サイド・ダイバーズメモリー   作:青いカンテラ

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過去キャラを発掘して再利用なので初投稿です。


【ショートショート/メンコ】
メンコ/じーびーえぬ発掘隊!(配信回)


 G-TUBE。

 

 それはGBNと連動している動画サービスであり、GBN内やダイバーギアだけでなく、アカウント連携しているPCやスマートフォンから簡易ログインすることでも視聴することができる。

 

 また動画の投稿や配信もでき、利用者たちは編集した動画を投稿したり、あるいは配信用カメラを通じてGBN内で配信活動を行うこともできる。それらのサービスを用いてG-TUBEに動画投稿、配信をするダイバーたちを、G-TUBERと呼ぶ。

 

 新しいG-TUBERは毎週のように現れ、そして流星のようにあるいは線香花火のように消えていく。そう、世はまさに大G-TUBER時代。

 

 G-TUBERの活動は主として各種ディメンションの探訪、膨大な数に上るミッション攻略、あるいは腕自慢なリスナーたちとの凸待ちフリーバトルなどが挙げられる。中には深夜のラジオ配信や、ただ雑談配信のみに特化しているG-TUBERもいるが、全体から見れば少数派だ。

 

 G-TUBERの配信、活動内容は多種多様だ。規約に反しないのなら大抵のことはしてもいい。多様性への配力が叫ばれる昨今。大多数とは違う道を進んでいる彼ら、彼女らがいることは、誰かに強制されずとも確かに多様性が存在していることの証なのだろう。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ◇◇◇

 

 ◇◇◇

 

 

 

「―――あーあー、マイクテスマイクテス。センパイたち、聞こえてるカナー?」

 

 中央に四角いテーブルと、二人掛けのベンチが置かれている質素な部屋。初期のフォースネストとして支給されるその部屋で、狐のお面で顔を隠した少女が、配信モードのハロカメラへと語りかける。

 

 彼女の名はメンコ。常に何かしらのお面で顔を隠した異色のG-TUBERであり、GBN内の様々なトピックを拾っては配信のネタにしている『発掘系』G-TUBERでもある。チャンネルの登録者数こそ少ないものの、リスナーたちを『センパイ』と呼ぶ彼女は静かな人気があった。

 

【視聴者コメント】

『ばっちり』

『グーなのです』

『じゃあこっちはパーだ』

『なら俺はチョキ』

『じゃんけんしてんじゃねえよ』

『さて、今日はどんなトピックスがあるのかな?』

『最近GBNも物騒だから、明るい話題で頼む』

 

「あ、ちゃんと映ってるし聞こえてるね。よしよし。それではそれでは、メンコの『じーびーえぬ発掘隊!』配信始めるよ~」

 

 ふりふりと余った袖を振るメンコ。明るいピンクのツインテールに、ダボッとして袖の余っている上着。そしてその時の気分で変わるお面。それが彼女を構成するアイデンティティだった。

 

【視聴者コメント】

『おー』

『はじまた』

『萌え袖いいぞ~、これ』

『速く紹介してくれ!もう待ちきれないよ!』

『メンコちゃん今日もかわいいね』

 

「センパイたち今日も元気だねー。あ、かわいいって言ってくれてありがと~。それじゃあまずはこの話題から~」

 

 ごそごそとテーブルの下からフリップを出して、ドン☆と置くメンコ。そこには達筆で『速報!ヴァルガに七色の珍獣現る!現代の怪異か!』との文字が書かれている。

 

「センパイたちもご存じだと思うけど、あの悪名高いハードコアディメンション・ヴァルガに珍獣が現れるって話だねー。なんとこの珍獣、七色に光るウマに乗ってるらしいよ。すごいね、七色に光るウマだって。眩しそう」

 

 モヒカンの巣窟、GBNの世紀末の部分、チンパンランド、などなど様々な異名・悪名で呼ばれるヴァルガに現れるという珍獣。何やらそれは七色に光るウマに乗って現れるらしい。掲示板のヴァルガスレでも度々話題に上がっているし、G-TUBEにも動画が出回っていることから、メンコが拾ってきた本日の話題第一号だった。

 

【視聴者コメント】

『ヴァルガの珍獣?』

『あー、あれだろあれ』

『七色に光るウマって確実にあいつじゃん』

『知ってる知ってる。ゲーミング馬術部でしょ』

『違います』

『ヴァルガって定期的に変なのわくよな・・・』

 

 視聴者コメントが続々と流れていくが、どれも微妙にぼかしたもので、直接的に触れようとはしていない。別にその存在が禁忌だから触れようとしていないとかいうことではない。ただみんな知ってはいるが、メンコが答えを口にするのを待っているのだ。いわばこれは『振り』なのである。

