魔法先生ネギま 龍宮家の元跡取り   作:ポッタ―メン

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息抜きに投稿したものです、書き上げられたらISの方も投稿します。


壱時限目

「なあ、無名はん」

 

「ああ?」

 

「あんさんは理想と夢、どっちで生きとるん?」

 

 

 

 

コイツと出会って早4年、快楽だけを重ねる諸事は会った次の日からヤッていた。

 

だが、今日は違う。お互い不干渉だった過去の傷をさらけだし、舐め合い、癒そうとした。

この会話は俺が龍宮無名としてではなく【零織逸識(違う名)】として初めて仮契約(パクティオー)した相手との、ちょっとしたピロートークだとでも思って貰えばいい。

 

 

仮契約(パクティオー)した相手は、対極であり究極、不完全同一体であり、完成同一体。鏡像であり、虚像な女、天ヶ崎千草との会話を抜粋したものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『理想』

 

人が心に描き求め続ける、これ以上望むところの無い完全無欠な自分、そうあってほしいと思う非の打ち所の無い最高傑作な自分。

 

『夢』

 

それは誰もが描く絵空事、将来実現させたい明日(みらい)、自分の不確定要素な未来(しょうらい)

 

 

 

 

 

 

その時のことはあまりよく覚えていない。雑談がてらに話を右から左に素通りさせていた気もするし、結構真剣に話を聞いていた気もする……。

 

ようはあんまり覚えていないのだ。

 

「俺は……」

 

だけど、その時の俺はきっと答えた筈だ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、突然で悪いがここであいつとの出逢いに遡って検証してみよう。

 

 

あいつとの出逢いは京都の霊山、草木も眠る丑三つ時、月が美しい十五夜だった。あいつは霊山に封印されていた足利の怨霊に追われ、俺は関西呪術協会の始末番に追われていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ハア……ハア……ハア……」

 

後ろから迫り来る脅威に秘境とも言うべき霊山の斜面の獣道を転がり落ちるように走っていたせいか、着物は肌蹴、肌には切り傷やミミズばれが目立つ。

 

天ヶ崎千草は心の中で直属の上司に呪詛の言葉を吐き出しまくっていた。

 

(あんのスケベジジイ、なぁ~にがうちなら簡単に封印出来るやっ!!やぶ蛇どころかヤマタノオロチが飛び出してきおってからにうちの策がしっちゃかめっちゃかやんけっ!!)

 

『常に災悪を』

 

これこそがうちの行動概念。

 

だが、長直々の依頼にして試練と言われてしまえば陰陽札や式神、飛針や霊糸などか没収された今に限ってはその行動理念も実践出来ない。

 

曲弦糸(ジグザグ)

 

うちが十年の歳月を賭けて完成させた技術にして、封印術式と索敵手段。

 

曲弦糸(ジグザグ)の射程範囲は今逃げ惑っている霊山丸々覆うぐらいには上達した、けれどまず根本的に糸が無い。足りないではなく、『無い』のだ。

 

スーツの袖口から分解し抽出すれば、自分の身を守る位の糸は確保出来るだろう。しかし、封印を解いてしまった者としては解き放たれた悪鬼が外界にまでついて来るという事態は避けなければならない。

 

糸さえあれば霊山の霊脈を辿り霊泉から霊力を吸い上げ、大規模封印処理術式が組めるのだが前提としてまず圧倒的に糸が足りない。

 

正直な話、天災規模の悪霊を封印するには、上着どころかブラにパンツ、といった下着類の類いまで分解してやっと足りる……、といった所。

 

封印が成功したとして、下山して痴女として国家権力に捕まるのだけはなんとしても避けたい。それは女としては守りたい最後の一線だし、職場に居場所が無くなる。

「しもたっ!?」

 

うちが全速力でかけ降りている道は山道とは名ばかりの獣道だ、そんな道で思考ばかりに気を取られているせいか足を木の根に取られ無様におもいっきりすっころんでしまった。

 

うちはお世辞にも運動向きとは言わん、どっかの幼馴染の神鳴流姉妹みたく足を取られた瞬間に空中で三回転半捻りをして、体勢を整えるなんて現役体操選手もびっくりの芸当なんか出来やせぇへん。

 

「く~。なしてこないな時に………、はよぉ逃げなあかんに。って、いったぁ…!?」

 

再び逃走を開始しようと疲労困憊の身体に鞭を打ち立ち上がろうとするも、右足に激痛が走る。

 

「治癒符っ、治癒符はどこやっ!?」

 

腰に下げている術符入れ(ホルダー)をひっくり返す勢いで治癒符を探すが、治癒符どころか起爆符に転移符、基本的な召喚符すら入っていなかった。

 

