史上最強の横綱・刃皇と国宝たちが火花を散らした灼熱の九月場所。
──それから1年と少し、寒風吹きさぶ新年、一月。
十一月場所の大阪を経て、再び東京の聖地・両国国技館へ舞い戻ってきた力士たちがその会場を沸かせていた。
その熱を放つよう饒舌に語るのは、解説席に座る2人だ。
『さあ初場所もいよいよ幕内戦!九月場所に続き、十一月場所でも優勝を逃した刃皇は今度こそ優勝出来るのか!?はたまた先場所優勝し綱取りの掛かる金鎧山が再び賜杯を握れるか!番付がまたも大きく動く予感のする今場所です!!』
『九月場所では国宝世代が再び波乱を巻き起こしましたが、十一月場所大阪ではベテラン勢が意地を見せた形でしたね。特に金鎧山と百ノ花が他を圧倒する快進撃を見せてくれました』
解説の言う通り、大阪で行われた十一月場所ではベテラン二人が大いにその力を振るい、国宝世代もろとも横綱・刃皇すらも土に付ける快進撃で話題となった。
長らく大相撲に君臨する彼ら。
一度は新時代の勢いに呑まれながらも、その圧倒的な経験と老獪さで国宝たちに見せしめたのだ。『甘く見るな』と。
『ベテラン勢の強さを再認識する事となった先場所ですが、同時に大関・童子切があわや骨折か!?と騒然としましたね』
『ええ。綱取りのかかった先場所、地元大阪の声援を一身に受ける中での大包平関との死闘ですね。毎度ながら激しい投げの打ち合いをするこの2人。その末に土俵から勢いよく落ちた時は、見ているこっちの肝が冷えましたよ』
童子切が怪我を被りかけた理由──。
それは童子切のライバルを演じる大包平彰義による【修羅の相・無道】の軌跡。
童子切を前にすると余裕のない彼は、目前の勝利を追いすぎるあまりに相手に深刻なダメージを与えかねない相撲を取ってしまう事が多々あった。
──……余談だが後日、大包平──加納はケガをさせた童子切──天王寺に謝りに出向き、見舞い品として特製手作りちゃんこ──唐揚げの盛り合わせを送った際に『大からあげ関』などと揶揄られる事になる。
『その後童子関は体を労わってか、慎重な相撲で8勝7敗と場所を終えました。対する包平関は自戒のためか消極的な相撲になり、最終的に負け越してしまいます』
しのぎを削る国宝同士の対決。
先場所ではこの2人の死闘が特に注目を浴びたが、しかし見るべきは彼らだけに留まらない。
『ピックアップした同窓対決の他にも、波乱万丈が続きます幕内!その影響で初場所の番付はすっかり様変わりしました。土を付けられたものの、未だ衰えを見せぬ刃皇が横綱に座り、東の大関に金鎧山・童子切がその首を狙います!西に不調の草薙を置き、その隣から脂ののった冴ノ山が迫ります!』
『冴ノ山もすっかり大関の貫禄が板についてきましたねぇ……しかし!関脇にも番付を荒らすであろう二人の存在があります!東には大関陥落後にも関わらず、技の冴え渡る百乃花が鎮座しております!そして西からは角界一の突き押しの名手、大典太が怒涛の勢いで駆け上がってきました!元日本人最強力士、兄の大景勝の衣鉢を継ぐ弟です!!』
先場所の快進撃と言えば、誰もが口を揃えて金鎧山・冴ノ山・大典太と言うほどだ。
何を隠そう先場所にて刃皇に土を付けたのはこの三名と百乃花のみで、金鎧山に至っては優勝を攫っていった立役者だ。
45度目の優勝をまたしても阻止された刃皇の顔は、それはそれは非常にしかめっ面であった。
『それだけではありません!小結の3名、東の大包平に御手杵、西からは三日月も奮闘を魅せてくれました』
