灰の旅路   作:ぎんしゃけ

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夏休みパワー継続中!
会話が多いです。読みづらかったらすみません。
それとルールは許してくださいややこしくなるっ!

【追記】
灰の旅路が日間ランキング二次で10位、総合の方で13位に載ってました!ここまで伸びたの初めてなのでめちゃくちゃ喜んでます!皆さま本当にありがとうございます!ランキング10位ヤッター!


第二十二話 幻想郷流の治安維持

「…と!いうことで頼んだわよ」

 

そんな無常な言葉を投げかけられ固まる

うそ、だ……でも仕事しないとケーキ食べれないし…何とかするしかないのか…?

 

俺がガックリとしていると九尾が不思議そうな顔をした

 

「先程から返事も相槌もありませんが、この男は話せないのですか?」

 

紫を見る

 

「いや、話さないだけよ」

 

話さないだけです

 

「話すのがめんどくさいらしいわ」

 

話すのがめんどくさいだけです

 

「そうですか、私の方で教育しておきましょうか?」

 

ごく自然な感じに九尾がそう聞いた。とても事務的な感じだ

 

「いや、もう諦めたからいいわ!」

 

諦めたらしいです

 

「そうですか、それなら私からはもうありません。先に結界の修復へ行っておきますね」

 

九尾……いや藍は最初からよく分からんがそれだけ確認してまた飛んでいってしまった

知らない場所だし地形も覚えないと……

にしても説得かぁ…説得……

 

俺がうんうんと悩んでいると、何故かまだそこにいた紫が口を開く

 

「私もそれなりに付き合いが長いから貴方が言いたいことも何となくわかるわ、でもそんなに難しいことをする必要はないわよ?」

 

そうやって紫は愛想良く指をピンと立てて提案してきた

 

「幻想郷のルールを周知させれば良いのよ」

 

ルール?

 

「幻想郷のルール、”妖怪が人里に入っても構わないけど、人里内で妖怪が人を襲っては行けない”これが幻想郷のルール。貴方はこれを人里に住む人々に絶対的なものとして周知させれば良いの、人里内では何があっても妖怪が襲ってくる事は無いんだってね」

 

そうやって茶目っ気のある顔で話す紫は俺のイメージとはだいぶかけ離れたものだ

怖い顔だったり胡散臭い顔のことが多いが…ほんとに色んな顔をする

 

それにしてもその人里内が安心ってルールを広めるためには具体的に何をすればいいんだ?

人里内は安全ですよー!っていうプラカードでも掲げて歩けばいいのだろうか

 

「つまりね、貴方はこうしてるだけでいいのよ――」

 

そうして言われた初仕事はさっきの話からすると拍子抜けするものだった

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜」

 

気の抜けた声と共に特徴的な瞳の空間に馴染み深い紫様の”スキマ”が生まれる

 

「おかえりなさいませ紫様、一応私の方で結界の修復をしていたのですが…すみません、私だけではこれ以上は……」

 

力になれず自分の能力不足を恨みながら例の歪みを見る

 

「十分よ藍。ありがとうね、ここからは私がやるわ」

 

そう言っていつもより少しだけ機嫌が良さそうな紫様は恐ろしい速さで結界の綻びを埋めていく

 

流石と言わざる負えないその手際は私にはとても真似することは出来ない

いや、恐らく幻想郷中で見てもこの速さで穴を塞げるのは紫様ぐらいだろう。だからこそこの結界の管理は紫様以外には務まらないのだから…

 

「紫様、一つだけ良いでしょうか?」

 

ただ一つだけ引っかかっていることを忙しいのを承知で聞いた

 

「んー?どうしたの?」

 

「あの男、白墨についてです。失礼ですがあの男に里の人間を説得できるだけの話術もカリスマも無ければ、人にとっては重要な親しみやすさも感じません。あれならまだ人里の寺子屋にいる半妖に任せた方が良かったのでは?」

 

紫様は、確かにあの無口無表情な顔は初めて見ると冷酷な印象を受けるわよね〜と、笑いながら話し始めた

 

「でもね……でもね藍”それでいいのよ”いや、むしろあの一見怖いという印象を受ける無口無表情なあの顔だからこそ良いのよ」

 

それがいい?逆効果では無いのだろうか?

私のその困惑した雰囲気感じ取ったのか紫様は結界の修復の速度を落とさず、さらに話を続けた

 

「彼にはね、人里でただ普通に生活してと頼んだのよ。特に里の人間に何かするもしないも全て任せる…と言ってね」

 

「すみません、ますます分からなくなってきました……」

 

「あらダメね藍、まだまだ頭が固いわよ?」

 

「すみません……」

 

特に叱られてると言った訳ではなく紫様はどこか楽しそうだった

 

「人里では、未だに妖怪に対する恐怖が残っている、それは信頼出来る半妖が1人いたところで変わらない。もしかしたら人里にいても妖怪が襲ってくることがあるのでは?妖怪が嘘をつかない保証はあるのか?きっとそんな当たり前に持つ不安が蔓延しているのよ」

 

それはそうだ。今まで争い続けてきたのにある日突然人と妖怪は共存していくなどと言われて、直ぐに認識を変えることのできる肝の据わった人間などそうそう居ない

そしてそれは…

 

「そしてそれは妖怪側も同じこと。一応幻想郷中の妖怪たちにこのルールを知らせたけど…きっと出てくるでしょうね、人里で暴れようとする妖怪が。」

 

……そうだ。初めからこのルールはどちらが双方をどこまで信頼出来るかにかかっている。これまでが最悪だったのに…だ。

ある程度の妖怪なら紫様と博麗の巫女を同時に敵に回すことを理解しているから人里で暴れるなんてことをしないだろう。

 