「はあっ!?何で符が丸ごと無くなってんねん!?って、あの楽観長は録な事せぇへんな……」

 

術符入れ(ホルダー)から符が無くなっている理由(わけ)に当たりを付けて、逃走しようと浮かせかけた身体を地に沈める。

 

「ああ……、ここまでかいな……。復讐すら出来ひんでここで死ぬなんて、想像すらしてへんかったわ……

 

後ろから確実に迫り来る脅威に諦め、瞼を閉じる。

 

ここで重要なのは千草が狩られる側だという所だ。しかし、狩る狩られる(じゃくにくきょうしょく)の関係は何時何処で何かの拍子にひっくり返るかわからない。

 

「ん?なあ、あんた、ここが何処だか分かるか?京都の霊山だって事は分かってるんだが何分こっちには来たばっかで細かい地理が全然理解出来なくてさ、関西呪術協会(西)の始末番にも追われてて更に迷子なっちまってな」

 

巨大な人喰い虎がうちの首筋に突き立ててようとした牙を唐突にへし折ったのは、どこにでも居そうなただの人間だった。

 

「あんさんも……、運が悪いどすなあ……。ここに逃げて来なければ、も少し長生き出来たかもしれへんのに……」

 

閉じていた瞼を開けると、満月をバックに佇んでいる男の容姿が目を引いた。

 

そいつはうちと同い年位の背格好に下半身にはどこにでも売っていそうなブラックジーンズに上半身にはナイフにでも切り裂かれたかのような赤色のクラッシュシャツに黒色の軍用ベスト、首元には逆十字と円が一体化したネックレス、両手に拳闘家が嵌めるオープンフィンガーグローブ、右耳にシンプルなリングピアス、左耳には携帯ストラップ、前髪をまだらな灰色に染めている。そして何よりも人目を引くのが右頬に掘られている刺青、異形の妖怪や鬼を使役するうちでさえ街中で出会ったらおそらくすぐさまにでも警察に駆け込むであろう程に禍禍しい形だ。だが、どこか歪な完成美を感じているうちもどこかがコワレテイルノカモシレナイ。

 

「あ~、諦めて辞世の句を詠んでいる所悪いが後ろのアレはどうすんだ?」

 

指を指した方向に視線を向けると、佇みながらも殺気を放ち続ける悪霊が刀を振り上げうちの首と胴体を切断しようとした瞬間、甲冑を纏った鎧武者が喧しい音を立てながら吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「爆縮地から薔薇に始まり百合を接続、百合と同時に沈丁花、蒲公英」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄まじいまでの爆音が鳴り響いたと同時に黒ずくめの少年の姿が消え去った。

 

正確には人間が探知出来る速さの限界を超えた速度で移動を繰り返しているため消え去ったと錯覚しているだけなのだが…………。

 

(瞬歩っ!?いや、こんなん瞬歩ちゃう、明らかに瞬歩の域を軽く超えとる…………。もはや縮地や、鶴子やもっちゃんでも追い付けるどうか………)

 

幼馴染の青山姉妹の事を思い出し、目の前に佇む同い年の少年の実力に背筋を震わせる。

 

「なあ、あんた」

 

ジーンズのポケットに手を突っ込んでいた少年の視線が真っ直ぐにうちを射抜く。

 

「な、なんや?」

 

「あれって倒してもいいのか?出来ることならあれ倒して街まで案内して欲しいんだが」

 

「……生きて帰れたら下山の案内どころか京都の隅々まで案内し終わった後に家で飯までご馳走したるわ。まあ、倒せたら、やけどな」

 

「あっそ、じゃあ頼むわ」

 

そう言い放つと、視線を正面に戻し特徴的な構えを取る。

 

「虚刀流が一の構え、鈴蘭」

 

相手は甲冑を纏っているとはいえ、戦国時代を生きてきた本物の武者なのだ。いくら何でもコイツ相手に無手で戦うと言うのは少々無茶が過ぎる冗談だ。

 

「あ、あんさん、まさか素手でアイツとやり合う気かいな?」

 

「ああ、そうだけど。ってまだ名乗ってなかったな、俺は17代目龍宮家元次期党首候補、龍宮無名……ってこの名前は麻帆良を追われた時に剥奪されたんだったよな。と、わりぃわりぃ、俺の今の名前は零から物語を紡いだその糸を織り込み、常識を逸脱した名前、零織逸識だ」

 

自分を(警戒せ)ずにうちに視線を向けている事を攻撃のチャンスだと思ったのか、目にも止まらぬ早さの突きを繰り出してきた。

 

「あかんっ!!前見ぃやっ!!」

 

「あ?問題ねぇよ」

 

うちが声を荒上げる前にそいつ(龍宮無名)は動き出していた。

 

