広大な砂漠の中に存在している〝ガンプラビルダーたちの聖地〟ペリシア。ダイバーランクによってガンプラでの乗り入れが厳しく制限され、移動はガンプラを除けば乗り物をレンタルするか徒歩しかないその街にクオンはやって来ていた。
目的は配信。街の周囲を囲う石壁の入り口でハロカメラを浮遊モードで呼び出すと、配信開始のボタンを押す。カメラの横に展開されているサブモニターにクオンの姿とコメント欄が表示され、待機していたリスナーたちの待機コメが流れていった。
「・・・ごきげんよう、亡者たち。配信の時間だ」
『待ってた』
『ごきげんようでございます』
『今週の楽しみ』
『外ってことは今日はお散歩配信かな』
『ペリシアかな?』
『こんにちわー』
『モウハジマッテル!』
「ん、察しがいいな。そう、我は今ペリシアの地にいる。たまにはここに展示されているガンプラたちをゆっくりと配信で見て回るのもいいかと思ってな」
『ペリシアかー。作り込みのハンパない作品見ると自分もできそうってなるんだよな』
『GBN中からビルダーが集まるだけあって、レベル高い作品だらけで目の保養になる』
『インスピレーション貰いにたまにいきますねえ!それはそれとして、どうして砂漠のド真ん中とかいうクソ立地なんですかね』
『縮尺100万分の1とはいえ片道100kmなのどうにかしてほしい』
『風の噂にペリシアに徒歩で行ったやつがいるって聞いたけど、ウソだよな?』
『そんなやつおらへんやろー』
『素人か地図を読み間違えるようなヘマでもしなけりゃ徒歩で行こう!なんて思わんよ』
配信モードで浮遊しているハロカメラのサブモニターに流れていく無数のコメントたちを横目に、アイテムストレージから取り出した日傘を広げると、クオンは中央の宮殿前広場へと続く大通りを歩いて行く。
『どこ見てもガンプラがあるな』
『ペリシアだからな』
『ここの展示権ってめちゃくちゃ高いらしいけど、よくみんなそんな金持ってるなあ』
『大半はペリシアのビルダーコンスト上位入賞者特典でフリーパス持ってるんだぞ』
『フリーパス!そういうのもあるのか!』
『そういやクオンちゃんもフリーパスっての持ってるん?』
「うむ、我もフリーパスは持っている。コンテストのある時期はジオラマを展示することもあるからな」
『何それ初耳』
『ウェイ!?』
『クオンちゃんのジオラマめっちゃ見たい!』
『ペリシアいったことないけど通います!』
『そういうことはもっと早く言ってくれないと』
『ヤスリかけてる場合じゃねー!』
中東風の街並みが続く大通りには展示されたガンプラが所狭しと並び、多くのダイバーが行き来している。そんな彼らを目当てにした屋台や露店も開かれており、大通りは活気に満ちていた。
ここにあるものはビルダーたちが心血を注ぎ、愛を込めたガンプラばかりだ。ハイパー・メガ・カノンを持っても倒れないハンマ・ハンマがいれば、サイコフレーム部分にマルチカラーのLEDユニットを内蔵し極彩色に輝くゲーミングユニコーンもいる。そして、そんな中でもクオンの目を惹いたのは・・・
「これは・・・クロスボーン・ガンダムか」
『はぇー、すっごい』
『今にも動き出しそうな迫力がある』
『ABCマントの表現凄いな。どうやってプラ板曲げたんだろうか』
『X1はいいぞ』
『キンケドゥゥゥゥゥ!』
『これは主人公機』
漫画作品『機動戦士クロスボーンガンダム』に登場するMS、クロスボーン・ガンダムX1だった。その機体が今まさに膝立ちの状態でABCマントを手で取り払おうとしている。そのワンシーンをイメージして製作されたものである。だが、次の瞬間には動き出して飛び立つのではと錯覚するほどに、そのガンプラは躍動感に溢れていた。
それは光の当たる部分を計算して付けられた陰影の妙であったり、ABCマントを握るハンドパーツであったり、立ち上がろうとしているポージングであったり、細部に至るまで妥協をすることなく作り込まれている。そこに尽くされている技巧の凄まじさを、自らもビルダーとしてペリシアに作品展示を行うクオンは感じていた。日々是精進、常に挑戦者であれ。どこかで聞いた言葉が過ぎる。そして思う。自分はいつか至れるだろうか、このクロスボーン・ガンダムX1を製作したダイバーのような境地に。
