五等分の花嫁~五月のお団子が美味しい御話~   作:鈴木ヒロ

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二「あんまり食べると夕ご飯食べれなくなるから気を付けなさいよ」

一「大丈夫だよ。甘いものは別腹って言うからね」

五「えぇ、甘いものは別腹です」

三「さっき食べた肉まんは?」

五「肉まんも別腹です」



手探り進行②

「カレーのおかわり、まだありますからね!」

「あ、はい、いただきます」

「少しは遠慮しろ。そして早く帰れ」

結論から言うと私は上杉家にいる。そしてカレーを頂いている。

あの後の上杉君は未来世界と同じく二乃に睡眠薬を盛られて意識を失った。未来世界での私は、部屋で勉強中に良い匂いで釣られて一階に降りたら上杉君が寝ていた、という展開だったが、今回は終始キッチリ見届けた。

初めは犯人を知っている推理小説を読んでいる気分だったが、自分が登場人物の一人であり未然に防がなかったことを考えると、共犯者の気分になってきた。

「お兄ちゃん!家まで送ってもらったんだからそんなこと言わない!」

「ちげーよ!こいつの姉妹にだな」

上杉君が眠ってからはあっという間だった。懐かしい上杉家のカレーに舌鼓を打ちつつも、今に至る経緯を回想する。

外に捨てておこうという過激派の二乃と三玖を四葉と協力して何とか抑えて、この事故現場をどう処理するかという話し合いに移った。

みんなが頭を悩ませる中、ここで私は予め用意しておいた台詞を差し出す。

「あ、もしかして生徒手帳に住所が記載されているかもしれません。ちょっと確認しましょう」

少し棒読みになってしまったが周りに突っ込まれるほどではないだろう。既に役者の卵の一花から指摘される不安を残しながら彼の鞄を漁った。

生徒手帳は簡単に見つかりそれをみんなへと見せると、既に知っている彼の住所を伝える。

「意外と遠いところに住んでいるのね。周りに何もないところじゃない」

私なら退屈で死んじゃうわ、と口にする二乃だが、まさか数年後に自分たちがそこに店を構えるとは思ないだろう。

「住所が分かるならタクシー呼ぼうよ。流石に外に置いておくのは可哀想だし」

「そうだねぇー。万が一フータロー君が起きた時に入口で騒がれたら私たちの立場が悪いし」

送迎案に四葉と一花も同意してくれた。流れが上杉君をタクシーで送る流れになり、続いて誰が付き添うかに話がシフトするかと思われたが。

「じゃあ五月。あとはよろしくね」

「え」

話し合う姿勢に入ろうとした瞬間に二乃が後ろ背に手を振ってキッチンへと戻っていく。それを機に一花と三玖も立ち上がり、一花は「ご飯できたら教えてー」とあくびをしながら自室へ帰っていき、三玖は「お風呂の準備、先にしておく」と言って廊下へと消えていった。

残された私と四葉の間には何とも気まずい雰囲気が流れ始め、四葉もどうしたらいいか分からず苦笑いを浮かべていた。

「ええっと、五月に任せていいのかな・・・・・・」

「そ、それはですね四葉、あの、その・・・・・・」

過去世界の私なら彼に対する嫌悪を隠していないので、ここで四葉にお願いしても違和感なかった。しかし今の私の立場は四葉と同じく肯定派。適当に用事を作って四葉にお願いすることもできるが、私が任されたという雰囲気の中でお願いするのは面倒事を押し付けるようで後ろめたい。

