「龍宮無名、玉手家盟主が命ずる。貴様を龍宮家次期当主候補から外し、麻帆良から永遠に追放する。他の者は沙汰無し、これにて竜宮城会議を閉幕とす」
その言葉はやけに空虚に俺の耳に響いた。
後ろで両親が何か叫んでいるがその要求が聞き入れられることはまず無いだろう……。
むしろ、年の離れた義妹の事が気がかりでしょうがない、あいつは自分の罪を責めるだろうがそれだけは止めなくてはならない。
それに分家の奴らを皆殺しにしたことに関しては後悔どころか爽快感を覚えた程だ。
逆恨みで人の家族に手を出したのならばそれ相応の報いを受けるべきなのだから……。
「義兄さん、行っちゃやだっ!!」
親父とお袋が連れて来た時は眉一つ動かなかったコイツが泣きながら引き留めに来るとは……。
紛い物でもしっかりママゴト出来てたって訳か……。
「真名……」
泣きじゃくる義妹にしゃがんで視線を合わせる。
「いいか、俺はお前を助けた事を後悔はしていない」
「でも……、だって義兄さん麻帆良から居なくなっちゃうんでしょ……?」
目尻からひっきりなしに溢れる涙を指先で掬いながら語りかける。
「ああ、もう会う事は無いかもしれない。でも、だからこそお前は泣くな。俺が龍宮家から追放された今、龍宮家の跡取りはお前なんだ。分かるな?」
「……うん」
頷いた拍子に髪を縛っていたゴムが明後日の方に飛んでいき、バラバラになった烏丸の濡れ羽色の頭をグシャグシャと掻き回す。
「……いい子だ。真名、俺がいつも言ってた事を覚えてるか?」
「……うん、『人を殺す時は躊躇うな』でしょ……」
そのことも教えてあるが、もう1つ教えてない事がある。
「いいか、人を殺すのに
俺は日々の殺しで嫌という程学んだ、どんなに強い魔法を唱えようとどんなに硬い魔法障壁を張ろうと人は頸動脈を斬られれば死ぬ。
簡単に死ぬ。
詠唱が終わる前に殺せばいいだけの話だ。
例え、詠唱が完了したとしても相手の反応速度を超える速さで斬り裂けばいい。
人が死ねば、只の肉の塊だ。名誉も思想も地位も権力、財力、記憶、全てが無に還る。
【死】という概念は俺が龍宮家に生を受けた直後から隣り合わせにいた存在だ、死ぬという行為に救いを求めて自殺するやつも居れば、人を死なせるという快楽を求めて殺人を行う奴も居る。
ならば、俺は?
他の分家は【人を、知性を持った種族を殺す】という行為は只の仕事だと言う。
だが、俺から言わせて貰えば龍宮家にとって人を殺す事に一々理由が必要なのだろうか?
いや、
龍宮にとって【人を殺す】という行為は、
『生き様であり、当然にして必然』
の行為だ。
「無名、時間よ……」
「ああ、分かってる。真名、それじゃあな……」
「義兄さん、行っちゃやだよぉ…………」
真名の肩を強く押さえている両親に深く深く頭を下げる。
「今まで育ててくれて有り難うございました、真名の事を宜しくお願いします」
親不孝ですいません、こんな息子ですいません、不幸ばかりを運んでごめんなさい、そして何よりも
『疫病神』
ですいません。
龍宮無名 15歳
経歴抹消。
この者の情報は麻帆良部外秘とす。
麻帆良から追放され、各地を放浪していた俺は点在している裏の役所から技術を
そこで俺は自分と同一でありながら、不完全なほどに完成されていない自分と出会う。
そいつとの出逢いは運命で、地獄で、虐殺で、無様で、皮肉で、惨めで、哀れで、例えを上げれば限りが無い程だけど、実に殺戮的な出逢いだったのは疑い用もない事実なのだから…………。