No.2.00
「発進!」
ミサトの合図と共に、射出口内を急上昇で通り抜ける初号機。
「良いわね、シンジ君」
ミサトは、地上に出たシンジに声を掛けた。
「はい」
シンジは、決心を固めた表情で前の使徒を見据える。初めて乗るはずなのに何処か懐かしいく、乗ったことあるような気がして落ち着けていた。
「最終安全装置、解除!エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!」
ミサトの合図で、エヴァが射出口から体を離す。
「シンジ君、今は歩くことだけを、考えて」
リツコは、ゆっくりと動き出した初号機に向かって声を送る。
「歩く……」
シンジは、意識を集中させて初号機の足を前に出そうとする。初号機の巨大な足が地面のアスファルトを踏みしめる。その衝撃でビルの窓ガラスが割れていく。
「歩いた!」
リツコは、モニターに映った初号機を見て身を乗り出す。
「歩くっ!」
シンジが二歩目を踏み出した次の瞬間、初号機は足をもつれさせて正面から転倒してしまう。顔面を強打し、うつ伏せに倒れこむ。シンジが痛みに耐えて顔を上げると、目の前に使徒が迫って来る姿が見えた。
「シンジ君、しっかりして!早く、早く起き上がるのよ!」
ミサトが今の状況に危機感を募らせる。
「うわぁっ!」
使徒は初号機の頭に掴みかかると、力ずくで持ち上げる。そして腕を掴むと、力で折り曲げようとする。
「シンジ君、落ち着いて!掴まれたのはあなたの腕じゃないのよ!?」
シンジの神経に痛みが襲い掛かった。ミサトが腕を抑えて苦しむシンジを説得しようとする。
「エヴァの防御システムは?」
リツコがマヤに確認を取る。
「シグナル、作動しません!」
マヤはモニターを見つめながら報告する。
「フィールド、無展開!」
オペレーターの日向マコトが声を上げる。
「だめか!」
リツコは主モニターに映る初号機に目を向ける。ついに初号機の腕は、使徒の力に負けて折れてしまった。シンジは驚愕して言葉を失う。
「左腕損傷!」
マヤが早急に事態を伝える。
「回路断線!」
マコトがその状態を補足する。
使徒は初号機の頭部を鷲掴みにすると、手から光線状の槍を放つ。
「シンジ君避けてっ!」
顔を掴まれた初号機は避けられるはずもなく、ミサトが声を上げた時には既に間に合わない状態だった。
「ぐああぁぁああ」
目を押さえて苦しむシンジ。使徒は、光線状の槍を何度も何度も打ち付ける。至近距離からダメージを与えられ、シンジのいる
「頭蓋前部に亀裂発生!」
マヤが初号機の状態を報告する。
「装甲がもう持たない!」
リツコは主モニターを見て立ち尽くす。
使徒の槍は、初号機の頭部を貫通すると、そのまま押し出して遠くのビルへと激突させた。使徒の槍が引き抜かれると、初号機は力なく首をうなだれて動かなくなってしまう。それと同時に、貫通した槍の傷口から大量の液体が噴出する。そのまま、光の鞭を初号機の首に巻き付け巨大な機体を振り回す。初号機にぶつかっていったビル群は破壊されていく。
「頭部破損、損害不明」
オペレーターの青葉シゲルのモニターに非常事態を告げる警告が表示される。
「活動維持に、問題発生!」
マヤが事態を告げる。
「状況は!?」
マヤの後ろに立っているリツコが、肩越しにモニターを見る。
「シンクログラフ反転、パルスが逆流しています!」
マヤが険しい表情でモニターを見つめる。
「回路遮断、せき止めて!」
リツコが素早く指示を出す。
「駄目です、信号拒絶、受信しません!」
マヤのモニターは、次々と断線していく回路図を表示する。
「シンジ君は?!」
ミサトは、マコトに向かってパイロットの状態を確認する。
「モニター反応なし。生死不明!」
マコトは、楽観視できない状況を伝える。
「初号機、完全に沈黙」
シゲルが最後通告を出す。
「ミサト!?」
リツコは振り返りミサトを見る。
「ここまでね……。作戦中止、パイロット保護を最優先!プラグを強制射出して!」
ミサトは奥歯を噛み締めて決断を下す。しかし、マヤの報告によってそれは防がれてしまう。
