火ノ丸相撲外伝─昇る狼煙─   作:へるしぃーぼでぃ

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前話、七日目【白狼─四方尽】の続き。というか全日本相撲選手権の詳細。




【全日本・決勝】韋駄天─金剛力

 

 

「……って、マジで観んのかよ!?」

 

佑真の悲痛な叫び声とは裏腹に、柴木山部屋のメンツと礼奈はテンション爆上がりだった。

ガヤガヤとテレビ前に集合。

ちゃんこの肴にと、すでにセッティングされたDVDが再生され始める。

妹は兄の勇姿を自慢したくて仕方ないらしく、周囲も楽しむ気マンマンであった。

憤る佑真を親方が宥める。

 

「まぁまぁ五條くん、そう怒らないでやってくれ。本場所も中盤、みんな疲れが溜まって相撲も雑になりがちだ。そんな時に他人の相撲……、しかもアマチュアとはいえ横綱の相撲を気兼ねなく観戦するのは、息抜きと同時に良い勉強になる」

 

「っいやまぁ……そういう理由なら別にいいんですけど……」

 

親方からそう言われれば、佑真も大人しく従うしかない。

しかし画面に自身の姿が映ると、騒ぐ妹やムダに真剣な表情で観戦する力士たちの姿に気恥ずかしさが無限に湧き出てくる。

稽古で己の動きを録画し見返すことは多々ある。……が、他人と肩を並べて自身の映像を観るのは、なんともいたたまれなかった。

 

「五條」

 

「ん?なんだバト?」

 

チョンチョンと肩を突っつかれれば、バトが「もう少し背中のマッサージ頼むよ」と頼んできた。

渡りに船とはこの事か。佑真は「しょうがねぇな」と立ち上がり、別室で施術しようと提案した。

それに目ざとく寺原が気付く。

 

「ん?白狼関は観ねぇんですか?」

 

「ボクはいいよ。五條の相撲は体感する方が勉強になるしね」

 

事実、バトと佑真は稽古場で肌を合わせることが多い。今さら画面越しで観るまでもないとの判断だ。

さらに今日の黄泉関への敗戦は、逆に彼のモチベーションを高くしていた。

故に息抜きなど必要なく、意見の合致した彼らはそのまま部屋を出ていった。

廊下を歩きながら佑真が自身の肩を擦る。

 

「まったく、俺の方が肩凝るぜ。……サンキュな、バト」

 

「なんの事だか。ま、礼を言うなら背中揉んでよ」

 

別室の戸を開け、バトの不躾な態度に「はいよ」と快く承る佑真。

そのまましばらく無言で施術が行われたが、ふと佑真が雑談を始めた。

 

「しかし、ホントに怪我しねぇ身体だな。俺なんかホラ、気を付けねぇと直ぐ手首痛めちまうから羨ましいぜ」

 

「フン、鍛え方が違うんだよ。そんなんじゃ幕内で通用しないよ」

 

「いや流石に大相撲(プロ)はいかねぇし」

 

軽い雑談だったが、佑真の言葉に少しだけ落胆の表情を見せるバト。

その反応にアマ横綱は思わず苦笑した。

 

「そんな顔すんなよ、俺なんかじゃとても幕内のレベルに付いていけねぇよ。……まぁ、小関なんかとは少し、あの舞台で胸合わせてみてぇがよ」

 

今すぐ付出資格を行使し順調に番付を駆け上がれば、その想像も叶わぬ夢ではないだろう。

しかしすでに人生の道筋(レール)を定めている佑真は、その夢想に潔く首を振った。

 

「ま、代わりにお前が頑張ってくれよ。俺の空手仕込みの突き押しをモノにしてんだ、小関も感じとってくれるだろ」

 

白狼の明日の相手は小関信也──太郎太刀関だ。

佑真の技を継承した白狼なら、間接的ではあるがその夢は実現するのだ。

 

「フン、任せなよ。太郎関には借りもあるしね」

 

借り、とはかつての蜻蛉切の諍いを収めてくれた時のことだ。

もちろん直後に礼はしたが、今でも頭が上がらない恩人である。

 

