転スラの二次創作いろいろ   作:青色のラピス

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第六話

吸血鬼族(ヴァンパイア)は血を吸い、生命を繋ぐ。

厳密に言えば吸血という行為により生命力を直接摂取するのだ。

しかも必要な血液量は少なく、この領内の全吸血鬼族(ヴァンパイア)の一か月間の腹を満たすなら人間二、三人分の血で事足りる。

おまけに領内に住まう人間族は多く、負担は少ない。

 

無論、嗜好品として食物などの徴収を行うこともあるが嗜好品は何処まで行っても嗜好品。

必要が無ければ要らないし、常に大量に持っていかれる訳ではない。

他に税では労役などがあるくらいだ。

 

そも血税には厳しい規則が存在し、人間の過度な負担にならないようにしてある。

負担を大きくし、人間に逃げられることや他の活動の弊害にならないようにするためだ。

故に人間が増えることを喜び、減ることに悲しむのが吸血鬼族(ヴァンパイア)だ。

 

なので生贄などという行為を行うことは無い。意味が無いからだ。

しかし、彼等は吸血鬼族(ヴァンパイア)が生贄を寄越せと言ったという。

 

「……とりあえず、話を聞かせてくれ。情報を整理したい。」

 

「……言ってどうなるんだよ。」

 

山吹色の少年――グレンが俺の言葉に反発する。

まあ、心情は理解できる。生贄を寄越せといった同族が何を言っているんだ、という話でしかないからな。彼等にとっては。

 

「あのなあ、俺達吸血鬼族(ヴァンパイア)は命を繋ぐ以外に血を吸う意味なんてないんだぞ? それに必要な血液は十分に賄えているはずだ。」

 

「……じゃあ、何で態々今になって生贄を寄越せと言ってきたんだ?」

 

確かにそうだ。

しかし、幾ら考えても答えは出てこない。

 

「なあ、生贄って何時までの話―――」

 

「おやおや、坊ちゃん。いけませんねえ、こんな所で何をしているんですか?」

 

後ろから声がした。『魔力感知』で分かっていたが見回りの兵士が俺達に気付いて態々やって来たらしい。

前に会ったことがある奴だな。そういえば結構長いこと勤めているって聞いたことがある。

……こいつなら何か知っているのかもしれないな。聞いてみるか。

 

「なあ、コイツ等―――」

 

「そいつ! 姿は違うけど、私達に生贄を寄越せと言ったのはそいつよ!」

 

少女が絶叫するように目の前にいる兵士を弾劾する。

……そういえば『魔力感知』と『熱源感知』、『危険察知』とかいう人間レーダーだったな。

 

それに俺の隠形を直ぐに見破っていたし、魔力の波動なぞ個体毎に異なっている。

つまり―――

 

 △▼△

 

「おい、一体どういうことだ?」

 

黒髪の吸血鬼族(ヴァンパイア)がさっき来た吸血鬼族(ヴァンパイア)を強めの語気で詰問する。

無意識なのか漏れ出る妖気(オーラ)は怒りの波動を含んでいる。

 

……まさか俺達の話を信じたというのか?

いや、この様子は信じたのだろう。正直、意外だった。

 

―――その瞬間、黒髪の頭が爆ぜた。

 

さっき来た吸血鬼族(ヴァンパイア)の手刀だった。

黒髪はゆっくりと倒れる。

倒れた後、胸を踏み貫かれ、ピクリとも動かなくなる。

 

「ああ、面倒臭え……。おいテメエ等、俺、言ったよな? 黙ってろって。」

 

俺達は言葉を発することが出来なかった。

俺でも敵わなかった魔人を一撃で倒したのだから。

発する妖気(オーラ)はどう考えても黒髪よりも少ない。

 

「ああ……。面倒くさいなあ! ……【獣王】の所に転がり込むか? ……悪魔でも召喚して独立するのも良いな。」

 

「……何だよ、一体何なんだよ、お前は!」

 

声が出た。

無意識化のものだったが、恐怖で振るえた情けないものだった。

 

「……ああ、そういえばいたな、お前ら。丁度良い―――喰わせろ。」

 

俺達のことを今になって認識したのだろう。

妖気(オーラ)の漏れ出る量が増える。

 

思わず気を失いそうになるが、寸での所で踏みとどまる。

だけどミリアとグラハムは気絶してしまった。

 

……それに巻き込んだのは俺の我儘だ。何とかして逃がさないと……!