「・・・・・・はい、同じクラスですし、今日くらいは、最後まで面倒見ます」

今日くらい、のところを少し協調して四葉にも自分にも言い聞かせる。

暗い外を制服のままで歩くには抵抗あるため、一度部屋に戻って着替えて、四葉と協力して呼んだタクシーに彼を乗せ―――

「五月さん?」

「あ、はい!なんでしょう!」

目の前にヒョコッと現れた可愛らしい顔。とても上杉君の妹とは思えない。

「はい、おかわりのカレーどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

らいはちゃんのカレーは野菜のみのシンプルなカレー。しかしこれだけ食が進むのは、小さい少女が一家の食卓を任されている経験と苦労を証明するようだった。

二杯目のカレーも綺麗に食べ終わり、思わず三杯目をお願いしようとしたところでグッと理性を働かせてスプーンを置いた。

洗い物を申し立てたが「お客様にそんなことをさせられない」とらいはちゃんが断わり、「食ったんだから働け」と野次を飛ばした上杉君をらいはちゃんにお盆で叩かれたところでお開きとなった。

「今日はご馳走様でした」

「おう。風太郎、通りまで送っていってやんな」

「えー・・・・・・」

「五月さん」

渋々と言った顔の上杉君が靴を履くのを待つ間に2人へ再度お辞儀をすると、らいはちゃんが声を掛けてきた。声を掛けてから少し間が空くが、風太郎のお父さんがそれを見守る。

「お兄ちゃんはクズで自己中な最低な人間だけど、良いところもいっぱいあるんだ。だから、その―――」

反射的だった。私はその先を遮るように、らいはちゃんの頭に手を乗せた。そして安心できるよう精一杯の優しい笑みで、遮った先の答えを伝える。

「もちろん。頭を使うとお腹が空きますから、またご馳走してください」

そう言うと驚いた表情になるらいはちゃんだったが、すぐに笑みを浮かべて「はい!」と元気に返事してくれた。

外に出ると道路が明るく照らされており、夜空を見上げると今夜は満月だった。

(この世界に来る前も最後は満月だったなぁ)

上杉君は立ち止まりただ月を見上げる私を不審に思ったのか「おい」と控えめに声を掛けてくる。その言葉に「何でもありません。ただ月が綺麗だと思っただけです」と返す。

人気がないバス停の横、二人で立つ男女。傍から見れば恋人に見えなくもないが、これはバス停を目印にタクシーを待つ女とそれに付き合わされる男である。

「ところでさっき」

穏やかな夜風と静かに聞こえる木々の波音。月を見上げながら待っていると、意外にも上杉君から声を掛けてきた。

「らいはは別にまた食べに来いなんて言ってなかったぞ」

随分と食い意地張っているんだな、と嫌味を言ってくる。しかしそんな嫌味も今宵は不思議と受け入れられた。

「貴方には分からない末っ子心というものですよ」

「あ?」

少しドヤ顔でフンッと鼻を鳴らして彼を見ると、意味が分からんといった様子をする彼。上の幸せを思う下の気持ちは、下の子にしか分からないだろう。

(そう、これは末っ子心)

世界が変わっても同じ道を歩もうとすることも、これだけ苦労しながら彼を支えるのも、こうして彼の横に立っているのも、全ては姉の幸せを思うからこそ。それを先程のらいはちゃんを見て再確認できた。

遠くから車の音がする。この時間に通る車は少なく、恐らく待ち望んだタクシーだろう。

横を見ると上杉君が単語帳を片手に勉強している。もう話すことはない、といった感じだろう。

私は再び夜空を見上げて、ほぉと一息つく。夜空に浮かぶ満月は少し雲に隠れていたが、それでも変わらず綺麗だった。




仕事の方も落ち着いてきて前投稿から1週間以内に投稿できました。
オリジナル小説と違って大筋は決まっているので執筆はやりやすいですね。
ただ自分の作品を見返すと意外と癖があって、私の場合は末文を綺麗に終わらせようとそれっぽくしてしまいます。そういう書き方に憧れる年頃なんです。

本作は「月」をテーマにしているので、月の描写は慎重になると同時に「これでいいのか・・・・・・?」と不安になります。後々に解釈違いあったらどうしよう。

リスタート⑤の内容を少し再編集しました。たまたま読み返したら喫茶店から何の説明もなくマンション前で風太郎の発言だったため、間に少しだけ付け足しました。進行には影響なしです。



次回の更新予定は5月24日です。
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