灰の旅路   作:ぎんしゃけ

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珍しくネガティブな灰くんです


第十四話 地底の世界での賢い生き方

俺は冷たい床から目を覚ました

 

ややボロっちい家と…なんだこれ豆?いやこれ米か?多分米だと思うつぶつぶとやけに多い酒が置いてあった

 

あの時の約束通り寝床と食料は貰えるらしい

ただ少し歩くだけでギシギシと床から軋む音が聞こえるのが難点だろうか

 

結局あの後無様に意識を失ってここに連れてこられたんだろう

 

とりあえず米炊いて食べよう…

明日からのこと考えると憂鬱だが、米は美味い。美味いから偉い

適当に美味しいものを食べて明日からどうするか考えよう

 

適当に一合ほど炊こうとして俺は固まった

 

目が見えない無いのにどうやって米を炊くんだ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

派手な音を立て、家屋に纏めて風穴を開けるながら吹っ飛ぶ人影

それはもうこの地底では日常になりつつあった

 

「勇儀さぁん!毎度毎度勘弁して下さいよ!」

 

「悪いな酒屋の旦那、今日中には建て直しておくよ!」

 

恐らくは吹き飛ばされた家屋の家主であろう男の悲鳴も最早馴染み深いものになった

 

「よう旦那!運が無かったな、まあもう起きちまったんだ諦めろ、それより今日こそやるのかい?」

 

男はガハハ!と豪快に笑いながら肩を叩いてくる鬼を恨みがましく睨み、その赤く染った顔を見てため息をつく

 

「ああクソっ!やけだ!賭けてやるさ!」

 

男はやや強引に鬼の持っていたひょうたんを受け取り一気に飲み干した

 

「そりゃあいい!さぁどっちに賭ける?多いのは2時間だ」

 

「いや俺は1時間だね、あんな勇儀さん相手に2時間も耐えられるとは思えねぇ」

 

そう言い、いくらか銭の入った袋を鬼に投げ渡す

 

気がつけば鬼と、妖怪たちが酒を片手に集まっていた

 

「俺ァ大穴狙って、アイツが勇儀さんに反撃するってのに賭けるぞ!」

 

声高々に宣言した大男の手にはギッシリ詰まった銭袋、それを見て集まった暇人どもは興奮したように声を上げた

 

つまるところ、この地底の妖怪たちからすれば過程や原因などはどうでもよく、ただただバカ騒ぎといくらかの酒さえ飲めれば何でもいいのだ

 

「いやいやアンタよく見てみろよ、勇儀さんのあんな一撃食らってまた立ち上がれると思うのかい?いやぁ俺には無理だと思うね、鬼だってあんなキツいの食らえばひとたまりもないってのにあいつはただの妖怪さ、妖力だって並以下だぜ?」

 

続けて「そんなわけで俺はここでリタイアに2日の食費賭けるぜ」と言って小男は下品に笑った

 

大金を賭けた大男の目にやや不安の色が映る、いやそれでもまだ…といった淡い希望を抱いて目を細めた

 

なんともしょうもないことであるが、この2人としては重要な戦いの真っ最中だ

 

そんな静寂を打ち破るかのように誰かが声を張り上げ指を指した

 

「おい!あの兄ちゃん起き上がったぞ!」

 

「なんだとぉ!?」

 

「よぉしっっ!」

 

流れるように続く言葉に崩れ落ちてく1人の男、小声で女房になんて言えば…なんて呟いている…実に哀れだ…戦いとは虚しい…例えそれが賭博という小さな戦いでも残酷に勝者と敗者に分けられていくのである

 

「いやっおい!あの兄ちゃん走って逃げてるぞ!」

 

「んなあぁ!?なんだと!」

 

…続けて崩れ落ちてく大男の肩に手を置く小男…戦いとは勝者と敗者に分けられる残酷なものだ…が、賭博という戦いは時に敗者だけが生まれる、愚かなものだ。

 

そんな残酷で時に優しい戦いに男達は今日も銭を投げる

いつか勝者に返り咲く、そんな光景を待ち望み

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぁっきゅー!

ふざけんなよ!人の不幸で賭け事なんか始めやがって!

 

走って走ってとにかく走る

転んで壁にぶつかってそれでも走る、走り続ける。目が見えないけれども後ろから迫り来る威圧感に本能に任せてとにかく走る

 

「白墨!アンタも男ならちっとは反撃してこないか!」

 

馬鹿野郎!目も見えない上に圧倒的な力の差があってなんで反撃なんかしようと思うんだよ!こっち来んなよ脳筋バカ!

 

怖い

勇儀は俺を殺さないように、けど確実にダメージが残るように的確に痛めつけてくる

俺は痛いのも死ぬ時の身体がバラバラになるような喪失感も大っ嫌いだ!

あんな戦うことしか考えてないような脳筋ゴリラは俺が1番苦手なタイプのやつだよ!ちくしょう!いつだって世界は俺に厳しい道を歩かせようとする!

