総合評価4000突破!本当にありがとうございます!次は5000目指して頑張ります!
この間自分の作品が日間ランキングに入っていてびっくりしました
ああいうのって通知来ないんですねめっちゃ嬉しいです
それは確か白墨の”世話”を任されて数ヶ月ぐらい、いい加減うんざりしてきた頃だった
『なぁ紫、こんなことして意味あるのか?お前はなんのために私にこんなことさせてるんだ?言っちゃあ悪いが白墨からは私をどうにかしようっていう感じが全くない。なんて言うかな…無表情なんだけど、まるで覇気がないっていうか戦う意思すら感じられない。あんな逃げ回るだけの奴をぶん殴るってのもつまらない』
私の問いただすような言い方にも顔色一つ変えずに、相変わらずの胡散臭い笑みで反応する
『別にあなたに指導してもらって強くさせたいだとか成長させたいとかはないのよ?ただこの地底で逃げ回る白墨を捕まえて殴れるような人があなたしかいなかったのよ。だから別に白墨をどうにかなんて考えないで今まで通り殴ってくれるだけでいいのよ、彼にも痛覚があるっていうのは分かっているからそれだけで十分』
寄りにもよってそんな理由…。うんざりしてため息をつく
昔から紫のやることは曖昧で矛盾だらけのように見えて一貫してただ1つの目標の為に動いている。全く意味が無いように見えてもその全てに意味がある
私はまったくめんどうな貸しを作ってしまった
『ああ、そう…それはいい、ああそれはいいんだ…別に紫が白墨を追い詰めて何しようとしてるのかってのはもう地上の話だ、私ら地底の妖怪が首を突っ込むべきじゃない。だから、そこはいい…私が気になってるのは1つ、ほんとはもっとあるがあえて一つだけだ。なぁ紫、あんたは一体”白墨に何を”見てる?あいつは今や目も見えず妖力だって中級妖怪がいいとこだ、そんな妖怪をなんで特別視するんだ?そんなに大層な秘密でもあるのかい?』
『別に、ちょっとした諜報員みたいなのが欲しいだけよ。今の時代力よりもそういった能力を持ったものの方が貴重なのよ。それに、もしかしたらあなたにとって都合のいい展開になるかもしれない』
『何?あいつがか?』
『…ふう、ここに落とされる時ね、博麗の巫女に1発だけ傷を負わせたのよ』
杯をゆっくりと傾け、息を吐いたあと、なんでもないことのようにそんな興味深いことを言った
『へぇ、傷を…』
博麗の巫女と言えばそりゃあ妖怪にとっては天敵中の天敵
サシでやり合えばどんな妖怪であれタダでは済まない。それに白墨が戦ったのはその歴代博麗の巫女の中でも群を抜いて”異常”だったと言われるようなやつだ。そんな相手に中級妖怪に毛が生えたレベルの白墨が一矢報いたというのはなかなかどうして興味深い
『ええ、油断していたとはいえあの巫女の手にほんの少しだけ傷を付けたのよ』
紫は大して興味無さそうに、強いて言えば私にやる気を出させるためだけに言っているだけで、紫自身そのことをあまり重要視していないように感じた。
それが大きな違いを生むと思った
『あの白墨がねぇ…』
どう考えてもいつも相対しているあいつからは想像出来ない
ただ、紫がわざわざ嘘をつくと思わな…いやそうだ紫はこういう顔して平然と嘘をつく様なやつだった。
つまりは与太話程度で期待しないでおこう
そんな過去の話
大した事ないとほとんど忘れかかっていた記憶をふと思い出した
白墨が右の手のひらを私に向けて静止する
私はそれに油断して近付く。鬼ならば油断してこそ礼儀のようなものだと
これからやり合うってのにいつもの癖で紫の言葉が、自分の中の疑問が、グルグルと頭の中を掻き回す
本当に私は鬼らしくない
白墨と殴り合うのなんていつもやってるのに今日に限って強い違和感を覚える
グルグルグルグルとループする紫の言葉、もやもやと肥大化していく強い違和感
辺りは静寂…そんな中、白墨がなにかアクションを起こすその寸前、それまで回っていたあらゆる疑問が、違和感がパッと消えてただ1つ、思った。
『ああ、そう言えばこいつが攻撃してきたことってないな』、と
――瞬間、視界は白く、辺りに爆音が轟いた
◆
「ぅ…んぁ…?なんだ…?」
ぼやけた視界でふらつきながらも何とか立ち上がる
なんだ?今更酒に酔って道端で寝こけたか?
ふらつく頭に手を当てようとしたがヌルりと手が滑る
「んだ、これ…水…?」
また酒を樽ごと頭から突っ込んだりとかやったっけな?
