八幡side
はぁ…どうしてこうなった。予約していたビルの屋上へ来たのは良いが、二乃はそのことを他の姉妹に伝えてないでないか。だから今屋上にいるのはオレ、風太郎、そして重要な情報を伝えてなかった二乃だけである。
八幡「確か日本で最初に花火をみたのは徳川家康だったけ?」
風太郎「ああ、そういう説があるな。起源中国だがヨーロッパを経て種子島に鉄砲と共に伝わり――」
オレと風太郎はそんな会話をしながら気を紛らわしていた。すると
二乃「全然つまんない!なんでハー君とじゃなくて、アンタも一緒に花火見なくちゃいけないのよ!」
八幡「ちゃんと伝えなかったお前が悪いんだろうが」
二乃「スマホも全然繋がんないし、宿題もハー君が手伝ってもらったおかげで早く終わっのに、なんでこうなるのよ」
すると、二乃のスマホに着信がくる。その相手は
二乃「四葉!妹ちゃんと一緒?もう花火始まってるけどどこにいるの?」
四葉だった。妹ちゃんというのはらいはだろう。
二乃「え?時計台?迎えに行くからそこにいなさい!」
そして通話が終わったのか、スマホを耳から離して
二乃「ハー君とアンタも電話してよ」
風太郎「仕方ねぇな」
そう言って風太郎は携帯を取り出し連絡先を見るやいなや
風太郎「だめだこの携帯使えねぇ!!」
二乃「使えないのはアンタよ!……ったく、ハー君は?」
八幡「いや、その前に姉妹の連絡先は二乃しかいねぇから、電話できねぇよ」
二乃「あ、そうだったの…なら仕方ないわね……」
風太郎「おい、俺との対応の差はなんだ!…ん?あそこにいるの一花じゃないか?」
二乃「え!?あ、ほんとだ!」
風太郎の目線の先には確かに一花がいた。よくこんな人混みの中から見つけられたな。そして二乃は一花に電話をかけるが…
二乃「もう!また電波が…」
少しだがイラつきとあるし、焦っているようにも見える。やっぱりそんなに姉妹と花火を見たいのか。三玖も言ってたな。花火はコイツらにしたら母親との思い出って。
はぁ…
オレは心の中でため息をつきながら風太郎の方を見る。すると、風太郎と目が合うと風太郎は頷いた。それを見たオレも頷き返す。
風太郎・八幡「「ここで待ってろ」」
二乃「え?」
風太郎「俺らがみんなを連れてくる」
八幡「ここにいても仕方ないしな」
二乃「…………わかった。みんなの事は任せたわ」
八幡「……了解」
オレはそう答え、風太郎は去り際に手を軽く上げる。そしてオレと風太郎はまず、さっき見つけた一花を探すことにした。
八幡「確かこの辺だったよな」
風太郎「ああ…あ、いた!」
八幡「!…行くぞ」
風太郎「おう」
オレと風太郎は一花のもとに駆け寄る。
風太郎「一花!」
一花「っ!」
風太郎「はぁ…はぁ…良かった。二乃が待ってる、とりあえず店に…」
風太郎がそう言いながら一花の腕を取ろうとした時だった。1人の髭のおっさんにそれを遮られたのだ。
おっさん「君達誰?」
おめぇこそ誰だよ!
おっさん「一花ちゃんとはどういう関係?」
風太郎「え?」
八幡「初対面であるあんたに言う必要あるか?」
おっさん「すまなきね。大事なことなんだ。答えてくれるかな?」
八幡「答えたら一花は返してくれるのか?」
おっさん「それはできない」
八幡「それじゃ答えても一緒じゃねぇか」
おっさん「そうかもしれない。けれど、やっぱり答えてくれないと困るんだよ」
何が困るんだよだ!ふざけんなよ。…けど、今思えばオレ達と一花達はどういう関係なんだろうか。一花とはクラスは一緒ではない。家庭教師でいくのであれば、教師と生徒だが言っても初対面であるこの人に信じてもらえなさそうだしな。友達?んなわけないか。そこまで深い関わりはないからな。だとしたら知人かな。そう思っていると
風太郎「知人です!」
風太郎が大声で言ったのだ。だったらオレも言うわなきゃなと思い顔を上げると、さっきまでいた筈の一花と髭の男性の姿は無かった。あぅれぇ〜?なんでいねぇんだよ。というかそっちから聞いてきたくせにいなくなるとかどんなだよ!