一歩踏み出していた構えから身体を半歩ずらし、背中と両腕に突き出された刀を差し込み、至近距離で見ていたうちでさえ分かる程の力を込めて、

 

「虚刀流が武器破壊、菊」

 

おもいっきりへし折った。

 

(折った……?えっ!?折ったんか、一応あれ数百年単位経っとるけど名刀の類いやで、それを何の躊躇もなくへし折るて……、鬼か……)

 

ご自慢の名刀を一瞬でへし折られた事に愕然としたのか刀身が途中から無くなっている刀を茫然と眺めている妙に人間臭い悪霊の横っ面に躊躇い無く回転蹴りをぶちかまし、吹き飛ばすコイツに思い浮かんだ感想はただひとつ。

 

いや、ほんともう鬼畜の所業としか思えないうちがいる。

 

助けてもらっといてなんなんやけど、これは酷いわ……。

 

「お?結構本気で百合を蹴りこんだ筈なんだけどまだ動けるのか、あいつ。なら………」

 

左腕を当て身のように極限まで伸ばし、右腕は拳を作り折り込んで半身を引いた形を作る。

 

「おい、もう一度だけ聞くけど本当に壊してもいいんだな?あの鎧武者」

 

どんだけ確認とんねん、というより壊せるわけないやん。

 

「好きにせい言うとるやろ、勝手にしなされ……」

 

「じゃあ、その言葉通り勝手にやらせてもらうけど約束忘れんなよ」

 

折り畳まれていた右腕の拳に視認出来る程の氣が集中していく。

 

「弾丸を装填、弾種を選択、用途は貫通……」

 

「なんやそれ……?ありえへんっ!?氣が目視出来る程の量って尋常じゃないで っ!?どんだけ氣が練り込まれとんねん……」

 

口から溢れた言葉が耳に届いたのか、事も無げに言い切るコイツは、

 

「俺は魔法を使えない、莫大な魔力があっても放出口が無いからどんどんと貯まっていくんだよ。だからこそ魔力を氣に変換して使ってんだ。そしてコイツが麻帆良を追い出された時に考え付いた虚刀流が遠距離必殺技、拳砲……」

 

小太刀を引き抜き、腰だめに構えながら突っ込んでくる鎧武者に、

 

(ツラヌキ)っ!!」

 

圧縮された氣の砲弾を1ミリの狂いも無く、なんの感慨ももたず、鳩尾にぶちかました。

 

決め技を食らう前に何発か攻撃を受けていたのが致命傷だったのか、それとも数百年経っていた鎧にガタが来ていたのかは解らないがコイツ(龍宮無名)の放った拳は、悪霊を現界させている核を二度と現れる事は無いと断言出来る程グシャグシャに破壊した。

 

そしてうちは、そないな事を平然とこなすコイツに恐怖して、愕然とし、そして何より嫉妬した。

 

「なんなん……、なんなんや、あんた。普通やない、普通やないで、悪霊とはいえ神格化してるアイツを何で氣を纏った拳だけで倒せんねん……」

 

手をプラプラを振りながら、うちを抱き起こした刺青に問いかける。

 

「なあ……、何であんさんはそんなに強いん?」

 

龍宮無名は頬を書きながら、言い切る。

 

「強くならざるを得なかったから強くなった、それだけだよ」

 

青年とも言えず少年と言うには大人びている雰囲気を纏うコイツの表情は、似合わなくも年相応にみえた。

 

 

 

 

 

さて、この出会いこそが後年の裏の歴史に色濃いまでの爪痕を遺しとある大犯罪を成し遂げ、魔法世界の教科書にまで名を連ねる傭兵集団【殺戮殲滅猟団、零織一座】。魔法世界、旧世界の魔法使い達は自分の子供達に語って聞かせるその名前は【反英雄(ノット・ヒーロー)】、【凶喜の狂器(エクスタシー・ウェポン)】、【人外群体(アウターヒューマンコロニー)】、【犯罪者達の宴(クライマル・パーティー)】、【一線を踏み越えた者達(サイドライン)】。

 

この年から10年間京都を、いや、関西呪術協会すらも凌ぎ関東魔術協会にまでその噂を轟かせる事になる二人組(コンビ)、【殺戮殲滅猟団、零織一座】構成団員No.0創始者(絶対狂器)とそのブレイン(頭脳)、構成団員No.1未来見通す策士(ストーリーテラー)の若き日の出会いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は夢にも理想にも生きてなんかいないよ。だって、俺は夢からも理想からも逃げて、現実からも逃避してんるんだからさ………」

 

いつも吸いなれている筈の煙草(ブラックデビル)が、この時に限って何故かひどく不味く感じる。

 

その時に俺はふと思った。

 

(ああ、これが大人になるってことなのか……)

 

と、柄にも無く思えた。

 

 

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