ぼけーっとぼんやりとした頭で自分の手を見つめた
「赤い…ンん?……なんなんだ…これァ…血?…ッ!――白墨ッ!」
霧がかったような視界が一瞬にして開け、辺りの吹き飛んだ家屋の破片が散らばっていた
私が眠っていたと思っていたところは道端でもなく倒壊した家の瓦礫かよッ!
ああちくしょう数瞬気ィ失った!
前を見ると家の壁を派手にぶち破った穴が何重にも先まで続いている
それこそ元いた広場が見えないほど遠い所だ
「ここまで吹っ飛ばされたのか…?ボケっとしてて何くらったか覚えてねぇ、殴り飛ばされたのか?蹴り飛ばされたのか?それとも…ああクソっ!アイツめ脳天を直で狙ってきやがったな…やるじゃないか…まだ視界がグラついてるよ」
(ああクソっ!私は本当に何を食らったんだ?蹴りか、拳か、それとも…それとも紫のような…)
そんな意味の無い思考をぶち壊して音速の”それ”が飛来する
それは槍だった、白く細長い形状をした槍はあまりの速さに周りの物を吹き飛ばし、その速度ゆえにとんでもない風切り音で向かってくる
恐ろしい速度で飛んできたその槍を受け止めようとし、瞬時にその考えを捨てる
「…は?ぁあ…?―――お、おお!ぉ、ぉぉお!?ぉぉぉおおおおおうううあああああああありゃぁぁあああァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ッ!?!?!?!!」
(そうか、そうかッ!さっきの攻撃は!私をここまで吹っ飛ばしたのは!こいつか――ッ!!!)
未だに揺れる視界の中、左足を1歩先に大きく踏み込んでその勢いのまま左腕で槍を外側に”逸らそうと”全力で叩き込む
「ぐうぅぅぅぅぅ!?グァアア゛ア゛ア゛っ゛!!!!」
自らを鼓舞する為叫ぶ、喉がはち切れるほどの声で野山に潜む獣のような声で大きく吠える
その声は己を強め、確固たる意志を強くし、歓喜に打ち震える鬼の本能を強くする
(硬ぇ!なんだこれ!?重い!不本意だが、受け止めようとしなくてよかった、こんなもの直で喰らおうものなら片腕1本程度確実に持っていかれるッ!)
鬼らしく真っ向から受け止めようとした
きっと鬼ならば、と…その思考を放棄し槍を逸らすことだけに全力を注ぐ
ただ技術を使わずに力の限り腕を振り回すだけで災害を生むと言われる私が人間の技術を使って防御する
あれは1つの完成された一撃だ
くらえば私だってただじゃあ済まない
槍を外側に吹き飛ばそうとするもあまりの威力に金剛石と比較されるほどの強度を持った鬼の体が傷ついていく
槍に接触している左腕から絶えず血が吹き出す
皮膚を切り裂き、肉を抉り、指が半ば千切れそうになる
「ウガアアアァァァァ!!!!!!」
腹の底から声を絞り出し、全力をもって斜めに弾き飛ばす
その衝撃で体の左側が2歩分大きく後ろに体勢を崩した。
最近では得られなかった体の震えがそこにはあった
地底に籠り、命を削りあって戦うことなんて萃香を除けばなかった。その萃香すらも何処かへ行ってしまい忘れていた、命をかけて戦う興奮を、自らの体から流れる血と汗の混じった緊張感を
この槍は私を殺しうる”一撃”だ
体が熱い、流れる血と痛みが鬼としての私の本能を刺激する!
(一発飛ばしたッ!だがわかってる、1発だけじゃないんだろッ!?そいつはッ!!!)
腹に力を込めて無理やり上体を起こし、そのまま今度は右足を二歩分前に跳ばして地面に近い位置まで体を落とす
予想通り恐ろしい速度で、恐ろしい精度で、私の脳天目掛けて白い槍が飛んでくる
左腕はダメだ、今の一撃を防ぐのに完全に痺れちまってまともに機能しない
残されたもう右腕を構える
「来いッ!」
一撃目よりもより洗練により力を込めて弾き飛ばす
「オラァァッ!2本目ッ!」
一撃目よりはマシとは言え右腕も左腕は同様にボロボロになったが今度は後ろに飛ばされそうになることもなくその場で踏ん張る
「1発、2発ときて…来るか、3発目」
1発目は急に来て、なおかつまだ頭がふらついていたから受け流す他なかった
2発目は1発目を防いだ余波で体がよろけて咄嗟の回避が出来なかったから受け流した
だが3発目は?