ったく…また探さないとダメなのかよ……。そう思っていたら後ろから声がかかった
三玖「フータロー、ハチマン」
風太郎・八幡「「!」」
風太郎「…三玖?」
オレらに声をかけたのは、姉妹の1人三玖だった。
風太郎「良かった。よく俺らを見つけられたな」
三玖「うん……目立ってたから」
え?目立ってた…だと?まさかあの時風太郎が大声で言ったから目立ったのか?なるほど納得。
風太郎「そうだ!一花を追いかける付いてきてくれ!」
そう言って歩き出しと同時に三玖が言う。
三玖「あ、待って!」
呼び止められる。一体何事だろうと思い見てみると、三玖は少しかがみ込み、自分の足に手を添えて
三玖「痛っ…足…踏まれちゃって…フータローとハチマンは先行ってて」
おう…マジか…まさかこの人混みにのまれた時に踏まれたのか。この場合わざとではないからな相手を攻めることすら出来ないが、もし気づいたのであれば謝って欲しいものだがな。すると風太郎は三玖の前に自分の背中を見せながらしゃがみこみながら
風太郎「背中に乗ってくれ」
と言う。なるほど、考えたな。それならば一緒に一花を探せる。
三玖「え?」
三玖は驚いているが風太郎はそれを無視して三玖をかつぐ。
三玖「えっ…」
風太郎「三玖、そこから一花は見えるか?」
三玖「一花…?見えないけど…まさかこのまま追いかけるつもりじゃ」
三玖がそう言っている途中で風太郎は三玖を下ろした。ん?何故下ろしたんだ?
風太郎「重いし、追いかけるのは無理だ」
おい、いくらなんでもストレートすぎるだろ!小町が言ってたぞ!女子に重いとか言ったらダメだってな。それなのにお前は言うのかよ!けど、ここに三玖を置いて行くと後で二乃に何言われるかわかったもんじゃない。
八幡「はぁ…風太郎。お前は三玖を脇道とかに連れて行って、その傷の手当てやれ」
風太郎「え?俺が?」
八幡「ああ、そうだ。オレはその間に一花や他の姉妹を探すから」
風太郎「……わかった。行くぞ三玖」
三玖「え…う、うん」
そう言って三玖は風太郎の後を付いて行った。さてと、風太郎と三玖には探すと言ったがどうやって探そうか。手当り次第に探しても見つけるのは難しいしな。でも、手当り次第に探すしかないよな。大変だけど、まぁ、やれるだけやりますかね。オレはそんな事を思いながら一花や他の姉妹、と言っても二乃は屋上だし、三玖は風太郎がついてるし、四葉はらいはと一緒に時計台にいるだろうから、残るは一花と五月の2人だけだな。けど、この広い所で2人を見つけ出すのは一苦労だろうな。でも、探さないとアイツら揃って花火を見ること無く終わってしまう。アイツらはこの為に宿題を頑張って終わらしたんだからな。そう思いながら探していると、不意に声をかけられた。
「あれ?ヒッキー?」
こんな風にオレを呼ぶ奴は1人しかいない。声のした方を見ると、同じクラスで同じ部活にいる由比ヶ浜だった。それにその隣には雪ノ下もいた。2人とも浴衣姿だった。
八幡「…よう」
まさかこの2人に会うとは思ってなかったな。
雪乃「あら、比企谷君まさかあなたがこんなところにいるとはね。よく不審者と間違われなかったわね」
八幡「お前ホント相変わらずだな。でも悪いが今はそんな事に付き合ってる暇な無いんだ」
雪乃「あら、何するつもり?誘拐?」
八幡「んなわけあるか。人探しだよ」
結衣「人探し?誰を探してるの?」
八幡「ああ、この前転入してきた中野を探しているんだ」
雪乃「中野さん?中野さんってあの五つ子って言う噂がある、あの中野さん?」
八幡「ああ。その姉妹の中での一花と五月を探しているんだが、お前ら見てないか?」
結衣「ううん見てないよ」
雪乃「私も見てないわ」
八幡「そうか」
雪乃「どうしてあなたがその中野さん達を探しているの?はっ!まさかストーカー?」
結衣「えっ!?そうなの!?」
八幡「違うから。由比ヶ浜も真に受けるなよ」
雪乃「じゃああなたは何故中野さん達を探しているのかしら?」
そう言われたら困るな。どうやって説明をしたらいいものか。下手に言えばまた雪ノ下に罵倒されそうだしな。けど本当の事を言ってもいいものなのか。オレと風太郎は三玖からその理由を聞いたけど、この事を何も知らない雪ノ下や由比ヶ浜に言ってもいいのか。仕方ない…スマンお前達。
