相手の動きが分かるのは普通じゃないですか?   作:雑食で節操なし

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ガロプラの思惑と模擬戦

パシュというどこか気が抜ける音を立て扉が開くとともに1人の男がヌッと姿を現す、額に大きな傷を刻んだその男の纏う雰囲気は歴戦の雄姿を感じさせるそんな男だ。

 

「お疲れさまです、ガトリン隊長。アフトクラトルはなんと?」

 

ボーズ頭の青年ラタリコフからの問いに隊長である

ガトリンは「ああ」と短く言うと続けて「ミデンの戦力調査を命じられた」と言うのだ。

 

「じゃあアフトの連中はミデンに再侵攻するつもりって事ですか」

「オレはそう睨んでいる」

「コスケロの言うとおりならオレたちはアフトの捨て石かよ、なめやがって!」

「レギーの言うとおり面白くないね、それで隊長どうします?」

「確かにウェンが言うとおり面白くはないが不信の目を向けられる訳にはいかん」

 

アゴヒゲの男がコスケロ、髪を肩に届かないくらいで切り揃えている男の名前がレギーことレギンデッツ、そしてこの遠征挺で唯一の紅一点ウェン・ソー。

 

そんなウェンの言葉を受け目を閉じ腕を組んで考え事をはじめるガトリン、そんな彼に対して意見を出したのはヘッドギアを被った少年のヨミ。

 

「トリオン兵を小出しにして、それぞれ個別の記録を作って使用トリガーを報告するのはどうですか」

 

そんな提案に首を横にふり一つの映像を映し出す、その映像にはアフトクラトルの二人と一人の少年が映っている、特徴的なのはその少年の額から頬にかけて炎のような痣が浮かんでいることだろう。

 

「アフトクラトルからの指示では特にこの少年の戦力調査を行えとのことだ」

 

 

その少年は現在

 

「逃げるなメガネ!!」

 

ボーダーの先輩から追いかけられ、逃げていた。追いかけているのはB級上位に名を連ねる香取隊隊長、香取葉子。オールラウンダーにして自隊のエース、ボーダーが誇る女傑の一人である。

 

端的にいうとやらかしたのだ、普段通りなら弧月で首をはねて終わりなのだが空閑からの疑問を解決するため、アタッカートリガーを装備せずに射撃トリガーと一部のサポートトリガーのみで構成していたのが災いした。

 

素手で香取をボコボコにした後アステロイドで撃ち抜くこと三回、相手を引き付けて置き弾で倒すこと二回、最後は香取から奪い取った拳銃型トリガーで頭を撃ち抜くこと一回。

 

結果、香取がキレた。

ッんのクソメガネ!!っと心に秘める事もなく盛大に怒気を高めて追いかけ始める香取と逃げる修、周りで茶化すボーダー隊員と笑う玉狛第二。

 

「本気で来いと言ったのは葉子の方だろう」

「だからってあんなやり方ムカつくでしょうが!」

 

本気でやれと言ったのは香取だから怒るのはスジ違いだろうと修のフォローをする若村、ムカつくのはムカつくと吼えながら追いかける香取、そんな間に入ってきたのはまさかの二宮だった。

 

「いい加減じゃれつくのは止めろ香取」

 

くちびるを尖らせ「別にじゃれついてなんか」そう言いながらも追うのを止める、流石に先輩からの指示には従う程度には機嫌は悪くはないようだ。

 

「……よし、さっさとブースに入れ三雲。次はオレが相手だ」

「えっと、二宮さんボクは今本来のトリガーではないんですが」

「だからどうした、それはお前の落ち度だろう、わざわざオレの時にそんなマネをしやがって」

 

言うだけ言うとそのままブースの中に入っていく二宮、ばつが悪そうに顔を俯かせる修に対し犬飼が気さくに声をかけてきた。

 

「そんなに気にしないでいいよ、メガネくん。二宮さんはただ、今日こそは勝つつもりでいたのにメガネくんがトリガーを変更してたから拗ねただけだし」

「悪いことをしてしまいましたね」

「んー、そう思うなら今のメガネくんの全力で相手をしてあげてよ」

「……はい!分かりました!」

 

気持ちを切り替えブースへと向かう修、それを笑顔で見送る犬飼、そんな彼を信じられない者を見る他の参加者たち。

 

へらへらと笑っていた犬飼に辻が流石にどうなんですか犬飼先輩と一言。

 

「何が?辻ちゃん」

「いえ、二宮さんの心境を吐露したのもそうですけど三雲くんをあんなに焚き付けて」

「いやいや、あそこで手加減なんてしたら二宮さんもっと機嫌悪くなっちゃうよ。それに、シューター一位にどんな戦い方をするのか皆も気になるでしょ?」

 

確かにその通りだ、だからこそ全員なにも言わずに見過ごしたのだから。

そう思っていると修と二宮が戦闘空間に現れた。

気になる注目の一戦、修はどの様な戦い方をするのか。

 

「来たか三雲、お前本来のトリガーとは違うとはいえ今回は勝たせてもらうぞ」

「はい!僕も二宮さんの期待を裏切らないように全力で頑張ります!」

「? どういう事だ、何故期待なんて言葉が出てくる」

「えっと、犬飼先輩から僕との対戦を楽しみにしていたと聞いたので」

 

顔をしかめる二宮、心の中で後で犬飼に詰め寄る事を決意した、一つため息をつくと早く始めるぞっと修に声をかける、それに元気に返事を返すとお互いに構える。

 

二宮は何時も通り二つのトリオンキューブを肩より上の方に展開。

一方の修はというとトリオンキューブを両腕にたゆたやせている、場所の違いはあれどその様はまるで那須のようであった。

 

