灰の旅路   作:ぎんしゃけ

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遅くなってすいません
今までも一番投稿期間が空きましたがまだ生きてます
3ヶ月は空かないようにしたいです…でも失踪することは無いのでそこは安心して下さい


第二十六話 振り回される人達

懐かしい地底の街を歩く

灰をばらまいてるのであれば新しく落ちてきた妖怪というのが大体どの辺に居るかは分かっている

 

目的の新人は早くに見つかった

人通りの少ない道の隅っこで樽に背をもたれさせて座り込んでいた

ややボロボロで目はやさぐれていた

小柄で赤と青の羽とも飾りとも言えないようなへんな物を背中に着けた妖怪だ。妖怪はちらりとこちらを見たあと直ぐに顔を腕に埋めてしまった

 

奇しくもいつぞやのもこうのようだった。歳もちょうど同じぐらいのように思える、まあ妖怪だから見た目と実年齢なんて釣り合っていないだろうが

 

まあ俺はここのまともな先輩だ、どこぞの会って早々殴り飛ばしてくる野蛮な鬼とは違う

 

人里で買ってきたおだんごを1本だけその妖怪に差し出した

1分2分……しばらくそうしていると面倒くさそうに顔を上げた

 

「誰よあんた……いらないわよ…そんなの…」

 

そう言って拒絶するようにぷいっと横を向いた

 

「…?……?…………???……??????」

 

……ハッ!

なんだこいつ!?正気か?団子になびかないなんて…

あの妹紅だって魚の魅力でホイホイと付いてきたのに……

 

じゅ、重症だ……

相当上の世界で嫌なことがあったに違いない……あれか?インチキみたいな境界の妖怪にでも意地悪されたのだろうか?

 

脳に糖を行き渡らせるためにこいつにあげるつもりだった団子をパクパク食べる

少しだけかかってる砂糖でほんのり甘い

 

にしても酷いな…団子を拒絶するなんて…相当な鬱状態というやつだ……

団子に脳をやられた俺の頭が導き出した答えとしてはこいつが今やばいってこと

 

俺は妖怪っ子の首根っこを掴んで引っ張っていく

あいにくと抵抗したりはなかった

 

「人間なんて……」

 

ぽつりと呟いた言葉は誰の耳に届くことも無く、ただ暗闇に溶けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫め…また厄介なものを引き寄せたな…」

 

幻想郷の賢者の1人でもある摩多羅隠岐奈はここ数ヶ月間観察していた妖怪、灰の妖怪を再び確認してため息をついた

ちなみにその妖怪は何故か地獄にいるはずの妖怪を地上に連れてきて一緒に釣りをしている

 

「あれ協定違反だろうに…」

 

その妖怪がある日突然紫の式神となり人里で動くことには疑問を抱かなかった

 

隠岐奈にとってもそれは都合のいい事であり総じて幻想郷の為になると判断したからだ

 

そんなくだんの妖怪だが最近見れば見るほど不明瞭な点が出ており、それが現在の隠岐奈の悩みに繋がっていた

別に紫がどんな妖怪を使役しようともそこまで深く干渉しようとは隠岐奈も考えていなかった、そう普通の妖怪なら

 

その妖怪は明らかに純粋な妖怪としての存在では無かった。中級妖怪として見るには異常な程の攻撃性を持った結界を生み出す程度なら想定内

ただ時折見せる桁違いの再生力は別だった。

 

そもそもの再生の仕組みからおかしいのだ、ただ再生が速いだとかの話では無い。

通常の自然治癒の延長上にあるそれとは違う再生方法、肉体を回復させると言うよりも壊れた部品を新品に取り替えると言った方がしっくりとくる

隠岐奈はこの異質な身体の構造から白墨という妖怪の不可解さを十二分に理解していた。身体が治るという結果は同じであれその過程が全くもって異次元なのだ

 

ただ隠岐奈は迷っていた。隠岐奈自身ここ数ヶ月の観察では白墨が幻想郷にとって良いものなのか悪影響を及ぼすものなのか測りかねていたからだ

何も悪いことは起きていない、ただ明らかに不可解な、妖怪とも人間とも言えるか怪しい存在を置いておくというのも如何なものか

そして何より紫がそのことについて理解しているかどうかが問題だった

 

