師匠は藍染惣右介~A bouquet for your smile~ 作:如月姫乃
読者の皆様おはようございます。初めましての方も、そうでない方も。作者のはちみつ梅です。
最終話まで読んで頂き誠にありがとうございました。
心より感謝申し上げます。たくさんの応援に支えられて、完結まで無事たどり着くことが出来ました。
簡単ではありますが、この作品を書こうと思ったきっかけとなる原作への考察や、主人公設定に関して解説をさせていたただければと思います。
いらねぇよって人には、その後にちょっとした小話を用意しています。
それと、銀城×姫乃のR18込みストーリーを見なければ魂葬されない方々へ向けて、一話完結型の短編小説を開示します。パスワード付きなので、本当に見たい人だけどうぞ。パスワードは、『1122』。投稿予定日は、6月5日(今日)中にアップします。
では、解説へ行ってらっしゃいませ。
Q、なぜ主人公の名前を姫乃にしたのか。
A、紅姫の持ち主である浦原喜助の宝物。そういった意味で姫乃という名前にしました。
同じ条件下で候補はいくつかあったのですが、ルビなくても読み方がハッキリ分かる名前を選びました。
Q、名無之権兵衛という斬魄刀にした由来。
A、紅姫が落とした能力。というのは作中で解説しましたが、BLEACHを読み返していく中で、なぜ浦原の卍解が『観音開紅姫改メ』なのか自分なりに解釈を入れました。
もちろん、造り変える。という能力から構想された名前であるというのはファンの中で一番有力説なのは知っています。
そこで私は、また別の解釈。
紅姫は自分を一度造り変えたのではないか。
崩玉誕生秘話にも繋がるのですが、私はそう考察をしてみることにしました。
それが名無之権兵衛という名前である理由。
皆さまは名無之権兵衛とは何かご存知でしょうか?
名無之権兵衛は諸説ありますが、終戦後外国人相手に娼婦として働いていた女性の事を意味します。
日本で風営法の規制が入り、女性が男性の宿舎に入ることを厳しく禁じられた娼婦たちは、自分に男性名を付けて働きました。
男性名を付ける前の娼婦の事を名無之権兵衛と呼んでいたのです。
一説には摘発から逃れるため十の男性名を持っていた女性もいたとのことです。
元は女性。
自分に自由な名前を付けて働く。
戦後の厳しい世で病気と隣り合わせの世界で命を削って働く。
ただ、自分の心だけは壊さないで守り抜く。
紅姫の子である名無之権兵衛の具現化が男の子であること。
斬魄刀に名前を付けて戦うスタイルはここからインスピレーションを受けています。
命を削った女性達からイメージを取って、霊圧の消費と魂魄の消費を思いつきました。
始解の技である『〆之菩胎』は、姫乃に卍解を使わせたくない権兵衛の最期の抵抗。
紅姫の母胎。観音菩薩像。などからイメージをとって、
そう名付けました。
Q、崩玉と紅姫。
A、浦原喜助はそもそもなぜ崩玉を作ろうなどという構想に至ったのか。
崩玉の基本性能は、死神と虚の境界線を越える能力です。
それは、藍染によって"周囲にいる者の精神に反応し、その願いを叶える玉"だと解説されています。
BLEACHの原作を見返していきましょう。
願いを叶える。……少し違う気がしました。
"望むように造り変えている"という表現の方が正しいのでは。ハンペンさん。貴方、めちゃくちゃ造り変えられてますけど。
とおもい、考察の余地を入れることが出来ました。
紅姫の卍解を見ると、崩玉へ入れた考察と紅姫の造り変える能力はやけに似ています。
「崩玉は貴方を主とは認めないと言ってるんスよ」
原作で一番引っかかった台詞でした。
第四十七巻までにおいて"主"という概念が存在するのは、"斬魄刀"だけです。
もしかしたらそれ以降もその設定は継続されているのかもしれませんが、
「当時は御することが出来なかった」
御すだの、扱うだの、従えるだの。
そういう言葉は、いつも斬魄刀に向けてのワードでした。
となれば、崩玉=紅姫。はわりと成り立つ気がしました。
藍染篇は、浦原と紅姫の物語だったのではないかな。と。
となれば、あとは二次創作として話を成り立たせるためにさらに考察するだけ。
転神体ちゃんのお出ましです。
そもそも、なぜ浦原喜助は崩玉の制御ができなかったのか。なぜ破壊出来なかったのか。
無理やり引き出した紅姫というチカラ。そんな簡単に従ってくれそうにありませんね。
