デュアルウィンド/最速への挑戦状
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―――あなたがGBNでワクワクすることはなんですか?
その質問の答えは、人によって変わってくるだろう。それは例えば強敵とのバトルだったり、例えばドロップアイテムの確認だったり、例えばミッションの高評価クリアだったり、例えばディメンションを旅する中での出会いだったり・・・もしかしたら答えを探している最中かもしれない。
なら私はどうか。私、シュンがこのGBNでワクワクするものとは何か。それは―――
『―――さあ、勝負は最終直線に持ち込まれた! 先頭を走るリリカねーちゃん、このままゴールまで逃げ切れるか!』
私がワクワクするものは、そう、『バンデット・レース』だ。ディメンション・シュバルツバルトの中心部。世界の主要都市をそのモチーフにしているという『ハイウィンド・エリア』を一周する超巨大高速道路『ストレイ・ハイウェイ』を舞台にして、週に三度行われるそのレースは、このGBNで『最速』という夢と熱に魅入られた走り屋ダイバーたちが鎬を削っている。
そのバンデット・レースの絶対王者『パロッツ・パーティー』と、彼らが直々に招待状を送ったという新進気鋭のガールズフォース『アナザーテイルズ』のレースが今日行われるという話を小耳に挟んだ私は、このディメンション・シュバルツバルトで出会ったELダイバー、ストラちゃんと一緒にそのレースを観戦することにしたのだった。
最初こそレースの流れを掴んでいたパロッツ・パーティーも、アナザーテイルズの〝コースの壁をぶち抜いてゴールまで直通にする〟という奇策にハマり、三機いたパロットスクランブルのうち二機が大破。残り一機は爆炎に飲まれた。その好機を逃さず、ガンダムAGE-1をカスタムビルドしたと思しきガンプラが、光波推進の光の尾を引きながらゴールに向かって加速していく。
けれどそこはバンデット・レースの絶対王者たるパロッツ・パーティー。ただ黙ってやられるなんてことはなくて、爆炎を切り裂くように飛び出した最後のパロットスクランブルが、炎を纏ったかのように鮮やかな真紅に輝きながら加速する。
ただ一つのゴールを目指して突き進む白と赤の機体。先行するAGE-1の改造機に真紅の翼を広げる王者が追いすがる。両者の距離は見る間に縮まって、追いつき追い抜こうとする。まさにデッドヒート。その壮絶な競り合いに私は目を離せない。隣でレースを観ているストラちゃんも同じなのか、繋いでいた手の力がぎゅっと強まった。
残り数百メートル。ゴールはもう目と鼻の先にまで来ている。このままもつれ込むかと思った矢先、紅に染まる王者を突き放すように、AGE-1の改造機が
『―――ゴォォォォォル! ゴールだ! 勝ったのは『アナザーテイルズ』! そしてダイバー『リリカ』ねーちゃんが操る『AGE-1ブランシュティターニア』が最後の最後に絶対王者を突き放したぁぁぁ!』
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
一瞬の静寂と、湧き上がる歓声。悲鳴。悲喜交々混ざり合った熱狂の渦の中で、私は放心していた。すごいレースだった・・・。今まで見たレースの中でも、ベスト10に数え入れてもいいくらいには。特に最後の、AGE-1ブランシュティターニア、という機体が見せた加速。トランザムのような特殊なシステムか、固有の必殺技なのかは分からないけれど、あの一瞬の加速がレースの勝敗を分けたのは間違いないだろう。
「―――シュン! シュン! あの、さっきのレース、すごくてすごかったですね! とにかくすごいです!」
「ストラちゃん・・・。そうだね。すごいレースだった」
興奮冷めやらぬといった様子で、片方だけの羽をパタパタと動かしてぴょんぴょんと跳ねるストラちゃん。そんな彼女の姿もかわいいなあと思う。
「・・ストラちゃん、ワクワクした?」
「はい! ワクワクしました! とても、心から!」
そう言ってストラちゃんは、互いの健闘を称えるように握手を交わしているパロッツ・パーティーとアナザーテイルズに目を向ける。
「シュンは言ってくれました。心からワクワクすることがきっとやりたいことだって」
「・・・うん、そうだね」
思い出すのはストラちゃんと初めて出会った時のこと。生まれたばかりで自分が何をしたいかも曖昧だった彼女に、私はそう言ったんだ。いやー、我ながらガラじゃないこと言ったなあ、なんて。
「その言葉の通りにストラはやりたいことを見つけました。バンデット・レース・・・それがストラのやりたいこと、です!」
輝くようなストラちゃんの笑顔。後になって思えばそれは、最速の世界を観ている側でしかなかった私をその舞台へと誘う招待状に違いなかった。
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【バンデット・レースについて語るスレpart□◆□】
………
……
…
77:名無しの走り屋
【速報】鳥、無名のフォースに敗北
78:名無しの走り屋
まさかパロッツ・パーティーが負けるとはなあ
79:名無しの走り屋
絶対王者陥落か
80:名無しの走り屋
まあ、勝負事である以上は何事も絶対はないってことよ
81:名無しの走り屋
バンデット・レースはダイバーの腕のみで決まらず。機体の性能のみで決まらず。ただ結果のみが真実!
82:名無しの走り屋
フォックスリリース!
83:名無しの走り屋
狐が逃げてて草
84:名無しの走り屋
ちーがーうーだーろー?