八幡「実は中野達はこの人混みによってはぐれてしまってな。それで偶然通りかかったオレと風太郎にオレと同じクラスである中野二乃に頼まれたからだ」
結衣「そうなんだ…」
雪乃「でも、何故それをあなたが受けたの?同じクラスでもあなたと上杉君に受ける義理はないと思うけれど」
八幡「オレもそう思ったんだけどな。その時の二乃の顔が真剣な表情だったから…かな」
雪乃「…そう。わかったわ」
ふぅ…何とか納得して貰えた。そうなればさっさとここを離れるか。
八幡「サンキュ。それじゃオレは行くな。じゃ」
オレは軽く手を上げてその場から立ち去り、引き続き一花と五月を探すことにした。
そして八幡が立ち去った後。残された2人は…
結衣「ねぇ、ゆきのん」
雪乃「何かしら?」
結衣「さっきヒッキーさ、中野さん達の事名前で呼んでなかった?」
雪乃「え?…ええ、確かにそうね」
結衣「ヒッキーと中野さん達って仲良いのかな?」
雪乃「どうなのかしら。比企谷君はどの中野さんか分かるように言ったんじゃないかしら」
結衣「でもさ、ヒッキーならフルネームで言うんじゃ」
雪乃「それもそうね」
雪乃(え?じ、じゃあどうして比企谷君は中野さんの事、名前で言ったのかしら。ま、まさかそういう関係?でも、それなら名前呼びするなら1人の筈じゃ…じゃあなんで名前呼びをしたのかしら?ダメね。考えれば考える程、頭がモヤモヤするわね。もしかしたら中野さん達の誰かが好きなのかしら?もしそうならどうしたら…)
結衣(なんでヒッキーは中野さん達の事名前呼びをしたんだろう。まさか、誰かが彼女なのかな?もし、そうならどうしよう…)
そして八幡に戻り
雪ノ下と由比ヶ浜と別れて一花と五月を探すこと数分。誰も見つからない。一体どこに行ったんだよ。このままじゃ5人揃って花火を見れなくなってしまう。早く見つけねぇとな。すると、人混みにオロオロしているアホ毛があった。まさか…あれは…そう思いその相手に近づいていく。
風太郎・八幡「「五月!」」
風太郎もどうやら五月も見つけたみたいで、オレと同時に五月に声をかけた。
五月「!………なんだあなた達でしたか」
けれど何やら残念そうな顔で見てくる。
風太郎「残念さを少しは隠しなさい」
八幡「ホントな」
風太郎「ま、これで行方不明は一花だけか。脇道に三玖が休んでいる。ひとまず合流しよう」
五月「わかりました」
そう言われて三玖がいる脇道まで歩いていると
風太郎「…1つ聞いてもいいか?俺達ってどういう関係?」
五月「なんですかその気味の悪い質問」
おう…ハッキリと言われてしまったな。けどオレもそれは気になっていた事だ。
五月「そうですね…百歩譲って赤の他人でしょか」
風太郎「百歩譲っても!?」
八幡「それはまた中々辛辣なことで」
五月「私に聞かずとも、あなた達はその答えを既に持ってるじゃないですか」
八幡「は?」
風太郎「なんだよそれ」
五月「それよりも今は一花です。どこに行ったのでしょう」
五月の言った意味が分からないまま歩き続ける。すると不意に後ろから声をかけられる。
一花「よかった、五月ちゃんと合流できたみたいだね
風太郎・八幡「「っ!いち」」
オレらは言葉を遮られ、無理やり一花に手を引っ張られた。
八幡「お、おい!どこ行くんだよ!五人で花火見るんだろう!?」
風太郎「そうだぞ!」
一花「はは、いーからいーから」
風太郎・八幡「「…」」
オレらはそのまま引っ張られ、人気のない裏路地に連れていかれたと思うと、壁際に立たされ手で退路を塞がれた。てかこれって…いわゆる壁ドンというやつでは?一花さん、アンタオレと風太郎、2人相手に壁ドンするとか、まじですか。けれどそんなオレのくだらない考えを吹き飛ばすくらい、十分すぎる衝撃的なものだった。
一花「それでね、さっきの事は秘密にしておいて。……私はみんなと一緒に花火を見られない」
風太郎・八幡「「……は?」」
八幡「それはどういう事だよ?」
一花「実は急なお仕事頼まれちゃって…だから花火は見に行けない」
仕事?何のことを言ってるんだ?