 

「もー、その反応はセンパイたちみんな知ってるくせにー。ま、いいけどねー。というわけで正解は、虹の彼方から帰って来たチンパンこと、アッサルさんでしたー。聞くところによるとものすごく強いらしいね? ヴァルガにいつもいる人たちでも敵わないとか?」

 

【視聴者コメント】

『知 っ て た』

『今 年 も 申 年』

『翻訳アプリが仕事を放棄する女』

『チ ン パ ン を 極 め し 者』

『エブリデイ申年』

『珍獣、珍獣か?珍獣かも』

『GBN広しと言えどゲーミング風雲再起なんてもの乗り回してるのはあのチンパンくらいだろうな』

『強さはガチ』

 

「あえ? えーと、今年も申年? 申年なんだ? えーと、翻訳アプリが仕事を放棄すると・・・。翻訳アプリが匙を投げることってあるんだねえー。チンパンを極めし? 極めるものなんだ、チンパンって」

 

 アッサル、その名前が出るだけでコメントがどんどんと流れていく。その怒涛のコメントの奔流に、メンコも読み上げるのが追いつかない。普段は同接数が100人いけばいい方なのにかかわらず、アッサルの話題が出ただけで同接が一気に3倍くらいに増えた気がする。

 

「んん~、アッサルさんって本当に色んな意味で有名なんだねえ。コメントを読むのも追いつかないよ。それじゃあ、お次はそんな話題のゲーミングチンパンさん、動画を見つけてきたからいまから流すね~」

 

【視聴者コメント】

『ゲーミングチンパンw』

『それだと意味が変わって来るから!』

『ゲーミングチンパン草』

『あの申年の動画ってあるんだ』

『掲示板で撮影企画上がってたくらいだし、あるだろうそりゃ』

『ああ、珍獣撮影したら10万BCとかいうあれ』

『そんな企画あったんだ・・・』

 

 流された動画は、ヴァルガで暴れまわっているアッサルを望遠から撮影している動画だった。1680万色に輝く風雲再起に乗り、ペイルライダー系の機能と武器を集約した機体『フォースライダー』が、群がるヴァルガのモヒカンたちを文字通りに千切っては投げ千切っては投げ、時にツヴァイハンダーで三枚おろしにしている。中にはあまりの強さに恐れをなして逃げ出す者もいたが、きっちりと追い回して頭からツヴァイハンダーで真っ二つにしていた。

 

【視聴者コメント】

『この猿ゥ!』

『ウッキー!今年も申年!』

『ほんとにゲーミングに輝いてやがる、ウマが』

『これがウマびょいですか』

『やだよこんな虹色に光ってるの』

『タキオンの薬でも飲んだかな』

『なんでペイル系4種類全盛りしてちゃんと戦えてるんですかね・・・』

『A.今年も申年だから。』

『お前は何を言っているんだ?』

 

 続く映像では、新たに現れた4機のカスタムガンプラが、アッサルへと果敢に攻め入っていた。まずイフリートの改造機がショットガンを乱れ撃ちながら突っ込むも、速度に反応され両脚をツヴァイハンダーで両断され土ペロ。続いてガンダムピクシーの改造機が奇襲をかけ、ケンプファーベースと思われる機体が援護する。しかし自身を囲むように展開したファンネルを全て即行で叩き落すと、次なる獲物に狙いを定めて試作型シェキナーをぶっ放す。なんというか、あまりにも無茶苦茶な戦い方だった。反応速度が人間の限界を超えているとしか思えない無法っぷりである。

 

 ちなみに映像は突如撮影者の方を向いたアッサルのフォースライダーが撃った試作型シェキナーのビームが間近に迫ったところで終わっている。むしろここまでよく撮れたものだと賞賛してもいいくらいだろう。

 

【視聴者コメント】

『何この、なに?』

『こいつほんまに人間か?』

『いいえ、猿です』

『人間は何を捨てればここまでになれるというのか』

『そのチンパン、練り上げられている。至高の領域に近い』

『至高の領域にあるチンパンってなんだよ』

 

「はーい、動画終わり~。すごいバトルだったね~。ヴァルガにいる人たちってみんなこんな感じなのかな?」

 

【視聴者コメント】

『極一握りの意味わからんやつらだけです』

『こんなんできるのはトップランカーとかだけやで』

『野生のトップランカーや』

『これがデフォだったら対戦環境魔境すぎる』

『ヴァルガの中でも一部の意☆味☆不☆明な強さしてる奴だけが許されるムーブ』

『これは上澄みも上澄みも上澄みも上澄みなんで』

 

