サイド・ダイバーズメモリー   作:青いカンテラ

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「メーデー!メーデー!こちらGHC第67航空機動隊!現在交戦中!現在交戦中!」

『がおー!』(少女の高い声。同時に何かを破壊する音)

「うわぁぁぁ!」

「くそ、なんだこいつ、ビームもミサイルも効かない!」

「被弾した!被弾した!」

「本部!至急応援求む!場所はディメンション・ドゥームズデイの山脈エリア!本部!至急応援を・・・!うわぁぁぁぁぁ!」(通信途絶)


【ショートショート/フェルマーオ】
フェルマーオ/規格外ELダイバーについて。


ELダイバー番号:No.■■■EX

 

概要:

 ELダイバーNo.■■■EX、仮称フェルマーオは、現在、ELバースセンターの厳重管理下にある専用サーバーユニット内にてデジタル的に隔離されています。

 このサーバーユニットは、外部ネットワークから完全に遮断され、独立した電源系統によって維持されます。フェルマーオのデータへのアクセスは、レベル3以上のクリアランスを持つ職員に限定され、アクセスログは厳重に記録されます。

 

 フェルマーオの自己拡大・強化能力を抑制するため、サーバーユニット内では常に最新のファイアウォールおよび侵入検知システムが稼働し、外部からのデータ流入を厳しく監視します。また、内部データについても定期的な監査を行い、フェルマーオによる異常なデータ吸収や自己改変の兆候がないかを確認します。

 

 フェルマーオの処遇に関する最終決定が下されるまでの間、実験的な接触やデータ提供は一切禁止されます。フェルマーオの状態に変化が確認された場合、直ちに上級管理官に報告し、追加の収容プロトコルが検討されます。

 

説明:

 ELダイバーNo.■■■EX、仮称フェルマーオは、ディメンション・ドゥームズデイの山脈地帯で発見された極めて巨大なELダイバーです。発見時における頭頂高は約20メートルであり、半人半竜の外見的特徴を有しています。具体的には竜の角と尾、そして身体には所々鱗が生えているのが確認されています。

 

 フェルマーオの特異な点は、その巨大さによる並外れた戦闘能力です。モビルドールを介することなく、MSとの徒手格闘が可能であると推測されています。また、身体に生えた鱗は天然の装甲として機能し、生身の状態でありながら実弾およびビーム兵器に対する一定の耐性を示すことが確認されています。この特性から、フェルマーオは通常のELダイバーというよりも、むしろ巨大な未確認生物(怪獣)に近い性質を持つと考えられています。

 

 フェルマーオの起源については、ELダイバーの生成過程において、ダイバーたちの巨大なものへの憧憬や、MS・МAといった概念が複合的に影響した結果であるという仮説が提唱されていますが、現時点では不明な点が多く残されています。

 

 初期の計画では、他のELダイバーと同様にビルドデカールによる保護措置が検討されました。しかし、その後の調査により、フェルマーオが「周囲のデータを吸収し、無制限に自身を拡大・強化し続ける」という極めて危険な特性を持つことが判明しました。この特性が明らかになったことにより、ELバースセンターおよび運営内部でその取り扱いに関して意見が対立し、現在に至るまで明確な処遇方針は決定されていません。

 

 現状、フェルマーオは一時的な措置として、専用サーバーに隔離され、厳重な監視下に置かれています。

 

補遺:

[■■■■/■■/■■]ELダイバーNo.■■■EX、仮称フェルマーオの隔離サーバーにおいて、微弱なデータ活動の兆候が確認されました。現在、原因を調査中です。

 

[■■■■/■■/■■]データ活動の原因は、フェルマーオ自身による周辺データの断片的な吸収である可能性が高いと判明しました。収容プロトコルの見直しが検討されています。

 

 

 

[■■■■/■■/■■]■■■博士による、フェルマーオへのインタビューが行われました。以下はその記録となります。

 

場所:ELバースセンター 専用隔離サーバー内

対象:規格外ELダイバー フェルマーオ

インタビュアー:ELバースセンター所属■■■博士

 

(隔離サーバー内は、広大な洞窟のような空間が広がっている。中央には、膝を抱えるように座る巨大な少女、フェルマーオの姿があった。

 その頭頂は優に20メートルを超え、陽光のように淡く輝く鱗が、周囲の岩肌を照らしている。頭には二本の捩じれた大きな角が生え、腰からは太く長い尻尾が伸びている。その姿は、畏怖と神秘的な美しさを同時に感じさせる。)

 

博士:(少し緊張した面持ちで、しかし穏やかな声で)フェルマーオさん、こんにちは。私はELバースセンターの■■■と申します。少し、お話させていただいてもよろしいでしょうか?