それもこれも全部八雲のせいだ!

 

泣き言を心の中で呪詛のように言いながら後ろから迫る瓦礫の山に、俺は吹き飛ばされる

 

いつもそうだ、俺ばかりが理不尽なやつに捕まって虐められる

八雲のやつも博麗の巫女も勇儀もそうだ

 

逃げてやる…こんな地獄からはさっさとおさらばして温かいご飯を食べるんだ!

 

固く決意し踏み込んだ先にあった地面は、唐突に消滅して俺の体を隣の区まで吹き飛ばした

 

今回は何をされたのだろうか?俺が走っている地面ごとひっぺがして投げ飛ばしたとか案外ありそうだ

 

吹き飛ばされてボロボロになった体で考える

勇儀が追いかけてくるような気配はない。

今回は終わったみたいだ

 

勇儀は大体俺を満足するまでボコるとどこかへ消えていく、その時は決まって宛が外れたようにため息をつくからわかりやすい

 

勝手に来て勝手にボコって勝手に失望してどっか行く、失礼なやつだがそこはもう諦めたのでいい

今の俺課題はこんな感じだ

 

・地底から出る(最重要)

・目を見えるようにする

・安心安全な環境で自由気ままに美味しいご飯を食べて好きなことする。(最終目標)

 

簡単に話していこうか

まあまずは地底からの脱出だ

これはいつものように地上のどこかにある俺製灰の山にいつも使ってる「灰逃げ」の瞬間移動で一発解決だと思っていた

 

この言い方から分かるようにこれは失敗した

そもそも灰逃げが発動しなかった、身体が灰になっていくようないつもの感覚も来ない。

俺はこれを知っている、ちょっと前に八雲に使われた魂と精神を閉じ込める結界にそっくり…というかまんまそれと同じ結界がこの地底全体に張られている

 

だからどんなに頑張っても地底の外へと灰逃げをすることが出来ない

 

そこで俺は考えた

結界があるのなら八雲の時のように俺の能力で壊してしまえばいいじゃない

忘れられがちだけども俺の能力は触れたものを粉々に分解できる

 

八雲の時のように結界が可視化されていないからどこから触って壊せばいいのかは分からないけど、この地底のバカ高い天井を分解しながら上に突き進んで行けばいつかは地上、もしくは結界にたどり着けるだろうと考えた

 

まあわかると思うが結果を言おう、ダメだった

途中までは良かったよ、うん。

 

天井を2mぐらい掘った辺りでボコボコと奇妙な音を鳴らしながら、たった今掘った穴が塞がれた

 

俺の能力は万能じゃない、1秒で一気に何十メートルも分解したり、出来ないのだ

つまり俺が天井を掘り進めるよりも天井の穴が再生する方が圧倒的に早い

 

…参った

これ俺専用の牢獄なんじゃないかと疑うレベルには地底の監禁レベルは高かった

俺の地底脱出大作戦はたったこれだけで不可能だということだけが証明されてしまった

 

そんなわけで割とガチでこの地底から出れなくて困った

俺は割とガチでショックを受けた

 

 

…次は忌々しい巫女の封印によって見えなくなった目についてだ

こっちは割と簡単に対策が見つかった。というのもそこまで便利なものじゃないが…

最初は前やってたように灰を飛ばしてドローンみたいに灰から視覚を得ようとしてみたがこれは眼の共有なので結局何も見えなかった

 

そんで考えた案が灰バリアだ

 

自分の半径10メートルに灰を飛ばしまくる、とにかく飛ばしまくる

例えば丸い物体の周りに灰が付着することによって、何となくそこに丸い何かがあるってことがわかる

とにかく灰を飛ばしてセンサーみたいにするんだ。電波飛ばして地形を読み取るみたいな感じ

 

色は分からないし形もアバウトな感じでしか分からない、その上半径10メートル以上にも灰を出すと頭がこんがらがって分からなくなるから10メートル以上先は変わらず何も見えない

 

でもこれのおかげで段差に気づけるようになったしコップとか茶碗がどこにあるか簡単にわかる…ないよりマシだ

 

整理しよう

今の段階では地底から抜け出すことは不可能

目は半径10メートル以内なら形と距離感だけわかる

そんで地底にはランダムエンカウントの勇儀とかいう八雲級のバケモノが襲ってくる

 

……

気が遠くなりそうだ…

俺は一生ここから出られないのか?俺は一生目が見えないのか?俺は一生あの脳筋に追いかけ回されるのか?

 

うん?いい匂いが…ご飯が炊けたのか

 

パクパクと静かに米を食べる

不安はある恨み辛みも少なくない…けどまあ、米は美味いし何とかなるだろ!

米は美味いしな!

 

 




感想評価貰えると喜ぶのでいっぱい書いt(殴
ちょっと忙しくて次回も投稿が空きますが、気長に待って貰えると嬉しいです
ではまた
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