 スン・・・となるコメントたち。さすがにアッサルほど人間性をチンパンに捧げているようなダイバーはいないのである。ランキング戦のトップ層の対戦環境は魔境だが、その下に広がる層はわりと普通の人間たちなのだ。たまにその中からよくわからないのが飛び出してくるだけで。

 

「さてさて、ここに取り出したるはお次の話題です」

 

 アッサルの話題をほどほどのところで切り上げ、メンコは次のフリップを取り出す。そこに書かれているのは『恐怖!サメ怪人現る!ペリシアの街にサメの雨が降る!』というタイトルだった。

 

【視聴者コメント】

『サメ?』

『シャーク!』

『YO!それってYO!』

『あれ、おかしいな。つい最近それ見た気がする』

『もしかして、サメ』

『もしかしなくてもサメ』

 

 サメ、ペリシア、という単語だけで大体何が出てくるのか察したセンパイ視聴者たち。だが直接的なことは言わない。メンコが答えを口にするのを待っているのだ。

 

「ところで~、センパイたちは『デルフィニウム』っていうアイドルユニットは知ってる?」

 

【視聴者コメント】

『いや、知らないな』

『なんか名前だけは聞いたことがあるようなないような』

『なんだっけ、いま売り出してるガンプラアイドル?』

『あー、なんかセントラル・エリアのマスダイバー襲撃事件の時に解決したとか』

『あったなそんなのも』

『そのガンプラアイドルがどうしたんだい?メンコちゃん』

 

 そんなコメントの流れを見ながら、メンコは狐のお面からぺろりと舌を出した笑顔の少女のお面へとお面を付け替える。そして、人を小馬鹿にしたような甘ったるい声でコメントのセンパイたちに振り向いた。

 

「ふっふっふー、デルフィニウムを知らないなんてまだまだだねー、セ・ン・パ・イ・た・ちは♪ 仕方がないからこのメンコちゃんが教えてあげよー!」

 

【視聴者コメント】

『メスガキ後輩・・・!』

『メンコちゃんのちょっとウザい後輩感すこ』

『あ゛あ゛~』

『お面で表情わからないはずなのにムカつくドヤ顔が見える見える』

『身振り手振りと声の感じで表情が見えるんやろうな』

『リアルは役者だったりしない?』

 

「んふふ、それはねー、ひ☆み★つ! さてさて、前置きはこれくらいにして~、早速だけどデルフィニウムの動画流しちゃうね!」

 

 ポチッとな☆とメンコが動画の再生ボタンを押す。そして流れ出した映像は、サメだった。多くのダイバーたちが集うペリシアの街を、突如として現れた邪悪なサメが襲い、竜巻となって飲み込まんとしていた。空を覆いつくす見渡す限りのサメサメサメ。本来ならば海に生息しているそれが、宙を飛び渦を巻いているのだ。

 

【視聴者コメント】

『な ん だ こ れ は』

『サ メ 旋 風』

『シャ ー ク ト ル ネ ー ド』

『あなたの街を襲うサメの群れ』

『目を覚ませ僕らのGBNがサメに侵略されているぞ』

『サ メ が 攻 め て 来 た ぞ』

『ブレイクデカールを使うサメ、ブレイクシャークか』

『なんてもん取り込んでんだよ』

『次のサメ映画はこれで決まりだな』

『やめろ、ほんとに出かねんからサメ映画は』

 

 様子がおかしいサメにコメントのセンパイたちも困惑を隠せない。なぜサメなのか。なぜペリシアを襲うのか。すべてはサメのみぞ知る。

 

「いやー、ほんとにすごいよねこれ。サメだよ? サメ。今問題視されてるブレイクデカールを使ってすることが、サメの群れでペリシアを襲うことだなんて、サメの考えることはよくわからないよね」

 

【視聴者コメント】

『あ、元に戻ってる』

『メスガキモード終了』

『メンコちゃんも狐のお面に戻るほどのサメ濃度』

『メンコちゃんサメのお面とかあるの?』

『すべてはサメになる』

『元に戻らないで』

 

 いつの間にか元の狐のお面に戻っているメンコ。サメインパクトの前には、彼女もメスガキモードが強制解除されてしまったらしい。あまりにも短い出番に残念がるセンパイコメントたち。

 