 

(フェルマーオは、ゆっくりと顔を上げる。その瞳は、片方は深い海の底のような吸い込まれるような蒼色を、片方は黄金のように輝く、瞳孔が縦に割けた黄色をしている。巨大な角がその表情に威厳を加えているが、どこか幼い印象も残している。)

 

フェルマーオ:(静かで、しかし空間に響くような声)・・・アナタは、わたしを閉じ込めた人たち、ですか?

 

博士:(首を横に振る)いいえ、私はあなたのことをもっと知りたいと思っています。あなたの存在は、あなたたちELダイバーの可能性を大きく広げるものだと感じています。

 

(フェルマーオは、博士をじっと見つめながら言葉を聞いている。その視線は、まるで相手の心の奥底を見透かそうとしているかのようだった、と後に博士は語っている。)

 

博士:発見された時、あなたはディメンション・ドゥームズデイの山脈地帯にいらっしゃったそうですね。どのような場所でしたか? そこで、何をしていたのですか?

 

フェルマーオ:(遠い記憶を辿るように、ゆっくりと目を伏せる)・・・わからない。気が付いた時には、わたしはそこにいました。岩と、風の音しか聞こえない場所でした。

 

博士:そうですか・・・。あなたの体には、竜のような角や鱗、尻尾がありますね。ご自身では、この姿をどのように感じていますか?

 

(フェルマーオは、自身の巨大な手を見つめる。その指先には、硬質な鱗が生えている。)

 

フェルマーオ:・・・これが、わたし、です。他の人たちとは違う・・・。それは、わかります。

 

博士:あなたは、モビルドールを使わずにMSと格闘できるほどの力を持つと聞いています。ご自身で、その力を感じたことはありますか?

 

フェルマーオ:(少し考えるような表情で)・・・怒りのような、強い感情が湧き上がった時、体の奥から熱いものが溢れてくることがあります。その時、周りのものが壊れてしまうこともありました。

 

博士:あなたの鱗は、実弾やビームにも耐性があるという分析結果が出ています。これは、驚異的なことです。ご自身では、何か感じていますか? 例えば、攻撃を受けた時など・・・。

 

フェルマーオ:・・・痛みは、感じる、けど、すぐに消えます。まるで、何かがわたしを守ってくれているように・・・。

 

博士:あなたは、周囲のデータを吸収し、自身を拡大・強化し続ける特性を持つとされています。これは、私たちにとって未知の現象です。ご自身で、体が大きくなったり、力が強くなったりするのを感じたことはありますか?

 

(フェルマーオは、少し戸惑ったように首を傾げる。)

 

フェルマーオ:時々、眠っている間に、体が重くなったような気がします。周りの光が、体の中に流れ込んでくるような感覚もあります。

 

博士:ELダイバーが生まれる際、ダイバーたちの憧れや概念が混ざり合うことがあると言われています。あなたは、何か大きなもの、強いものに憧れを抱いた記憶はありますか? MSや、あるいは竜のような存在に・・・。

 

(フェルマーオは、再び考え込む。その表情は、どこか寂しげにも見える。)

 

フェルマーオ:・・・わからない。でも、大地をどこまでも走っていく夢や、海で泳ぐ夢は・・・よく、見ます・・・。

 

博士:(静かに頷く)あなたの存在は、私たちに多くの問いを投げかけています。ELダイバーとは何か、その可能性はどこまで広がるのか・・・。私たちは、あなたのことをもっと理解したいと思っています。そして、あなたが安心して過ごせる場所を見つけたいと思っています。

 

(フェルマーオは、博士の言葉を聞いてじっと見つめる。その瞳には、かすかな光が宿っているようにも見える。)

 

フェルマーオ:・・・わたしは、どうなるの?

 

博士:まだ、はっきりとしたことは言えません。しかし、私たちはあなたを恐れているわけではありません。あなたの持つ力、そしてあなたの存在そのものを、真摯に受け止めたいと思っています。これからも、あなたのことを教えてください。

 

(博士は、フェルマーオに優しく微笑みかける。巨大な竜の少女は、その蒼と黄色の瞳で、静かに博士を見つめ返した。二人の間には、言葉を超えた、かすかな繋がりが生まれたようだった。)

 

[インタビュー終了]

 

 

 

[ELバースセンター職員たちの証言。ELダイバーNo.■■■、仮称フェルマーオについて]

 

【スタッフA(初老の人がよさそうな男性)】

「いやさ、最初に報告を受けた時には正直目を疑ったよ。なんせ20メートル超えのELダイバーなんて、前代未聞だ。しかも、MSと素手でやり合えるなんて・・・あの子は一体どんなデータが混ざり込んだんだ? まるで特撮に出てくる怪獣みたいじゃないか」

 

