灰の旅路   作:ぎんしゃけ

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第九話 亀裂の入る音

フ、フヒッ

やっちまったっぜ…後悔はしてない

嘘ですめちゃくちゃ後悔してます…いやだってせっかくあの八雲紫から逃げ切れたのに戦利品のひとつもなしなんて寂しいじゃんか!そーだよそーだよ!これは正当な権利であって悪い事ではないね!

 

いやにしても本気で焦った、今回ばかりは死ぬと思ったうん

たった1回で俺の灰逃げ(今名付けた)の弱点を看破してそれ用のキチガイ地味た結界を不意打ちで張ってくるなんて用意周到すぎじゃない??八雲紫…あいつは些か慎重すぎる1度使った技は全て対策されていると思わないとダメだ

 

めちゃくちゃ強くてめちゃくちゃ慎重で1度使った技の対策なんて見ただけでも出来るほどの天才…誰だよこんな化け物作ったやつ……

 

まあそんなムリゲーチーターバグ野郎の結界を楽々壊して逃げ出せたのにはもちろん理由がある

 

俺はあの時八雲の作った結界を”ぺたぺた”と触ったそう触れるのだ

俺は触れた物を分解し、作り直す事が出来る

今風に言うのならば「触れたものを作り直す程度の能力」触った物を壊して別の形することが出来る別の物質に変えたり質量以上のものを作り出したりは出来ないもちろん触れないものも変えられない

 

八雲の結界は触れることが出来た

だから運良く俺の能力が効いて結界を壊す事が出来た

 

しかし俺は考えた

恐らくそのまま適当にぺたぺた触って能力を使えば灰逃げと同じように対策されると、だからわざわざ煙で視界を封じてまるで殴って結界を割った様に見せかけた。今頃あいつは俺の体にある筈もない超人的パワーを疑って頭がハテナでいっぱいだろうなぁ

 

天才と、呼んでくれてもいいんだぜ

 

フゥハハハハハハハハ!自分の逃げスキルの才能が高すぎて怖いぜ!

フゥハハハ…あっ!ただいま!聖ごはん作って!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「村紗それは本当でしょうか?」

 

やや重い空気の中ことは始まった

 

「うんまだ噂だけど本当にあるよ」

 

「いえ、元より隠し通せると思っていません、いずれ公に明かさねばならない事です仕方ありません」

 

いずれ聞かされるであろう報告に聖も覚悟を決めた

 

「妖怪寺…ですか正しくその通りです、私達妖怪が関係しているとなるとそれはもう大問題になりますよ姐さん」

 

「でもまだ噂程度だからしばらくは平気だと思う…たぶん」

 

「ええ、今はまだ平気でしょう。でもいつかそれもバレます、けれどしっかりと話し合えばきっと分かり合える筈です悪くない妖怪もいるのだと…。しかしそれは今ではありません私が発表するまで隠しておいて下さい」

 

それに対してふたりははっきりと頷いた

始まりは無骨滑稽だと思っていたとしても今ではそれは立派な夢になっていた

けれどもそれと同時に心の隅に一抹の不安を抱えているのもまた事実であった

 

 

「あっねぇねぇ聖、これって白墨には伝えるの?」

 

場の空気を入れ替えるようにいつものようすで投げかけた

 

「どうしましょうか?でも一応協力してもらっていますし言っておいた方がいいと思うのですがどう思いますか?」

 

「いやいや私は無理だと思うよ。だってほらご飯を食べてるもんあいつ、たぶん言っても聞いてないよ」

 

見ると普段は仏頂面の顔が遠目に見てもわかる程上機嫌だった

 

「あいつって何でご飯食べてる時だけあんなにわかりやすいんだろうなぁ」

 

「さあ?」

 

「きっと日頃から自然に感謝し食べているのでしょう」

 

「私は姐さんがいずれ悪い男に騙されないか心配だよ」

 

「?」

 

キョトンと首を傾げた聖を見て村紗と一輪は小さくため息を吐いのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もぉ〜なんっなのよあれ!」

 

癇癪を起こしながら紫は他人の家でヤケ食いをしていた

 

「また例の妖怪ですか?」

 

紫の式神である八雲藍は前々から言っている話に呆れ半分興味半分といった様子で主を見た。なおそれについて自分を頼ってくれていない事に少し不満を感じているが頼りない自分を不甲斐ないと考えているあたりやっぱり面倒くさい性格なのだ

 

「大体少しくらい話を聞いてくれたって良いじゃない!別に条件だって悪くないのにどうしてああも頑なに逃げるのよ!」

 

先ほどの場面を思い返しやはり理不尽だと考える

自分の最高傑作と言っていいほどの結界をあんな妖怪に破られたとプライドを傷付けられただけでなくあまつさえ煽りも忘れずやってくる事に少なからずいやかなり苛立ちを感じていた

 

「まあまあ大事にならなくって良かったじゃない、人間死んでしまえばそれで終わりなのよ?」

 