元々、浦原喜助は斬魄刀を持たない死神なのではなかったのでしょうか。
だから、転神体という道具を作り出して引き出したのでは。
無理やり自分の心を具象化させたのでは。
元は紅姫の能力。崩玉を壊すのは、紅姫を壊すことと同義。
ここで、二次創作を始めました。
紅姫はその力を捨てた。
捨てるきっかけに至ったのが、浦原と柚の物語に繋がります。
それが、姫乃へと繋がる物語にしました。
だから、姫乃は浦原喜助の子供であるという設定が必要でした。
ぶっちゃけ、姫乃という主人公は最後に出来た主人公です。
Q、テッサイさんや鬼道衆の話も原作考察。
A、きっかけは、なぜテッサイが戦いの表舞台に出てこなかったのか。
そして原作でハッチと砕蜂隊長が出会った時、砕蜂隊長は心底嫌そうな顔をしていました。
110年前の話で、砕蜂隊長とハッチの絡みは出てきません。
なぜそこまで嫌うのか。
それは、隠密機動と鬼道衆。そこに何かがあるのではないかと考察しました。
そうして、勒玄が話した通り、一つの幹から枝分かれした存在の部隊であり、邪道を嫌う砕蜂隊長は、祖先が罪人の過去をもつハッチをさらに嫌悪していたのではないかと考察しました。
原作での禁術の内容の薄さをさらに掘り下げ、使用者であるテッサイが戦えないことを考えて、命にかかわる術なのではないかとたどり着いて作中で活用しました。
命に関わるという設定らしい設定が原作の中で出てきたのは、涅ネムの魂魄切削術。
まさしく命を削って出す技です。
恐らく、削っても霊体維持に必要な下限があるのでしょう。
その霊体維持限界を超えて損傷した魂魄は、チリになって消えるのでは。
だから、総隊長は肉片一つ遺体がみつからなかったのではないか。
あ、勒玄の名前は単純に鉢玄からなぞらえたものです。
ただ思った以上にしっくりした名前になりました(笑)
浦原喜助の店が駄菓子屋という設定にした原作への考察は作中でお話した通りになります。
……以上ですかね。
旧作では、設定上ありましたが特段必要としなかった白哉と同期である設定。
原作中で、幼い白哉が自宅で自主鍛錬をしている様子から、まだこの時点では護廷十三隊入隊前だったのだと考察しました。
ただ、リメイク版で明かして、姫乃と絡みをキチンと持たせたことでより最終話に向けて彼らの絡みの意味が深くなったかなと。
旧作ですっかり存在を忘れていた、一ノ瀬さんと銀城さんは、リメイク版で初登場となります。
姫乃が十三番隊に所属している以上、銀城さんと絡みがないのは時系列的に変すぎますから。
一ノ瀬さんは、オマケです。いい人です。
姫乃が最後、藍染の精神(?)に向かって『心を預けてみないか』と言った理由は、海燕さんの教えである『仲間に心を預けて逝く』という教えから。
藍染さんは死にましたが、心を誰にも預けないまま死んでしまいました。
姫乃は、その少年が藍染さんだと気がついていたのか気が付かなかったのかは……皆様の考察に任せます。
余談ではありますが、浦原夫妻の所にはもう一人子供が産まれます。男の子です。
裏設定上、権兵衛きゅんの生まれ変わりです。ちなみになんですが、将来的にこの姉弟は、姫乃→鬼道衆大鬼道長。弟(幸介)→十二番隊隊長兼技術開発局三代目局長になってます。
その子が生まれるきっかけの小話でも投げ込んで、後書きは終わりとさせていただきます。
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慣習は時代と共に少しずつ変わっていく。
それは、尸魂界も同じこと。
死神が住まう瀞霊廷と、魂魄が住まう流魂街。
その境界線は、時代と共に少しずつ解れていっている。
それを体現するかのように、死神の才を持たない魂魄が開いた食事処が瀞霊廷内に増えたり。
通行が緩やかとなり、賑わいが出来たり。
力無き者ではあるが、力とはまた違うそれぞれの得意を仕事としている。
まだまだ法の整備を整えなくてはならない事も多々あるが、時代の流れは決して悪い方へとは向かってはいない。
それはまた、技術開発局内も同じ事だった。
「三十五番の試験管はまだかネ!?」
そこに響く、いつも通りの怒声。
その声に慌てたように一人の隊士が駆け寄る。
「は、はい! これですこれです!」
「……リン。これは、五十三番だヨ。目が見えていないなら、その目を今すぐ実験材料として提供し給え」
