サイド・ダイバーズメモリー   作:青いカンテラ

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ササミチャンヤデー


【ショートショート/ササミ】
ササミ/ササ☆ペパ


 中央に四角いテーブルと背もたれの無い二人掛けのベンチが向かい合うように置かれている質素な部屋。

 GBNでフォースを結成したときに支給される最初期のフォースネストである。支給されるものとあってか、フォースネストとしてのランクは一番下。部屋は狭く、初期状態ではインテリアの類もほとんどない。あるものといえば、壁に半ば埋まっている状態で取り付けられているモニターくらいか。

 

 誰もいない薄暗い部屋のドアが、パシュッという空気の抜ける音と共に開く。パチリと照明が灯った室内に入ってきたのは、手にビニール袋を提げた一組の男女。

 

 一人は小説『機動戦士ガンダム00P』に登場する『シャル・アクスティカ』と色違いの制服を着た淡い金髪の少女ダイバー。ダイバーネームは『ササミ』。

 そしてもう一人は、劇場アニメ『機動戦士ガンダムF91』の『クロスボーン・バンガード』の制服を着た、不健康そうな顔色をした青年アバターのダイバー。ダイバーネーム『ペーパー』。

 

 二人は、ここにはいないもう一人のダイバー『クオン』と共に『エターナル・ダークネス』というフォースを組んでおり、さらにフォースの宣伝も兼ねた活動としてG-TUBEで動画投稿や配信なども行っているのだった。

 

「ほんと、なーんにもないなー、この部屋。観葉植物の一つくらい置いとってもええと思わん?」

「……欲しいのか?」

「いや、そんなに? 言うてみただけやでー」

「ん、そうか」

 

 ササミは手に持っていたビニール袋をテーブルの上に置くと、レンタルハロカメラを呼び出してセッティングを始める。

 

「そういえば、今日の配信はどうするか決めているのか?」

「なんも決めてへんなあ。雑談でええんとちゃう?」

「アバウトだな……」

 

 ため息を吐きつつも、ペーパーはビニール袋の中身……購買で購入したお菓子類の飲食アイテムである……をテーブルに無造作に並べていく。

 それらはGBNのオリジナルデザインもあるが、そのほとんどは現実でも売られているパッケージの菓子類だった。GBNは世界的に大流行しているため、その宣伝効果を狙って自社製品の許諾を出している企業も多いのである。

 

「それじゃ、始めるでー。ポチッとな」

 

 ベンチに腰かけて配信開始ボタンを押すと、ハロカメラの目が赤く点灯する。横に映像の映る画面やコメント欄のあるサブモニターが展開され、配信を見に来たリスナーたちが描き込んだコメントが右から左へと流れていく。

 

『もう始まってる!』

『お、(配信)やってんじゃーん!』

『今日の配信者はササミか』

『いや、ペーパーもいるぞ』

『いつもの二人』

 

「せやでー。今日はウチとペーパーの二人で配信していくでー」

「うん」

 

『うん』

『かわいい』

『うんじゃないが』

『草』

『ペーパーニキたまにかわいいな』

『だが百合の間に挟まる男だ』

『そうだよ』

『そうわよ』

『うらやまけしからんやつだ』

 

「誰が間男だ、誰が」

 

 流れて行ったコメントの中からそれを目ざとく見つけ、眉を顰めるペーパー。エターナル・ダークネスのメンバーは三人。そのうち二人が女性ダイバーのためか、唯一の男性アバターであるペーパーはいつからか、『百合の間に挟まる男』というあだ名で呼ばれるようになっていた。

 

「あはは。まあ本人はイヤがっとるから、あんまりそういうこと言わんといてな」

 

『はーい』

『了解!』

『トランザム!』

『やめないか!』

『(ツインドライブが爆発する音)』

『ダメみたいですね・・・』

『りょ』

 

 テーブルの上に広げた菓子の中から『かっ○えびせん』を取って袋を開けるササミ。一つ二つ摘まんで口の中に放り込むと微かな塩気とエビの香りが口の中に広がる。

 GBNは感覚のフィードバック機能があるため、飲食アイテムを口にするとそれぞれに設定された味や香りがするのだ。ここにしかないフレーバーもあるため、一部ではそれらの味を求めるダイバーもいるらしい。

 

『やめられない』

『止まらない』

『食べるの止まるんじゃねえぞ』

『かっぱ○びせんはマジで止まらんからなあ』

 