平常時ならその小さな違和感すらも気付くかもしれないが、今の紫は毎日毎日過労で肝心の幻想郷のことすらまともに見れていない

あれでいて結構抜けている所があるのをそこそこ長い関係にある隠岐奈は知っていた

だからこそ今回の件についても伝えるべきか悩んでいた

 

もしそれが幻想郷にとって悪影響を及ぼす可能性があるならすぐにでも紫に伝えた方がいいだろう

しかし幻想郷に対して過保護になりすぎている紫がいつ過労でぶっ倒れるかも微妙な時にそんな爆弾ネタを安易に伝えるのもどうかと考えていた。

 

隠岐奈自身特に悪いものでもないのなら放置しておいても問題ないとすら考えていた、性質が違うだけで存在自体が幻想郷に悪影響を及ぼすことは無いと判断していたのも相まっての事だった。

 

そうやって納得しかけた時に起こったのが地底の妖怪と地上で魚釣り……だ。

隠岐奈は頭を痛めた、とても痛めた。地底と地上ではそれぞの代表者である古明地さとりと八雲紫、そして平等に判決を下す閻魔によって不可侵条約が結ばれている

 

なんてことをしているのだ、紫が見たら泡を吹いて倒れるぞ

 

隠岐奈は白玉楼に住まうかの亡霊に尋ねることを考えて直ぐにやめた

あいつが入ってきたら面白がって余計に話がややこしくる様な気がしたからだ

 

 

悩んで、悩んで、隠岐奈は諦めた

特に今すぐ何かが起こるわけでは無いのだからほっとけと半ばヤケになって諦めた

 

元を辿れば必要以上に幻想郷に過保護になっている紫にも責任はある

少々痛い目見る方が幻想郷の為になるだろう。

隠岐奈は適当に尤もらしい理由をつけて考えるのをやめた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだかんだ言って家でずーっと日向ぼっこしてる時間があとから大切に思えてくると思う。

 

この前は久々に釣りとか焚き火とかキャンプみたいなことしてたから疲れてしまった。それはそれで楽しいけれどやっぱりこういう穏やかな時間も良い

それに荒れてる時はああやって思い切って遊んだ方が健康にいい。

彼女も気分転換になっただろう、たぶん。

 

軽く背伸びをし、思い出したかのように湯のみに手を伸ばす

 

うん、緑茶。美味い。

 

これで新聞とか読んでれば日曜のお父さんだなぁとかなんとか考えてお茶を飲む

 

いや、にしてもこの緑茶美味いな…

毎朝飲みたい

 

しばらくは鳥の鳴き声だけが聞こえる気持ちのいい天気、そこに極小さなやわらかい足音が加わった

 

襖が開かれる

 

「おい」

 

気持ちのいい朝、座ってなきゃ気付かないような弱い風が程よく髪を揺らし――

 

「おい、貴様何してる?」

 

……。

驚くほど冷たい視線、俗に言うゴミを見る目とかだ…

いつも嫌われてる自覚はあるけど今日は一段と怒っている……

 

「身体が休まるところがなければ仕事に身が入らない、とふざけた事を言い出したから住まわせてやってると言うのに何をしている?何故朝からさも当然のようにくつろいでいる?聞いているのか?貴様が、仕事を、するというから与えてやった、なあ?貴様はなんだ?もしかして貴様は紫様の役に立つどころがただ邪魔をするだけの害虫なのか?」

 

徐々に湧き出る怒りと、込み上げてくるそれを抑えるような冷たい声

流石の俺も背筋が凍る

 

「し、式神……」

 

「ほう?なら何故こんな所で茶を飲み暇を持て余している?そして貴様が飲んでいるお茶は私がいつも紫様に出している物だ、貴様の物じゃない。どうしても飲みたいなら枯葉を濾して飲め。わかるか?白墨、私と紫様は結界の管理でとても忙しい、貴様と違って休まる時間もないほどに多忙だ。だが、その頑張りも貴様が今のように遊び呆けてしくじりでもすれば全て無意味となるのだ。なあ白墨、紫様が貴様に命じた事はそれほど難しいか?私が家を貸し与えて小遣いをやって、その上で頼んだ仕事はそれほど難しいのか?」