 

体内の"力"を引き出し、"光"を纏う。

 

通じるかは分からないが無いよりかはマシなはずだ。

何せ同じ吸血鬼族(ヴァンパイア)の黒髪にも通じた"力"だからな。

 

その瞬間、目にも止まらぬスピードで吸血鬼族(ヴァンパイア)の鉄拳が俺を襲った。

過去形なのは俺がその攻撃を受けた後にやっと気が付いたからだ。

 

「痛ってえ!! ……手前、何をしやがったあッ!?」

 

しかし、ダメージは与えられたみたいだ。

手を抑えている。白い煙が出ている様子から見るにあいつにもこの"力"は有効な物らしい。

 

「死ねえッ!!」

 

痛みで悶えている吸血鬼族(ヴァンパイア)目掛けて光弾を撃ち込む。

拳大の大きさのソレは普通ならそこら辺の魔獣をも消滅させる威力を持つ俺の切り札だ。

 

「……一度喰らったヤバいものをそうそう喰らうかよ!!」

 

吸血鬼族(ヴァンパイア)はそう言ってそこから掻き消える。

そして瞬時に俺を取り押さえた。

鎖を使って取り押さえられたせいで、体に触れることすらできない。

 

クソ……! ここまで差があるのかよ……!

 

「ヒャハハハハハ!! 手前等、人間とか言う血袋風情の浅知恵で(ヴァンパイア)という高等存在を殺せるわけねえだろが!!」

 

背中から耳障りな哄笑が響く。

余りの不快さと悔しさで涙が出そうになる。

勝利を確信した吸血鬼族(ヴァンパイア)が鎖の拘束を強める。

そして見せしめとも言わんばかりにミリアとグラハムの下へ近づいて行く。

 

「おい……、何をする気だ……!」

 

「決まってる、喰うんだよ。俺は吸血鬼族(ヴァンパイア)だぜ?」

 

クソッ……! 拘束が強すぎてびくともしない……!

 

「ヒャハハハハハ!! そこで見てろ、高等存在に逆らうっていうのはどういうことかしっかり勉強してろ!!」

 

「―――お前の言うことも一理ある。ゴミ虫が一々喚くのは見苦しいからな。」

 

ゴキッという音が鳴った。

吸血鬼族(ヴァンパイア)が首を掴まれ、折られた音だ。

そのまま投げられるも、上手いこと着地をして立ち上がる。

 

「……やはり、これくらいでは死なないか。―――いいだろう。全力で殺してやる。」

 

黒髪が怒りを滲ませた声でそう言った。

あり得ない程の妖気(オーラ)を放ちながら。

余りの圧に俺は耐え切れず―――気絶した。

 

 ▼△▼

 

頭に血が上っているのだろう。

証拠に後先考えずに普段から言われている制限を解除している。

 

思考者(ナヤムモノ)』の『思考加速』で己の思考速度を千倍まで引き上げる。

観察者(ミヌクモノ)』の『解析鑑定』では特に目立ったスキルなどは確認できない。

 

全身に妖気(オーラ)を纏い、『剛力』を用いて筋力を限界まで引き上げる。

大地を踏みしめ、駆ける。

 

あり得ない程の身体能力を得た俺は一瞬で距離のあるはずだった反逆者へ肉薄する。

流石に首を折られては再生するのに時間がかかるのか、俺への対処はおざなりになっている。

 

いいボディブローが入る。肋骨を砕き、その下の内蔵を潰した感覚だ。

続けざまのジャブで全身の骨をへし砕く。

 

