過言ではないくらいに。
……少し冷静になれた気がする。何を焦っていたのかは分からないがゆっくりやっていこう。