遊☆戯☆王:OCGワールドストーリー”深淵の烙印世界” 作:erugon
とても暑い日が続きますが、皆様どうお過ごしでしょうか。
公式からの供給でテンションアップダウン激しい日々です。
「復烙印」→え、ちょ、ま、誰?
「赫の聖女カルテシア」→あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!
「スプライト・ダブルクロス」→お願い早く助けてに来て……
「決戦のゴルゴンダ」「鉄獣の死線」→おぉしゃぁぁぁぁッ!!
などと、こちらは心臓に悪い展開が続いており、どう文章化しようか、悩むところです。
DARKWING BLAST、PHOTON HYPERNOVA、そして第11期最終弾と、物語は佳境へと至っております。
皆様、どうぞ一緒に彼らの旅路を見守っていきましょう。
時間は、アルバスたちが旅立った直後まで、巻き戻る、
砂漠では、キットがチラリと、ドラグマの首都がある方角を見た。
最近あちらの空は常にホールの輝きに包まれた紫色で、不気味な雰囲気を漂わせている。
幸い砂漠に実害はない。砂漠の主である超大型ゴルゴンダもいなくなり、自由な砂漠ライフを満喫できている。
その傍らで、キットは金づちを振るい、溶接し、折り曲げ、接続し、半壊していたベアブルムを再構築していく。
修理用や予備として用意していた分のパーツを加えて作業を進める。エクレシアのハンマー作成と並行して行っていたが、こちらは少しまだ時間がかかるようだった。
「キット、ベアブルム、直サナイのか?」
「まぁ、そうしようかとも思ったんだけどさ。あんなデカいのが来ちゃうと、パワー重視しても意味ないかなって思えて。機動力重視の装備に改造しちゃおっかなって。移動手段としては残しておいてもいいけど」
まるで一人で三人分の動きをこなすかのように、キットは道具を使ってベアブルムをどんどんバラし、どんどん改造していく。
スプリガンズもそれを手伝わされているようで、何かを運んだり、支えたり忙しそうだ。彼女の傍らを、メカモズが旋回する。
「こいつも、コッチに残っテいるんだナ」
「うん。だけどちょっと改造してね。メカモズバージョン2.0」
「変わったヨウには見エナイが?」
「ちっちっちっ、中身が違うのさ。外見的にもアンテナが増えてる。名付けてメルクーリエ!」
名前を呼べば、それに改造されたメカモズはピィと鳴く。
「通信機能を追加して、ドラグマに向かわせるつもり。お姉ちゃんたちと、連絡がつかなくてさ……」
もし、この事をエクレシアたちに伝えていたら、彼女らはどうしただろうか。トライブリゲードの面々を助けることを優先しようとしたか。それとも自分たちの行くべき場所を目指したか。
結果はわからないが、余計な心配をさせたくはなかった。
「と言っても、あたしらも砂漠を離れるから、実際に通信ができるのは、まだまだ先だろうけどね」
ホールからもたらされる技術や文献では、なんでも星の真裏まで離れていても言葉を交わせる技術があるのだとか。残念ながらそんなものを現実化できるような技術も資材もない。
今はメカモズを介した通信で限界だ。
「だから、この子とはもう一度お別れ。お姉ちゃんや、シュライグを頼んだよ」
新メカモズことメルクーリエは、アルバスたちについてはいかなかった。もともと砂漠まで案内と、トライブリゲードの仲間の証明に使うために貸し与えられたのだ。
本来の主、シュライグのもとに戻るのも自然な話。
しかし、これでしばらくアルバスたちの様子を知ることも、連絡を取ることも難しくなる。
尤も、相剣門とやらが簡単に連絡を取れる場所なのか、疑問はあった。
なるほどな、とサルガスたちが納得している傍らで、キットは額の汗を拭う。
「でっきた! 名付けてスプリガンズパック! 飛行システムとベアブルムの攻撃システムを両立させた、新装備! ゴルゴンダがいなくなって、新しいテクノロジーを発掘できたからこその、新システムだよぉ!」
すりすりと頬ずりをするキット。これは、今までのトライブリゲードの装備とは全く違う。
弾丸に聖痕を封印する力を宿した彼らの武器とは違い、特殊なエネルギーを爪の先から放出して攻撃手段に変えるベアブルムのシステムとともに、飛行用アイテムとしての役割を持っていた。
逆の腕にはスプリンドの武器を加工して作った、ホールのエネルギーを放出する武器まである。
「絶対王とか言う文献、役に立ったよ。ホール様様だね」
様々な技術が、ホールを通して流れ込んでくる。今回彼女が作ったバックパックのデータも、ホールから流れ込んできた資料の中にあった。
「すごく強い人型機械に関する資料とかもあったけど、さすがにあれはあたしが手に負えるようなものじゃないからな」
「メちゃクちゃ巨大ナ、神サマみたいナ奴だっタナ」
「プロジェクトネガロなんたらってのね。ま、再現不可能な以上、実現不可能ってね」
作業場から外に出て伸びをした彼女を、砂漠の熱い太陽が迎え入れる。
徹夜で作業した疲れ目に、太陽光が飛び込んできた。
「つぅぁぁぁぁぁ……さて、そろそろ出かけようか。キャプテン」
「鉄ノ国へ、出発するノダナ」
「うん。聖痕を封印するって言うのなら、同じ力を持つものがあった方が便利だからね。鉄の国の大将から、ちょこっと拝借しに向かうとしようよ」
彼女が見ている方向は、ドラグマとは全く逆方向の地平の彼方。
そこに、トライブリゲード達が力を手に入れた鉄の国があり、そこまたホールの恩恵を受ける場所だ。
「新しい仲間ノためダ。エクスブロウラー、進路ヘンコー!!」
こうして、スプリガンズはキットとサルガスに率いられて砂漠を渡る。
目指すははるか遠くの活火山。
そこには、大昔にホールより飛来したという、謎の円盤が存在していた。
そして、その円盤を守るように、そして盛り上げるようにして存在する者たちも、また活動しているとのことだった。
◆
時間は、瑞相剣究を終えた直度まで進む。
鋭く天にそびえる尖頭の上。
そこにいる少年は、退屈そうに足をブラブラと振っている。
「振られちゃった。さすが、聖女様の魅力値は高いなぁ」
ケラケラと笑う姿は、どこか狂気的だ。
遥か下の地上から聞こえる爆発音を全く気にせず、自分の目の前に展開された小さなホールを覗き込んでいる。
「相剣の結界も頑丈だし。ま、固いけれど、突破できないわけじゃない。ドラマトゥルギアと一緒にやれば――」
――ズガァァァッ!!