85:名無しの走り屋
そういやあっちの決闘はわりと何でもあり気味というか、場外乱闘上等だったな
86:名無しの走り屋
勝てばいいんだ何を使おうが
87:名無しの走り屋
俺たちの鳥が無名のフォースにジャイアントキリングされる。それもまた乙なものよ
88:名無しの走り屋
今回も鳥に賭けてたんだが、見事に負けたわ。まさかコースごとぶち抜いてくるとは・・・
89:名無しの走り屋
今元締めやってるリビルドガールズの銭ゲバも壁抜きは狙ってたんだ、何もおかしなことじゃあないぜ
90:名無しの走り屋
場外からの攻撃以外のあらゆる妨害行為ができるんだから、コースぶっ壊すくらいは普通だよ
91:名無しの走り屋
なんなら核ぶっぱすらもここじゃ合法だからなあ。やるやついないけど
92:名無しの走り屋
MS何機も並べられる広さがあるとはいえ、コース上で核なんか使ったら逃げ場無くて巻き込まれるからな
93:名無しの走り屋
だがそれがA・BB!だったら?
94:名無しの走り屋
ストレイ・ハイウェイが吹っ飛んじゃったわ・・・
95:名無しの走り屋
レースどころじゃねえんだわ
96:名無しの走り屋
すまないが走り屋以外は帰ってくれないか!
97:名無しの走り屋
くそぅ、銭ゲバの口車に乗せられてなけなしのBC賭けてなければなあ。懐が寒いわ
98:名無しの走り屋
俺はアナザーテイルズに賭けたから大勝利ですわ。へへへ
99:名無しの走り屋
今回アナザーテイルズの倍率かなり高かったからなあ
100:名無しの走り屋
許せねえ・・・
101:名無しの走り屋
今回の負けは次に取り返せばええんや
102:名無しの走り屋
それ破滅する考えなんだよなあ
103:名無しの走り屋
走り屋は宵越しの金は持たねえ!全ツッパだ!
104:名無しの走り屋
ジャイアントキリングなんてそうそう起こるようなものでもないし、賭けは鳥安定かねえ
105:名無しの走り屋
それがありえるかも!と夢見るのがおもしれぇのよ
106:名無しの走り屋
勝負に絶対の二文字はねえからな
107:名無しの走り屋
あのチャンプだって負けたことあるからな
108:名無しの走り屋
俺はこれからも一発逆転の夢に賭けてチャレンジャーにベットするぜ
109:名無しの走り屋
走り屋の夢は!終わらねえ!
…
……
………
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フォース『パロッツ・パーティー』。彼らについては、GBNの掲示板あたりをざっと見てみればおおよそのことを理解できるかもしれないし、理解できないかもしれない。ただ確かなことは、パロッツ・パーティーの面々は変態でそして紳士だということ。
デフォルメされた鳥の被り物に全身タイツ。リアルで遭遇したら即刻通報されるような恰好をしているけれど、その実力は本物だということ。おかしな見た目をしていても、伊達にバンデット・レースの絶対王者として君臨してはいないのだ。見た目はおかしいけど。
そんな変態の編隊ことパロッツ・パーティーが、いま、私たちの前にいるわけで。いままでは観客席から遠目に見ているだけだったけど、こうして間近で見てもやっぱりその格好は変態にしか見えない。これで中身はいたって紳士的というのだから、ギャップの温度差で風邪を引いてしまいそう。
「ハハハハハ! フォース『オラージュ・ワゾー』の諸君、初めましてだな! 私の名はハート。このパロッツ・パーティーのリーダーをしているものだ!」
「あ、はい。どうも・・・。私が『オラージュ・ワゾー』のリーダー、シュンです」
「はい! ストラはサブリーダーのストラです!」
「フハハハハ! 元気のいいお嬢さんだ!」
ビシッ、と手を挙げて挨拶しているストラちゃんは置いといて、すっと握手を求められたのでこちらも応じる。いくら相手が変態チックな見た目をしているといっても、それは礼を失する理由にはならない・・・と思う。握った手がごつごつしているのは、男性だからだろうか。GBNのアバターの再現度は高いとは聞くけど、こんな細かいところまで再現しているのかと感心してしまう。
「噂には聞いていましたけれど、本当に鳥の被り物に全身タイツ、というふざけた姿をしているのですわね?」
「ちょっと、ドラリンド」
ふいに口を開いたのは、頭に山羊のような角がある金髪少女。名前はドラリンド。私たちのフォースのメンバーの一人で、今はお嬢様っぽい口調をしているけれど実際は・・・いやそれは今は関係ないか。そんなドラリンドのぶしつけな言葉にも、ハート・・・さんは気分を害したというようなこともなく、テンション高めに笑う。
「フハハハハ! よく言われるとも! だが安心してほしい、サーキットでは本気で君たちと競い合おう。バンデット・レースは『ガンプラバトル』と『レース』とを融合させた究極の遊戯。互いに全力でぶつかり合い最速を競い合ってこそ魅力が増すというものだからな!」
さいですか。こちらとしても手を抜く気は全くないけれどね。・・・そもそも、ことバンデット・レースにおいては何百周何千周とストレイ・ハイウェイを走っている彼らの方が圧倒的に優位なのだから、本気を出さないなんて択は最初からないけども。
