サイド・ダイバーズメモリー   作:青いカンテラ

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ビルドウィッチーズ/Ep05ガンプラ特訓!いざガンダムベースへ!

 あれからさらに何度かガンダムメタバースにログインして、ミッションをこなしてみて、分かってきたことや思ったことがある。まずわたしのルブリスは今のままだとこの先やっていくのは厳しいということ。

 

 ガンダムメタバースはゲーム内で使用する機体にリアルのガンプラをスキャンして取り込む。この際、そのガンプラの完成度がそのままゲーム内での機体の強さになるのだ。

 

 その点で言えば、わたしのルブリスはお世辞にも完成度が高いとは言えないわけで。塗装ムラや合わせ目の隙間もあるし。むしろその状態で43ちゃんとの共闘ミッションを最後まで戦い続けられたのがすごいと言えるくらい・・・だと、いくつかミッションをこなしてみて思ったことだ。

 

 一応また一つランクが上がってDランクになったけれど、そのくらいのミッションでも苦戦する場面はそれなりにあったので、さらに難易度が高くなるだろうストーリーミッションを、といったところである。なのでルブリスの完成度を高めることは、この先もガンダムメタバースを続けていくためには必須事項。

 

 そしてガンビットは自動操作だと弱い。いやオールレンジ攻撃ができるのは明確な強いところではあるんだけど、応用が利かないというか、モードチェンジや別の目標に攻撃する時にどうしてもラグが発生する。このあたりは自分でビット一つ一つを操作する手動操作にするのがいいらしいけど、やると頭が痛くなるんだよね・・・。あとガンビットの操作に集中すると本体の動きが疎かになるし。これを同時にこなしている人たちは本当にすごいと思う。脳が2つに分かれてそう。ま、こちらも今後の課題ということで。

 

 他のプレイヤーのガンプラを見ていると、いわゆる素組みや無改造のガンプラは少ないのがわかった。一見手を加えていないように見えても、ワンポイントのようにパーツを追加していたり、別の機体から武装を持って来ている機体もちらほらといる。改造されている機体は手数を増やすためだったり、汎用性を高めるためだったり、はたまた元々の特性とは違う方向に振り切ったり。

 

 プレイヤーの数だけあるガンプラ。それらを見ているとわたしの中にある創作意欲的なものが刺激されてふつふつと湧いてきた。あるいはみんなもやってるんだからわたしもやってみたい! という気持ちだったのかもしれない。けど、それでいいと思う。このままだと行き詰まりを感じていたのだから、組み上げて塗装して、そこで満足して立ち止まるのではなくて、また一歩踏み込むのも悪くない。むしろいい。ルブリスの完成度を高めつつ改造もする。そのためには、特訓だ!

 

 

 

 ◇◇◇

 ◇◇◇

 ◇◇◇

 

 

 

「わぁ、いつ見ても実物はでっかいなあ・・・」

 

 休日を利用して電車を乗り継ぎ乗り継ぎやって来たのは、お台場付近にあるガンダムベースシーサイド店。等身大エールストライクガンダムがシンボルとして立つそこは、ガンプラショップだけでなくカフェも併設している巨大なショッピングモールである。

 

 家からだと片道2時間くらい掛かるからおいそれとは来れないけれど、公式の専門店だけあって品揃えは豊富だし、買ったガンプラをその場で作れる製作ブースが完備されているので、ガンプラ特訓の場には相応しいと言える。今日は汚れてもいい服装なので準備もばっちりだ。

 

 人の賑わいを静かに見下ろしているエールストライクガンダムをしばし眺めた後、ガンダムベースの店内に入る。入ってすぐのところにあるショーケースの中では、手のひらサイズの女の子がお客に愛想を振りまいていた。

 

「いらっしゃいませ! ガンダムベースシーサイド店へようこそ!」

 

 彼女は人間ではなくて、EL(エル)ダイバーと呼ばれるガンダムメタバースの中で生まれた電子生命体・・・らしい。詳しいことはわからないけれど、ガンダムメタバースにログインしたプレイヤーの感情データを基にして生まれるというELダイバーは、リアルだとプラモ製の専用ボディで活動するのだとか。元を辿ればもっと以前の、まだGBNと呼ばれていた頃に生まれたとかなんとか、まとめwikiには書かれていた。

