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うひょー!
あの夜以降、俺は度々巫女との共闘を強いられている。
敵が少ないときは巫女一人で、巫女一人じゃ不安な時には俺も出て…。
紫は大変満足そうで結構だが、俺としては共闘する度に巫女の失敗の尻拭いをする羽目になって良い迷惑だ。
確かに巫女は強くなった。そこそこの数の博麗の巫女を見てきたが、一度に四つもの陰陽玉を操るような巫女は見たことがない。
陰陽玉を使っている時と使っていない時ではまるで別人だ。
だが、それは裏を返せば陰陽玉が無ければ弱いということ。
これが問題だ。どれほど陰陽玉を上手く使えても結局は全体の能力で見れば博麗の巫女として下の下でしかない。
というより歴代の巫女ならあんな妖怪集団程度、陰陽玉なしで壊滅させている。
日に日に強くなっているのはわかるが、劇的に強くなることはない。それはつまり、あと何年かはあの巫女の尻拭い役人になるということだ。
そう思うと億劫だ、今度はどんな怪我をするかわからない。最近は目立って怪我をすることもなくなってきたのに…。
治るとはいえ痛いのは嫌だ、だが巫女が死にでもしたらそれこそ俺が紫に殺される。
あー嫌だ、考えていると気が沈む。
気晴らしに釣りでもと思ったが、上手くいかない。
そもそもこんな夜中に釣りをするなんて風情もない。
持ってきた釣り道具をさっさと仕舞って立ち上がる。
そうしてすぐにその場から離れようとして……視界に映る黒い球体に気付いた。
川を隔てたその先、真っ黒な丸いものがプカプカと浮遊する。
辺り一面真っ暗な中、わずかばかりの月明かりによって気づくことが出来たのか。
少しの間考え、俺は石を拾ってはその黒い球体の中に投げ入れる。
投げた石は綺麗に弧を描いて闇の中に入り込んだ。
「いたっ!?」
何かにぶつかったようで、やがて球体は消えて、金髪にリボンが特徴的な幼女…ルーミアが落ちてきた。
◆
「痛いなーもう!なにするのさ!」
ルーミアは涙目になりながら頭を押さえてそう抗議してくる。
まあ落ち着けよ。事故だ、うん。
世の中のままならないことを発散したかったんだ。
そう、なんというか…
「むしゃくしゃしてた。」
「八つ当たり!?」
ショックを受けるルーミアを無視して歩を進める。
「ふむ…あの白墨がむしゃくしゃしてる…と。八つ当たりは許せないけど、むしゃくしゃしてる白墨というのもまた珍しい…ふふん、ここはいっちょ我が肉友のストレス発散につきあってあげよう!」
ルーミアは顎に手を当て、なんだか神妙な顔つきで目を輝かせる。多分何も考えてない。
期待しないでルーミアを見る。絶妙に腹の立つどや顔だ。
「虫の居所が悪いときは美味しいものをたらふく食べるに限る!暴飲暴食は立派なストレス発散だからね!」
そういってルーミアは人差し指をピンと立てる。
「…一理ある。」
どんなふざけたことを言うかと思ったが、思ったよりまともな意見だ。
「っというわけで!こちら取り立て新鮮な人間になります」
「……。」
こいつに期待したのが間違いだった。
ため息をついて頭を振る。
「なんでさ!?久々に取れた無加工肉なのに!」
やめろ無農薬みたいな言い方するな!せめて加工しろ!あと近づけてくるな!
「大丈夫一口食べたらもう止まらないから!そもそも白墨の性質で人が美味しく感じないなんてありえないから、むしろ一番美味しく感じるはずだし」
ワーキャー言いながらそれを近づけてくるルーミアを無理やり抑えて距離をとる。
美味しいとか美味しくないとか以前に、同じ人型のお肉を食べるのはなんか…こう、駄目だろ!