『ケバブにはチリソース。これは譲れない』
『ケバブにはヨーグルトソースダルルルォ!』
『どっちでもいいよ』
『始まったか、ケバブソース戦争』
『もうどっちのソースもかけてミックスにしよう』
『キラ・ヤマトブレンドってやつだな』
『あれは虎とカガリにぶっかけられたせいなんだよなあ』
『ぶっかけ(意味深)』
『通報した』
『もしもしガーフレ?』
あの後、クオンは大通りに展示されているガンプラを一通り見て回り、せっかくペリシアに来たのならと屋台でケバブを購入していた。ソースはコメントでも上がっていたチリソースとヨーグルトソースのミックス。ガンダムSEEDの劇中で主人公のキラ・ヤマトも食べた味である。もっとも彼の場合は望んだのではなく半ば事故のような状況でそうなったのだが。
「ん・・・。串焼きもいいが、ペリシアに来たならやはりケバブだな」
『ケバブになりたい』
『うまそう』
『く、飯食ったのに腹が減って来た』
『GBNは飯のビジュアルも凝ってるのがよくない』
『なお味』
『そこはまあ、今後の課題ってことでな』
『ペリシアいきてぇ~』
「もぐもぐ・・・。ペリシアに来るのなら乗り物のレンタルを忘れずにすることだ。ガンプラで乗り入れられるランクならまだいいが、そうでなければ徒歩で歩くことになる」
『いくら肉体的には疲れないっても砂漠100kmを徒歩は、いやー、きついっす』
『見渡す限り砂、砂、砂の中を徒歩とかメンタル壊れる』
『ただこれ、特に説明とかされないから事前に知っとかないといけないんだよね』
『GBNくんそういうところやぞ』
『不親切な所はクッソ不親切なGBNくん』
「・・・さて、腹ごしらえも済んだところで今日のメインである宮殿前広場に行くとしようか」
『指ペロエッ』
『ソースになりたい』
『舐められたい』
『エッッッッ』
『クオンちゃんの貴重なエッ』
荒ぶるコメントを無視してペリシアの中心部、宮殿の聳える広場へと向かう。そこにはガンダムシリーズのワンシーンや、ビルダーのイメージで作られたジオラマが展示されている。ビームサーベルで切り結ぶスタークジェガンとクシャトリヤ、コロニーレーザーを受け止めるユニコーンとバンシィ・ノルン、人類存亡を掛けた最後の対話に挑む00クアンタ・・・。いくつものジオラマが展示されている中、クオンはあるジオラマの前で足を止めた。
それは『鉄血のオルフェンズ』の最終決戦をモチーフにしたジオラマだった。ダインスレイヴを撃ち込まれ、満身創痍になりながらもなお、リミッターを解除して手負いの獣は何よりも恐ろしいのだ、と言わんばかりに暴れまわるバルバトスルプスレクス。そんな獣を討つべく対峙するレギンレイズ・ジュリア。両者が激突する瞬間を切り取りジオラマにしている。全体の作り込みもさることながら、バルバトスルプスレクスのダメージ表現は荒々しくも丁寧な仕上げがなされており、それがバルバトスルプスレクス鬼気迫る迫力をより強めていた。
「ユニコーンもいいものだが、バルバトスもいいな・・・」
『わかる』
『わかります(キリン)』
『鉄血はなんだかんだ言われるけどMSはカッコいい』
『半壊バルバトス好きだ』
『自壊しながらも最後まで命を燃やし尽くすのが嫌いなダイバーはいません!』
『踵撃ち抜かれたアキレウスみてぇな暴れかたする方のバルバトス』
『もっとだ、もっと寄越せよ、バルバトスッ!』
しばしジオラマを鑑賞し、配信の残り時間を確認したクオンは浮遊モードで追従していたハロカメラの方へと振り返る。
「今日はここまでにするとしよう。それでは亡者たち、良い週末を」
『良き終!』
『乙クオ』
『乙でした』
『お疲れー』
『良き終乙クオ』
『お疲れ様です』
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【クオンちゃんについて語るスレpart▼▲▼】
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……
…
78:名無しの亡者
今回もよかった
79:名無しの亡者
今日はポンがなかったのが残念
80:名無しの亡者
いつもポンしてるわけじゃないから・・・
81:名無しの亡者
クオンちゃんのペリシア配信を・・・最高やな!