別に頭がふらついてるわけでも体勢が大きく崩れた訳でもない
なんなら両腕は使い物にならないことも入れれば避けた方が良いし、横へ転がれば避けれるだろう
だが、そんな勝負はいらない
鬼らしく、真っ向から
常人なら受け止めるどころが受け流すことすら不可能だ、だが…
「だがぬるい。さぁ!来な白墨!」
むずかしく考えることなんて必要なかった、ただ自分のしたいようにやりたいように戦えばいい
いつも通り超スピードで白い槍が向かってくる
両腕は使えない、そのことを理解しながらニィッと大きく笑う
飛来する槍に対し、私は強く地面を蹴ってジャンプし、体に軸を作りながら大きく回転し、回し蹴りを叩き込む
そうして力を乗せたただの回し蹴りはその白い槍を真横に吹き飛ばした
「くぅぅ〜!最っ高に痛いねぇ!最初にくらった左腕もまだ完治しない」
槍を蹴り飛ばした左足は足首辺りが外側に大きく曲がり、血に混じって骨が見え隠れしている
そして私が3発目を防ぐのをわかっていたかのように4発目の槍が来る
両腕と左脚は使えない
未だ健在の右脚さえも使えなくなれば機動力がなくなって攻撃を防ぐ手段も無くなる…だからこの右脚だけは使えない
唯一健在な右脚を地底の硬い地面に足首まで強引に埋め込む
曲がって骨の突き出た左脚も構わず地面に押し込む
ここからは私の意地の張り合いみたいなもんだ
飛んできた槍を前に大きく口開けて横を向く
「ッシャァアアアア!」
声を出せば強くなると言わんばかりに張り上げる!
口の端が切り裂かれ、赤く粘り気のある血が顔を汚すのも構わずただひたすらに声を張り上げる
これは私が始めた意地の張り合いだ、真っ向から打ち砕く鬼の、私流の戦い方だっ!
体が熱された鉄のように赤く染まり、湧き出る汗が水蒸気のようになる
「ぬああああぁぁぁぁぁぉぁッッッッ!!!」
やがてその槍にヒビが入り、そして…飛来した槍は噛み砕かれた
汚れた顔を乱雑に手で拭い、折れた歯を吐き捨てる
もう我慢など出来なかった、いやする必要なんてあるはずない
「は、はははっ!すまないねぇ白墨、あんたを小さく見ていた!ちょうど身体も温まってきた!今度は一撃で気絶するような腑抜けたやつじゃない、本気の…本物の私も見てくれよ!」
言葉と共に駆け出す壊れた左脚なんて忘れたように地面にクレーターが出来るような音を響かせ全力で駆けていく
あんまり力強く走るものだから左脚足の出血が激しくなる
だが今はもうそんなこと関係ない、ちょうどいい準備運動も終わったことだし今度は私から行きたい
ようやく慣れてきた両腕を犬のように使って四足歩行で地を駆ける
家屋の壁なんて避ける時間すら惜しい、そのまま行く
吹き飛ばされた残骸を更に吹き飛ばし、ようやく最初にいた広場が見えてくる
―行きたい、行きたい!
この体の興奮が、傷が無くなる前に…1秒でも早くこの焦がれるような感情を発散したい!
――あと2歩、いや1歩!
最初には白墨に吹っ飛ばされる前の広場にようやく着いて、そして――
「来な!白墨!山の四天王が1人!星熊勇儀が本気で……あ…?」
そこには、待ち焦がれていた白墨の姿は…無かった…。
「あえ!?お、おい!う、嘘だろう!?私はここにいるぞ!それともあれか!?逃げながらの引き撃ちか!?い、いいだろう!私の趣向と外れるが無理やり追いついてとっ捕まえてやるさ…!?」
そんな小さな願いは虚しく地底に響いた
近くで隠れているとかではなくて、気配が…しない。
「じょ、冗談だ!冗談だろう!?ここまでやる気にさせて逃げたのか!?私をここまで本気にさせてか!?本当に撃つだけ撃って逃げやがったのかい!?白墨め!いいのか!?男として!?」
興奮で熱く赤く染まった顔を青くして頭を抱える
パッと横を見ると私が奪ってきた地底の食材が丸々全部無くなっていた
私がここに戻ってくる前に飯だけ取って逃げたってのか…?
―勇儀は知らなかった。白墨が中級妖怪レベルの妖力しか持っておらず、その肉体は人間のように脆く弱い。しかし、こと逃げの1点に関して言えばプロレベルなのだ、と
それこそあの八雲紫でさえ頭を抱えるほどの。
結局その日はもう白墨を見つけることは無かった。
ちなみに逃げずに戦っていたら白墨君のスーパーリンチタイムが始まってました。鬼なんてそうそう本気にさせるもんじゃないです
そして地底編もそろそろ終わりです、早いなぁ。まあ投稿は遅いんですけど早く感じます
ここまで読んでくださりありがとうございます
最近総合評価がぐんぐん伸びてて嬉しいです。本当にありがとうございます
今回も感想評価お気に入りをどんどんしてもらえると嬉しいです