相手の動きが分かるのは普通じゃないですか?   作:雑食で節操なし

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誤字脱字報告何時もありがとうございます。

今回長くなりそうだったので二本に分けました。

モニター室の会話には改行をしていません。


予想外の闘い

何故こうなったのだろう、理解が追い付かない、目の前には弧月を抜き自然体で構えるアゴヒゲを生やした男がいる、その男は色んな意味で有名人。

 

A級一位の隊長にしてソロアタッカーランキング一位、デンジャーをダンガーと呼び間違えた事もあるこの男の名は太刀川慶その人である。

 

そもそもの始まりは、次に迫ったランク戦第四戦にむけて作戦会議をするために玉狛支部へと集合した三雲隊、するとそこで支部長である林藤匠に後日本部に向かってくれ言われたのが三日前の事である。

 

そしてボーダーに着くなり会議室の一角へと通される事となった、そこにいた忍田本部長から直々に太刀川と戦ってくれと言われたのだ。因みにこの戦いはA級及びB級の者たちも観戦すると言われた。

 

始めは断ろうと考えていた修、それは当然だろう、三雲隊はA級を目指している、その為にはこれから先の数多くの隊員たちと凌ぎを削らないといけないのだ、なのにその隊員たちの目の前で自ら戦法をさらけださなければいけないのか、その為断れるのならば断ろうと思っていた修。

 

だが、その場に居た根付や鬼怒田からも、ボーダーに所属している以上断る事とは出来ないと言われ釘を刺されてしまったのだ。

 

申し訳なさそうに謝る忍田に気にしてませんと一言断りを入れブースに歩みを進める修。

 

そもそもの発端は太刀川が修と戦いたいと思いランク戦直後の三雲隊隊室に突撃しようとしたのだ、それを何とか迅が宥めた、それでこの件は終わったかに思われた。

 

だがしかし、太刀川は諦めなかった。何故個人ランク戦が出来ないのかを修と仲が良い人たちに声をかけ事情聴取をはじめ、試合のログの見直しをした、正直そこまでするのなら期限通りにレポートを出す努力をしろと言いたい。

 

そして上層部会議の席で三雲と戦いたいと宣った、はじめは拒否していた忍田だったが根付や鬼怒田の後押しと城戸司令官の号令のもと決定したのである。

 

忍田は作為的なものを感じ取ってはいたがボーダーは歴とした組織であるためトップからの命令は絶対である、その為首を縦に振るしかなかったのだ。

 

根付と鬼怒田の目論見は単純なもので修が風間を一方的に破った事と、ネイバーとの融和を図る玉狛支部所属であるため釘を刺す為だ。

 

どれ程強かろうとボーダー所属であるため命令には逆らえないと示すことと、あわよくば戦闘データを取りもしも敵対した時に役立てようという考えのもと実行された。

 

もし修が普通の隊員であったのなら何の問題もなかったのだがA級の数名と交流を深めつつあり、なおかつどれだけ強いかも未知数ときている。

 

ボーダーはなんだかんだいっても強さを求められる、このまま行くと修はボーダー内において新たな求心力となりえる存在だと危惧されたのだ。

 

そんな上層部の思惑のなか太刀川と修の戦いが今始まる。

 

 

 

モニター室ではA級隊員たちとB級の上位及び中位の隊員たちが犇めきあっている、むしろ居ない人を数えた方が早いのでは思わせる程混雑している。

 

その一角に全く人が寄り付いていない場所がある、正確には三人の少女だけがいるエリア、その人物たちは那須と草壁、そして黒江の三名である。

 

おどろおどろした空気を醸し出している、ともすれば火花が見える程で他の者たちもその光景に全力で首を背けている程だ。

 

三人が三人とも一切喋らず気まずい空気だけが漂っている中、最初に口を開いたのは那須だった。

 

