灰の旅路   作:ぎんしゃけ

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今回話が結構短めです
続けて書くとまた7000字くらいまで行ってしまいそうだからっていうのとこれからちょい忙しくなり、先の話を書こうとすると投稿がかなり遅れると思ったので区切りをつけて少し短めのを投稿しました
出来るだけ続きを早く書くので今回も気軽に見てもらえるとありがたいです


第十七話 楽しく生きる為に手を抜いてはいけないこと

水から顔を出した時のように急激に周りの音が聞こえるようになってくる

よくある眠りから目覚める予兆、しかし妖怪になってから1度も寝ることがなかった俺からすると初めて感じる意識の覚醒

 

「おはようございます、気分は…案外平気そうですね」

 

横から声が聞こえてくる

どうやら俺はベッドで寝させてもらってるらしい。ということは隣に居るのはさとりんか

 

ぼーっとしていた頭がハッキリとする、やがて珈琲の独特な匂いとパラパラとめくられる紙の音がする

 

本でも読んでいるのだろうか?

 

「流石の私も勇儀さんの頭を覗いた時は呆れましたよ、まさか毒入饅頭を完食してぶっ倒れるなんて…あなた自分が死なないからって適当すぎじゃありませんか?痛覚はあるでしょうに…ここまでバカだと出てくる笑みも苦笑いですよね」

 

失礼な!せっかくの甘味なんだから贅沢言わずに完食するのが当たり前だ

実際美味かったし、平気だったぞ!

 

「ああ、はいそうですか。なら次からは毒キノコとかに当たっても適当に1人でぶっ倒れていて下さいね。どうせ放置していたら勝手に治るのでしょう?

…なぜあの八雲紫がこんなポンコツにこだわっているのか分かりませんが、その再生の速さだけは西洋の悪魔にも引けを取りませんね」

 

褒められたのでどやっておく

俺もそこはすごいと思うんだよね

呆れた声が聞こえてくるが、饅頭は美味かったし、俺は数時間意識が無かっただけで無傷だからヨシ!

 

「……はぁ。」

 

心底疲れたというようなため息、ストレスでも溜まっているのだろうか?

まあでも朝起きたらまずはあれだよね!俺は未だにパラパラと本をめくっているさとりんに向き直った

 

「朝食待ってます」

 

 

 

 

 

 

 

 

酷いぞさとりん…何も追い出すことないじゃないか…。

突然吹っ切れた様に大声を出したと思ったら「あ、あなたが居ると八雲紫が…私の平穏が…それに加えて星熊勇儀まで…」と今度は小さな声でぶつぶつと暗い顔しながら何かを言っていたし、終いには「持ってる酒を金代わりにして外で食べてくれば良いじゃないですか!」って言われて追い出された…鬼が作る料理は豪快過ぎてちょっと合わないんだと言いたかったがさとりんもストレスが溜まっているのだろう口に出すのはやめておいた

今度話でも聞いてあげた方がいいかもしれないな。俺の朝食のためにも…

 

そんなストレス?もきっと時間が経てば無くなるだろう

今日のところは諦めて適当にお店を探そう

 

あっさりとした肉じゃがが食べたい

あの味の染み込んだじゃがいもとご飯を食べたい気分だ

…まあ地底の飯屋で出てくるものは大抵謎肉ブロックなんだけどな…あれほんとになんのお肉なんだろう

 

出てすらない心の涙を拭き取り歩を進める、今日はやけに人通りが少ない

俺が起きた時を勝手に朝と言っただけで、実際は真夜中とか?地底じゃお日様が見えないから今何時か把握しずらいのだ

 

ただ腐っても妖怪の街

夜にやってる飯屋ぐらいあるだろう、元々やつら夜行性なんだから無い方がおかしい

……そのはずなんだがおかしいな、少ないというか誰もいない

店がやってないとか云々より、通行人すら1人も見てない

地底は広いが、出ることは出来ない、散々試したが不可能だ

だから俺が気を失っている間にみんなでお引越しとかはさすがに考えられない

 

柄にもなく少し不安になってきたぞ

言葉じゃ言い表せないけど、誰もいない夜の街ってのは凄く不安になる

同じようで違う世界に迷い込んだようななんとも言えない不快感と不気味な雰囲気特有の何かが起こる気配が肌をヒリつかせる

中学生のころ、お昼寝していたら次の授業が移動教室で起きた時には誰もいなかった時の焦りを思い出す

いつも橋にいる嫉妬深い女の子とかは居るかもしれないが…

 