「おう、頑張ってくれよ。小関の忍耐力はハンパねぇからな」

 

「知ってるよ。あの鬼関のライバルを名乗る実力は伊達じゃないからね」

 

いつの間にか対太郎太刀の話で盛り上がりながら、流れるようにマッサージは進んでいく。

ふと壁の向こうからも、大人数の歓声が響いてきた。

 

「……ずいぶん盛り上がってるね。流石はアマ横綱の相撲じゃん?」

 

「おいおい、あんまりからかってくれるなよ。……まぁ、どうしても公式戦でリベンジしたい相手だったしな」

 

そのリベンジしたい相手とは言わずもがな、“金剛力”金盛剛のことである。

彼とは高校より因縁の続く間柄で、英華大学でのチームメイトでもありライバルでもある。

画面よりも鮮明な記憶が、佑真の脳裏に思い返された。

 

 

 

◆◇◆◇

 

「まさか、また公式戦でお前と戦うことになるとはな」

 

全日本相撲選手権大会、決勝の舞台。

土俵で向かい合う金盛から、そんな言葉が零れてきた。佑真はニヒルに笑いながら答える。

 

「俺は待ちわびてたぜ。なんせ、公式戦じゃまだお前に勝ったことねぇからな」

 

バシン!と掌を拳で叩き、気合い十分に吼える。

群雄割拠の大相撲だが、アマチュアでもその波は来ていた。

国宝世代の陰に隠れた猛者たち。その実力は十両・幕内クラスにまで比肩すると称され、いつしか『霊宝(れいほう)』の二つ名を与えられていた。

佑真が感心するように言う。

 

「Aブロックには我らが“蛍丸”三ツ橋に、“酒呑童子”榎木。最後にお前の“金剛力”だ。そっちのブロックは層が厚いな」

 

「チッ、お前だって“茨木童子”首藤を圧倒してたじゃねぇか。“韋駄天”さんよォ」

 

互いに健闘を讃え、嘲りあう。

彼らの言う通り、数多の強者に勝ちここに立っている。

 

変化のスペシャリスト、三ツ橋蛍。『霊宝』“蛍丸”。

 

火ノ丸がプロ入りを懸けたあのインターハイ。

その全試合でダチ高唯一全敗に喫した彼は、今や誰もが認める(つわもの)へと変貌していた。

 

合気と相撲の饗宴、榎木晋太郎。『霊宝』“酒呑童子”。

 

その名の由来は合気道を用いた戦術により、技に掛けられた相手がまるで酔ったように倒される事から名付けられた。……とされるが、その真意は彼が敬愛する天王寺獅童──『国宝』“童子切安綱”に(ちな)むが為と諸説ある。

 

同じく白楼高校出身“茨木童子”首藤正臣の名付けも、同じ穴の狢である。

 

そして“韋駄天”、五條佑真。

 

空手仕込みの突きの疾さが、彼にこの名を与えていた。

ひとたびラッシュを許せば、例え国宝級力士ですら耐えるのは困難。空手を相撲に昇華させた、異能力士の筆頭だ。

 

「韋駄天、か……。幕内クラスと言われて悪い気はしねぇけど、大仰な名前だよなぁ……」

 

「まったくだ。よりによって大相撲入り最後の障害が、そんな大層な二つ名を持つ元ヤンキーなんてよ」

 

金盛は迷惑そうにため息をつく。

そう、彼はまだ大相撲進出を考えているのだ。

当初は高校卒業時までの結果で親を説得しようとしたが、失敗。それでも食い下がった金盛に、彼の両親は最後のチャンスを提示したのだ。

すなわち今大会での優勝、幕下15枚目格付出資格の取得を。

これが最後のチャンス。

この最後に立ち塞がる相手が、またも彼の忌避する『不良』の存在なのだ。

自身の相撲人生には常に不良が付きまとう運命なのか、と辟易していた。

 

「おいおい、俺はもうグレてねぇっての」

 

「でも不良の時期がそれなりにあったんだろ?それだけで憎む理由には十分なんだよ」

 