「さあ、貼った張った! 今宵のレースはにーちゃんねーちゃんたちもご存じの絶対王者『パロッツ・パーティー』と、今回初参加のガールズフォース『オラージュ・ワゾー』との戦いだ! オラージュ・ワゾーはあの悪名高いヴァルガ横断を果たしたって噂もあるぜぃ! まさかまさかのジャイアントキリング再びもありえるかもねぃ!」
「パロッツ・パーティーに!」
「俺はオラージュ・ワゾーだ!」
「せっかくだから俺はこの赤い鳥に賭けるぜ!」
レース前の集合場所として指定された、ハイウィンド・エリアの一等地にあるバーの一角。そこでは〝会いに行けるELダイバー〟こと『リビルドガールズのチィ』がトトカルチョをしている。噂では口先三寸で在庫のガンプラを客に買わせる彼女はいま、その話術でもってして集まっているダイバーたちに賭け金を賭けさせているのだった。
ちらっと見た感じ私たちに賭けてる人は少なさそうだ。それもそうか。私たちはバンデット・レースへの参加自体今回が初めて。実力も未知数なフォースにベットするとしたら、それは一発逆転を夢見るギャンブラーか金の余ってる物好きってところだろう。
「むむ、わたくしたちの掛け金が少ないのではなくて?」
「まあ、私たちはここだと無名だからねえ」
「なら今宵のレースに勝って名を刻むしかありませんわね。俄然やる気が出てきましたわ・・・!」
「シュン、トトカルチョというのは何でしょうか。ワクワクするものなのでしょうか!?」
「ストラちゃんはやらなくてもいいものかなあ」
キラキラとした目を向けてくるストラちゃんからそっと目を逸らす。トトカルチョ、要するにギャンブルだけど、を大穴当てるとワクワクします! と言ってのめり込むストラちゃん、私はあんまり見たくないかなあ・・・。
そう言えば、ELダイバーというのはGBNに蓄積したダイバーの感情データを元に生まれてくる・・・というのを、ELバースセンターにいた耳の長い頼りなさげなおにーさんが言ってたなあ。それならこうしてトトカルチョに掛け金を積んでいる人たちの感情からもELダイバーは生まれるのだろうか。・・・ギャンブル好きなELダイバーなんて、後見人になったら大変そうだけど。
「チ、チィちゃんって、GBNだと・・・あんな感じなんだ・・・」
「あらメレンダさん、ご存じなかったんですの? その筋では有名でしてよ?」
「あ、あたし、よ、傭兵としては・・・その、日が浅い・・・ので・・・へへっ」
「あなた、そんな感じでこの先やっていけるのか心配ですわねぇ・・・」
「し、心配・・・されちゃった・・・え、えへ、えへへ・・・」
ドラリンドに絡まれているのは、目元を隠す黒髪のストレートに黒い猫耳を付けた新米傭兵のメレンダ。陰のオーラを漂わせているこの子が、競争の激しそうな傭兵プレイをどうして始めるにいたったかはわからない。けれどそこは本人なりの考えとか理由とか切っ掛けがあるんだろう。たぶん。
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【バンデット・レースについて語るスレpart◆◆◆】
………
……
…
78:名無しの走り屋
待機
79:名無しの走り屋
レース前待機
80:名無しの走り屋
今日のレースに出るオラージュ・ワゾーってフォース、知ってるやつおる?
81:名無しの走り屋
知らね
82:名無しの走り屋
さあ?
83:名無しの走り屋
パロッツ・パーティーに挑むフォースは有名無名問わずに多いからなあ
84:名無しの走り屋
正直無名フォースについてはよくわからん。専スレあればちょっとはわかるだろうけど
85:名無しの走り屋
確か少し前にヴァルガ横断とかやってたフォースだぞ
86:名無しの走り屋
ヴァルガ横断!?
87:名無しの走り屋
なんでまたそんな命知らずなことを・・・?
88:名無しの走り屋
そこの事情までは知らないけど、スポーン地点から脱出エリアまでを飛んでったらしい
89:名無しの走り屋
ヴァルガもバンデット・レースも危険なものだし、練習か何かでもしてたんかねえ
90:名無しの走り屋
ヴァルガを飛ぶのは回避の練習にはなりそうだな。俺はやりたくないけど
91:名無しの走り屋
あそこで飛ぶって、それだけで集中砲火されるからなあ
92:名無しの走り屋
レース前待機。オラージュ・ワゾーの機体、ゴーストとザク・ファントムとバンシィのカスタム機か
93:名無しの走り屋
パロットスクランブルは相変わらず目に悪い配色してるな
94:名無しの走り屋
マジョーラカラーを活かしきるダイバーなんて鳥以外にはおらんやろなあ
95:名無しの走り屋
まず自分の機体を極彩色に輝かせたいっていうのがおらんやろ。鳥以外は
96:名無しの走り屋
こんなふざけた連中だが実力はガチガチのガチである。バグかな?
97:名無しの走り屋
そして中身は紳士。ギャップよ
98:名無しの走り屋
ここかあ、今夜のレース会場はあ。オラージュ・ワゾー、女の子だけのフォースってことでベットしてきた
99:名無しの走り屋
欲望に忠実
100:名無しの走り屋
そういう賭け方するやつがいてもいい。自由とはそういうものだ
101:名無しの走り屋
しかし鳥たち、リビルドガールズにアナザーテイルズに続いてオラージュ・ワゾーって女の子だけのフォースに縁があるな。その縁をちょっと俺にも分けてくれんか?
102:名無しの走り屋
前二つは招待状送ってるからなあ。やっぱりモテるんは積極的な走り屋ってことよ
103:名無しの走り屋
モテ・・・モテといっていいのか?