『この3人、幕内では中量級とまだまだ軽いですが、それを補って余るほどの『技』を持っています。今すぐ大関に昇進してもおかしくないレベルですが、しかし前頭筆頭にてこの三者を喰らう存在が蔓延っているのです!』
『東の鬼丸、西の大般若ですね』
解説が興奮冷めやまぬ様子で語る。
──その強さ『鬼の如し』と恐れられる鬼神・鬼丸国綱と。
──いつからか『国宝折り』と称されるようになった角界の傾奇者、大般若長光。
どちらも『最も正面から闘いたくない力士』と言わしめるその取り口は、正に奇天烈にて強烈であった。
鬼丸関──ぶちかまし、突き押し、両前ミツと多彩な取り口を持ち、かつ小兵としての武器も織り交ぜてくる、小さくとも大きな鬼神。
かたや般若関──型に囚われない取り口で相手を翻弄し、かと思えば相撲取りとして鍛え上げられた確かな土台により真っ向勝負で粉砕する傾奇者。
この二人が土俵に上がれば、たちまち国技館が歓声に包まれること請け合いであった。
ヒートアップしていた解説が一息つく。
『幕内上位の層はかくも厚い。そして筆頭以下にも、国宝世代最重量を誇る数珠丸、天下三名槍の大和号と続き……いやはや、すっかり新時代が到来してきましたね!』
『気付けば幕内上位は国宝世代が揃い踏み!ケガで休場し一気に二枚目まで降下したベテラン勢の大兜・妙斧山はやるせない思いでしょうが、だからと言って国宝たちの実力に偽りはありません!新時代到来の言葉に間違いはないでしょう!!』
──幕内上位とは、概ね前頭四枚目、五枚目以上(横綱・大関の人数にもよる)がラインである。
これは取組編成上、この番付を境にして互いに対戦することが少なく、幕内でも事実上2部リーグ制のようになる事から『上位』と区別されるのだ。
その上位に集結した若き力士たちは、かくして『国宝』の名を冠するに値すると証明してみせた事になる。
『目まぐるしさ激しい上位ですが、だからといって下位が大人しいとは言えません!新時代の勢いといえば、私はぜひ太郎太刀を推していきたいですね!』
『はい。何を隠そう彼も国宝世代!しかし直近場所では徐々に対策され始め、勝率が下がっている模様です。それでも十分な強さですが、個人的には前場所11勝した鬼切に注目したいですね!』
幕内に定着して久しい太郎太刀・鬼切は、今では幕内下位~中位を荒らす風雲児として注目を浴びていた。
太郎関の押し相撲は非常に強力だ。対策を取られたとしてもそれごと破壊する威力を秘めており、今や東前頭七枚目と順調に番付を上げていた。
それに比べ勝ち負けの波が激しい切関であるが、先場所では一気に勝ち星を上げて西九枚目とこちらも番付を急上昇させていた。
『確かにあれは脅威の一言でしたね。『20秒しか戦えない力士』が代名詞の鬼切でしたが、先場所の鬼気迫る戦いぶりは『鬼の辻斬り』と畏れられるものに変貌していました』
『立ち会いの瞬間、一瞬でも目を離そうものなら既に相手が倒れている光景……。恥ずかしながら私、解説の仕事も忘れて口をあんぐりと開けてしまいました』
解説の言葉に、観客席に座る人たちが何人かうんうんと頷いている。
それだけ圧倒的な強さを見せた鬼切は、幕内下位にて最も衆目を集める力士となっていた。
解説による幕内力士たちの紹介に、観客の期待が高まっていく。
みな、国宝世代が今度はどんな活躍を魅せてくれるのか心待ちにしているのだ。
『さあさあ上位は言わずもがな、下位まで見どころ溢れる幕内の初場所が始まります!』
『果たして十五日の死闘を戦い抜き、栄誉ある賜杯を手にするのは一体誰か!?もはや刃皇一強の時代は終わりを告げたと言っていいでしょう、誰にも予想のつかない群雄割拠の大相撲、第1戦は──……!』