「理不尽だ……」と佑真はげんなりするが、金盛にとってこの勝負の趣旨は『払拭』だ。

 

(今大会最大の障害は、実力・実績ともに榎木だと踏んでいた。……が、最後の最後で俺の前に立ちはだかるのは不良(お前)か。もはや呪いだぜ)

 

石神高校相撲部の歴史。

それは不良どもとの不毛な闘いの歴史でもある。ヤツらが居なければ稽古時間も増やせただろうし、真田が停学を喰らうこともなかった。目障りな事この上ない。

佑真も改心したとはいえ、その過去は消えない。

不倶戴天な不良という存在をこの勝負で完璧に拭い去る。

後腐れなく大相撲へ進むための儀式、それがこの決勝だ。

 

「位置について!」

 

ドン!と金盛が仕切りに入る。

かつて準国宝と騒がれた金盛。

しかし彼が国宝と呼ばれることは終ぞなく、自身も国宝との覚悟の差を目の当たりにし、身の程を弁えた。

 

──これがラストチャンス。

 

だが夢の崖っぷちに立った今、彼の目には修羅が宿っていた。

国宝に並び立つだけの資格が……覚悟が、ようやく備わい始めていた。

その気迫にゴクリ、と誰かが息を飲んだ。

 

(この大会、お前がプロになる最後のチャンスだってのは知ってる)

 

対して狛犬型で仕切る佑真。

金盛とは同キャンパス、共に稽古し夢を語り合った仲でもある。

 

(だからこそ全力でぶつかるぜ!公式の土俵に上がるのは、恐らく俺もコレが最後……)

 

相撲に出会い、比喩ではなく人生を救われた。

 

──覆水盆に返らず。

 

自分の盆は疎か、人の水まで零した過去は消えない。

それを一滴でも返したい。佑真の相撲人生の根幹。

その思いを抱え、気付けばここまで来た。

外野は金盛に譲れと言うだろう。

強面ではあるが、彼は至極真面目に相撲に尽くしてきたのだ。天秤に掛けるまでもない。

 

(そんな事は百も承知。けどな、それで手を抜いても意味ねぇんだよ)

 

かつて贖罪の重さから、稽古で小関を張れず支障をきたした事があった。

 

──もっと最初の頃みたいに、楽しそうに相撲取ってくださいよ。

 

小関の言葉。

もちろん、金盛は間違ってもこんな優しげな言葉は吐かないだろう。

それでもここは土俵、二人の力士のみが向かい合う場所。そこからは──……

 

(この最後……)

 

(この一瞬を……)

 

「はっきよい!」

 

((相撲にのめり込め!))

 

バシイィン!と佑真の諸手、金盛のぶちかましが激突。軍配は──

 

「ッおぉおお!」

 

金盛の咆哮、ゴッ!と佑真が吹き飛ばされた。

この光景にかつての石高チームメイトたちが歓声を上げる。

 

「さすが主将!立ち合い制した!」

「へっ、真正面から小細工なしに勝てるワケねぇだろ」

「っ、いや、違う!」

 

真田が気付く。

土俵際まで飛ばされた──跳んだ空手家が、構えた。

今度は元ダチ高の面々──蛍、ユーマ軍団、礼奈が叫ぶ。

 

「行けぇ佑真さん!」

「「「佑真さぁん!」」」

「がんばれ佑真ぁ!」

 

「オラァア!」空手改法──追い突き・開手

 

ドッ!と巨体が揺らぐ。すかさず逆突きで追撃──

 

「効かねぇよ!」

 

ドン!と逆に佑真が突かれた。“金剛力”打突の型『大筒』だ。

意表を突かれた佑真、しかし直ぐに立ち直る。

 

「俺と突き合い……ッ上等だ!」

 

「こっちこそ上等だァ!」

 

ドドドドッ!と足を止めての連打、殴打、強打の応酬。

もはやケンカの様相だ。

 

「なっ!?主将、五條相手に殴り合い!?」

「さっさと組んで終わらせちまえばいいのに、なんでわざわざ相手の土俵で?」

「今の五條は組んだら何をするか分からない怖さがある。だったらタネの割れてる突きを相手にした方がいいって判断だろう」

 

