師匠は藍染惣右介~A bouquet for your smile~ 作:如月姫乃
息を荒らげながら駆け込んだ技術開発局。
突然突風のように現れた私の姿を見て、幸介が目を丸くした。
「ね、姉さん!?」
「……幸介。二番手術室空けて。誰も入ってこないで」
「別にいいけど……何するの。ボク午後から使うんだけど」
「胸を……大きく造り変える」
「……はあ?」
何言ってんだと言いたげな顔をする弟をさし押して、私はその場から離れる。
技術開発局に所属していないだけで、こういった事の技術力を持っていないわけじゃない。
並大抵の隊士なんか歯が立たないくらいには、技術者としての一面も持ってる。
手術室へと一目散に向かう私の背中を、幸介が慌てて追いかけてきた。
「……やめなよ」
「使った器具代の請求は三倍してくれていいから」
「やめろってば」
黙々と準備を進める私。幸介は、動きを止めない私の右手首を掴んだ。相変わらず表情は何一つ変わらない彼の顔を見上げて、私は睨みつける。
私を力で押さえつけようとしても無駄だと分かっている行為をしてくる事に、悲しみに加えて腹が立った。
「……アンタに関係なんて一つもないでしょ」
「あるね」
「普段希望者の身体を好き勝手造り変えてるくせに、姉だけはダメなわけ?」
「そうだよ。興味ない人がどうしようが勝手だけど、姉さんは無理。続けるなら、技術開発局全体に強制シャットダウンかける。……落ち着きなよ、何があったのさ」
「どうせっ……男は胸が大きい女の方が好きなんでしょ」
「まあ、そうとも限らないけど。珍しいね、思想論に振り回されてんの。フラれたの」
バチンっと彼の頬を叩く。
叩かれた頬を擦りながら、幸介はため息をついた。
「……ヒステリックが一番嫌われるよ」
「アンタに関係ないって言ってるでしょ!」
「あるって言ってるだろ。研究途中の身体を勝手に造り変えて貰っちゃ困るね」
少しの沈黙が続いた後、私もため息を吐く。
コイツと話していてもラチが開かないし、急激に馬鹿馬鹿しく思えてきたんだ。
「振られた原因が、女性らしくない体だから。だから造り変えて見返すか振り向いてもらうか。……馬鹿だなぁ」
「煩い……」
「賢いのに馬鹿って、姉さんのためにある言葉だよね」
幸介は近くの棚に手を伸ばして、私の顔にティッシュを押し当てる。
「まあ、まずはそのだらしない涙と鼻水でも止めたら」
「……煩い」
「恋愛経験赤ちゃんの姉さんがすることなんて、馬鹿馬鹿しくて見てらんない。男の味を知らないのに正解がわかった気でいるんだから」
「……慰めるか煽るかのどっちかにしてよね。アンタに恋愛論を説かれたくはない」
「わー、見て見て。恋愛未経験者がやりがちな行動データに姉さん全部当てはまってる。オモシローイ」
彼は私を抑えつつ、器用に電子板を操作してクスクス笑う。
馬鹿馬鹿しい事をしようとした挙句、弟に小馬鹿にされた。そして玩具の様に掌の上で転がされている現状に、心底絶望を覚える。
「よーちよちよち。悲しかったでちゅねー。こんな可愛いオネーチャン泣かせる男はドコノダレですかねぇー」
よほど眠かったのか、死ぬほど興味が無いのか。きっとどちらも当てはまるのだろう。
幸介は、欠伸を噛み殺しながら、何一つ感情のない棒読みでしかないセリフを紡ぐ。
普段だったら、ここから肘打ちを入れるはずの私が、何も言わないし何もしないことに気がついて、彼はやっと表情を変えた。
「……うわ、ガチ泣きじゃん」
間に合ってます、充分ですとでも言いたげな、心底嫌そうな顔だ。
「あーもう、これだから恋愛未経験者ってのは嫌いなんだよね。感情に呑まれるし、自分の慰め方一つ知らないんだから……。いつもいつも他人任せ。えっと……何処にあったっけな……」
ため息を付きブツブツと文句を言いながら、幸介はさらに戸棚を漁って何かの薬を取り出した。