104:名無しの走り屋
そろそろレースが始まるぞお前たち
105:名無しの走り屋
おっと、そろそろか
106:名無しの走り屋
期待してるぞオラージュ・ワゾー。ワイのなけなしのBCのためにもな
…
……
………
◇◇◇
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◇◇◇
ストレイ・ハイウェイ・・・。ハイウィンド・エリアを一周する超巨大な高速道路。常闇の世界にあって輝きを絶やさないメガロポリスを生かす大動脈なだけあって、その道は少々入り組んだ形状をしている。長いストレートがあると思えば、細かなカーブが連続していたり、かと思えば中央分離帯で分かれてもいるのだ。
普段は一般開放されてダイバー向けのスーパーカーや大型バイクが思い思いに走っているそこはいま、過激なバンデット・レースの余波が外に漏れないようにビームロープで囲まれ閉じられている。
ハイウェイに並ぶのは私たちオラージュ・ワゾーの三機と、パロッツ・パーティーから選抜された三機。マジョーラカラーを活かしたことで、光の反射でおよそ1680万色に輝く怪鳥たちに、私たちは最速を賭けた戦いを挑むのだ。
あの日ストラちゃんと一緒にアナザーテイルズのレースを見てこの舞台に来るまで、長かったような短かったような日々だった。
ストラちゃんとの機体を作って、フォースを結成して、メンバーが一人増えて・・・。三人でヴァルガに潜って横断しよう! なんて無茶もやったっけ。いまはもう一人増えて四人だけど。ずっと観客席から観ているだけだった最速の世界に、私は今夜足を踏み入れる。
―――3
シグナルが点灯する。スタートをいまかいまかと待ち受けて、操縦桿を握る手に自然と力が入る。
―――2
「ストラちゃん」
―――1
「このレース、楽しもう!」
「はい! ビギニングファントムシヴァルバー、イグニッション!」
シグナルが赤から緑に変わった瞬間、弾かれたようにしてスタートを切る。
「・・・っ、速い!」
『ムッハハハハハ! 先頭は頂いたぞ!』
スタートダッシュは完璧だったと思いたいけれど、それ以上にパロッツ・パーティーの三機が速かった。ホットスクランブルガンダムにデフォルメされた鳥の頭を模したオブジェ、それは元はプチッガイの頭部らしい、を増設したパロットスクランブルガンダムたちは統率の取れた動きで編隊を組んで、メガロポリスの夜景を置き去りにしながらアクセル全開で先行していく。
「鳥さんたち速いです! とっても!」
「むしろ先を飛んでくれるというのなら好都合ですわ。狙いを付けるのに、後ろを向く必要がありませんものね!」
ドラリンドの駆る、ユニコーンガンダム2号機バンシィをベースに改造された『バンシィD-END』が武装を解放する。背中から伸びるアームの先端に接続された、2枚のアームド・アーマーDEの砲口にエネルギーが収束し、太いメガ粒子のビームを発射する。
けれどその攻撃は読んでいたとばかりにひらりとかわされてしまう。後ろに目でも付いてるのだろうかこの鳥たちは。いや、頭はぐるんぐるんと回ってるけど。その頭を回すギミックは果たして必要なのだろうか・・・。
「ドラリンド、連携するよ! ストラちゃん、ビームバルカンを使って! メレンダはライフルで避けた先を狙い撃って!」
「はいです!」
「次は当てますわ!」
「は、はい・・・! え、えへっ、誰かときょ、協力・・・初めて・・・ふへっ」
この子本当に大丈夫なのだろうか。
バンシィD-ENDのアームド・アーマーDEにエネルギーが収束、ストラちゃんは武装スロットからビギニングブレイザーのビームバルカンを選択。メレンダの、ザク・ファントムにデスティニーシルエットを装備して腰にはストフリのレール砲を移植した、ザク・デスティニーがビーム突撃銃を構えた。
パロットスクランブル三機がカーブを曲がるために減速し、開けたところで再び加速する直前にビームバルカンを撃って弾幕を張る。当然のように避けられるけど、その先を読んだ狙撃が襲い、ダメ押しに当たり判定の広いメガキャノンが薙ぎ払う。隙を生じぬ三段構えといったところ。撃墜とまではいかなくても、スラスターにでも当たればそのスピードを大きく削ぐことができるはず・・・。
そう思っていた時期が、私にもありました。
「ウッソだろおい・・・!」
お嬢様ロールが剥がれかけているドラリンドの声が聞こえてくる。それもそのはず。パロットスクランブルは減速するどころかむしろ加速して、私たちの即席コンビネーションから繰り出された弾幕放火を切り抜けたのだ。
繊細な機体操作と強引なブースト。少しでも手元が狂えば即壁のシミになるだろうマニューバ。さすがは百戦錬磨のレーサーにしてバンデット・レースの絶対王者として君臨し続けているだけはある。生半可な妨害では足止めにもならない。
事前に何度もレース映像を見返していて、彼らがとんでもない動きで妨害を潜り抜けるのは分かってはいたけれど、それでもこうして目の当たりにすると冗談じゃないと愚痴の一つも零したくなるものだ。
いまの私には逆立ちしたってあんな変態的なマニューバできない。変態なのは見た目だけにしておいてほしい。・・・といって見たところで相手の速度が落ちるわけでも無し。先行するパロットスクランブルの後ろにつけてスリップストリームを受けながら、私は事前に決めていた作戦を取ることに決めた。
◇◇◇
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【バンデット・レースについて語るスレpart◆◆◆】
………
……
…
211:名無しの走り屋
なんや今の動き
212:名無しの走り屋
変態の変態マニューバ
213:名無しの走り屋
うーん、これは王者の動き
214:名無しの走り屋
なんでそこで加速して避けれるのかがわからない
215:名無しの走り屋
俺らだったら操作をトチって壁のシミになってた(確信)
216:名無しの走り屋
ブレーキはカーブを曲がるときに少しだけ使うものだからな
217:名無しの走り屋
動きだけで言えばチャンプにも対抗できるからな、パロッツ・パーティー
218:名無しの走り屋
グラハムスペシャルを真似て強引にカーブ曲がろうとしたら、曲がり切れなくて壁のシミになったの思い出した
219:名無しの走り屋
>>218
お前だたのか
220:名無しの走り屋
>>218
あん時のブレイブお前だったのか
221:名無しの走り屋
これまでチャレンジャーたちの妨害を幾度となく潜り抜けてきた鳥たちだ、面構えが違う
222:名無しの走り屋
面(デフォルメされた鳥の頭部)
223:名無しの走り屋
文字通り違う
224:名無しの走り屋
いつも思うんだけど、後ろにも目が付いてるんですかねパロッツ・パーティーの鳥は
225:名無しの走り屋
首を回しながら視界を確保してるんだぞ
226:名無しの走り屋
目が回りそうだな・・・
227:名無しの走り屋
さて、バンデット・レースも中盤にまで来たが・・・
228:名無しの走り屋
おおっと
229:名無しの走り屋
出たわね
230:名無しの走り屋
キッッッッッッッッッッッ
231:名無しの走り屋
キモいのキタ━(゚∀゚)━!