「ぐおぉ…妖怪なのに人を食べないなんてもったいない!食わず嫌いは良くないぞ…!」
「…食べない者もいる。」
昔は人を食べない妖怪なんて珍しかったが、最近じゃ人より人が作った物を好む妖怪も珍しくない。人里に隠れ住んでいる弱小妖怪達なんかが良い例だ。
「それは付喪神とか最近の妖怪の話じゃん。私達とは生まれのルーツが違うよ」
「変わるか。」
「変わるよ。生まれが変われば味覚も違う」
明確な否定に、少し言葉に詰まる。
「……。」
「……フンだ。食べたらきっと美味しいって、ほんとは気づいてるくせに」
「なんの話だ。」
そう聞くと、ルーミアは見透かしたような目で薄く笑う。
「お互いに、それはもう妖怪らしい生まれでしょ?私が闇で、あなたが人間。そういう妖怪の方がヒトを好むからね」
そこまで言ってグイっと体を近づけてきたルーミアはいつもの人懐っこい笑みを浮かべ、だから……と言葉を続ける。
「グルメなあなたに一口いかが?」
◆
夜の幻想郷、それは人里の人間にとっては命の危険が残る恐怖の時間であり、妖怪にとっては最も元気な時間。昼間のストレスを発散するように各々がやりたい放題……はあまり出来ないが、昼間より羽を伸ばせることは確かだろう。
そしてある妖怪にとってはそんな時間こそ稼ぎ時。
暗い夜道に明かりが一つ、移動式の屋台には“八目鰻”と書かれた赤提灯が辺りを優しく照らしていた。
「仕込みは完璧……火加減ばっちり……うん!今日も今日とて営業開始!」
ここは人里離れたある夜道、そこにはここ最近夜限定の屋台が出ていた。
人里はなんとなく行きづらい、夜中に気軽に飲み食いしたい……この屋台はそんな妖怪達の憩いの場だ。
焼鳥撲滅を胸に、思い付きで始めた屋台の店主、ミスティア・ローレライは本日一人目の客を今か今かと待っていた。
元より利益を考えての経営ではなく半ば趣味のような屋台だったが、思いの外評判は良く、最近では夜雀の印象よりも屋台の店主という印象の方が強くなってしまっている。
そうこう考えている間に小さな足音と話し声が聞こえてきた。
「もぉーいつかは食べてもらうからね!」
(この声は……ルーミア?もう一人の声は聞こえないけど誰と一緒にいるのかしら?)
ミスティアが食器を拭きながら耳を傾けていると、足音は丁度屋台の前で止まり、そしてルーミアが誰かと話しながら暖簾をくぐって入ってきた。
「いや~ここのは絶品だよ?私の行きつけなんだ」
(ルーミアが誰かを連れてくるなんて珍しいけど、それだけこの店の味を信頼してくれているというのは素直に嬉しいわね)
ミスティアは自然に頬を緩ませ、笑顔でお客を迎える……ルーミアの連れてきた男を見るまでは……。
「もうやってるー?みすちー?」
「ハイハイ、いらっしゃいルーミア。珍しいわねあなたが誰かと来る……なん、て」
拭き途中の皿を落とさなかったのは、あまりの驚きに体が硬直してしまったからだろう。
調子のいい声のルーミアが連れてきたのは幻想郷に住む妖怪なら誰でも知っている恐怖の妖怪……白墨だった。
「えっ…」
暖簾をくぐった白墨がミスティアを見ると、彼女は途端に体を震えさせた。
「ひぇっ……あ、あのわ、私何も悪さなんかしてないです!最近は人間も襲ってないですし……あっいや昔はそりゃ食べたりしてたんですけどっ!えと、とにかく人里の人間に何かしたとかは全くもって……」
「……?品書きは?」
「はっはいぃ!本日のお品書きでしたらこちらに書いてあるのでお好きなものをお選び下さいっ!」
目をぐるぐると回して屋台の裏側へと引っ込むミスティア。
友人の尋常じゃない焦り様にルーミアはいたずらが成功したように笑いをこらえ、白墨は久々の串焼きに胸を躍らせていた。
(なんで!?なんであの妖怪がこんなボロ屋台に!?っというかルーミアはなんて奴を連れてきたのよ!?あの子自分が普段から何食べてるか知ってるの!?一番白墨に殺されそうなことしてるじゃない!?……な、なにが原因で消されるかわかったもんじゃない……!とにかくご機嫌をとって早々に帰ってもらわないと……!)