 

 足元のネームプレートに『特別店員:チィ』と書かれている彼女を初めてみた時は驚いたなあ。パッと見は女の子の見た目したプラモなんだもん。それが立って動いて喋ってるなんて、どんなSF? となった。いやまあ、ガンダムメタバース内で生きる電子生命とか感情データを基にして生まれるとか、存在が大分SFチックだからね。今はもう慣れ・・・いや慣れないな。何度見ても慣れそうにない。

 

 ホログラムとかじゃなくて実物としてそこに存在してるんだよなあ、と思いながらじっと見ていると「何チィのことずっと見てんだ、しまいにゃ金取んぞ」と言いたげな圧を営業スマイル越しに感じたので、今日の目的を果たすべく商品棚のある方に移動する。

 

 とはいえ明確にこれが欲しい! というものがあるわけではなくて、何かよさげなガンプラをいくつか買って製作ブースで組みたいな、とそんなふんわりとした感じだ。ガンプラの特訓だ! と意気込んて来たのはいいものの、陳列されているガンプラをただ見て回るのではただショッピングに来ただけの人になってしまう。それくらいは先に決めてからガンダムベースに来なよ、と言われたらぐうの音も出ない。

 

「うーん、色々あって目移りしちゃうな・・・わふっ」

 

 できればルブリスの改造にも使えるようなガンプラがいいかな。武器も色々と試してみたいし、あれこれと武器が入っているもの・・・。そっちの方はいっそウェポンセットを買うのもいいだろうか?

 

 そう考え事をしながら歩いていたからか、前から誰かが来たのに気がつかずにぶつかってしまう。反射的に謝ろうとして、その誰かにそっと抱き寄せられた。ふにゅん、という柔らかな感触が顔に当たって、いい匂いまでする。突然のことに思考がフリーズした。

 

「―――大丈夫? お姉さん」

 

 頭上から降ってくる声。もぞもぞとなんとかして顔を上に向けると、紅い瞳と目があった。うわあ、キレイな人・・・。整った顔立ちに、白い肌。照明の明かりを受けてキラキラと輝く銀髪。とってもキレイな女の人だ。いい匂いがする。

 

「ごめんね。ちょっと考え事してたから・・・怪我はない?」

「ふぁ、ふぁい・・・」

「そっか。それはよかった」

 

 こちらこそ考え事したから、と言おうとしても言葉が出ない。フリーズしたままの思考が中々再起動しない。なんだこれ。なんだこの状況は。なんとか返事をすると、ぱっと解放される。

 

「お姉さんも、ガンプラを買いに来たの?」

「う、うん・・・。改造に使うものを、少しね・・・」

「そうなんだ。ボクも新しいガンプラ欲しいなあって来てみたんだけど、ガンプラはいっぱいあって迷っちゃうよね。・・・あ、ダリルバルデだ。これいいなあ」

「ミオー?」

「あ、呼ばれてるや・・・じゃあね。気を付けて歩きなよ、お姉さん」

 

 ミオと呼ばれたその人は、ふっと笑みを残してダリルバルデの箱を手に去って行った。

 

「・・・はっ」

 

 ・・・び、びっくりした。まだ心臓がバクバクなっているし顔も熱いし。何とか落ち着かせるために息を吸って吐いてを繰り返す。スーハー、スーハー・・・。

 

 ふぅ、落ち着いた・・・。それにしてもさっきの人、年下ってことはないだろうから年上だと思うけど、ガンプラを見てたってことはガンプラ女子なのかな。店長さんは珍しいと言ってたけど、いるところにはいるんだなあ。

 

 と、わたしもガンプラ探してるんだった。改造でルブリスにも使えそうなものとなるとやっぱりシリーズが同じ水星の魔女系のガンプラがいいだろうか。武器が色々入っているものはウェポンセットか・・・おや? これは・・・。

 

 ◇◆◇

 