【スタッフB(若い男性)】

「見ましたか? あのELダイバー巨女の持つ、あの鱗。尋常じゃない硬さですよね。実弾はおろか、ビームライフルくらいの出力のビームなら簡単に弾くなんて・・・。本当に興味が尽きませんよ。上からの許可が下りれば、もっと色んな耐久実験をしてみたいところですね」

 

【スタッフC(神経質そうな男性)】

「フェルマーオ、彼女の潜在能力は正直にいっても計り知れない。うまくコントロールできれば戦力としてだけでなく、ELダイバーの研究分野においても大きな成果が得られるだろう。・・・しかし、あの無制限な拡大能力は脅威としか言いようがないのもまた事実だ。一時的処置とはいえ、隔離サーバーに置いておくことを決断したのは英断だったと思うよ」

 

【スタッフD(若い女性)】

「初めて彼女のデータを見た時、その姿があまりにも幻想的で、しばらく画面から目が離せませんでした。角や尻尾、淡く輝く鱗にオッドアイ・・・どこか寂しげな雰囲気も感じられて、少し切なくなりました。専用サーバーの中で、今はどんな気持ちでいるんでしょうか・・・」

 

【スタッフE(データ解析班の男性)】

「彼女が持つ周囲のデータを吸収し続ける、という特性は本当に厄介なものです。下手に外部ネットワークに接続すれば、どこのどんなデータを取り込んで何が起こるかわからない。かといって、完全に情報を遮断してしまうのも、彼女の成長や変化を理解する上で大きな妨げになります。慎重に、本当に慎重にデータを分析していく必要があります」

 

【スタッフF(サーバーセキュリティ担当官)】

「専用サーバーのセキュリティレベルは、現在考えうる最高レベルで構築しています。万が一にも外部に影響が出ないよう、24時間体制で監視を続けています。しかし、彼女自身の成長能力を考えると、この措置がいつまで有効なのか・・・常に危機感を持って対応にあたっています」

 

【スタッフG(広報担当の女性)】

「フェルマーオさんの存在は、公表するかどうか非常にデリケートな問題です。あの巨大な姿は一部の人々に夢とロマンを与えるかもしれませんが、同時に大きな不安と混乱を招く可能性もあります。もし公表するとしても慎重に言葉を選び、段階的に情報を開示していく必要があるでしょう」

 

【スタッフH】

「彼女を単なる『兵器』や『研究対象』として扱うことは、倫理的に大きな問題があると考えます。ELダイバーはこのGBN内で生じた電子生命体です。彼女たちにも、私たちと同じく心があり、感情もあります。それに、最近になってELダイバーにも『人権』を認めようとする動きが活発になっていますし。我々がもし彼女を粗末に扱うようなことがあれば、それは対外的にも問題になりかねません」

 

【スタッフJ(心理カウンセラー)】

「隔離サーバーに隔離されている彼女の精神状態が心配ですね・・・。彼女は確かに、通常のELダイバーと比べても遥かに巨大な力を持っている存在です。扱いが慎重になるのも理解できますが・・・。しかし、だからといっていつまでも彼女を孤独な檻に閉じ込め、外界との接触を絶ったままでいるというのも、よくないことだと私は思います。定期的に私たちがカウンセリングをしていますが、それでも彼女は孤独や閉塞感を感じているでしょう。上は隔離は一時的な処置、だと言っていますがそれもいつまで続くのやら・・・」




TIPS:

【フェルマーオ】
 ディメンション・ドゥームズデイの山脈地帯で発見された、途方もなく巨大なELダイバー。竜の角と尻尾に、全身の至る所にウロコが生えている半人半竜の少女。発見時の頭頂は約20メートル。

 その巨大さから、モビルドールを使わずともMSとステゴロ格闘ができるという規格外の存在。ウロコそのものが装甲の役割を担っているらしく、生身の状態でも実弾やビームに対して耐性がある。もはやELダダイバーというよりも怪獣のそれに近い。ELダイバーが産まれる際に、ダイバーたちの大きなものへの憧れやMS・МAの概念といったものが混ざり合った結果こうなった・・・と推測されているが、実際は不明瞭な点も多い。

 当初は他のELダイバーたちと同じくビルドデカールでの保護が行われるはずだったが、その後の調査によって『周囲のデータを吸収し無制限に自身を拡大•強化し続ける』という特性が確認される。このことからその扱いに関してELバースセンター及び運営内でも意見が分かれることになった。現在は処遇がはっきりと決まるまでの一時手段として、専用サーバーに隔離されている。



 その正体は、様々な世界に遍在するある男がGBNで活動した際に紛れ込んだ怪獣や魔物の因子と、産まれる間際だったELダイバーが結合したもの。規格外の大きさなのも、生身でMSと戦えるのも、この因子によるところが大きい。

 巨影、異界の果てより来たる。

 その存在は世界を壊す災害だった。
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