だが生まれたばかりの力の弱い妖怪などから必ず人里で人を襲おうとする妖怪が現れる、若いから、単純に馬鹿だから、理由は色々ある、だが必ずそういう者が出てくることは明白だ

 

そして一度でも妖怪による被害が出ればその時点でこのルールは意味の無いものになる

 

やっぱり妖怪は信用出来ない、妖怪とは相容れない…と。

その被害を出した妖怪を退治したとしても関係ない、一度でも被害が出ればその時点で終わりなのだ

 

「だからね、彼には二つだけ絶対の命令をしてきたの、1つは人里で生活すること…もう一つは、人里で人に害を成そうとした妖怪を、被害の出る前に問答無用で絶対に殺しなさい…と。」

 

その最後の言葉だけがとても冷酷なものだった

でもなるほど…

 

「つまりは、見せしめ…ですか?」

 

「それも妖怪と人間、どちらに対してものね」

 

「それは……」

 

「彼はね、ある1つの事柄を除いては絶対に表情を動かさないし、滅多なことが無ければ話すことすらしない。でもそれが良い。藍、何事も丁度よく回さなければならないの、人は妖怪を恐れなくなってはダメだし、かと言って妖怪と敵対しすぎてもダメ。ちょうどいいと思わない?人の味方である寺子屋の半妖と得体の知れない、人に仇なす妖怪だけを殺す感情のない化け物」

 

そこで私は初めて紫様の考えに気付いた

そうだ…紫様はいつだってずっと先のことを考えている人なのだ

 

「白墨が人里の被害を出さなければ、『人里内は気味の悪い妖怪が徘徊していることによって安全だ、だがソイツは信用出来ない』それも時間が経てば日常となる。恐怖を残しながらも”そういう”ルールがあるのだと納得させることが出来るわ」

 

「人里の外はこれまで通り妖怪は人を襲っていいのだから危険が伴う。それでも人間は人里内だけで物資のやり取りをする事は出来ないから必ず外へ出る必要がある、危険が伴うから博麗の巫女の必要性は失われず、危険な仕事だからこそ貰える金は多く、それによって人里内の経済は回るようにできている。時間はかかるけどこれが幻想郷を安定させる最も簡単な方法よ」

 

たしかにその方法なら確実だし、悪いことと言えば時間が掛かるということだけだ。それもルールを定着させるという意味ではそこまで大きな弊害にはならない

なるほど、紫様が言っている通りこれなら確実だろう

 

ただ……

 

「紫様、白墨がどんな行動を取るかは予測がつかないのでは?」

 

そうこの作戦は白墨の行動が全てこうなるだろうという推察から来ているものだ

あの妖怪がそこまで考えて動いているようには見えなかった

 

「ふふふっそれこそ1番心配しなくていい事だわ。確かに白墨は何を考えているか分からないわよ?けれどこれでも何百年も観察してきたのだから行動パターンは知り得ているわ。あれは必ず私の予想通りに動くはずよ、だって今までがそうだったもの。そもそもあれはそこまで他人を重要視しているようには思えない」

いつに無く自信ありげに紫様は言った

私は紫様のことを疑わない。ならそうなるのだろう

 

「お茶、入れてもらえるかしら?」

 

結界の修復も一通り済んだのか、こちらを向いて私に命令した

 

「後10年もすれば藍にもわかるわよ」

 

後ろからそんな呟きが聞こえて私は外へ出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっ…」

 

どこからかそんな引き攣った声が漏れる

 

先程まで少年を襲おうとしていた妖怪が目の前で血を吹き出しながら弾けた

異様な光景に人々は誰一人として言葉を発することは無かった

 

身長の高い無機質な男が少年に近付き、そして次に何かを確認するかのように周りを見渡した

 

そうだ、目の前の少年を襲おうとした妖怪を殺したのは他でもないこの男だ。

突然人里にやってきた八雲家の名を借りた謎の妖怪

 

みんな不気味がって誰も近付こうとせず、その妖怪も自分から誰かに接触しようとすることは無かった

 

だが突然魂を取り戻したかのように動き出し、少年を襲おうとした妖怪を一瞬で何の躊躇いもなく殺した

 

とても無機質な行為に、その妖怪が少年を助けたと思ったものは誰もいなかった。

先程の妖怪なんかよりも余程恐ろしい、命をなんとも思っていなさそうなその目が何より不気味だった。

 

「すまん…!ちょっと通してくれ!おい!何があった!」

 

そのちょっと焦ったような声を聞いて少しだけ安心する

この人里に住んでいる者なら誰もが知っている慧音先生の声だ

 

「一体何が…!」

 

人混みを割って入ってきたから慧音先生はそこに転がる妖怪の死体と、その妖怪を殺した男を見て事情を察したらしく、顔を険しくさせた

 

「八雲、紫の……!とりあえず、みんなはもう帰ってくれ…あとは私がどうにかしておく…。」

 

その言葉に従い、少しずつその場を去っていく

皆不安気にチラチラと振り返りながらも慧音先生を信頼して、その場を後にした

 

博麗の巫女が突然やってきて幻想郷のルールとやらと八雲紫について説明してきたのが数日前、その3日後にやってきたのがあの灰色の男…。

 

 

幻想郷は少しずつ、けれど確実に八雲紫の思惑通りに進んで行った

 

 




ここまで読んで下さりありがとうございます!
とうとう総合評価が5000を超えることが出来ました!1つの目標だったのでとても嬉しいです!これからも出来るだけ早く投稿していくので見てやって下さい〜
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