 店員さんの「お買い上げありがとうございましたー」という声を背に製作ブースへと足を向ける。厚みのある仕切りで区切られているそこは、休日ということもあってかわたし以外の利用者もちらほらといる。空いている席に座ってつい今しがた買ったガンプラたちをテーブルの上に並べる。

 

 ハインドリー・シュトルムに、ガンダムファラクト。それとTHE ORIGIN(ジ・オリジン)のガンダムとシャア専用ザクⅡ。少し買いすぎちゃったかなとも思うけれど、THE ORIGINの2箱については宿命の対決セット! ということでお安くなっていたのだから商売がうまいと思う。まあシャア専用ザクⅡは武装が色々入ってるみたいだから、目的は果たしているしヨシとしよう。

 

「さてさて、それでは開封の儀をば」

 

 ガンプラは箱を開ける瞬間が一番ワクワクする、というのは誰の言葉だったか。ガンプラに限らず、新しく買ったパッケージタイトルのゲームを開ける時だとか袋とじを開ける時だとか、何かを開く、開けるというのは心が躍るものなのだ。

 

 箱の中から保護ビニールに包まれたランナーを取り出して並べる。説明書も見やすいように開いてスマホも置けば、準備は完了。わたしはこれからこのガンプラを、ガンダムを組み立てるのだ。バイト先の『GP-TOREIRU(ジーピー・トレイル)』のガンプラ作りで、基礎的な技術は最初の頃よりも向上している。

 

 後はやすり掛けや合わせ目消し、そして塗装と作例作りではやっていないことをする。特に塗装。これは家じゃできないし、換気も行き届いていてエアブラシを使えるのもガンダムベースに来た理由の一つだったり。エアブラシはお店でも使えるんだけど、なんというかこう、陰の努力はかっこいいよね的な。いつの間にかガンプラ作りのうまくなったつよつよせいかさんを見せて驚かせたいなあ、という思いもあったりなかったり。

 

 スマホを操作してG-TUBEでガンプラ製作解説の動画を流しながら、パチリパチリとパーツを2度切り。ゲート処理をして後から外しやすいようダボも短く切り飛ばす。心が無になる表面処理のやすり掛けも忘れない。ここの出来次第で完成後の印象が変わってくる・・・気がするので丁寧に。今回は塗装するので、後ハメする箇所は後ハメ加工もしておく。

 

 『クオンの放送局』というG-TUBEチャンネルの動画がスマホで流れている。その動画はG-TUBERの『クオン』が手元の作業を映しながら後付け解説をするというスタイルで、今やっているところの解説をしている。女性にしてはやや低めなその声を聴きながら、わたしも黙々と目の前の作業に集中する。

 

「・・・なんでMSって手足が2つずつあるんだろう・・・」

 

 腕と脚と、同じものを2つ作りながら、そんなぼやきにも似た呟きが漏れた。熊谷さんは闘争に向いてる形だからとか言ってたけど。というかこの言葉、ガンプラを組むたびに言っている気がする。

 

 先に出来上がった胴体に、手足をくっつければ、トリコロールカラーのガンダム本体がひとまず完成。次に武装類へと取り掛かる。標準的なビームライフルにバズーカ、そしてバックパックに接続するタイプのキャノン砲。ビームサーベルのグリップとシールドも付いて、中々のボリュームだ。

 

 ルブリスは武器がビーム兵器メインだし、実弾のバズーカを持つというのもいいかもしれない。ビームライフルを流し込みの速乾性接着剤で接着し、合わせ目を消す作業をしながら考える。

 

 わたしの新しいルブリス、強化型とも言えるその姿を。ガンビットは強力だけどコンポガンビットシールドとの兼用だから、シールドの時は攻撃手段が一つ減るし再使用時間も長い。手持ちの武器はレシーバーガンだけだと心許ない。素の状態をベースにして、手数を増やすという方向性に行くのが無難だろう。

 

「肩武器、かあ・・・」

 

 完成した武装を取り付けてフル装備になったガンダムを見て、少しずつ強化型ルブリスの姿が浮かび上がってくる。

 