232:名無しの走り屋
キモイとはなんだ!気持ち悪いと言いなさい!
233:名無しの走り屋
大して変わらないと思うんですが
234:名無しの走り屋
変わるんだろう。何かが
235:名無しの走り屋
ベースグラブロでここまでキモくできるのはある種才能だよもう
236:名無しの走り屋
ところであれ、鳥としてカウントしていいんですかね?パロットスクランブルはまあ鳥モチーフというのはギリわかるけど
237:名無しの走り屋
ドードラブロズゲーはドードー鳥がモチーフだから鳥だぞ(暴論)
238:名無しの走り屋
ドードー・・・鳥・・・?(宇宙走り屋)
239:名無しの走り屋
どこがだよ
240:名無しの走り屋
バイオなハザードの世界からでも来たんか
241:名無しの走り屋
ドードー鳥じゃなくてBOWなんよ
242:名無しの走り屋
他でもないパロッツ・パーティーがドードー鳥をモチーフにしてるっていうんだからアレは鳥なんだろう
243:名無しの走り屋
ま、まあ、鳥ほどの実力者がそういうなら・・・
244:名無しの走り屋
納得しちゃった!
245:名無しの走り屋
バンシィのカスタム機が残ったか。ミノドラがあるゴーストの改造機と光の翼があるザク・ファントムの方が速いという判断かな
246:名無しの走り屋
判断が早い
247:名無しの走り屋
ハイパー・ビームジャベリンとビームブレイサーの二刀流だとぉ!?
248:名無しの走り屋
ビームトンファーもだ!
249:名無しの走り屋
よく持ってるな
250:名無しの走り屋
これは戦い慣れてる動きだ
251:名無しの走り屋
しかし相手はリビルドガールズ戦でアキノにヒサツワザを切らせたほどの強敵。ユニコーンモードのバンシィ一機で抑えきれるかな
252:名無しの走り屋
ユニコォォォォォォン!
253:名無しの走り屋
NT-D発動か。さすがにユニコーンモードじゃキツいだろうしな
254:名無しの走り屋
戦いはこれからだ
…
……
………
◇◇◇
◇◇◇
◇◇◇
レースも終盤に差し掛かろうとしている。ドラリンドはパロッツ・パーティーが出してきた、辛うじてグラプロの面影が感じられる異形のМAを抑えるために一時離脱。
私とストラちゃんのビギニングファントムシヴァルバーとメレンダのザク・デスティニーが先行するパロットスクランブルを追う形になっている。この長いストレートを越えれば、この先に待ち受けているのはヘアピンカーブが連続するコーナー地点。そこを抜けてしまえばあとはゴールに一直線である。
勝負を掛けるとしたら、パロッツ・パーティーの三機がヘアピンカーブに差し掛かったあたり。さすがのパロッツ・パーティーとて高速度を維持したまま連続するカーブに突っ込んだりしたらタダではすまない。
曲がるために必ず減速をするし、壁に近くなる。そこを狙う。単純に速さだけを競う他のレースであれば許されない作戦だけれど、これは
「メレンダ、作戦通りに!」
「は、はい・・・。あ、あたしにちゃんとできるか・・・わからない、ですけど・・・がんばり、ます・・・えへっ」
作戦といっても、狙いは単純だ。かつて〝アナザーテイルズが取った方法〟をそのまま拝借しているのだから。ヘアピンカーブの壁に向けてメレンダのザク・デスティニーが全火力をぶつけて、破壊した壁を即席の散弾にする。
パロットスクランブルにダメージを与えて落とせれば最高だけど、そこまでうまくはいかないだろう。本当の狙いはゴールまでの道がを拓くこと。一直線に繋がれば、あとはビギニングファントムシヴァルバーの速度でぶっちぎる。それだけだ。
ぐんぐんと距離の開いていくパロットスクランブルの背中を見ながら、予め決めておいた砲撃ポイントに移動してその時を待つ。
『おおっと、これはどういうことだ!? オラージュ・ワゾーの2人が連続カーブの手前で足を止めたあ! もしや前にアナザーテイルズがやってたのと同じことをやろうってことかねえ。二度あることは三度あるなんてコトワザもあるけどよ、今回もうまくいくかこいつは見物だぜぃ。目を離すなよにーちゃんねーちゃんたち!』
チャンスは一度。パロットスクランブルがヘアピンカーブに突入する直前を狙う。マップ上に示したポイントに近づいていって・・・
「お、落ちてください・・・!」
ザク・デスティニーがウルフベイン長射程ビーム砲塔、クスィフィアス3レール砲、ビーム突撃銃でフルバースト。パロットスクランブルが曲がったカーブの壁を破壊するかと思いきや、横から飛んできた何かによって半分ほどが防がれる。ダメだ、ヘアピンカーブの破壊自体には成功したけど、これじゃあ勢いも威力も足りない・・・!