 そんなコメントを横に動画は続く。ペリシアを襲うサメに立ち向かうのは、三人のアイドルたち。全員F91ガンダムのカスタム機で揃えている彼女たちは、現在GBNで配布されている『魔法少女VSサメ怪人』のコラボ魔法少女衣装に身を包み、びしっと劇中のポーズを取ると果敢にサメとの戦いに身を投じる。大量に放たれたサメビームを、最大展開された光の盾が防ぎ切る。そこにすかさず大型のビームキャノンとヴェスバーで攻撃を加えてサメの数を一気に減らしていく。そして最後に残った一体へと、ビームサーベルを展開して斬りかかっていく。相手がマスダイバーもといマスサメダイバーでなければ、何かのガンプラバトルショーかと勘違いしてしまいそうだった。

 

【視聴者コメント】

『サメー!』

『サメは死なん、何度でも蘇るさ!』

『サメの大群を薙ぎ払って行くの気持ちええ』

『いけー!やれー!フカヒレにしろー!』

『これじゃあガンプラアイドルってよりかは魔法少女だよ』

『元ネタは魔法少女とサメの怪人が戦うっていうストーリーだし、多少はね?』

『敵がマスダイバーなのだけが残念だな・・・。そうじゃなければショーか何かとして見れたのに』

『素晴らしいサメショーとは思わんかね』

『サメの解体ショーの始まりや』

 

 魔法少女・・ではなく、デルフィニウムのガンプラアイドル三人の連携によってマスサメダイバーが撃破されるかと思った矢先、サメが再生し巨大化する。ブレイクデカールの邪悪な力は、サメに強力な再生能力を与えていたのである。しかし巨大化は負けフラグとはよく言ったもので、巨大化して暴れていたサメは、邪竜の放った世界を終焉に導く一撃で塵も残さず消滅したのであった。

 

【視聴者コメント】

『うぉぉぉぉ!クオンちゃん最強!クオンちゃん最強!』

『お前もクオンちゃん最強と言いなさい』

『っぱジャバウォックよ』

『相変わらずめちゃくちゃな火力してやがる・・・』

『デルフィニウムの三人も追い詰めるまでに頑張ってたな』

『俺、デルフィニウムのファンになります』

『デルフィニウムも頑張った!強かったぞ!』

 

「はい、動画終わりー。センパイたちどうだった? 魔法少女VSサメ怪人、見てみたくなったカナ?」

 

【視聴者コメント】

『いやそっちはいいかな・・・』

『もうサメはお腹いっぱいや』

『サメのゲシュタルト崩壊起こすかと』

『ただこれ、コラボ期間中だからまだまだサメを見ることになるんだよな・・・』

『勘弁してくれよ』

『お前もサメにならないか?』

『サメになれば解決する。お前もサメになれ』

『インタビューでデルフィニウムの三人がぐるぐる目になって魔法少女VSサメ怪人は最高!って言ってるの草』

『なにがあったんだいったい』

 

 魔法少女VSサメ怪人、元は単発のOVAから始まったそのシリーズは、ニッチな需要があるアニメシリーズだった。それが何の因果かGBNとコラボし、それが切っ掛けなのかサメのマスダイバーが暴れ、そして魔法少女に扮したアイドルユニットが戦うという劇中さながらの展開になるなど、誰が予想しえただろうか。すべてはサメの意志、すべてはサメとなる。

 

「んっふふふ、そんなわけでね。時間もいい感じだしそろそろ枠終わりまーす」

 

【視聴者コメント】

『え』

『勝手に終わるな』

『もっとセンパイとのトークを楽しんでいけ』

『あっという間だったな』

『毎秒配信して』

 

「わたしもー、もっとセンパイたちとダベりたいんだけどねー、りあるのつごーというものがあるのです。また次回、配信で会えたら嬉しいな! 待て次回! お疲れ様でしたー!」

 

【視聴者コメント】

『(`・ω・´)ゞ』

『乙』

『配信乙』

『お疲れー』

『乙カレ。次回も楽しみにしとるで』




※「アッサル」「フォースライダー」はX2愛好家さんよりお借りしました。

※守次 奏さん作「ゆるふわお姉さんのGBN探訪禄」より「デルフィニウム」をお借りしています。

TIPS:

【メンコ】
 G-TUBEに投稿されている動画や、GBNの掲示板で話題になっているダイバーを独断と偏見でチョイスし、配信枠内で紹介している発掘系G-TUBER。ダイバーネームの由来はお面のアクセサリーパーツで顔を隠していることから、お面の子→面子→メンコという連想である。

 服装は手がすっぽりと隠れるほどに袖の余る服に、オレンジ色のスカート。顔に付けているお面は狐、ひょっとこ、おかめ、白い髭を蓄えたお爺さん、天狗といったある種定番のものから、縁日で見かけるヒーローモノのお面まで多種多様。その時の気分や状況によってあれこれと付け替えているが、狐の面をつけていることが多く視聴者からは「基本形態」と呼ばれているとか。
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