「……八目鰻の蒲焼き3つ。」
「あっ!みすちー私も同じので~」
「は、はい!ただいまっ!あっえと、こちら出来上がるまで少々お時間かかりますので先にこちらを……」
そう言ってミスティアは盆に乗せたおちょこを差し出そうとして――
「…………いい。酒は好かん。」
「で、ですよね!こんな安酒飲みませんよね!アッアハハハ……」
投げるように日本酒を棚に仕舞いなおした。
(一番高いやつなのに!一番高いやつなのにぃ!)
涙目になりながら大急ぎで蒲焼きを作る。
ミスティアの人生の中でここまで集中して蒲焼きを作るのは初めてだった。
(ミ、ミスしたら殺される……ミスしたら……うぅ…手が震える…)
カタカタ……と、ミスティアが震える手で八目鰻を焼いていると、再び暖簾がめくられた。
「おっなんだ今日はもう先客いるんだ。私の席空いて……ヒッ!あ、空いてない……うん。空いてなかったし帰ろう」
屋台の明かりに吸い寄せられるようにして入ってきたリグルは、ルーミアの隣に座る白墨を見ると、顔を真っ青にして体を180度回転させた。
「リグル!?ちょっと!逃げないでよ!席ならまだ空いてるでしょ!」
「ええ!?いやだって……」
「ほら!ルーミアも良いわよね?」
「いいじゃん、いいじゃんリグルもこっち来て久しぶりに飲もうよ」
それに対してにやにやと顔を緩ませたルーミアは二つ返事でリグルも巻き込んだ。悪意しかなかった。
「えっいや……その、はい……」
リグルは怯えるように二つとなりの白墨を見てはガクガクと震えた。
幻想郷の野良妖怪にとって恐ろしい存在は主に二つ存在する。
一つが博麗の巫女、もう一つが今目の前にいる白墨である。
博麗の巫女は異変が起きた時や結界に起きた異変の調査だったりと、主に幻想郷全体に影響があることが起きた時に活動し、目につく妖怪を蹴散らしていく。
もちろん他にも人里の人間が妖怪にならないように見張ったり、妖怪同士の争いが人間に飛び火しないように動くこともあるが、逆に言えばそれだけだ。
妖怪が巫女に懲らしめられるとすれば異変、もしくはそれに相当する何かを“行ったとき”のみだ。
それに対し白墨はというと、明確な判断基準がわからない。
人里で暴れた妖怪が殺されるのは勿論のこと、人里に近付いただけで殺された妖怪もいる。
妖怪たちの間では過去に一度でも人間を害した妖怪は問答無用で殺されるのではないかとささやかれたこともあったほどだ。
その上、一度白墨に敵と判断された妖怪はどんな弁明も無視され無残に殺される。逃げようものなら昼夜問わず追い回され続けては精魂尽き果てたのちに殺される。
そのくせ人里内で行われる人間同士の荒事にはこれと言って興味を示さず何もしない。
つまりはそもそもの標的が“妖怪”に限られるのだ。
殺しの判断基準はわからず、一度敵とみなされれば地の果てまで追い回される妖怪専門の処刑人。
巫女と違って判断基準がわからないというのがさらに妖怪達を恐れさせていた。
力を持たない野良妖怪にとってこれほど恐ろしい存在はいないだろう。
なお実情はというと、人里と妖怪の成り立ちに関係する。
妖怪が自らの存在意義をかけて起こす異変と違って、人里内では妖怪に関する事件が起きた時点でアウトなのだ。
どれほど被害を抑えたところで、ただ一人でも犠牲者が出たら人里の安全性は名前だけのものになってしまう。
それゆえに異変が起きてから活動する巫女と違い、白墨は人里内での妖怪に関わる事件を未然に、そしてただ一人の犠牲者も出さずに鎮圧しなければならない。
そのため、妖怪の粛清には“白墨の自己判断“で行われる。
これを白墨は己の灰による情報力を用いて、計画的な犯行を行おうとしている者などを監視し、その傾向が見えたものから順番に消している……というのが真実である。
野良妖怪たちが気まぐれや、曖昧な基準で殺されると考えるのとは誤りで、”明確な基準はある”。
問題なのはその基準を白墨が己の中で完結させ、殺した理由も明確な基準も流布せずただ黙って徹底的な殺しを行っていることである。
”明確な基準はある” ただそれを知るのは白墨しかいない。
ゆえに野良妖怪が白墨を恐れないということはなかった。
そして蟲づてに白墨の標的になった妖怪の末路を知っていたリグルは白墨への恐怖が人一倍高かった。
「ちょっと手伝ってよリグル、それでこの前のツケはなかった事にするからさ!」
「えっ私お金を払わなかったことなんて…ちょっ!?」
そんな恐怖でガチガチになっているリグルの手をミスティアは半ば強引に引っ張った。
あまりの暴挙にリグルは声を潜めて抗議した。
(ちょっと、どういうことよ!?なんであんな恐ろしいのが居るのよ!?なんでルーミアはあんな平然とした顔でお酒飲んでるの!?あと私いつもお金払ってるよ!)