その姿に那須は感激、親友である熊谷の肩をバシバシとたたき「見て熊ちゃん!修くんが私のマネをしているわ!これはもう付き合っている、いえ婚約と言っても過言ではないのじゃないかしら!?」っと大興奮。

あまりの興奮ぷりに流石の熊谷も若干引き気味である。

回りから盛大な舌打ちが三つほど聞こえてきたが他の者たちはスルーする事を選んだようだ。

 

予め決めていたのか、修の行動は速かった。二宮を狙わずその前の地面に向けて射出されたトリオンキューブは轟音をたて白煙をもくもくと煙らせる。

 

慌てて前方に向けてアステロイドを射つも煙を虚しく散らすだけに終わり、冷静に数歩後退し周りを見渡す二宮、だがそんな彼の頭に激しい衝撃が襲いかかる!

 

あまりの勢いと威力により顔には幾つかのひび割れが走り、もんどりを打って倒れ込む二宮、すぐさま体勢を立て直そうとした時にはアステロイドにより幾つもの風穴を開けられていた。

 

 

「うわっ、えげつないねあれ」

「戦ってる二宮さんには何がおきたのか分からないと思いますよ」

「あっでも二宮さんもカラクリが読めたみたいだよ、辻ちゃん」

 

(チッ、まさかカメレオンを入れているとはな。とはいえ三雲のトリオン量はたしか少ない筈だ、ならここは固定シールドと集中シールドで守りを固める)

 

固定シールドとは身動きが取れなくなる代わりに、全身を覆うように展開するシールドの事である。身動きが取れなくなる事がデメリットだとするとメリットはシールド一つで使える事だ、その為もうひとつのシールドを集中型にすれば大抵の攻撃から身を守れる。

 

まあ、それ以上に

 

(不意打ちとはいえ何度も足蹴にされてたまるか……ッ!)

 

という思いが大きいのだが。

 

煙がはれ二宮の前に人影が見当たらない、それはつまり修は案の定カメレオンを発動した事を意味する。

 

(さあ、ここからアイツはどうする)

 

思考を巡らせる二宮、その背後から硬いものがぶつかった音と甲高い音を立ててシールドが割れる音を聞いた。

急いでそちらに目を向ける、そこには修が拳を付き出した状態でその手からトリオンの光が見える。

 

「ちっ」

 

逃げ場が無い状態でアステロイドを射ち込まれ二敗目が決定した瞬間だった。

 

「えっ、ウソでしょ。今メガネくん素手でシールド破ってなかった」

「知らないんですか犬飼先輩、三雲くんは大抵のモノなら素手で壊せますよ」

「なにそれ??辻ちゃん」

「確か二重の極み?とか言ってましたっけ、何でも生身で石を砕けるらしいですよ」

「なにそれ怖い」

「あっほら三戦目が始まりますよ」

 

 

そこからは酷かった、先の二戦によりペースを乱された二宮は肉弾戦とトリオン弾そして時には道路標識の看板、更にはスパイダーによる全身拘束の上での肉弾戦。

カメレオンによる視覚に対する処理能力を使わされ明らかに何時もの戦いかたが出来ずに負けてしまった。

 

「………」

 

明らかに機嫌が悪い、ムスッとした顔を隠す事もなくただただ無言で修を睨みつけている。

そしてとうの本人である修は顔に冷や汗をかいてばつが悪そうにしている。

 

「いやー、やられちゃいましたね二宮さん」

「…犬飼」

「しっかりシューターとしての戦いかたを教えたらもっと上達するんじゃないですか?」

「………お前、三雲に余計な事を言ったみたいだな」

「うえっ!いやそれは誤解というか二宮さんの本心をですね」

 

二宮に無言で詰め寄られ窮地に陥った犬飼、慌てて周りを見渡すも同じチームメイトの辻は目を反らしているし、他のメンバーは悪のりで黙祷を捧げている。

 

メガネくん助けて!

 

そう思い修の方を向くが既に修の方は空閑や雨取や仲の良いメンバーと談笑をしている、助力をこえないと判断し諦めたのだった。

 

 

 

二宮に叱られている犬飼をしり目に感想戦が行われている。シールドを拳で破るのならどうやって防ぐか、やはり近づけさせないのがアンパイだろう、カメレオンのあんな使い方は想定していなかった、など話題は尽きない。

そんな中修たちと同じ玉狛支部の小南が新たな話題を提供する。

 

「そう言えば修、あんた今度玉狛支部に来なさい」

「?何かあったんですか、小南先輩」

「あんたの玉狛製トリガーが完成したのよ、クローニンが作ったの」

 

私たちもアイデアを出したんだから感謝しなさいよね、そう言う小南。

 

後に修はこう語る、気がついたら導火線に火をつけられた爆弾を渡された気分でした、と。




修くん

霹靂一閃中にカメレオンで姿を現したり消えたりしたり、拳で相手をボコボコにして戦っていた。
急速に近づいてくる相手が消えたり現れたりする、その上捕まったら確実に殺られる為並みの相手ならホラー映画さながらの恐怖映像。

二宮さん

今日こそ勝ってやるぜ!なんで何時もの装備じゃ無いの?こんなの気分が乗らないよ。
何時もの装備より戦い方がいやらしい、拳でトリオン体を壊すんじゃねぇ!
あーもうメチャクチャだよ。

今回の戦いで最初はナメプしていたら想像の斜め上からボコボコにされた不憫なお人。

香取ちゃん

最近メガネとかいう奴が調子乗ってるみたいじゃない、絞めてやるわ。
このクソメガネ!!

もっとモギャらせたかった、ごめんよ香取ちゃん。
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