『フハハハハハハハ! そう何度も同じ手は使わせんよ!』
「き、気持ち悪いМA・・・? どうしてここに・・・」
「ドラリンドが抑え切れなかったってことか・・・!」
『ドラリンド女史は確かに強敵であった。だが、勝利はこのドードラブロズゲーがもぎ取ったまでのことよ!』
ムッハハハ、フハハハ、とテンシヨンの高い笑い声をあげながら、半壊してよりグロテスクな見た目になったベースがグラプロであろうキモいМAことドードラブロズゲーは、胴体から生えているテンタクラーを振り回して妨害してくる。よく見ればコースの壁が壊れているし、さっき飛んできたのはコースの壁の破片か・・・!
「シュン、鳥さんたちがどんどん遠ざかっていきます!」
「分かってる。これは使いたくなかったんだけど、仕方ないか・・・。メレンダ、ここはお願いできる?」
「は、はい・・・! ゲ、ゲテモノ解体ショーですね・・・! ま、任せて、ください・・・ふへっ」
『行かせんよ!』
「あ、あなたの相手は・・・あたし、です・・・!」
こうなったら最後に残しておいた切り札を使うしかない。パロットスクランブルを追おうとした私たちに向かってテンタクラーロッドが伸ばされるけど、ディキトゥスから拝借したらしい大型ビーム・アックスを手にしたザク・デスティニーが触手を叩き切る。第二ラウンドに突入したのを横目に、ビギニングファントムシヴァルバーの腰アーマーに下げていたそれを手にする。
「とっておき! もって、いけぇぇぇ!」
それはクロスボーン・ガンダムX1が使った、ザンバスターの銃口に装着するタイプのグレネード。けれどただのグレネードではなくて、
それが地雷だろうとハイメガキャノンだろうと、そして
『な・に・いぃぃぃ!?』
戦っていたドードラブロズゲーとザク・デスティニーを、核グレネードを撃ち込んだビギニングファントムシヴァルバーを、そして先行している三機のパロットスクランブルを焼いていく。『相打ち狙いか捨てゲーか!?』と解説の声が聞こえるけれど、それは違うよ。私は勝利のためにこれを使ったのだ。
「ストラちゃん!」
「はい! ワイルド・ウィンド! 嵐よ!」
熱波と衝撃波の暴力に飲まれる前に、ビギニングファントムシヴァルバーがその姿を変える。元の機体では『ミラージュ・ワゾー』と呼ばれる巡航形態。推進力のベクトルを一点に集中させ、より速度に特化させたこの姿。
ストラちゃんがスロットを必殺技にセットし、躊躇無く発動させたことで、全身に内蔵した
いくらifsユニットのフィールドで守られているとはいえGBNでも使用が制限されている核の威力はすさまじく、必殺技と合わせてゴール目掛けて飛んでいる中でもガリガリと耐久値が目減りしていく。
これでもヨノモリの耐ビーム・リアクティブコーティング再現用のお高い特殊塗料を念のために使ってきたんだけどなあ・・・。なんて、薄くなった財布に思いを馳せる私の耳に、テンション高めの高笑いと無駄にいい声が飛び込んでくる。
『―――ハハハハハハハハハ! やるではないか、シュン女史、ストラ女史よ! ことバンデット・レースにおいては核も使用に制限はないが、しかし、今まで誰も使ってこなかったものを奥の手として隠しておくとはな!』
え、ウソでしょまさか耐えたとでも言うの? と思って見れば、翼代わりのフィン・ファンネルが焼け落ち、鳥を模した頭部も半分ほど吹き飛んだパロットスクランブルが、そこにいた。さすがに無傷とはいかなかったようだけど、それでも核の暴威の中を抜けてくるとは・・・これが絶対王者の意地というものか。
『ならばこちらも、最後の力を振り絞って答えるとしよう! これは―――彗星だッ!』
焼け焦げた王者の体が鮮やかな真紅に染まる。紅の彗星と呼ばれるその必殺技は、その名の通りに爆発的なまでの加速力を生む。ワイルド・ウィンドと光の翼で加速し続けるビギニングファントムシヴァルバーに追いすがるほどに。見る見るうちに距離が縮まる。けどゴールまであと少し。このまま、このまま突き抜ける・・・!
「と・ど・けぇぇぇぇぇぇ!」
◇◇◇
◇◇◇
◇◇◇
【バンデット・レースについて語るスレpart◆◆◆】
………
……
…
677:名無しの走り屋
おわー!
678:名無しの走り屋
うわぁぁぁぁぁぁ!
679:名無しの走り屋
あああああああ!
680:名無しの走り屋
や、やりやがったぁぁぁ!
681:名無しの走り屋
やりやがった!やりやがったよあいつ!
682:名無しの走り屋
か、核だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
683:名無しの走り屋
何の光ィ!?
684:名無しの走り屋
核だぞ!
685:名無しの走り屋
ここA・BB!の歓喜ポイント
686:名無しの走り屋
レグフィナ大興奮ポイント
687:名無しの走り屋
イヤなポイントだなおい
688:名無しの走り屋
アナザーテイルズと同じ作戦取ろうとして邪魔されてたけど、バンシィはあのゲテモノ抑えきれなかったんか
689:名無しの走り屋
一人でよく戦った方だと思うぞマジで
690:名無しの走り屋
ドードラブロズゲー、正直単機で抑え込む様な機体じゃないからな・・・。チャレンジャー数人をまとめて足止めするために投入されるもんだろ本来は
691:名無しの走り屋
半壊してるとはいえそのゲテモノを一人で相手取ってるザク・ファントムもなにもんなんだよ
692:名無しの走り屋
リビルドガールズのときといい、今回といい、ドードラブロズゲーくんは一人に足止めされすぎじゃあないか?