一花「それにほら、同じ顔だし1人くらいいなくても気づかないよ」
風太郎「いや、それは無理があるだろ」
八幡「だな」
一花「じゃあ私もう行くね。人を待たせてるから」
風太郎「お、おい、ちゃんと説明をしろよ」
風太郎が一花を呼び止め説明を求めるが
一花「なんで?」
風太郎「え?」
一花「なんでお節介焼いてくれるの?」
風太郎「…っ」
一花「私たちの家庭教師だから?」
確かにこいつの言う通りだ。オレらがここまでする義理はない。なのになんでオレらここまでするんだ?
風太郎「確かに…!客観的に見て、なんで余計な面倒見てんだって、感じだよな」
八幡「確かに…」
一花「じゃあそういうことだから…あ、やば」
裏路地から出ようとしていた一花が突然立ち止まった。すると、こっちに近づいてきてくる。
一花「どうしよう。仕事仲間がこっちに」
風太郎・八幡「「は?」」
一花「黙って抜け出してきたから怒られちゃう!」
そう言って一花は大通りの方を覗き込んでいた。オレらも一花同様大通りの方を覗き込む。そしてそこに居たのはあの髭のおっさんがいた。
風太郎「あれ?あの、おっさん。さっきお前といた」
八幡「みたいだな」
そうこうしてると、おっさんがこちらに歩いてきた。
一花「大変!こっちに来る!」
風太郎「え?」
八幡「は?」
一花がどんどん詰め寄ってくる。オレと風太郎は1歩1歩後ろに下がるが一花が風太郎の手に取り、自分と抱き合う形をとる。そしてオレはそんな2人の影に隠れるように一花に指示されたので、2人の影に隠れる。一体どういう状況だよ。まぁ、けどこれならおっさんに一花だと気づかれないと思うが。
おっさん「よっこいしょ」
3人(((そこに座るんかーい)))
おっさんは裏路地の出口のすぐ側にある、花壇に座った。いや、どっか行けよ!
八幡「なぁ、いつまでこうしてればいいんだ?」
一花「ごめん、もう少し」
くっ、まだこの状態が続くのか?やめてくれよ。オレの横には一花がいるんだ。そのせいかすげぇいい匂いがしてしまう。落ち着け比企谷八幡!後少しの辛抱だ。
一花「私たち傍から見たら恋人に見えるのかな?」
風太郎「ん…まぁ…欧米じゃあるまいし、この状態は恋人に限られるだろうな」
八幡「もしそうなら、その2人の影に隠れてるオレはなんだよ」
一花「あはは、確かにそうだね。でも、本当は友達なのに悪いことしているみい」
風太郎・八幡「「オレらって友達なのか?」」
一花「えっ…えーっと…ハグだけで友達超えちゃうのはさすがに早いなかなー」
八幡「いや、そうじゃなくてだな」
風太郎「俺らはただの雇われ教師だ。それさえなければお前達と接することもなかっただろう。そんな関係を友達と言うには違和感が…」
八幡「ああ、そうだな」
一花「なにそれめんどくさっ」
風太郎・八幡「「えっ」」
一花「私は友達だと思ってたのにやっぱりフータロー君とハチマン君は違ったんだ。傷つくな〜」
風太郎「いや…俺は…」
いやいや、そう簡単に友達と言って良いのか?オレにはわかない。
おっさん「もしもし」
つ!
おっさん「大変申し訳ありません。少しトラブルがあって…撮影の際は大丈夫ですので」
風太郎「撮影?」
八幡「もしかて仕事での事か?」
一花「実はあの人カメラマンなの。私はそこで働かせて貰ってる」
風太郎「カメラアシスタント…」
一花「…うん。いい画が撮れるように試行錯誤する。今はそれが何より楽しいんだ」
風太郎「そんな事してて大丈夫なのかよ。お前達は勉強に集中しなきゃ進学すら怪しいんだぞ」
八幡「確かにな」
一花「フータロー君とハチマン君はなんのために勉強してるの?」
なんのため…か。なんでかな……なんのために勉強をしていたんだろうな。気づいた時には勉強ばっかりしてたな。まぁ、それぐらいしか取り柄がなかったからかな。昔は友達すらできなかったんだからな。
おっさん「一花ちゃん見つけた!」
そんな事を考えているとおっさんの声により我に返る。
風太郎「しまっ…」
見つかってしまったか?と思ったがおっさんが連れていったのは一花ではなく、一花とよく似た女の子だった。ん?あれは、まさか…
一花「三玖!?」
なんですと!?えっ?待てよ。三玖は確か風太郎が脇道にいるって言ってたはず言ってたはず。なのになんで?