◇◆◇◆
4勝11敗。
栄えある新入幕となった彼の十一月場所は、見るも無惨な結果に終わった。
──今場所西十六枚目から始まる柴木山部屋所属、四股名“白狼昇”。
彼は手首のテーピングを締めながら、土俵下で静かに前回味わった苦汁を反芻していた。
(幕内昇進に浮ついた気持ちがあったのは認めるけど、舐めてたワケじゃない。……ただ、俺の想像以上に幕内の壁が厚かっただけだ)
聖地国技館。
この舞台に上がるために四股を踏み、日本語を覚え、海を越えてきたモンゴル国籍の彼──本名バトムンフ・バトバヤル。
高校相撲、幕下、十両という変遷の中でも極めて突出した実力を見せてきた彼は、新入幕となる十一月場所でも期待の新星として注目を集めていた。
だが、そんな彼の前に立ちはだかったのは幕内中位の壁。
その場所は国宝たちが上位を埋め尽くす中、そこから零れてきたベテランたち中堅の巣窟と化していたのだ。
これにより、今まで飛ぶ鳥を落とす勢いで進んできた白狼の牙が阻まれる結果となった。
「……っよし!!」
バン!と自分の顔を叩く白狼。
沈みかけた精神をムリヤリ引き締め、その目に覚悟を宿らせる。
(反省は終わりだ。勝たなきゃこの国に、俺の居場所はねぇんだぞ!!)
兄弟子たちは遥か高みに位置している。
柴木山部屋の一員として、これ以上無様な姿は晒せなかった。
「西〜、ぁ白狼昇〜」
行司の声と共に土俵に上がる。
天幕から降り注ぐ眩い光に思わず目を細めた時、パラパラと塩が舞って乱反射した。
「東〜、三尾〜錦〜」
「今回は星をくれてやるつもりはねぇぞ、ルーキー」
ふと、前方から声が掛かった。
一日目の対戦相手、東十六枚目の三尾錦関だ。
その不遜な物言いに「むっ」と白狼が唇を尖らせた時、解説の声が観客席に走った。
『西に参りますは白狼関!彼は新入幕を飾った先場所を負け越しておりますが、今場所西十六枚目と事実上番付を一枚上昇させての開幕となります』
『先場所も星が激しく飛び交い、国宝世代の勢いに圧され引退する力士も出ましたからね。今場所またも国宝世代の若武者が2人新入幕となりますし、番付の新陳代謝が激しい限りです!』
解説のボルテージが上がる中、土俵上で蹲踞の姿勢に移る二人はすでに睨み合っていた。
三尾錦は初顔に極端に弱いことで有名だ。
事実、先場所では白狼に星を取られている。反面、その経験を糧に対策を立てた彼の相撲は無類の強さを誇る事も周知されていた。
それを鑑みれば、今場所の彼が白狼に強気になるのは当然と言えた。
『ベテランの矜恃を保てるか三尾錦!はたまた異国より渡来してきた若き力士が再び牙を剥くか!?必見です!』
「待ったなし!手をついて!!」
行司の力強い声、互いに仕切り線手前に手を着く。
タイミングを図る白狼に、三尾錦は静かに思考していた。
(……柴木山部屋の白狼。先場所はしてやられたが、おかげで取り口は完全に理解した)
初顔に弱いが、それでも幕内に留まる彼の実力は本物だ。
相手の取り口を身を以て体験し、そこから導き出される弱点を的確に突く確かな観察眼。研究し研究されてを繰り返す幕内において、最も重要な能力である。
ドクン…ドクン…と集中力が高まる中。
白狼の拳が、動いた。
「はっきよい!!」
バチィ!!と硬質な音が響き渡る。
小細工なし、真正面からの衝突だ。
『両者鋭いぶちかましー!土俵中央で胸を合わせます!!』
三尾錦右上手、白狼右下手で廻しを掴み、自分の型を作れた三尾錦は冷静に思考する。
(多彩な足技で相手を掻き乱すモンゴル相撲……、その武器こそが君の弱点だ!)