693:名無しの走り屋
これで見た目のわりに大したことないんだな!ヨシ!と慢心して蹴散らされるまでがテンプレ
694:名無しの走り屋
何を見てヨシっていったんですか
695:名無しの走り屋
とりあえずテンタクラーロッド切り払いできるだけの腕はないと無理ゾ
696:名無しの走り屋
あのゴーストの改造機、核を抱えたままレースしてたって・・・こと!?
697:名無しの走り屋
まあ、そうなるな
698:名無しの走り屋
変形しなかったのは核グレネード使うためか
699:名無しの走り屋
何が起こるかわからない。これがバンデット・レースの面白いところよ
700:名無しの走り屋
さすがに核は驚いたけどな・・・
701:名無しの走り屋
突っ込んだぁぁぁぁぁ!?
702:名無しの走り屋
いったぁぁぁぁ!
703:名無しの走り屋
光の翼でぇぇぇぇぇぇぇぇ!
704:名無しの走り屋
核を撃って自分で突っ込むのか・・・(困惑)
705:名無しの走り屋
死ななきゃ安いからな
706:名無しの走り屋
ハート生きとる
707:名無しの走り屋
これは王者の意地
708:名無しの走り屋
変態なのに熱い男
709:名無しの走り屋
核を耐えきって最終直線でデッドヒートをする男
710:名無しの走り屋
やっぱりすげぇよ、ハートは・・・
711:名無しの走り屋
いけぇぇぇ!
712:名無しの走り屋
うぉぉぉぉ!
713:名無しの走り屋
大金が掛かってるんだ、勝ってくれよオラージュ・ワゾー!
714:名無しの走り屋
パロットスクランブルが絶対王者の意地を見せるか、オラージュ・ワゾーがジャイアントキリングに成功するか、どっちだ・・・?
715:名無しの走り屋
判定!判定です!
…
……
………
◇◇◇
◇◇◇
◇◇◇
「ま・け・たぁぁぁぁぁぁ! 悔しいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「いやー、ほんとにあとちょっとだったんだけどねー」
「負けちゃいましたけど、とても白熱したレースでしたね! パロッツ・パーティー、強敵でした!」
セントラルロビーに一角にあるカフェ。そこのボックス席で、すっかりお嬢様ロールの崩壊したドラリンドがハンカチを食い千切らん勢いで噛みしめている。他のお客さんの迷惑になるから・・・といつもなら宥めるところだけど、今日ばかりは彼女の気持ちも分かるので、落ち着くのをしばらく待つことにしよう。
結論から言えば、私たちオラージュ・ワゾーはバンデット・レースに負けた。最後の最後に、もつれるようにしてゴールに飛び込んだビギニングファントムシヴァルバーとパロットスクランブル。
ほぼ同着だったことで行われた写真判定の結果、僅かにハナ差でパロッツ・パーティーが勝利したのである。いやー、本当に紙一重の敗北って感じだ。バンデット・レースの勝利の女神様は鳥頭の全身タイツがお好みなのだろうか。なんて。
「あ、あの・・・あ、あたしもいて・・・いいんでしょうか・・・。あ、あんまり、お役に・・・立てなかったと、思うんですけど・・・」
「そんなの気にすんなよ。一緒にバンデットした仲だろ? なあ?」
「え、あ、えへへ・・・そ、そうですね・・・い、一緒にバンデットしました・・・へへへ」
「メレンダも今日からバンデット仲間です!」
「な、なかま・・・ふへっ・・・」
相変わらず陰のオーラをまとっているメレンダの肩に腕を回して自分の方に寄せるドラリンド。お嬢様ロールしてるよりもこっちの方がファンとか付きそうなものだと思うけど言うだけ野暮ってものかな。とアイスコーヒーをストローで飲みながらそう思う。GBNのアイスコーヒーは、リアルのそれと違って氷が解けて冷たくなりすぎるということがないから気に入っている。薄くなったりもしないからね。
「あ、そうだメレンダ。核グレネードで巻き込んじゃってごめんね」
「ひょぇっ、い、いえ・・・! あ、あたしはこれくらいしか役に立たないので・・・。そ、それに・・・もしもの時は織り込み済み、でしたし・・・へへへ。・・・あたしでよければ・・・いくらでも肉盾にしてくださっていいですから・・・」
「肉盾って」
「シュン、にくたてというのはなんですか?」
「え? えーと・・・なんていえばいいのかな」
「チビにも分かりやすくいうと攻撃を引き受けてくれる役ってことだ。つまるところタンクだな」
「そうなのですね! ドラリンドは物知りです!」
「そうだろうそうだろう」
いや違うと思うけど・・・まあいいか。ただストラちゃんには他の人には言わないようにとだけ言っておこう。ELダイバーっていうのは良くも悪くも純粋だからね。ってELバースセンターの耳の長い頼りないおにーさんが言ってたし。
「ストラちゃん、今日のレースはワクワクした?」
「はい! ストラはとってもワクワクしました! またバンデット・レースしたいです!」
「えー、アタシはパスだなー。やっぱ普通のバトルがしてぇ」
「あ、あ、み、みなさんがよければ・・・どちらでも・・・はい・・・」
「シュンはどうですか? バンデット・レース、ワクワクしましたか?」
「ん? そうだね・・・。うん、私もワクワクしたかな。またバンデット・レース出たいね・・・。そのためにも今日は反省会しようか」
テーブル備え付けの端末から追加注文をして、四人の額を合わせて反省会。あーでもないこーでもない、あそこがおしかった、ここがおしかった。今日のレース映像も振り返りながら盛り上がる。
GBNを始めた頃は、ずっと最速の世界を観ているだけだった頃は、こんな風にみんなでテーブルを囲むなんて思いもしなかった。
私に一歩を踏み出す切っ掛けを、勇気をくれたのは他でもないストラちゃん。彼女との出会いがなかったら、ELダイバーという不思議な存在がいなかったら、私はきっとまだあの何でもありなとっても楽しいレースを観ている側だっただろう。もちろんそれも楽しい。けれど、実際にやってみて初めて、わかることだってあるのだ。
―――あなたがGBNでワクワクすることはなんですか?