「忘却剤あるよ。ほら、口開けて。今日一日の事、全部忘れましょう」
「いらない! 忘れたらまた同じ傷つき方するだけだし……」
私の頬を片手で掴み、なんとか上を向かせようとする幸介に、全身で抵抗を示す。
半分取っ組み合いのような状態だが、私が吠えるかのように霊圧を押しつける。すると彼は、諦めたようなため息をついて手を離した。
無理やり飲ませるか、戦いになるかの二択で引く選択を取ったようだ。
「……経験もない人が、ある人に楯突かないの。男に抱かれる経験くらい積んでから歯向かってくれる?」
「マトモな事してないアンタの言いなりになんかならない!!」
「はー、面倒くさ。こうなった姉さん泣き止ませるの、ボクの役目じゃないんだけど」
「……こんな時くらい、気を使えよ……」
「無理。父さんなんで今日に限っていないんだか。銀城さんに電話しよ」
その言葉を聞いて、私は幸介を突き飛ばした。
「やめて!!!」
そう言い捨てて、結局技術開発局も逃げるように飛び出した。
事の事情を理解した幸介が、目をパチパチさせた後に口元を抑えて笑っている事にも気が付かず。
「……姉さん面白すぎ。これだから姉観察はやめられないなぁ……」
その日は結局、乱菊さん達との買い物にも行かなかった。
それから、しばらくずっとうわの空の日々を過ごしていた気がする。
…………
………
……
…
__数週間後。
「……の、姫乃」
勤務終わりの夜。実家でボーッとしていると、後ろから父に呼ばれて振り返る。
「……なに?」
「これ、断りでいいっスよね?」
父の手に持たれているのは、お見合い写真だ。
貴族からの、うちの息子は如何ですかと言わんばかしの笑顔の写真ばかり。
それをジッと見つめて、目線を外した。
「……行く」
「ハイハイ、じゃあこれも処ぶ……ハイ?」
「行く。お見合いする」
「…………え?」
手から書類を全部落として、父は固まってしまった。
かと思えば、慌ただしく家を飛び出していく。
……ポッカリと心に穴が空いたような気持ちだ。気を抜けば涙が出そうになるから、興味のないフリで誤魔化すことを続けた。
当たり前に隣にいて、当たり前に好きで。
でも、あの人は私の事なんて見てなかった。
ただの……ただのお嬢ちゃん扱い。
父は出ていってしまったし、特段家出することも無い。だから私も家を出て近くを散歩することにした。
「……好きって気持ち……どうやったらちゃんと伝わったのかな……」
私は色んな人が好き。大好き。
けど、銀城さんを思って言う好きは……なんというか、同時に心がギュッと締まるような感覚なんだ。他の誰にも抱かない、特別な感情なんだと分かってる。
それが砕け落ちて、穴を埋める術を私は知らない。
「浦原さん!」
外を出歩けば、また知らない人に声をかけられた。いや、数週間前私に現世に行こうと誘ってきた人だ。
「あ、あの。何度も申し訳ないです。諦めきれなくて……俺と一緒に……」
「……いいよ」
「へ?」
「行こ」
何もかもがどうでもよくて。一気に嬉しそうな顔をする彼とは対比的に、私は目線を伏せた。
「行きましょう!」
そう言って握られ、引かれる手を見る。
……嫌だなと思った。
全然暖かくない。この手は……好きじゃない。
「ど、どうします? 日帰りにします? お、俺は全然泊まりでも……というか、泊まりの方がもっと仲良くなれるというか……」
ああ、嫌いだ。煩い。気持ち悪い。
こういうことに嫌悪しているから、いつまで経っても恋愛経験赤ちゃんなのかな。
みんなどうやって、大人の女になるんだろう。
恋が全て思うように叶うなんて思ってない。
だけど、その抜け落ちた穴を埋める術を知らないんだ。
「浦原さん?」
「……うん、いいよ」
「え、あ、え! やった、本当ですか!?」
「うん……」
私の抑揚のない声と光のない目を分かっているはずなのに、目の前の男は生唾を呑んだ。