「こんにちは、草壁さんと黒江ちゃん。何時も修くんと仲良くしてくれてありがとう」

那須、先制のジャブである。

「那須先輩は修と接点がありましたっけ?」

修の事は何でも知っているその上で貴女の事など知らないという、草壁のカウンターが決まるかと思われた。

「この間のランク戦の後に会ったの、それで今度一緒に訓練しましょうって誘ったの」

勿論OKしてもらえたわ、そういって微笑みながら二人を煽る那須。

「あの合同訓練の発案者は那須先輩だったんですね、私たちも修先輩に誘われて参加するんです、宜しくお願いします」

笑顔なのに目が笑っていない黒江が言外に抜け駆けは許さないとばかりに言う。

額に青筋を立てながらも二人きりのつもりだったのだけれども、それは今度に取っておくわ。そう言う那須、邪魔する権利は貴女たちには無いものね、まるでそう言わんばかりの表情だった。

今度は草壁と黒江が額に青筋を立てる。

あらあら、うふふ。笑顔の筈なのにどこか寒気を感じさせる三人、そんな中に近付こうとする者は一人もいなかった。

 

 

モニター室がそんな状態になっているとはつゆとも知らず目の前の太刀川を真似トリオン体に換装する修。

 

「じゃあ先ずは軽くいくぞ、簡単に終わるなよ三雲」

 

そう言うと一気に距離を詰めると勢い良く振り下ろす太刀川、そして難なく受け止める修、こうして十合二十合と続く斬りあいが始まった。

 

最初に違和感を感じたのは今修と相対している太刀川だった、次に太刀川と研鑽を積んでいて尚且つ修とも何度も手合わせをしていた迅と風間が、そして同じく修と何度も手合わせをしている玉狛支部の小南にレイジ、烏丸や遊真が気づきはじめ黒江や緑川それに木虎を遅らせながら察しはじめる。

 

最初に疑問の声をあげたのは三輪隊のアタッカーである米屋であった。

「何か太刀川さん、やりにくそうだな」

それに反応した小南が解説をするようだ。

「太刀川の出がかりを潰されてるのよ」

皆がどういう事だと小南に目を向ける、そんな中まるで自分の事のように胸を張り得意気に語る小南。

「太刀川が自分の戦いやすい場所に脚を置く前にその場所に脚を置いてるのよ、その結果太刀川がやりにくそうにしてる訳」

改めて二人の戦いを良く見てみると確かにそんな場面がよく見受けられる、だがそれに反論したのはシューター一位の席に居座る二宮である。

「だが太刀川の奴ならそのままあのメガネの脚を踏みつけそうだが」

「修曰く意識をしないと相手を攻撃する事は出来ないですって、ましてや今は斬りあいの最中だから余計に別の事にまで気を回せないわよ」

その瞬間首を斬り落とされるわ、そう言うと口をつぐむ小南。

 

小南の言うとおり人は人とすれ違う時身体を捻って避けている、無意識に傷付けることができる人物は異常者だけであろう。

また意識していても別々の事を行う事は難しい、左右の手にペンを持ってそれぞれ違う図形を描いてみると分かりやすいだろう。

ましてや今は一瞬の気も抜けない戦いの最中である、普段していない事を急に出来る人間も少ないだろう。

 

その結果、焦れた太刀川が無理矢理攻勢に出たが、シールドで腕を抑えられそのまま脇の下から首までを斬られる事となり一戦目が終わりを告げた。

 

続く二戦目、接近戦では分が悪いと判断した太刀川は二刀の弧月を使った旋空弧月の乱舞でジリジリと追い詰めていこうと考えていた、がバックステップで距離をとる修。

 

慌てて距離を詰めようとする太刀川、そこに通常の倍近くある通称生駒旋空により近付ける事なく細切れにして勝利をもぎ取った。

 

三戦目ではグラスホッパーを使い距離を詰めては離れる、離れては詰めるといった緩急を付けた攻めを展開する太刀川だが。

 

手も足も出ない修にこのラウンドは勝ったと思った太刀川とモニター室の面々。

 

だがそんな予想を覆すようにスパイダーを辺りにばらまく修、まさか弧月以外のトリガーを使ってくるとは予想だにしていなかった。

 