「駄目です、完全に制御不能です!」
「なんですって!?」
ミサトはシンジの身を案ずる。その時、完全に沈黙したはずの初号機の目に光が戻る。
「エヴァ再起動……そんな、動けるはずありません!」
マヤが信じられないといった面持ちで主モニターの方を見る。
「まさか……!」
通常ではありえない事態を眼の前にしてミサトが声を漏らす。
「暴走……」
リツコは息を飲む。
「ウオォォオオオオオオ!」
再起動した初号機が雄叫びを上げる。そして、体制を低く構えた初号機は、勢いを付けて高く飛び上がると、膝から使徒に体当たりを仕掛け、使徒の仮面のような顔を剥がそうとする。
「勝ったな」
その光景を見た冬月は確信を口にする。
使徒の顔にヒビが入る。一旦使徒から離れた初号機は、体制を低くして地上を駆け抜け、一気に間合いを詰めたら、再び至近距離まで近づかれた使徒は、初号機に対してA.T.フィールドを展開して侵入を防ごうとする。
「A.T.フィールド!」
リツコはモニターに映る光景を注視する。
「駄目だわ、A.T.フィールドがある限り……」
使徒のA.T.フィールドに跳ね返される初号機を見てミサトが言う。
「……使徒には接触できない!」
リツコが半ば諦めかけたとき、初号機は折られた左腕を自力で再生させてしまう。
「左腕復元!」
シゲルが報告を入れる。
「すごい!」
ミサトは、ただ驚くことしかできなかった。
「初号機もA.T.フィールドを展開、位相空間を中和していきます!」
初号機は、使徒の前に展開されたA.T.フィールドの壁を、両手で掴んで引き裂こうとする。その状況を観測したデータを見てマヤが報告を入れる。
「いえ、侵食しているんだわ」
リツコは主モニターの映像に釘付けになる。初号機は使徒のA.T.フィールドを完全に引き裂き間合いを詰めようとする。それを見たミサトが驚く。
「あのA.T.フィールドをいとも簡単に……!」
初号機に迫られた使徒が、目から光線を照射して応戦する。巨大な十字架の炎が市街地に伸びる。
「エヴァは!?」
爆炎に巻き込まれた初号機の状態を、ミサトが確認する。
使徒の放った攻撃は、初号機に全く効果を示さなかった。無傷の初号機は、間合いを詰めると、使徒の腕を取っていとも簡単にへし折ってしまう。自ら腕を引きちぎり距離をとった使徒は、自らのA.T.フィールドで千切れた腕を補強し再生させる。初号機は、地を駆け抜けて使徒へと向かう。使徒は、A.T.フィールドを展開させて、初号機を食い止める。
「目標から高エネルギー反応あり!」
マヤは、リツコに報告する。
使徒の補強された腕から光線が放たれる。初号機は吹き飛ばされ、そこで大きな十字架の火柱立ち上がる。使徒は、初号機にダメージを与えれてないと予測し、両腕から光の槍を出し、そのまま初号機へと走る。仰向けになった初号機が起きあがろうとした時に、使徒が馬乗りになる。そのまま両腕の槍を胸に突き刺そうとするが、初号機のA.T.フィールドによって防がれる。自らのA.T.フィールドを槍に纏わせて中和を試みる使徒。初号機の片目に光が集まり、使徒に向けて放たれる。使徒の両腕は落ちる、そして身体から青い血が溢れ出す。使徒の目が赤く光り同じ様に光線を放とうするが、起きあがろうとした状態の初号機の手が使徒の顔を鷲掴みにする、そのまま光線は放たれ手を貫通するが、初号機によって持ち上げられ地面に叩きつけられる。死に体の使徒は、突然体を変形させると、初号機に巻きついて自爆を決行する。その瞬間、巨大な爆発が起こり、十字架の火柱が空高くまで立ち上る。
「エヴァは……?」
ミサトがシンジの確認を促す。鳴り響く爆発音から、水を打ったように静まり返る発令所。
爆風によって立ち上がった黒煙が徐々に晴れていく。その中から赤い光が見えてくる。凄まじい爆風にも耐え、粉塵の影から帰還を果たす初号機の姿が確認される。リツコは、モニターに映し出された光景を見て息を飲む。
「あれがエヴァの……」
ミサトは今まで自分が知らなかったエヴァの本性を知ることとなる。
「本当の姿……」