「せやんなー。この味はほんまに一度食べ始めたら止まらんなるで」

「それはいいがササミ、今は配信中だということを忘れるなよ」

「わかってるわかってる。あ、ペーパーも食べる?」

「……一つ貰おうか」

「ほいほい。ほな、あーんやで」

 

 かっ○えびせんを袋の中から一つ取って笑顔で差し出す。だが、ペーパーは差し出されたかっ○えびせんとササミの顔を交互に見て、そのまま口にする……のは配信中ということもあり恥ずかしかったのか、手に取ってから口に入れた。

 

「……うまいな」

 

 しゃくしゃくと咀嚼してそうぽつりとこぼすペーパー。逸らした顔の頬には赤みが差している。

 

「ん? どうしたん? いつもやってることやん。いまさら恥ずかしがるようなことでもあらへん」

「いや、配信中だからいま……」

「え? あ、あー、せやったな。ごめんな、ついいつものクセで!」

「ん……。イヤじゃないから、別にいいよ……」

 

 二人のそんなゆるいやり取りにコメントも盛り上がりを見せる。……主にペーパーへの嫉妬コメントで。

 

『は?うらやまなんだが?』

『へー、カップルかよ』

『伝説のはい、あーんじゃねえか・・・』

『ペーパーはかわいい女の子にはい、あーんされる男だったのか』

『ササミネキにはい、あーんされるとか・・・』

『どうする?処す?処す?』

『ペーパーそこかわれ』

『かっぱ○びせんそこかわれ』

『えぇ・・・?(困惑)』

『ササミネキといちゃつきやがって。ゆ゛る゛せ゛る゛!』

『ペーパーが女の子だったなら・・・!』

 

「おまえたち……。一応言っておくけど、おれとササミはカップルとかそういうのじゃないから」

「そうやで。ウチらはフレンドでフォース仲間なだけの仲良しさんなだけや。それに、ウチは好きな人が他にいるからね」

 

 一袋食べきって、次にポテト○ップス(もんじゃ焼き風味)の袋を開けて食べ始めるササミ。配信中というよりも、友達と通話を繋いでいるようなくつろぎっぷりである。

 

『ポテチになってササミネキに食べられたいだけの人生だった』

『だったって、諦めたのかよ?』

『今日はレベル高い亡者多いな・・・』

『エターナル・ダークネスのメンバーに食べられたくない亡者はいません!』

『ドウイウコトナノ』

『それより、ササミネキ好きな人がいるってマ?』

『フ?』

『ティ?』

『劇場版やるやん』

『ササミネキの好きな男はハサウェイだったのか・・・』

 

「なんやろ、あの人は閃光っていうよりかは……月の出てる夜みたいな」

「まあ、月をバックに佇むのが似合う人ではあるな」

 

 ササミとペーパーの口にした「月」や「夜」というワードに、主に月関連のキャラや台詞のコメントがさながら流星群のように流れていく。

 それらを眺めながらササミはある男の顔を、好意を寄せている相手のことを思い浮かべていた。

 

 デュオ、デュオ・ジーナス。かつてGPDで〝死神〟と呼ばれ恐れられ、ここGBNでもG-TUBEに『しにがみ☆ちゃんねる』というチャンネルを作って活動している。クールに振る舞っているが、ササミにとっては気さくで頼れる年上のお兄さんな彼に、心惹かれているのだった。

 

「……なあ、亡者のみんな。好きなMSってなんや? ウチはな、デスサイズヘルなんやけど」

 

 彼のことを考えていたからだろうか。ふとそんな言葉が口をついて出ていた。

 

「好きなMSか。おれはベルガ・ギロス、ベルガ・ダラス、クロスボーンガンダムX2とX2改だが」

「それは知っとる」

 

『草』

『おハーブ』

『ペーパーニキブレないな』

『ジト目のササミネキすこれる』

『ササミネキはすーぱーふみなやシャルトーネが好きだというのだとばかり』

『MS少女はまた別ジャンルだから』

『MSとMS少女はまた別なんよ』

『ところで、なんでデスヘルが好きなんだ?』

『気になりますねえ!』

『次のMS少女に着せるアーマーだったり?』

『デスヘル少女か・・・』

『陰キャなオカルト少女か、クールな死神少女か・・・』

 

 なぜデスサイズヘルが好きなのか。それは死神と呼ばれる彼が、デュオが愛機としているのがデスサイズヘルの改造機だからというのもある。

 しかしそれとは別に、闇に紛れて敵を切り裂くツインビームサイズの輝きが、世の中の理不尽や不条理も一振りで切り裂いてくれるような気がして。

 