さすがに、無視せざるを得なくなった。
「うるさいなぁ、さすがトライブリゲードってところだけど、そろそろねぇ」
少年は懐に仕舞っていた仮面を取り出すと、赤髪をかき上げながら装着する。
笑ったような形をした仮面を被れば、たとえ彼自身の表情はわからずとも、その狂気的な雰囲気が増していく。
頭上の巨大ホールを見上げて両手を掲げると、何かを掴んだような動作をする。
「我――赫の烙印なり」
そのまま、背中から落ちていく。
地面に叩きつけられれば、どんな猛者であろうとただでは済まない。潰れ、砕け、死を待つだけ。
しかし、その背に翼があるのなら、彼は飛ぶ。たとえその羽ばたきがもたらすものが、死の風であろうとも気にすることはない。
なぜならば、彼こそは絶望の使者。
世界の悲劇を笑う者。
『デスピアの導化アルベル』なのだから。
「絶望と融け合い今一つとなる――赫灼竜マスカレイド!」
彼の姿は、真紅の翼と漆黒の鱗を持つ竜へと変貌する。頭部には兜のように変化した仮面をかぶり、全身から高熱の炎が溢れ出している。
赤々とした姿は煌々と大地を照らす太陽や、優しく闇を照らす焚火の炎ではなく、森や山を焼き尽くす災害の炎に見える。
赤髪のドラゴンは、必死にデスピアンと戦うトライブリゲードへと迫る。
「絶望の赫灼よ、希望を焼け!」
巨大な咆哮――トライブリゲードの面々も、デスピアの投入した新戦力に気づく。
先に巨大な敵を片付けたほうがいい。そう判断した彼らは一斉に武器を赫灼竜マスカレイドへと向けた。すぐさま、引き金が引かれようとした
――次の瞬間、彼ら全員が炎に包まれる。
「な、なんだこの炎は!?」
「な、いつの間に、こんな力を、俺たちに……」
攻撃の意志、抵抗の意志を焼き尽くす絶望の使者。
それこそが、赫灼竜マスカレイド。
「なぁんだ。鉄獣っていうくらいだから、熱には強いと思ったのに。溶けちゃった」
赤黒の竜は細長い舌をチロリと回すと、上空に視線を送る。
そこには自分を睨む片翼の戦士がいる。
「アルバスと同じような力と雰囲気だが、邪悪そのものか」
「ああ、お兄さんあいつのこと知ってるの?」
「知っているからこそ、お前はここで破壊する!」
凶鳥のシュライグ。その必殺の凶襲を、迷うことなく使用するに至った。
彼の跳び蹴りが、マスカレイドの腹部を蹴り付け、地面へと叩きつける。万全状態のフルルドリスですら行動不能に陥らせ、数日間の療養を必要とさせる一撃だ。間違いなく決まったとシュライグは確信する。
だが、瓦礫の名から何ともなさそうなマスカレイドが姿を見せた。
「ひっどいなぁ。痛くないわじゃあないんだよ?」
「……正真正銘の、バケモノどもが……」
攻撃は命中した。だが、どうも相手は特殊な回復能力を持つらしいと理解する。面妖なことだと理解しながら、動揺する精神を落ち着かせた。
一瞬、シュライグは瞼を閉じた。
拭いされない絶望が迫りつつあることを、鳥肌の立つその身で感じ取る。
下手をすれば、トライブリゲードの面々全員が、ここで死ぬ可能性だってある。
しかし、彼は今はすこぶる冷静だった。
「覚悟なら、とうに出来ている」
静かに言い放つ同時に、右腕を天に掲げる。全身から溢れた力が、彼の頭上に太陽のような光を作り出す。
しかし、それは本来の太陽とは違い、灰褐色の光を放つ。
まるで彼の翼のようなその色は、彼の鳥獣としての誇りそのもの。
かつて鳥獣族の代表的なメスだけの種族であるハーピィ族を守るために、帝王不在期の風属性をまとめ上げた希少なオスが編み出した、究極の奥義があった。
時代を超え、場所を超え、シュライグもまた、その一撃を放つ覚悟を決めていた。
「おいおい、何をする気なのさ!」
問いかけ方とは裏腹に、マスカレイドは楽しそうだった
「受けるがいい。貴様らの大好きな、神の名を持つ我らの翼を」
シュライグが放つのは、自らの命を引き換えにする、神鳥の名を冠するその一撃――否、
「ゴッドバードアタック、発動!」
その身に焔を纏ったシュライグは、高笑いを上げるドラマトゥルギアとクエリティス目掛けて、力強く羽ばたいた。
「上等じゃないかぁ!!」
すべては、不確かな明日の自由な空のために。
直後、烙印城のすぐ真横で巨大な爆発音が響き渡る。
真紅の炎の中で、歓喜の笑い声だけが止むことはなかった。