二枚蹴りを喰らった真田はそう見たが、しかし内心では金盛の真意は分からなかった。

 

(タネが割れてるとは言っても五條の突き押しはアマチュアでは最上級……っ。勝ち目はあるのか?金盛ッ)

 

懸念通り、突きの応酬で足が下がったのは金盛。

その綻びを見逃さず佑真が吠える。

 

「おおお!」

 

土俵中央に戻ってきた、進んできた佑真は止まらない。

このまま一気に突き押して決着する魂胆だ。

 

(……ッ強ぇな。やはり突き押しに関しちゃ、お前の方が上手だ)

 

単純な威力なら金盛の方が高い。

しかし精確性、手数、空手特有の異質さが金盛を圧倒していた。

その勢いに押され、とうとう金盛が土俵際へと退いた。

 

「やった!土俵際まで追い込んだ!」

「ッいえ、あれは……!」

 

礼奈が喜んだのも束の間、蛍がハッと目を見開く。

──溜め。

自ら後退した金盛がその全身にエネルギーを纏わせ、迫る佑真を待ち構えていた。

 

(組まず、突かずに!テメェを倒す!)

 

ぶちかまし。

突きごと破壊せしめるその威力。佑真の体が押し出され──

 

「甘ぇぜ!」

空手改法──叩き伏せ

 

巨体を後方、一直線に捌く。

巻き伏せの叩き込み(バージョン)だ。

 

「くっ!?」

 

宙を泳ぐ金盛。

俵に救われるも、その足へ下段蹴り──内掛けが仕掛けられる。

 

「ッラァア!」

──破城追掌

 

異能力士、必殺の決め手が金剛力の顔面を吹き飛ばした。

 

「やった!佑真の勝ち……っえ!?」

 

「……確かに、甘かったな」

 

ガシリ、と剛腕が廻しを掴んだ。

韋駄天懇親の一撃を耐えた金剛力が、ここへ来て組み止めたのだ。

遅れて佑真も廻しを掴む。

 

「まさか懇親のぶちかましをあんなキレイに捌かれるとはな。流石は韋駄天サマだぜ」

 

「テメェこそ、俺の全力の一撃を普通に耐えやがって。金剛力の名は伊達じゃねぇな」

 

一瞬の膠着、直ぐに口を引き結ぶ。

金盛が土俵際だが、体勢的に有利なのは彼だ。

 

「右四つ!主将の形だ!」

「よっしゃ勝っただろ!」

「……」

 

沸く元チームメイト。

だが真田だけはまだ楽観できなかった。

 

(組んでも五條の表情が変わらない、それだけ自信があるのか。……いや、敵のことを考えすぎだな、俺は)

 

楽観はできない。

だが仲間の勝利を願う心が、彼を叫ばせた。

 

「勝て金盛!大相撲(プロ)に行くなら……国宝に成るなら!格の差を見せつけろ!」

 

「おぉお゛!」

 

金剛力が動く。

その腕力で廻しを引き付け、内股から膝で敵を一気に吊り上げた。

 

(これで俺はっ、国宝に並び立つ!)

櫓投げ──『仁王断ち』

 

これが金盛の答え。

これが大相撲へ進む覚悟の表れ。外敵を払う金剛力士の姿。

 

「ッさせっかよォオ!」

二枚蹴り──『狼牙』

 

ガッ!と技の初動、韋駄天の健脚が櫓投げに抗った。

 

「「「なにィ!?」」」

「「「いけぇ!」」」

 

投げと掛けがぶつかり、相殺。

双方バランスを崩すが、堪える。

 

(コイツっ!)

 

(危ねぇ!)

 

力士と成った土台で耐える。

プロとして立ちはだかる。

信念が交錯する。

 

(攻め続けろ!中段ッ、逆突き!)

 

(ッッ、させん!)

 

ラッシュで突き押さんと佑真、二撃目を閂で捕らえた金盛。

だが──

 

「オラァア!」

 

(かいな)を返し、さらに押し込む。

止まらない。止められない。

韋駄天が金剛力を追い込んでいく。

 

(五條ッ、テメェは……ッ!)