(しかたないでしょ!私だって被害者なのよ!!でもどうにかするしかないでしょ!とにかく!今出来たのを持っていくから、その間になんか対抗策考えておいて!)
それだけ言い残すとミスティアはテキパキと出来立ての蒲焼きを皿に盛り付けていった。
(ああもう!あの妖怪がいるから人里を避けてたのに!これじゃあ本末転倒だよ!!)
リグルは今すぐ目を瞑ってしまいたくなるのを堪えて立ち上がった。
「お、お待たせしました!ど、どうぞ!」
「う~ん良い匂い!みすちーのところで食べるものと言ったらやっぱりこれだよね」
「いただきます」
ルーミアは出された蒲焼きを見て目をキラキラと光らせ、白墨はいつもと変わらぬ仏頂面で静かに手を合わせた。
二人が特に問題なく食べているのを確認してミスティアは屋台の裏へと引っ込んだ。
「うまい」
「でしょ~普段は人里の店しかいってないけど、たまにはいいでしょ?」
「……ああ。」
ほんの少し顔を緩ませた白墨を見て、少しずれたが、当初の目的を果たせたルーミアは満足そうに頷いては笑った。せっかくの美味しいものなのだから笑顔で食べた方がいい、と。
(とりあえずは大丈夫みたい……た、たぶんだけど)
(でも何がきっかけで怒らせちゃうかわからないから慎重にしないと……)
「あ、あの~ほかに注文などは……」
おどおどしながら聞きに来たミスティアに対して、白墨は満足したように腹に手を置いた。
「ない。もとより小腹を満たしに来ただけだ。」
それだけ言って立ち上がると、白墨は巾着袋を取り出した。
「い、いいいいです!お代は大丈夫ですので!!」
「おっ太っ腹、じゃあお言葉に甘えて!」
焦ったように顔を横に振るミスティアに対して酔ったルーミアが調子よく言った。
白墨は少しムスッとした顔でルーミアを睨むと、諦めたようにため息を吐き、そしてやや多めの銭をカウンターに置いた。
「……………美味しいものには、それなりの対価が払われるべきだ。」
「おお、私の分まで払ってくれるなんて。いや~来た甲斐があった。みすちーもありがとうねぇーごちそうさま~!」
「え、ええ……」
ミスティアはルーミアのあまりの傍若無人っぷりにドン引きしながらなんとか返事を返した。
ほんとに、なんであの子平気なのかしらと考えながら………。
そしてそのまま何事もなく二人は屋台を出て行ったのだった。
「い、行った……?」
「え、ええ……」
「なんだったの……?」
「さ、さあ……?」
◆
友人をからかい、タダ飯にまでありつけたルーミアはそれはもう満足そうに夜道をスキップで進む。
横では白墨が少し不満気に巾着袋の小銭をじゃらじゃらと鳴らした。
「情報料だよ、ほら美味しいとこ教えてあげたでしょ?」
にへ~と気の抜ける顔で言うと、白墨がそれ以上なにかを言うことはなかった。
情報には値段が付く、それを知っているからこそ何も言わなかったのだ。
だが、これではどっちのストレス発散だったのか……白墨は微妙な気持ちになりながらも、それでも気晴らしにはなったなぁ……と小さく笑った。
ルーミア:居酒屋とかで異様にからあげを勧めてくるタイプの人。ここのからあげマジで美味しいんだよ!食べてみて食べてみて!
今回の話で灰くんがムスッとしたりしてるけど、ルーミアくらいしか表情の変化に気付けないです。
ここまで読んで下さりありがとうございました!たぶん次くらいから話進みます。