その結果、グラスホッパーだけでなく修の動きとスパイダーに意識をそらされた太刀川は宇佐美が名付けた霹靂一閃により首を落とされる事となってしまった。

 

「あのスパイダー、木虎さんが教えたんですか」

木虎に目を向けてそう聞いてくる黒江。

「えぇそうよ、わざわざあの三雲が聞いてくるのだから気分が良かったわ」

得意気に語る木虎に例の三人からコイツもかと鋭い視線を浴び喉の奥がひゅっとなる、慌ててそれぞれの隊員たちが取り成す事で難を収める事に成功し安堵のため息を漏らす木虎だった。

 

四戦目では同じくスパイダーに気をそらされた結果修の動きに対応する事が出来ずに負けてしまった。

 

五戦目、これに負けてしまえば勝ちがなくなる。

 

A級一位そしてアタッカーランキング一位のプライドにかれ不退転の気持ちで挑んだ太刀川だった、が那須で見せた途切れる事のない連続攻撃に対し粘りを見せる。

 

何とか防いで反撃を狙っていた為シールドを展開した、が修の攻撃のタイミングをずらす技、五月雨により倒されてしまう。

 

獰猛な笑みを浮かべる太刀川、グラスホッパーを駆使して今までで一番の速度で修に対して突っ込んで来る。

 

それに対して修は弧月を正眼の構えを取ると自ら飛び出していった。

 

一瞬の閃きの後モニター室の面々の目には唐竹、袈裟斬り、右薙、右斬上、逆風、左斬上、左薙、逆袈裟、に斬られ刺突により喉元に孔を開けられた太刀川が写し出されていたのだった。

 

 

 

開いた口が塞がらないとはこの事を言うのだろう、其ほどまで圧倒的な戦いだった。

したり顔で頷く玉狛支部の者たちと呆然とした視線を送る本部所属の隊員たち、あの二宮までもが目を見開いている。

そんな中に太刀川が悠然と入って来た。

「いやぁ強ぇな三雲」

そんな太刀川に何時も通りの笑みを浮かべて後輩を自慢する迅。

「そうだ迅、今度玉狛支部に行くから宜しくな」

「えっ、何も聞いてないんだけど太刀川さん、何かあるの?」

「いや、玉狛支部に行けば三雲と思う存分戦えるだろ」

だから行くと胸を張る太刀川の尻を蹴たのは風間だ。

「そのまま入り浸るつもりだろう、せめて今貯まっているレポートを終わらせろ」

「いやいや、風間は結構な頻度で戦ってるんでしょ、俺も三雲とヤりたい!」

一切引く気がない太刀川はまるでだだっ子の様にワガママを言い始める。

玉狛支部&風間VS太刀川の戦いが始まろうとしていた。

そんな中何気なくモニターに目線をやった歌川はあることに気がついた、三雲が換装体を解いていないのだ。

そして中に入ってくるのは忍田本部長であった、そのままお互いに得物を構える二人。

ここに修VS忍田の戦いの幕が気って落とされた。




修くん
気が付いたらアタッカー一位とその師匠と戦う事になってた、なんでぇ?
戦いたく無くても断れるません。

太刀川さん
三雲とまた戦いたいなぁそうだ玉狛支部に遊びに行こう。
思い付きをそのまま実行しようとしないで下さい、
忍田さん早く止めて。
「そうか、その手があったな!!」
やんちゃ小僧がアップを始めたようです。

用語解説

五月雨
赤ん坊が家庭教師を勤める漫画に出てくる最強剣術、振るった腕から途中で手放し空中で持ちかえる技、相手のタイミングをずらすことが出来る。

九頭龍閃
八つの斬撃と一つの刺突を一度に繰り出す技、正直人間離れしていると思う、縁壱さんボディなら行けると思うので余裕余裕。


後半は駆け足になってしまいました、許して。
もっと木虎ちゃんを虐めたいのに文才がない作者を許して。
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