 

佑真の瞳から迸る、修羅の相。

金盛とて相応の覚悟を決めてきた。国宝との明確な差を感じながらも、人生を懸けて我武者羅に相撲道を走る覚悟を。

だがその裏で、冷静な、現実的な思考も決して消えなかった。

教育者として相撲と共に歩む未来が。

そのふたつの道を想像した時、彼の選択は──

 

「……今回は、お前の方が強かったぜ」

 

土俵の下へ倒された金盛が、共に転げ落ちた佑真へ囁いた。

 

「勝負あり!押し倒しで五條()の勝ち!」

 

瞬間、ダチ高サイドから割れんばかりの歓声が上がった。かつての戦績を考えれば大金星であるからだ。

逆に石高側はこの結末に驚愕していた。

 

「主将が……五條に組んで負けた!?」

「いやいや、まだちょっと余力残してたでしょ金盛さん!?なんで最後押し込まれちまったんだ!?」

 

荒木の言う通り、土俵際とはいえまだ挽回の余地はあった。

それなのに金盛は最後『諦めた』ように見え、いち格闘技者として憤慨せずにはいられなかった。

そんな彼を、真田の小さい呟きが静めた。

 

「……諦めが、ついちまったんだろうなぁ」

 

いわゆる『持ってない側』の人間の、諦観。

敢えて敗因を上げるとするならば、佑真のような素直さ・愚直さが金盛には足らなかったのかもしれない。

彼は少し、大人すぎたのだ。

 

「ハァ……ッハァ……ッ、ちっ、なんだよ。最後お前、力抜きやがったな?」

 

少し怒気を孕んだ佑真が金盛を見据えるが、当の本人は清々しい表情をしていた。

佑真が怪訝な顔をする。

 

「そんな顔すんなよ。……俺が本当に国宝レベルなら、あの状況から抗って逆転してたさ。沙田や鬼丸みてぇにな」

 

「……」

 

「だがムリだった。最後の攻防、怪我を辞さなきゃ首投げなり網打ちなり打てた。だがそれで?勝とうが負けようが、怪我を背負った状態じゃどちらの将来にも支障をきたす。覚悟は決めたつもりだったが、俺はやっぱり国宝(アイツら)みたいになれねぇみたいだ。笑えよ」

 

「いや、笑わねぇよ」

 

佑真は金盛に手を貸しながら、真っ直ぐに土俵を見つめた。

 

「プロになる気持ちに嘘はなかったんだろ?ならその想いは無駄じゃねぇ、道は全部繋がってんだ。……まぁ、その夢を潰しちまった俺が言うのもなんだが」

 

「フッ、譲られた方が癪に障るぜ。……ありがとよ、全力で戦ってくれて」

 

「互いに、礼!」

 

万雷の拍手注がれる土俵、健闘が讃えられる。

そんな中、最後に金盛から質問された。

 

「それでお前は、プロになんのか?」

 

「付出資格を使ってか?俺は──……

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「俺が勝ちたい相手には勝ったから、プロには進まねぇ。……火ノ丸に勝つために始めた相撲だが、それは礼奈が代わりにやってくれたしな」

 

夜の帳の中、熱の冷めやまぬ砂浜上での取組。

妹が鬼を押し倒し、身内となったあの一戦。

思い出し笑いをする佑真に、バトは悔しそうに鼻を鳴らした。

 

「フン、僕からは勝ち逃げかよ。……ま、マッサージの上手さに免じて許してやるよ」

 

「そりゃどーも」

 

大相撲初場所も七日目、疲労が溜まる頃合である。

佑真は念入りに力士の体をほぐしていった。

 

──相撲にハマればハマるほど、佑真は自責の念を積んでいった。

その思いは生涯消えることはなく、本人もそれを大事に抱えて生きていく事だろう。

救ってくれた相撲に、出会えた繋がりに感謝し。彼はこれからも相撲を楽しんでいく──……

 

 

 

 

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