その質問の答えは、人によって変わってくるだろう。それは例えば強敵とのバトルだったり、例えばドロップアイテムの確認だったり、例えばミッションの高評価クリアだったり、例えばディメンションを旅する中での出会いだったり・・・もしかしたら答えを探している最中かもしれない。
なら私はどうか。私、シュンがこのGBNでワクワクするものとは何か。それは―――
TIPS:
【シュン】
『ディメンション・シュバルツバルト』で行われている『バンデット・レース』の観戦が趣味の少女。緑色の髪をサイドテールにしている。ダイバーランクはD→B。
ある日のレース終わりにELダイバーのストラと出会い、流れで後見人になった。やりたいことの分からないストラと共にワクワクするもの探しをしている最中、新進気鋭のガールズフォース『アナザーテイルズ』とバンデット・レースの絶対王者『パロッツ・パーティー』がレースを行うことを知り、ストラを連れて観戦することに。このことが切っ掛けで、観ている側だった最速の世界に足を踏み入れることになる。
ファントムガンダムをベースに改造した『ビギニングファントム』を作り上げるとストラ、ドラリンドとフォース『オラージュ・ワゾー』を結成。バンデット・レースに向けての特訓として悪名高いヴァルガの横断や、闇鍋と呼ばれる『シャフランダム・ロワイヤル』に幾度も潜っていた。バンデット・レースではヨノモリの『耐ビーム・リアクティブコーティング再現塗料』を使った『ビギニングファントムシヴァルバー』を駆り絶対王者パロッツ・パーティーに挑んだ。
【ストラ】
ディメンション・シュバルツバルトで生まれたELダイバー。青い髪を大きな2つの三つ編みにした片翼の少女。
生まれた当初は自分が何をしたいのか分からなかったが、後見人になったシュンの『心からワクワクするものがやりたいこと』という言葉に勇気づけられ、ワクワクするもの探しをしていた。そんな中、シュンに連れられて見たバンデット・レースにワクワクを感じたことで、自分のやりたいことはこれだと確信。シュンと共にその最速の世界へと足を踏み入れる。
専用躯体は『モビルドールストラ』。他のELダイバー用躯体と違い
【ビギニングファントム/ビギニングファントムシヴァルバー】
シュンが製作したガンプラ。ファントムをベースにビギニングガンダム30のパーツも組み込んだ機体であり、元の機体のIフィールドがifsユニットに置き換えられている。バンデット・レースでは耐ビーム・リアクティブコーティングを施されたことで銀色になっている。シュンとストラの二人乗り仕様であり、機体操作はシュンが、火器管制はストラがそれぞれ担当している。
【ドラリンド】
シュン、ストラとフォースを組んでいるダイバー。頭に山羊のような角がある金髪少女。ダイバーランクはB。
リアルではシュンと友人同士。彼女をGBNに誘った張本人だが、シュンがバトルよりもミッション攻略よりもバンデット・レースに熱を上げていたため、しばらくソロで活動していた。そんなある日シュンがELダイバーのストラと出会い、行動を共にするうちにバンデット・レースに出ることを決めて連絡して来たことで、フォース『オラージュ・ワゾー』を結成することになる。
使用するのはユニコーンガンダム2号機バンシィをベースにした『バンシィD-END』。
【バンシィD-END】
ドラリンドが製作したガンプラ。ユニコーンガンダム2号機バンシィをベースに、右腕をアームド・アーマーVN、SBの機能を組み込んだビームブレイサー、デッドエンドブレイサーに換装しているのが特徴。バックパックからは補助アームが伸びており、2つのアームド・アーマーDEを接続している。
【メレンダ】
目元を隠す黒髪ストレートの髪に猫耳の少女。最近傭兵を始めた新米だが、引っ込み思案で大人しいため、シュンやドラリンドからは「それでやっていけるのか」と度々心配されている。ダイバーランクはC。
使用機体はザク・ファントムにデスティニーシルエットを装備し、腰にはストライクフリーダムのクスフィアス3レール砲を移植した『ザク・デスティニー』。
【ザク・デスティニー】
メレンダが製作したガンプラ。ザク・ファントムにデスティニーシルエットを装備し、腰のアーマーをクスィフィアス3レール砲にしている。またエクスカリバーレーザー対艦刀の代わりにディキトゥスの大型ビームアックスを装備している。
【バンデット・レース】(出典:守次 奏さん作『ガンダムビルドダイバーズリビルドガールズ』)
常闇のディメンション、ディメンション・シュバルツバルトにあるハイウィンド・エリアで行われているガンプラレース。コース外からの攻撃以外のあらゆる妨害行為や、武器の使用に制限がない、何でもありな過激なレース。しかしその、ただ速さを求めるだけのレースとは違うスリリングな要素が走り屋たちの心を魅了してやまず、絶対王者たる『パロッツ・パーティー』への挑戦者は数多い。