「な、何で生きている……ッ!? 確かに心臓(コア)を潰したはずだ!」

 

先程までの威勢は何処へやら。

完全に怯え切った表情で俺を見上げる。

 

心臓(コア)の一つ二つで死ぬものか。大体それなら頭を失った時点で死んでいるだろうに。」

 

「……化け物め、怪物め! 何でここまで差が出る!? お前が貴族だからか!?」

 

兵士は怯えた表情を浮かべながら激情を込めた罵声を俺に浴びせる。

余程怖かったのか気が動転し、表情がコロコロ変わっている。

 

「そうだ、お前が貴族だからだ! 俺を残して出世したアイツも! 手前等貴族共が血を独占しているからだ! 違うか!?」

 

「あー……、そういうことか。……非常に残念なことだがな。俺達も魔物なんだよ。」

 

「それがどうした? 何を当たり前のことを……。」

 

「ああ、そうだ。当たり前のことだ。魔物は魔素を取り込み、強くなる。秘境に籠れば強くなるのはこの原理によるものだな。ならば俺達が強くなるのに必要なのは魔素であって血液ではないんだよ。血っていうものはな、何処まで行っても食料でしかないんだよ。」

 

「嘘だっ……、嘘を吐けぇッ!!」

 

兵士はいきり立ち、俺への憎悪を隠そうともしない。

しかし―――

 

「いや、事実だ。不思議な話だが俺達にとって血液とは身体を維持するための代物でしかない。俺達が飛躍するために真に必要となるモノは唯一つ。魔素なのさ。」

 

「がああああああああッ!!」

 

俺がどれだけ言葉を重ねても兵士、いや反逆者の耳朶を震わすことは叶わない。

嘗ての前世でオタク友達が言っていた。

 

カエサル曰く『人は信じたいもの信じる生き物だ』と。

成程確かに奴の言う通りだ。奴は最早誰の言葉も届かない。

正論が必ずしも人を救う訳ではない、ということだろう。

 

……しかし困ったな。

相手はまあまあな手練れだ。

半日はベッド生活になる威力を叩き込んだはずだが、直ぐに回復している。

 

『自己再生』をかなり鍛え上げたのだろう。

流石に殺すのは出来ないし……。援軍が欲しいが地上担当全員でグルの可能性もある。

 

……俺一人で奴を拘束又は無力化。出来るだろうか?

いや、違う。

しなければならない。

 

―――だって此処には、俺しかいないんだから。

 

転生前とは違う。

今の俺には『力』があるんだから。

 

「があッ!」

 

裂けんばかりに眦を決し、(けだもの)が如き咆哮と共に俺へ爪を振るう反逆者。

流石に爪が当たれば痛いので、一手早く手首を抑える。

そしてそのまま力を加え、手首を砕く。

 

相当な強化が入っているためあっさりと砕けた。

無論『自己再生』を持っているため直ぐに回復されてしまう。

不死種族の厄介な所だ。

嘗てのように急所を狙うや関節を極めるなどの手段が陳腐化してしまうのだ。

 

しかし、全く意味がない訳ではない。

『自己再生』の際には魔素を利用する。

非戦闘時なら兎も角、今のような戦闘時には体内のものを使う。

 

体内の魔素は有限な資源だ。魔素を用いて能力(スキル)や魔法は発動され、魔物は生存するためには相応の魔素を必要とする。

そのため一定量を切れば、生存のために低活動状態(スリープモード)という休眠状態に陥ってしまう。

 

だから今の俺が狙うのはそれだ。

生半可な攻撃では止められない。高火力を使えば殺してしまう。

ならば、相手の動力源を切らし、止めてしまうのが一番だろう。

 

「ッ……!? おまえ、まさかあッ!?」

 

どうやら俺の思惑に気が付いたようだ。

普通に考えればこうなるのはすぐ分かるだろうしな。

 

……おっと、俺が拘束魔法が使えればこんなことにはならなかったというツッコミは無しだぜ?

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