……ああ、気持ち悪い。
けど……繋ぎたかった手は、もう掴めない。
普段はもっと思考を回すはずが、あの日から止まったままマトモに動きやしない。
ただ、ただ忘れたい。
恋愛未経験者の行動データに全部あてはまってる。と幸介の嘲笑う声が耳元で聞こえてきそうだ。
じゃあ、経験すれば何かが変わるのか。もっと上手に自分を慰められるようになるのかな。
自分が惨めで、馬鹿らしくて。
涙が溢れる。
分かってるのに、どうしていいか分からない。
私が……私が欲しかった手は……この手じゃないのに。
「……よお。ウチの嬢ちゃん泣かせてまで引っ張っていく必要があるか、三秒で答えろ」
突然後ろから聞こえた声。
知っている声が、いつもの数段低い。
明らかに相手を威圧する声だ。
「ひっ……銀城……副隊長……」
「答えられねぇなら、立ち去るか、俺と喧嘩するかどっちか選べ。手加減は一切しねぇぞ」
私を掴んでいた手が離れて、男は一瞬にして走って逃げてしまった。
呆然とその場に立ち尽くしていると、ポンっと肩を叩かれる。
「何してんだ、おめェは」
「……勝手に決めないでよ。現世にデートに誘われただけ」
「……男ナメてんのか」
「……銀城さんに関係ない」
来た道を帰ろうと踵を返すが、あっさりと私は捕まってしまった。
……いや、逃げることだって出来た。捕まりたかったのかもしれない。
……惨めだ。
私が遠ざかろうとすると、絶対手を掴んでくれると分かっていてこうしたんだ。
「……さっき、浦原がお前が見合いするって泣き喚きながら五番隊駆け込んでたぞ」
「……」
「マジですんのかよ」
「うん」
「急にどうした」
「別に……。なんでもいいでしょ」
素っ気ない私の言葉に対して、怒ることもなく銀城さんは私を背中側から抱きしめる。
……暖かい。大好き。この温もりが……愛おしい。
「っ……離して……」
「嫌だね。俺はお前の心の声全部聞かねぇと納得しねぇ。離してやらねぇよ」
上から落ちてくる声が、優しい声で。
私は堰き止めていたものが崩れるかのように涙がポロポロと溢れた。
「確かになぁ、姫乃は強い。本気で嫌がりゃ、並大抵の男なんて瀕死になんだろ。……けど、それは死神としての姫乃だ。……お前は女の子だから、ちゃんと自分を大切にしろ」
「もうっ……大切にしても意味無いもん……」
「なんでだよ。俺は少なくとも悲しいぜ」
銀城さんの言葉は……きっと近所の子供に向けられてる程度の意味合いしかないのに。
その言葉で、私は雁字搦めに絡め取られる。
だから私は、逃げるように自分の話を逸らした。
「銀城さんも結婚すればいいのに」
「ぜってぇしてやらねぇ」
「なんで」
「待ってる女がいんだよ」
「……胸が大きい子?」
「……はあ?」
待っている子が居るという言葉に、また胸がズキっと痛む。
一度ならず二度までもフラれて。私は涙でぐちゃぐちゃの顔を銀城さんの方に向ける。
「だって!! この前、胸の方が好きって言ってた!」
「いつの話だよ」
「チマチマしたものは嫌いだって……私はどうせ小さいもん!!」
私の叫び声を、困った顔で聞く銀城さん。
必死に心当たりを探しているんだと思う。
「それあれか。この前お前と会う前の……」
「好きな子がいる癖に、私を縛らないでよ!!」
数秒の間があって、聞こえてきたのは笑い声だった。
必死に堪えても堪えきれないと言いたげな、この場に似合わない大きな笑い声。
「おまっ……おまえなぁ……」
「笑わないでよう……」
「なんでお前はっ……そう愛くるしいんだかっ……ははっ……」
「笑わないでよ!! 真剣な問題なの!!」
悲しいのか怒っているのか、自分でも訳が分からなくなる。
そんな私の気持ちなんか気にしてないかのように、銀城さんはわしゃわしゃと私の頭を撫でた。
笑いすぎたのか、彼の目には涙が浮かんでいる。
「それ……筋トレの話なっ……」
「……え?」
……筋トレ?