一花「もしかして私と間違えて」
風太郎「とにかく追うぞ!」
八幡「だよな」
オレと風太郎と一花はおっさんと三玖を追いかける。
風太郎「電話は?」
一花「繋がらない」
追いかけている中、突然風太郎が一花に聞く。
風太郎「お前…なんで仕事抜け出してきたんだよ」
一花「言いたくない。どうやらフータロー君とハチマン君とは友達じゃないらしいし」
風太郎・八幡「「うっ」」
根に持ってんなこいつ。いや、確かにそういう風な事は言ったけどよ。まぁ、けどこいつらが何しようがオレらには関係ないがな。
『一花ちゃんとどういう関係?』
『私に聞かずともあなた達はその答えを既に持ってるじゃないですか』
2人の言葉がオレの頭の中でフラッシュバックする。そしてオレは一気に加速する。風太郎もオレと同時に加速して三玖とおっさんの元へ駆け寄る。
ガシッ
三玖「っ!」
風太郎が三玖とおっさんと引き剥がし、オレはその間に割って入る。
おっさん「君達はさっきの…なんだ君達は!?君達はこの子のなんなんだ!?」
風太郎「俺…いや」
八幡「オレたちは…」
風太郎・八幡「「オレ達はこいつらのパートナーだ。返してもらいたい」」
一花・三玖「「っ!」」
おっさん「何を訳の分からないことを!」
八幡「それによく見てくださいよ。こいつは一花じゃない」
一花「あ、あの…」
おっさん「そこの顔は見間違えようがない!さぁ早く…うちの大切な若手女優を放しなさい!」
八幡「は?わかて…」
風太郎「じょゆう…」
オレ達は一花のほうを振り返ると、一花はばつが悪そうに俯いた。え?何?
八幡「カメラで撮る仕事って…」
風太郎「そっち?」
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風太郎・八幡「「一花が女優って…」」
おっさん「一花ちゃんが五つ子って…」
3人「「「マジ?」」」
なんと初対面のおっさんとハモってしまった。まさかこんな事があるんだなんてな。
おっさん「そうだ。そんなことより行こう一花ちゃん」
おっさんが一花の手を引きここから立ち去ろうとした時
風太郎「あ、お、おい待てって!」
おっさん「人違いをしてしまったのは本当にすまなかったね。でも、一花ちゃんはこれから大事なオーディションがあるんだ」
八幡「おい、一花。花火は良いのか?お前はそれで良いのか?」
一花「みんなによろしくね」
……こいつ……
そのまま一花は、おっさんについて行ってしまった。一体どうすれば……
三玖「フータロー、ハチマン。一花をお願い」
風太郎「三玖」
八幡「けど怪我しているお前を1人にする訳には」
三玖「私はもう大丈夫だから」
八幡「いや、だが…」
すると…
「どうやらお困りのようですね」
風太郎・八幡「「お、お前は!」」
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風太郎「一花!」
オレと風太郎は何とか一花に追いつく事ができた。
一花「っ!フータロー君、ハチマン君」
八幡「あのおっさんは?」
一花「車取りに行ってるとこ」
風太郎「本当に戻るつもりはないんだな」
一花「フータロー君、ハチマン君、もう一度聞くね。なんで、ただの家庭教師の君達がそこまでお節介焼いてくれるの?」
風太郎「それは俺らとお前が協力関係にある」
八幡「…パートナーだからだ」
一花「…そっか」
一花はそう言って手に持っていたタブレットを操作してオレ達に渡してくる。
風太郎「これは…」
八幡「台本?」
一花「半年前、社長にスカウトされて、それからちょくちょく名前もない役をやらせてもってた。結構大きな映画のオーディションがあるって、教えてもらったのがついさっき。いよいよ本格的にデビューかもってとこ」
風太郎「それがお前のやりたいことか?」
一花「そう!せっかくだから練習相手になってよ。相手役がフータロー君ね」
風太郎「い、嫌だよなんで俺が」
八幡「台本持ってるのが風太郎だからな」
風太郎「なっ!」
一花「それに協力関係でしょ」
風太郎「ぐっ…棒読みしか出来ないからな」
一花「やったー」
風太郎「行くぞ」
一花「うん、お願い」
風太郎「そ、卒業おめでとう」