「ウチの心のもやもやも、切り裂いてくれんかな……」

 

『もやもや?』

『もやっとボール?』

『もっともわっと』

『キラメキラリ』

『心のもやもやを切り裂く死神少女?』

『そ れ だ』

『お前の心のもやもや、頂くよ!』

 

 何気なくこぼれた小さな呟きだったが、どうやらハロカメラの集音性能はササミが思う以上に高いらしい。盛り上がりを見せるコメントを前にして、ササミはふっと息を吐くと気持ちを切り替えて務めて明るく振る舞う。

 

「あー、はいはい。もやっと死神少女の話はそこまでやで。デスヘル少女については、考えとくわ。せやなー、素体はやっぱりデュオがええかな?」

 

『デュオ(♀)』

『素体にするために性別反転させられるデュオ・・・?』

『黒髪三つ編みシスター少女ですか』

『そばかすも入れよう』

『吾輩そういうの好き』

『黒髪三つ編みそばかすシスター死神クール少女とな』

『属性盛り盛りやん』

 

「お、ええなあそれ。デスヘル少女カッコ仮ちゃんの素体イメージはそれでいくで」

 

『や っ た ぜ』

『やったー!ササミネキサイコー!』

『そうでなくっちゃな』

 

「ま、作るかどうかは別やけどなー」

 

 

 

 ―――エターナル・ダークネスについて語るスレpart9

 

 ………

 ……

 …

 

66:名無しの亡者

 

67:名無しの亡者

配信お疲れデース!

 

68:名無しの亡者

今回もいい配信だった

 

69:名無しの亡者

うむ・・・

 

70:名無しの亡者

ササミネキとペーパーのコンビすこ

 

71:名無しの亡者

ササペパはいいぞ、亡者

 

72:名無しの亡者

ペーパーニキ、たまにカワイイからな・・・

 

73:名無しの亡者

男なのに可愛く感じてしまう。悔しい、でもびくんびくん

 

74:名無しの亡者

ネキにはい、あーんされた時に照れてたのすこやで

 

75:名無しの亡者

俺もかわいい女の子にはい、あーんってされたいけどなあ、俺もなあ

 

76:名無しの亡者

ネキは頼んだらやってくそう。やってくれそうじゃない?

 

77:名無しの亡者

それはある

 

78:名無しの亡者

ノリがいいからな

 

79:名無しの亡者

セヤナー

 

80:名無しの亡者

ヤデー

 

81:名無しの亡者

ソレナー

 

82:名無しの亡者

髪の色違うけど、某双子の姉のほう思い出す

 

83:名無しの亡者

マーマイト食べなきゃ・・・

 

84:名無しの亡者

紅茶もキメろー?

 

85:名無しの亡者

パンジャン少女・・・?

 

86:名無しの亡者

 

87:名無しの亡者

それはMS少女ではないんよ

 

88:名無しの亡者

兵器擬人化のくくりだと同じだけど、MS少女ではないな

 

89:名無しの亡者

まあ、そうなるな

 

90:名無しの亡者

デスヘル少女・・・どこ? ここ?

 

91:名無しの亡者

ササミなら・・・ササミなら作ってくれる・・・!

 

92:名無しの亡者

黒髪三つ編みそばかすクール死神ポンコツ少女ですか

 

93:名無しの亡者

増えてて草

 

94:名無しの亡者

クールポンコツ少女はいいぞ。クールポンコツ少女を摂取しなさい

 

95:名無しの亡者

吾輩そういうの好き

 

96:名無しの亡者

ワイトもそう思います

 

 …

 ……

 ………




TIPS:

【ササミ】
 フォース『エターナル・ダークネス』のメンバーの一人。
 シャル・アクスティカが着ていたものと色違いの制服を着た淡い金髪の少女アバターを使うダイバー。関西弁で喋り、陽気な性格。

 使用ガンプラはMS少女『シャルトーネ』。

【ペーパー】
 フォース『エターナル・ダークネス』のメンバーの一人。
 フォースの中では唯一の男性アバターを使うダイバーのため、いつしか『百合の間に挟まる男』と呼ばれるようになってしまった。

 使用ガンプラは『ダラス・S』。

【デュオ・ジーナス】(出典:suryu-さん作『【新約】ガンダムビルドダイバーズEW 〜死神は自由気ままに空を舞う』
 通称〝死神〟。かつてGPDでいくつもの大会を優勝した凄腕ファイターであり、現在はジャンク屋をしながらGBNでも活動している。

 ササミが好意を寄せている相手だが、当のデュオは気づいていない様子。
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