「ひいいい!!」
「……全く、あの魂魄は何処に行ったのかネ!?」
自分の思うように動かない隊士に苛立ちを見せつつ、涅は目的の人物を呼ぶ。
その呼び掛けに答えたのは、阿近。
「柚乃さんは今日は休みです。つーかこの時間帯はいつも来ませんよ」
「私は休みを与えた覚えはないヨ!」
「浦原顧問の直接指示です。ついでにうちの女房を使い過ぎるなって、クレーム来てます」
「知ったことじゃあないネ」
「……俺らに言われても」
そう嘆く阿近らにとっても、彼女が不在であることの影響は大きい。
研究に直接手を出すことはなくとも、雑務の全てを終わらせてくれている柚乃の物覚えの良さ。
気がつけば、非戦闘要員でありつつも作業を円滑に回すことへの一役を買う存在になっていた。
「あ、そっか。今日は……」
カレンダーに目を向けたリンが、何故今日に限って柚乃が不在なのか答えを導き出した。
それに合わせて、いつも居るはずの浦原もいない。
「ほら、今日はお二人の結婚記念日ですよ!」
「知ったこっちゃあないネ」
涅がはぁっとため息をついた時、廊下からここまで聞こえて来る甲高い声が響いてきた。
それは、着実にこの部屋へと向かっている。
「くろつちしゃああああん!!!」
悲鳴に近い声を上げながら入ってきたのは、姫乃。
「出ていき給え」
「助けて、助けてええ!!」
「煩いヨ」
「お父さんが!」
「知らんヨ」
「お母さんを!!」
「興味がないネ」
「殺しちゃう!!!」
最後の言葉で、場の空気が固まった。
真顔のまま固まった人が多い中で、涅は爛々と輝く目を姫乃に見せる。
「ほう! 遂に奴の気が狂ったか!!」
「助けて!!!」
「して、どのようにだネ。解剖か? 新薬の実験か? それとも、魂魄関連の研究か!!」
涅の余りの圧に、周囲はドン引きの表情を見せるが、姫乃はそれどころではないらしい。
「お父さんが!」
「ほう!」
「お母さんの上にのってる!!」
「霊体への研究か! なんとも品のない殺し方じゃないかネ!!」
「お母さん、ずっと苦しそうで! そんなところばかりやだっていってるのに!!」
「被検体に拒絶の権利などあるわけないだろう!」
「お父さんがお母さんのおっぱい食べちゃってるううう!!!」
その言葉を聞いた涅が、眉間にシワを寄せた。
そしてそのまま、一気に熱量が下がっていくかのようにため息を着く。
ふと見た時計。今日を迎えたばかりの時間帯。つまりは真夜中。
そもそも時間感覚が狂っている研究員にとって、朝だの昼だの夜だのという概念は遠く遠くへ消し飛んでしまっている。
「ずっとお母さん泣いてるのに! やめてくれないの!! 笑ってるの! お母さんが死んじゃう!」
「……ネム」
「はい、マユリ様」
「このガキを寝かしつけてこい。眠八號の所にだヨ」
「はい、マユリ様」
泣きわめく姫乃を、ネムが抱える。
「涅しゃん、涅しゃん!!」
「煩いヨ!!! 貴様の母親は死なない!! その程度で壊れるほど、人体は脆くは出来ていない!! 涙は生理現象だヨ!!」
「なんでええええ!!!」
「阿近。明日からあの魂魄の飲み物に薬を入れておくんだヨ!! これ以上、子ネズミを増やしてたまるものか!!!」
指示を出された阿近は、生返事を返しつつも隣にいた鵯州にコソコソと話しかける。
「……へー。……おい、鵯州。明日から柚乃さんの飲み物、外で買ってきたやつに差し替えとけ」
「おう」
「……あと姫乃に、今晩の記憶消す飴舐めさせとけ」
「はいよ」
ネムに連れられて部屋を出て行かされる姫乃は、その腕の中で泣き喚く。
「どうしよう、どうしよう、どうしよううう!!」
「問題ありません。マユリ様が問題ないと仰ってるのですから」
「私が助けなきゃ……」
それは余計に面倒になるだけでは。ふとそう思ったネムは別の提案をする。
「……では、こうしてみては?」
「……ん?」
「まだ見ぬ名無しの権兵衛に、名前でも考えてみては如何でしょうか」
「……?」
ネムに言われたことの意味が分からず、思考をグルグルと回して考える姫乃。
それでも分からない答えを考えているうちに、だんだんと寝ぼけ眼へと変わっていく。
難しい事を考えすぎて眠くなるのは、珍しい事でもない。
意識が飛かける姫乃の口に、追撃と言わんばかしに鵯州が飴玉を放り混んだ。
「……そろそろ、浦原顧問に自分の家建てろって言うべきだと思うぜ、俺は」
「はい、同感します」