一花「先生今までありがとう。あの教室で先生と出会って初めて私は……先生、あなたが先生で良かった。あなたの生徒で良かった」
すると風太郎は何故か片手で自分の顔を隠していた。え?こいつもしかして…
一花「あれっ?もしかして私の演技力にジーンときちゃった?」
風太郎「あなたが先生で良かったなんて、お前の口から聞けるとは…」
八幡「いや、オレらそこまで先生してないから言われる筋合いはないと思うが」
風太郎「……確かに」
その時、こちらに車が近づいてくるのが見えた
一花「あ、社長の車だ。じゃあ行ってくるね!とりあえず役、勝ち取ってくるよ」
そう言って一花は車の方に向かう。
風太郎「おい」
と途中で風太郎が呼び止め、一花が振り返った瞬間一花の両頬をパンっと叩き、両頬を引っ張る。
一花「ほえ?」
どうやら風太郎もオレと考えが一緒らしい。
風太郎「その作り笑いをやめろ」
八幡「そうだな。強化外骨格みたいな仮面をつけた笑いをやめろ」
一花「ははは…え…?」
風太郎「お前はいつだってそうだ。路地裏にいた時もそのまま行こうとした時も、大事な所で笑って本心を隠す。ムカッと来るぜ」
やっぱりこいつ考えが一緒だ。なんでこういう時だけ考えが一緒になるのかね。不思議だ。
風太郎「お前をパートナーだと言ったな?俺の家には借金がある」
一花「…っ!」
お、おい、お前なんでそんな事を今言うぅんだ?
風太郎「その借金を返すために家庭教師をやってる。だが、お前達5人には手を焼きっぱなしだ。八幡の手伝いがあってもなんの成果もあげられないまま給料を貰っちまった。せめて貰った分の義理は果たしたい。それが俺の本心だ!以上!」
なるほど。そういう事かならオレも言わないとな。
八幡「オレの家には風太郎みたいに借金はないが、オレも貰った分の義理は果たしたいと思っている」
風太郎「お前はどうなんだ。余裕あるフリしてなんであの時震えていたんだよ」
風太郎も気づいてたか。いや、気づくに決まってるか。抱き合う形になっているんだしな。オレも完全ではないが、ちょっと震えているようにも見えたからな。
一花「この仕事を始めてやっと、長女として胸を張れるようになれると思ったの。1人前になるまではあの子達には言わないって決めてたから。急にオーディションが来たことが言えなくて、花火の約束があるのに最後まで言えずに黙って来ちゃった。これでオーディション落ちたら…みんなに合わす顔がないよ。もう花火大会終わっちゃうね。それにしてもまさか君達が私の細かな違いに気がつくなんて思わなかったよ。お姉さんびっくりだ」
風太郎「俺がそんなに敏感な男に見えるか?」
一花「自覚はあるんだ」
八幡「威張るなよ」
風太郎「お前の些細な違いなんて気づくはずもない。ただ、あいつらと違う笑顔だと思っただけだ」
一花「…っ」
風太郎「八幡は?」
八幡「オレはお前より強力な仮面をつけた人を知ってるからな。その人と比べたらお前の仮面なんて可愛いもんだ」
一花「そっか…まいったな…フータロー君とハチマン君の2人を騙せないなんて、自信なくなってきたよ」
風太郎「演技の才能ないんじゃね」
八幡・一花「「直球だな(ね)」」
風太郎「言っておくがその方が俺にとって好都合だ。寄り道せずに勉強に専念してくれるからな」
一花「寄り道なんかじゃない。これが私の目指してる道だよ」
そんなことを言っているとクラクションが鳴る。
おっさん「一花ちゃん、早く乗って!」
一花「はーい」
そう言って再度車の方に向かう一花。
風太郎「まぁ、あいつらに謝る時は付き合ってやるよ。パートナーだからな」
八幡「…オレも付き合ってやる。だから気にせず行ってこい」
一花「…うん」
そして一花を乗せた車は走り去って行った。
八幡「さてと…最後の仕事しますかね」
風太郎「ああ」
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そしてオレは今風太郎と一花のオーディション会場の前にいる。花火大会も終わった後、会場から一花とあの髭のおっさんが出てきた。オレはすぐに気がついたが風太郎は……
風太郎「スースー」
目を開けたまま寝ていたのだ。怖ぇよ!