「筋トレの食事メニュー、ゆで卵がいいか鶏の胸肉がいいか。どっちが好きかの話だよ」
「……え?」
「ゆで卵をチマチマ殻剥くの、俺は嫌いなんだよ」
頭の中でグルグルと情景が思い浮かばれて……全てを理解した時、顔が火が出るほど熱くなった。
「か、か、か、帰る!!」
「やーなこった」
もがこうとする私を、銀城さんは意図も簡単に捉える。
そして、私の目線に合うように腰を屈めた。
「んで、その可愛い勘違いから何がどうなったってんだ」
「馬鹿に……しないでよう……」
「してねぇって」
勘違いはともかく。
銀城さんに好きな人が居ることは事実で。
結局私の恋心なんて実らない現実は変わらない。
……二度もフラれたんだ。一度目は勘違いだけど。三度目も四度目も変わりはないか。
半分諦めて、ため息をつく。
そうして、事の発端から末端までの全てを話た。
「おー、なるほどな」
「銀城さんが好きなのっ……大好き!! 銀城さんの手じゃないと嫌だったっ……銀城さん以外の誰のものにもなりたくないっ!!」
泣きじゃくりながら叫んだ声。
雲みたいな人。
私の心を知っていて、少し届かない先にいつもいる。
まだだよと、言われてるようで躱されているようで。
いつまでこの人に向かって走り続ければ、私は届くんだろう。
「銀城さんが好きな女の人が嫌い!! 大嫌い!! 絶対虐めてやる!! 私の全権力を使って、鬼道衆にぶち込んでやる!」
「だははは! 過激だな、そりゃ」
「訓練も倍にして……書類仕事沢山させて……それから……それから……新薬の実験を……」
「姫乃」
自分でも何を言っているのか分からない言葉を遮るかのように、銀城さんが私の名前を呼んだ。
「そりゃあ、無理な話だ」
「……分かってる。どうせそんな度胸、私にないもん。精々念を送るくらい」
「ちげぇって」
再び腰を上げた銀城さん。そして、私の体がそっと抱きしめられる。
「……今度は、俺は間に合ったか?」
「……え?」
「お前が苦しむ道を進もうとして。その世界に俺が映るよう、間に合ったか」
「……止めてくれて、嬉しかった」
「……そっか。いつの間にか……デカくなったなぁ、姫乃」
子供の階段をもう登り終わっている事。
それを銀城さんは、私にでは無く自分自身にまるで言い聞かせているようだった。
「……待ってる女がいんだ」
「……うん」
私の想いを、キチンと向き合ってくれている。
だからフラれると分かっていて、今度は逃げようとは思わなかった。
「必死に追いかけたのによ。追いついた時には小さくなってやがった。……笑った顔も、泣いた顔も、怒った顔も、拗ねた顔も。全部全部光り輝いてる子だ」
「……銀城さんにそう思われてる子が羨ましい」
「何度も後悔したんだ。俺があの時、手を伸ばしていたら……って。だから、今度は絶対間に合わせるって決めてた。誓ってた。そいつが何処に走ろうと、何処に戻ろうと。俺は絶対に手を離さないって。逃げないって」
「……うん」
まるで御伽噺をきかされているかのような優しい語り口調だ。
言葉の一つ一つに、その人へ向けた深い愛が込められているのはわかる。
父が母に話しかける時と同じ声だから。
「そいつさ、俺の気持ちなんか知らずに、好き勝手に好き好き言いやがる。俺の想いが枷にならねぇよう、まだ子供だって必死に抑えてた。仲間に無理言って、隠してもらった」
「……?」
「俺の想いが、お菓子の好きと並べられちゃあ溜まったもんじゃねぇからな」
ふと思い出した思い出。
銀城さんに大好きと駆け寄って、お菓子を並べられたんだ。
どっちが好きかって聞かれて、どっちも好きと答えた記憶がある。
……そんな幼少の頃。好きの種類も知らずに……。
そこまで考えて、私は顔を上げた。
「……え?」