前回の取組、白狼の二枚蹴りを喰らった三尾錦はそう分析していた。
白狼の体重は120キロと、順調に太くなってきているが幕内ではまだまだ軽量の部類。そんな彼がわざわざ片足になってくれるというのだ、倒してくれと言っている様なものである。
(立ち会いは俺の型……、足技を仕掛けてきたところをスカし、一気に寄る!これが君の攻略法だ)
瞬間、白狼が動く。
廻しを引きつけて吊り上げると、すかさず彼の得意技・二枚蹴りが飛んできた。
予想通りの動きに三尾錦の目が光る。
(そらきた!)
「オラァ!」
重心をズラし、狙われた左足を強引に間合いの外へ。その足で踏み込み、一気に土俵外へと突き進む──……
「そうくると思ってたよ」
「ッなに!?」
が、二枚蹴りはフェイク。
白狼は足技を途中で止めると、反転。三尾錦の寄りの勢いを利用して鋭い左下手投げが放たれた。
「っう、おぉお!?」
ズザザ!と俵で持ち堪えた三尾錦。
だが白狼の咆哮が轟き、容赦ない喉輪が襲いかかった。
「おおおお!!!」
「ぐ、ッぎぎ!!」
(こっ、の!柴木山部屋のヤツらの『目』は……ッ!!)
予想外の劣勢。
喉輪越しに見る白狼の燃えるようなその目を見て、過去同じような目を宿した力士が思い返された。
──鬼丸国綱。
白狼と同部屋、今や前頭筆頭という高みに座す小兵の力士。
いや、鬼丸だけではない。国宝と呼ばれる若い世代たちも……──更に言うなら『横綱を目指す者たち』が皆、この目を宿していた。
「……ッナ、メるなァあ!!」
「!?」
喉輪の腕を掴んで強引に外すと、ドン!と力任せに突っ張る。
軽量の白狼はそれだけでグラつき、三尾錦は好機とばかりに突きを速射した。
「オラァァァ!!」
『三尾錦怒涛の突っ張り!!仰け反る白狼、これはキツいか!?』
『いえ、これは……ッ!!』
解説が、観客が、三尾錦が目を見張る。
一度は押された白狼だったが、しかしそれ以上後退しない。
彼は次々と放たれる突っ張りを浴びながらも、軌道を逸らして芯をズラして、見事に受け流してみせていた。
「ぉぉおおお!!」
「ぐはっ!?」
それどころか合間に突き返してくる。
しなやかな肉体から放たれるその突きは精確に芯を捉え、かつ弾くような衝撃が三尾錦を襲った。
白狼・打突の型──『
鬼丸からの紹介で、五条の通っていた空手道場で培った突き。
鬼丸と同じ教えを受けたとはいえ、体格から何まで違うのだ。その突きは白狼独自の進化を遂げていた。
その威力に押され、再び三尾錦は土俵際へと追い込まれる。
(クソっ、クソ!テメェは国宝じゃねぇだろ!?なのに、なんでテメェはヤツらと同じ目をしやがる!?)