今からさとりんの家に行こうか悩んでいる時、ようやく灰バリアが人の形をキャッチした

 

「よう、半日ぶりだな白墨」

 

目の前に居るやつが勇儀だとすぐに分かった

2番目に会いたくないやつに会ってしまった…という気持ちとやっと知ってる人に会えたという安心感でなんとも言えない気分になる…しかしそれもすぐにかき消された…圧倒的な強者の”威圧感”によって

 

俺は知っている、この感覚を

1度、これ程までの重圧を1度だけ感じたことがある。あの日、博麗の巫女と初めて会った俺にとって最悪の日

あの巫女が放っていたものとよく似た恐怖

 

勇儀にはいつも追いかけ回されてボコボコに殴られているが明らかにその時とは違うとわかる

いつもも、手足をへし折られたり穴開けられたりと結構本気だがそれの比ではない

とにかく俺はその感覚を感じ取った瞬間本能に身を任せて逃げようとした

実際あと1秒でも遅ければ灰逃げを使って反対方向に逃げていた

そうしようとした時、勇儀はとんでもないことを言った

 

「丁度今さっき、地底中の飯屋の食材を全部私が奪ってきた!」

 

「!?」

 

灰バリア越しにもわかる様に勇儀がニィっと笑う

そしてただでさえ声がでかいのにすぅっと息を吸って声をさらに張り上げた

 

「ここにある食材が欲しければ私を満足させてみせろ!別にいらないならここで逃げ帰っても構わないが、その場合地底の飯屋は一生閉店だ!さあどうする白墨!向かってくるか!?」

 

そう言って横にある大きすぎる何かをバシッと叩いた

恐らくそのでかいシルエットが地底中の飯屋の食材なんだろう

 

おい、いやそりゃあやっちゃダメだろ…

 

逃げようと考えていた身体がピタリと止まった

 

俺の旅の目的として1番に美味しいものを食べるが来て2番目に綺麗な景色を見るというのが来る

その2つは、それだけは何物にも代えがたく、妥協してはならないと俺は考えている…

 

勝てる勝てないとか、そんなものはもうどうでも良かった

重要なのはこのまま逃げた時に起こる俺の食生活の変化とか、俺が満足して生活出来るかとかで、それ以外の全ての理性的な考えは本能にかき消される

他人とか自分以外のなにか重大な事なんて、昔から大して重要視してない

 

1度そう考えるとあんなにうるさかった心臓の音は正常に、焦っていた頭の中は不思議なほどクリアになっていた

 

 

 

1歩、2歩、勇儀に近付き右の手のひらを向ける

勇儀の口から怪訝な声が漏れた

 

作りあげるのはあの日の一撃

あの日、地底に落とされるその直前、巫女に放った結界弾

いつものカクついた四角形だったりではなく、創造するのはあの日の鋭い槍

負ければいつも以上に痛い思いをするかもしれないとかそのあとの恐怖なんてものはかき消えた

ただ結界弾を作るのに深く集中する

 

薄く、薄く薄く伸ばした結界を何度も何度も折って折って1枚の薄い結界が何重にも細かく折り重ねられて角張った1つの槍のような結界弾を形作る

 

それを、あの日巫女に届いた唯一の一撃を、俺の最大限の結界弾を、俺は勇儀の脳天目掛けてぶちかました

周囲を巻き込む爆風と、鉄と鉄がぶつかり合う様な耳をつんざく爆音が辺りに轟いた

 




ここまで読んでくださりありがとうございます
投稿遅れたのに話短めですいません。どんだけ遅れても半年以上投稿期間を開けることは無いので失踪はしません
…たぶん…。
それと既に見て下さった人もいるみたいなんですが活動報告に灰君の簡単な設定とかを載っけたので暇な人は読んでみてください
設定の質問や灰の旅路の質問も聞かれたらネタバレにならない範囲で回答しますよ〜
ぼかしたような返信がきたらまぁそういうことです
ここまで長くなりましたが読んでくださり本当にありがとうございます。次話もよろしくお願いします


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