彼の語られる言葉は……なんで私の思い出と重なるんだろう。
「……待ってたつもりが、今度は待たせる羽目になりそうだったな。……ったく……俺達らしいじゃねぇか」
「……え?」
「俺が待ってる女は、ただ一人だ」
銀城さんと目が合って、彼の優しくて大きな手が私の涙の跡を拭う。
そして、そのまま私の前髪を少し上げるようにしてかきあげると、おでこにそっと銀城さんの唇が落ちてきた。
「……お前がまだ、父ちゃんの腕の中でべそかいてた時にした約束だ」
__お前がデカくなるまで言わねぇよ。そんときゃ、もっと大人の言葉で伝えにいくさ。
「姫乃、愛してる」
祈りを捧げるかのように紡がれた言葉は、私の"大好き"なんか、かき消してしまうほどの深い言葉だった。
私だけが好きで、銀城さんは私の事なんかみてない。そんな想いが、嘘だったと素直に思えるほどに包み込まれる。
嬉しいなんて言葉じゃ、今の気持ちを表せない。
私は銀城さんにギュッと抱きついた。幅の広い体は、私が腕を回しても回しきれないほど大きい。
……幸せだという言葉以上の言葉があるのなら、今ここで欲しいと願う。その願いを小さな声に乗せた。
「ずっと一緒にいて」
「ずっと一緒にいただろ」
「特別にだよ。お父さんとお母さんみたいに」
「仰せのままに。嬢ちゃん」
その後、軽率な行為に走ろうとしたことを軽く怒られて、二番隊の彼には断りを入れた。
あとから聞いた話だけど、銀城さんは自分の想いが枷にならないようにと行動してくれていたらしい。父に頼んで、私の過去の記憶から銀城さんのボイスメッセージの部分の最後の部分だけを消していた。
自分のせいで、これから沢山の選択肢がある私の未来を消したくなかったのだと。
それを知っていた人達は、両想いだと知っていて中々進まない私達にモヤモヤしていたらしい。
聞けば聞くほど、恥ずかしい話ではあるが……それも全部私を思っての事だ。
家に帰れば、暖かい家族に迎え入れられる。
「あ、アタシはっ……姫乃がどこぞの馬の骨とも知らぬ男に渡るのかとっ……」
「もー、泣かないでよ、お父さん」
「面倒臭い。知らないフリして合わせるこっちの身にもなってよね、ほんと」
気まずそうに気恥しそうに隣に立つ銀城さんが、父に声をかける。
「……浦原さん。生涯大切にします」
「……うちの子を、宜しくお願いします」
そう言って小さく頭を下げる父だったが、何かを思い出したかのような表情へと変わった。
そして銀城さんを手招きして、耳元で何かを囁く。
それを聞いた銀城さんの顔が、一気に引きつった表情へと変わった。
「そ、ソレハモウ……モチロン……」
カタコトになる銀城さんを不思議に思って首を傾げれば、なんでもないと手を振られる。
「お、男同士の話だ!」
「ええ、そうっスよ。大切な、大切な話ですから」
一体何のことやらと考えていれば、答えはすぐに出た。これまた、一切人に気を使わない幸介の口によって。
「婚前に手を出したらマジで殺すってさ。そっちの許可は出さねぇぞだって」
「「幸介!!!!」」
父と銀城さんの被さる勢いで揃った叫び声が、夜に響き渡る。
「な、なっ……で、デリカシーの欠片もないんだからぁぁああ!!!」
顔を真っ赤に染めた私が、全員を家から追い出したことで、事態は収束した。
長い長い時を重ねて、ようやく繋がった二人の物語。これからも悠久の時を大切に噛み締めて歩んでいきたい。
夜空を見上げ一人 ほうき星を見たの
一瞬ではじけては 消えてしまったけど
あなたのこと想うと 胸が痛くなるの
今すぐ会いたいよ
だけど空は飛べないから
もしあたしが ほうき星になれたならば
空駆け抜け 飛んでいく
どんな明日が来ても この想いは強い
だからほうき星ずっと 壊れないよ
次回特別番外編最終回。過去編。