焦る三尾錦が横に逃げる。が──……
外掛け──
ガッ!と白狼の足が行く手を阻む。
三尾錦が息を飲むのも束の間、白狼の突っ張りが繰り出された。
「らぁあ!!」
掛け突き──『
バチィイ!と三尾錦の視界が白に染まった。
ハッと気付いた時には、土俵の下で天井を見上げ、その耳に行司のよく通る声が響いたあとだった。
「
『白狼、2度目の三尾錦戦でも見事勝利を掴み取りましたー!っいやー今回の取組を振り返ってみると、終始白狼優勢でしたね!』
『ええ。中盤で三尾錦の連打を喰らいながらも、それで綻ぶことなく最後まで圧倒してみせました!それにしても白狼、先場所では多彩な足技を魅せてくれましたが、今回は打って変わって強烈な突きが登場しましたね。目まぐるしい進化にこれからの期待が高まります!』
解説の言う通り、白狼は今まで密着してからの二枚蹴りが主力の珍しい力士だった。
その希少性ゆえに対策が容易であった為に先場所は負け越してしまったと言えるのだが、それを克服してきた形である。
『新たな武器を携えて、勝ち星先行しました白狼関!対して三尾錦は悔しい1敗です!』
「はぁ……はぁ……、ッくそ!妙な突き押しをしてきやがってッ!」
ふらつく足取りで土俵に戻った三尾錦が悪態をつく。
白狼は突き押しも得意だとデータでは知っていたが、こんな特殊な突きだとは完全に予想外だった。
三尾錦は恨めしそうに白狼を睨むが、当の本人は手刀を切りながら「フン」と鼻を鳴らした。
「そりゃ死ぬほど稽古を積んできたからね。横綱になる為に日々進化してるんだよ」
「……ハッ、若造が一丁前に横綱だと?国宝でもねぇヤツが、エラそうに………」
その言葉に白狼の眉根がピクリと動く。
「……アンタ、毎日どれだけの四股を踏んでんだ?」
「あ?」
「僕は毎日死ぬほど踏んでるよ。……まぁ蟹江先生にオーバーワークだって止められる時もあるけど……、横綱になるための努力を惜しむことは絶対にしない。アンタはどうなんだよ三尾錦関。国宝だなんだの言う前に、アンタだって横綱になる為に
修羅の相が漂う白狼の目。
その雰囲気に圧され、三尾錦は苦虫を噛み潰したように毒を吐いた。
「横綱、横綱ってテメェらはッ!……チッ、オメェもいつの日か分かるぜ、自分は『器』じゃねぇってな」
そのまま「ックソ!」と土俵を去る三尾錦。
白狼は目をつむって深呼吸をひとつ、心を落ち着かせると立ち上がって踵を返した。
「器か……。そんなモンなくたって、その可能性を見せた鬼が居るだろうが」
「いい相撲だったぜ、バト」
土俵を降りると、その鬼が話しかけてきた。
今場所前頭筆頭“鬼丸国綱”その人だ。
その後ろには柴木山部屋の一門が勢揃いしており、バトの肩に狼をあしらった羽織りが掛けられた。
バトは鼻息荒く答える。
「フン、当然だよ。今場所こそ一気に番付を駆け上がって、早く天王寺のアニキ……童子切関を土に付けンだからよ」
今場所東大関に座す天王寺獅童改め、四股名“童子切安綱”。
先輩であり憧れであり、そして横綱へ至るには避けては通れない絶対倒すべき相手だ。
幕内下位にいながら遥か高みを見上げる白狼。
その姿に鬼丸はフッと笑うと、顎で土俵を示した。
「上を見るのもいいけどよ、白狼。その前に超えなきゃならねぇ
その時、国技館がどよめいた。
白狼が振り返れば、そこには会場中の注目を一心に集めるひとりの男の姿があった。
『い、一気の出足ッ、電車道ー!!堕ちてもその穂先は錆び付いていなかった!天下三名槍の蜻蛉切っ、圧巻の取組です!!』
『昨年の腰の負傷からすっかり下位に定着した彼ですが、今の取組を見るかぎり完全に復活した模様ですね。元々上位に名を連ねた蜻蛉切関、今場所で星を喰い荒らす予感がします……!』
かつて東小結にまで上り詰めた男──、『国宝』に並び横綱候補と称される『天下三名槍』のひとり。
──今場所東前頭十五枚目、四股名“蜻蛉切瑠偉”。
その彼が土俵で手刀を切る姿を、白狼は修羅の宿る目で見つめた。
「分かってるっス。あの山は、確実に超えなきゃなんねぇ……!」
──大相撲初場所、二日目の割
【白狼─蜻蛉切】