「私は幽々子みたいに弱くないわよ。それに油断しててもあんな三流妖怪には負けないわよ」

 

「良いのよ私には妖忌が居るもの」

 

相変わらずぽわぽわとした感覚で話す病弱な少女

いつの間にか打ち解けてしまった人間の少女、親や親戚は居なく大きな屋敷に住んでいるにも関わらず使用人なども庭師の妖忌ただ一人滅多に人の来ない場所故に気が付けば紫も疲れた時の気分転換にここへ来るようになっていた

 

西行妖

 

人の血を死を吸い肥大化した妖気を蓄えた桜

皆気味悪がって近付かず、しかし人を死へと誘う妖怪桜

何故幽々子はそんな木の近くに未だ留まり続けるのか

紫は聞く気もなければ興味もなかった

 

憐れに思うし同情もする

だが紫が思うのはそれだけだった

 

「……………………っ」

 

「何か言った?」

 

「いいえ、ただこれからどうしようかしら…って」

 

「そんなこと考えているの?紫って案外変な事も考えるのね、明日の事なんて考えなくてもどうにかなるわよ」

 

「相変わらずお気楽でいい事だわ…」

 

あまりに脳天気な考えに思わず呆れてため息吐く

 

「もちろん!だからいつか紫の夢も叶うわよ、ええきっと誰かの居場所になるような優しい場所ね」

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くっら〜い!

真っっ暗

さっきまで太陽サンサンのいい天気だったのに突然周りが真っ暗になった

あれだタコの墨みたいな黒さ光とか黒光りとかもなーんもないただただ暗いだけ

 

気分転換にやっていた釣りを一時中断してどうしたものかと考える

考えた、考えても無理ってのがわかったし釣りするか、どーせ時間が経てば元に戻るだろう

 

……

………

 

釣れない…1匹も釣れない…あれぇ?さっきまでポンポコ釣れていはずなのに

おっかしいなぁ…こうなると暇になってくる

いつもなら周りの自然を見て楽しんだりして待つけど生憎と周りは真っ黒で何も見えなかった

 

その時視界の端に何かが映った

黒い、けど黒だけじゃなくて黒いモヤ?みたいな感じ、なるほどこの世には黒い雲があるのか

 

10秒程考えてとりあえずパクッと雲を食べた

 

味はない…ちょっとひんやりしてるだけでもお腹に入ったような感覚もない…うん存在価値ゼロE判定わたあめになってから出直してこい

 

「…ニンゲン何をしているの?」

 

不意に声が聞こえて周りを見渡すもそれらしき姿は見えない

 

「釣り」

 

とりあえずよく分からないからやっていることは言っておく

相手は確定で妖怪だし機嫌悪いと何されるかわかったもんじゃないからね

 

「釣りって…いやそうじゃなくて…なんでニンゲンこんな所にいるのに平気そうなのよ…」

 

あーなんか勘違いしてるぞあー、勘違いは正さなきゃ聖みたくめんどくさくなるえーとこういう時って何を言うんだ

あーえーっとんー、

 

「妖怪」

 

「つくならもっとマシな嘘をつけニンゲン、まーいいかニオイは覚えた。ワタシは今お腹いっぱいで眠い、お前は幸運なのだ」

 

 

そう言いソイツは多分どっか行って気が付けば太陽サンサンになっていた

終始よく分からないこと言っていたがきっと知能の低い低級妖怪なのだろう、賢い俺には分かる。何がわかるって魚は焼くと美味いってのと塩があると尚更美味いって話

 

何故か村紗が隠し持っていた塩を取り出し(勝手に持ってきた)魚に振りかけ食べる

うんやっぱり塩とこの香ばしさがたまんないね!

 

村紗の奴め、常に目となる灰を里中にバラまいてる俺に隠し通せると思っていたのか?幸せは共有しないとな!

 

 

 

適当にだした灰が風に乗ってびゅんびゅんと飛んでいく

なんでも灰の噂によると隣町から人が消えたらしい。争いの跡とかもなーんもないまま人だけが一夜にして消えたとか何とか…ほへー怖い話もあったもんだな

最近だと里の人間と命蓮寺の関係が変な感じで聖がへとへとになってるしなんか美味しいものでも買って帰ってやるか

村紗の金で

 

 

 

 

 

 




今回について実は投稿遅れた最大の要因である幽々子との会話シーン
手を抜いたような感じになってしまいすいません、何度か書き直してもここだけは違和感が消えず、微妙な感じになってしまいましたヌォォ…書くのムズい…次はもっと自然な感じで書けるようがんばるよぉ
ちなみに最後に書いている村紗の金は塩と一緒に借りパクした村紗のへそくりです哀れ村紗ドンマイ!

ここまで読んで下さり本当にありがとうございます
感想評価がモチベにつながるというかもはや幸せの一部に組み込まれているレベルですどんどこ待ってるよ!それではまた次回またのぉ〜




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