 

「い、いや……」

 

「そうか?なら少しでも幻想郷の、紫様の助けになることをしろ。最低限しかこなせない無能に渡すものは無い」

 

言うだけ言うと、くるりと背を向け部屋から出て行った

 

さ、さすがに1週間以上もダラダラするのはやり過ぎたか…

ほっとため息を吐いて湯のみを片す

 

このままだと家から追い出されるどころがお小遣いも無くなりそうなので真面目にやろう

 

ゴミとして捨てられていたいくつもの紙を1度分解して元の綺麗な紙に作り変える

その紙に筆でスラスラと人里のことを書いていく

 

人里の数、子供の数

どの店が繁盛しててどんなものがトレンドなのか

今年は芋がいっぱい取れただとか

村人達が今の幻想郷に対してどう思っているのか…

 

挙げればキリがないようなことを余すことなく羅列していく

 

残念ながら人里にはプライバシーが無い

里中に俺の目に見えないほど小さな灰がある為、誰がどこで内緒話をしていたとしてもその全てが筒抜けだ

だから最近どこどこの家があくどいことしてるとかももちろん把握している

 

読書感想文の文字数を埋めるために関係ない話を長々と書いていた頃を思い出す

今の俺はまさにそんな感じだろう

とにかく先輩に仕事してるアピールをするためにどんなもの小さな事でも書いていった

 

 

多く、紙束となったそれを紐でまとめる

ちなみにこの紐は壊れて捨てられた下駄の紐だ。

 

まとめた紙束…あっ報告書って書いておこう、それっぽい

その報告書を持って藍の部屋をノックした

 

「なんだ?」

 

やや不機嫌そうにこちら振り向く

やはり顔が怖い

肉食動物みたいな目が突き刺さる

気にしないフリをしながら報告書を渡した

 

「報告…書?」

 

怪訝な顔付きで報告書を受け取り、読んでるとは思えない速度でパラパラと紙をめくっていく

かなりの量があると思っていたんだが…

1枚2枚とページをめくる事に藍の顔は真剣なものになったいった

 

「ふむ…なるほど凄まじいな、紫様が気にかけていたのもわかる。いったいどうやってこんな正確な情報を手に入れたのか…まあ今はいい」

 

真面目な顔つきになった藍はしばらく考え込んでから口を開いた

 

「充分だがもう少し丁寧にまとめろ、私がいない時にこんな読みにくいものを紫様に渡す気か?だが…そうだな…定期的に今のようにして持ってこい、分かることを全て書いていい、情報の取捨選択は私がする。それとは別にいつもと異なることがあればどんなに些細なことでも報告しろ。」

 

よしよし!じゃあもう当分はダラダラしててもいいよね!

 

特に引き止められるようなことも無く部屋を出る

俺は珍しくまともに仕事した自分へのご褒美も兼ねて団子屋に行った

 

 

 

 

 

 

相変わらず、人形のような顔付きで部屋を出ていく白墨にため息を吐く

脅しをかけている時も、部屋に入ってくる時も変わらず無表情

それも最近だと慣れたものだった

 

「それにしても絞れば出てくるものだな…本当にどうやってここまで…」

 

凄まじいまでの情報収集能力

渡された報告書には自分だってすぐには分からないような事や一見するとどうでもいいようなことが長々と書かれていた

 

あのお店はお昼のときは混んでるだとか、この店は癖のない濃い味が美味しいだとか…

どうでもいいと思い紙をめくろうとして手が止まる

 

”ここのお店の油揚げはダシが効いていて絶品”

 

…でもまあ……しっかりと仕事をしてくれているのなら問題は無い。ちょくちょくサボるのが玉に瑕だが…

 

報告書を閉じるとすぐに先程までやっていた作業に戻り、時間をチラチラと確認しながらいつもより急いで作業をする

 

 

丁寧な事に報告書には店ごとの終わる時間が書かれていた

 




最初の話は気が向いたら番外編として書きます。気が向かなかったら書かないです
ここまで投稿期間が空いたのに見て下さりありがとうございます
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