「・・・うん!」

 

 ガンダムを塗装のためにパーツ単位にバラしながら、わたしは頭の中で新しい強化型ルブリスの姿を思い描くのだった

 

 

 

 ◇◇◇

 ◇◇◇

 ◇◇◇

 

 

 

 あれからさらに1か月ほど経ち。ついに強化型ルブリスが完成した。いやー、中々大変だったなあ。学校に友達にバイトにとあれこれしている中での暇を見つけてはコツコツと作り上げていたら結構時間が掛かった。

 

 けど、そのおかげで満足の行くものはできた、と思う。最初に組んだルブリスにあった隙間をプラ板で補修して、塗装も改めてし直した。エアリアルイメージのカラーリングだったのを、青の割合を増やして、ツインアイはピンク色に変更。バックパックにはビームサーベルを片方外して、その代わりにガンダムから拝借したショルダーマグナムを装備した軽キャノン風に。

 

 肩アーマーはハインドリー・シュトルムのものに置き換えて機動力をアップ。手持ち武器も新たにファラクトのビームアルケビュースを追加。実はこの武器、GUNDフォーマットとの知覚リンクで命中率に補正が掛かるから、遠距離攻撃が安定するはず。

 

 ガンダムメタバースの格納庫エリアで、約18mにまで拡大されたその機体を見てわたしは頷く。色んなガンプラを組んで基礎的な技術が上がったおかげか、合わせ目消しもうまくいった。塗装だってムラなくできている。これがわたしの新しいルブリス。最初の頃よりもぐっと完成度が高まって、武装面も強化した強化型だ。

 

 こうやって色々と手を加えて見るとよりいっそう俺ガンプラ感が出てきたというか、わたしの専用機なんだ! という想いが強くなる。名前も付けないとね。そのまま強化型とか改修型っていうのも寂しいし・・・。うーん・・・。あっ、そうだ、

 

「ガンダム・ルブリス・サンズ・・・。うん、あなたの名前はルブリス・サンズだ!」

 

 昔とある動画サイトの攻略動画に出てきたキャラが浮かんで来て、その名前を拝借することにした。サンズ、ガンダム・ルブリス・サンズ。結構いい名前だと思う。ステータス表示の名前も変えておいてっと。せっかくだしスクショも撮っておこうかな。パシャパシャ。

 

 さて、ルブリスも新しくなってルブリス・サンズになったし、早速その性能を試したいところだ。何かしらのバトル系ミッションを受けてもいいけど、どうせなら対人戦もやってみたいんだよね。・・・この前のヴァルガってところは行きたくないけど。なんか怖かったし。ひとまずミッション一覧でも見ながら考えようかな。呼び出したウィンドウを操作して、一度セントラルロビーへと戻ることにする。

 

「さて、何かないかなーっと」

 

 ロビーに戻ってすぐ、カウンターにいるNPDのお姉さんのところに向かった。表示されたミッション一覧を指でスクロールさせながら見ていく。無双系に護衛・・・戦闘有りだと大体そんな感じのものが多い。

 

「・・・シャフランダム・ロワイヤル・・・?」

 

 たまたま目に入ったそのミッションをクリックして概要に目を通す。それはフォース単位のバトルをマッチングするバトランダム・ミッションの、フォースを組んでいないプレイヤー向けに調整されたバトルミッションだった。エントリーしたプレイヤーを5人一組のチームに編成し5対5のチーム戦を行うもので、ちょうど対人戦をしてみたかったわたしにはおあつらえ向きだと言えた。

 

「よし、やってみよう」

 

 参加ボタンを押すと、ちょうど定員になったのかバトルフィールドに転送される。格納庫エリアを経由せずに直接行くタイプらしい。次に視界が開けるとそこは、どこかの軍事基地のようだった。同じチームに振り分けられた味方機を確認しようと周りに目を向けると、かつて助けられた機体の姿があった。

 

「黒い、ベギルベウ・・・」

 

 見間違えるはずがない。あのヴァルガでわたしを助けてくれた、あの時のベギルベウがそこにはいた。

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