82:名無しの亡者
ペリシアは話には聞いてたけど、マジでガンプラの展示しかやってないんだな
83:名無しの亡者
GBNでも数少ない中立地帯やぞ
84:名無しの亡者
そりゃあガンプラビルダーの聖地だからな
85:名無しの亡者
中立地帯というか非戦闘区域な
86:名無しの亡者
凸待ちバトル配信もいいけど、お散歩配信も好きなんだ
87:名無しの亡者
日傘差すクオンちゃんという結構レアなものを見れたので満足。ずっと砂漠のお散歩してほしい
88:名無しの亡者
焼きドラゴンになりそう
89:名無しの亡者
ケバブ食べてるときも日傘手放さないクオンちゃんかわいい
90:名無しの亡者
砂漠の太陽は日差し強いからね仕方ないね
91:名無しの亡者
お肌の大敵だから・・・
92:名無しの亡者
ケバブ喰いたくなってきたな
93:名無しの亡者
いくか、ペリシア
94:名無しの亡者
いやリアルの方でケバブ喰いてえ
95:名無しの亡者
だが店はねえ
96:名無しの亡者
それなんだよな。近くにないんだよケバブ屋
97:名無しの亡者
悲しいね、バナナ味
98:名無しの亡者
ケバブにかけるソースはもちろんチリソースだよな?
99:名無しの亡者
ヨーグルトソースだっていってんだろ
100:名無しの亡者
また戦争がしたいのか、あんたたちはぁ!
101:名無しの亡者
ケバブのソースはミックスでFAだって決着ついてるから
102:名無しの亡者
やっぱキラ・ヤマトブレンドよ
103:名無しの亡者
別にキラが自分でミックスしたわけじゃないのに名前つけられて発祥元みたいになってるの申し訳ないけど笑う
104:名無しの亡者
その呼称一部でしか流行ってないけどな~
105:名無しの亡者
ケバブもぐもぐしたり指についたソースをぺろって舐めたりしてたのすこ
106:名無しの亡者
もぐもぐクオンちゃんかわいいね
107:名無しの亡者
買い食いもお散歩配信の醍醐味
108:名無しの亡者
大雑把な味のGBNの飲食アイテムでも美味しそうに食べるから腹が減ってくるんよな・・・
109:名無しの亡者
切り抜きできました→【URL】
110:名無しの亡者
有能
111:名無しの亡者
仕事が早い!
112:名無しの亡者
素晴らしい
113:名無しの亡者
それにしてもあのX1の完成度は凄まじかったな・・・
114:名無しの亡者
まさに職人技
115:名無しの亡者
最後のジオラマとかもだけど、上を見ると果てがないとはいうが、本当に果てがなさすぎて首が痛くなってくる
116:名無しの亡者
それでも続けていればいつかは同じ境地に辿り着けるかもしれないだろ?
117:名無しの亡者
まずお前がするのは見上げることじゃなくて手元を見ることだぞ
118:名無しの亡者
千里の道も一歩からだぞ。まずはヤスリがけだ!
119:名無しの亡者
イヤァ・・・
120:名無しの亡者
ヤスリがけは虚無
121:名無しの亡者
その虚無を積み重ねた先にトップビルダーの道はある
122:名無しの亡者
止まるんじゃねえぞ・・・
123:名無しの亡者
フリーパス「その先に俺はいるぞ!」
124:名無しの亡者
【速報】クオンちゃんはペリシアのビルダーコンスト上位入賞者だった
125:名無しの亡者
まあおかしくはないわな。わりとビルド狂いだし
126:名無しの亡者
本人は認めたがらないけどビルド狂いなクオンちゃんがフリーパス持っててもおかしくはない。それはそう
127:名無しの亡者
そういうこったぁ!
…
……
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