一花「完全に目を開けたまま寝てる…怖…」
とりあえずこいつを起こすか。そう思いオレは風太郎の体を揺らす。
八幡「おい起きろ風太郎」
風太郎「はっ!え?ね、寝てないけど?」
八幡「いや、無理があるわ。まぁ、それよりオーディション。どうだったんだ?」
一花「うーんどうだろう」
おっさん「いや〜、まさか一花ちゃんにあんな表情を出せるなんて思わなかったよ。それを引き出したのは恐らく君達だ」
そんな訳の分からないことを言っているおっさんを無視して風太郎は一花の手に取りここから去る。オレもそのあとをついていく。
おっさん「私も個人的に興味が湧いてきたよ。Chu!ってあれ?一花ちゃん!?」
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一花「ねぇ、フータロー君、ハチマン君。どこに向かっているの?」
八幡「近くの公園だ。他の奴らも待っている」
一花「みんな怒っているよね。花火大会を見られなかったこと」
八幡「かもな。けど」
風太郎「花火を諦めるのはまだ早いんじゃないか?」
公園に着くとそこには
四葉「あ、一花に上杉さんに比企谷さん。おかえりなさ〜い」
風太郎「打ち上げ花火と比べると随分見劣りするがな」
一花「…!」
四葉「上杉さん、比企谷さん準備万端です。我慢できずにおっ始めちゃいました」
八幡「おい、危ないから花火振り回すな」
風太郎「けどお前が花火買ってたおかげだな」
八幡「それもそうだな」
風太郎「それにらいはの面倒まで」
四葉「いえ、どちらかと言うと私が面倒見られてたような」
すると今度は、二乃が近づいてきた。
二乃「ちょっと、上杉!ハー君!五月を置いてどっか行っちゃったらしいじゃない。私と合流した時この子半べそだったわよ」
五月「二乃!その事は内緒って!」
風太郎「わ、悪い」
八幡「スマン」
二乃「あんたに一言言わなきゃ気が済まないわ!」
そう言って二乃は風太郎に詰め寄り
二乃「お・つ・か・れ!」
風太郎「紛らわしい…」
二乃「ハー君もありがとうね。そこらじゅう探し回ってくれたんだよね」
八幡「ん、まぁ気にするな。オレが勝手にやった事だからさ」
二乃「それでもよ。ありがとうお疲れ様」
八幡「…おう」
ここまで素直に言われるのは何時ぶりだろうか。ちょっと戸惑ってしまう。
一花「五月…」
五月「一花も花火しましょう。三玖、そこの花火取ってください」
三玖「……うん」
そう言って三玖はオレ達にも花火をくれた。何やら風太郎に渡す時だけオレより渡す距離が離れてたような。
二乃「じゃ本格的に始めよっか」
一花「みんな!私の勝手でこんななっちゃって…ほんとごめん!」
五月「そんなに謝らなくても」
風太郎「まぁ、一花も反省してるんだし…」
二乃「全くよ。なんで連絡くれなかったのよ。今回の一端はあんたにあるわ。……あと、目的地を伝え忘れた私も悪い」
五月「私は自分の方向音痴に嫌気がさしました」
三玖「私も今回は失敗ばかり」
四葉「よくわかりませんが私も悪かったということで!屋台ばかり見てしまったので」
一花「みんな…」
そして二乃が一花に近づいてきて行き花火を渡す。
五月「お母さんが良く言ってましたね。誰かの失敗は5人で乗り越えること、誰かの幸せは5人で分かち合うこと。」
四葉「喜びも」
三玖「悲しみも」
二乃「怒りも」
一花「慈しみも」
五月「私たち全員で五等分ですから」
オレと風太郎はそんな五人が花火をしているのを、ベンチに座って眺めていた。まぁ…なんにせよ、これで解決か。
ん?待てよ。あいつらは花火をしている。らいは満足して寝てるから風太郎がおんぶして連れ帰るとして……オレもう帰っても良くね?
まっ、もう少し見ておくとするかね。
いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。