五等分の花嫁~五月のお団子が美味しい御話~   作:鈴木ヒロ

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風「らいは、ボールペン捨てたいんだが」

ら「お兄ちゃん!不燃は昨日のうちに出してって言ったでしょ!」

五「そうですよ上杉君。不燃は今日で、明日は可燃ごみの日なんですから」

ら「あ!明日可燃ごみの日だった!缶を捨てる日かと思ってたよ」

五「それはもう過ぎてしまったので来週ですね」

風「なんでお前がうちの地域のゴミの日を把握してるんだよ」


冷たくてぬるい抹茶ソーダ①

夏が近づき半袖のシャツでも少し走れば汗ばんでしまう季節。雲はあるものの、日光が大地を差している今日は天気が良いといえるだろう。

嫌なことがあってもある程度なら「しかたがない」と流せそうな爽やかな朝、私は車のガラス越しで上杉君に見つめられている。

「かっけー、100万はするだろうな」

車の外の独り言はやや籠っているがこんな近くで言われたらバッチリ聞こえる。

「五月ちゃん?」

学校に着いたのにドアを開けない私を隣の一花が不思議そうにしている。しかし私の方を見ると同時に外にいる不審者にも気づいて苦笑いを浮かべた。

彼の不躾な行動に思わずため息が漏れる。いっその事、勢いよくドアを開けてニヤついた顔にぶつけてやろうか、と思ったが車を傷めると江端さんに迷惑がかかるためグッと堪える。

彼が覗き込むのを止めて体を引いたタイミングを見計らい、不機嫌さを伝えるように少しだけ勢いよく開けた。

「おはようございます上杉君。人の車を覗き見るなんて随分と不躾ですね」

皮肉を込めた挨拶を伝えて動揺する彼の横を通り過ぎる。それに便乗して一花が軽く挨拶しながら、二乃と三玖は無言で通り過ぎ、四葉は「あはは・・・・・・」と力弱く笑いながらついてきた。

「ってお前ら一昨日はよくも、って逃げるな!」

上杉君の叱責が飛んだと同時に走り出す私たちとそれを追う上杉君。その異様な光景は登校中の生徒の視線を一気に集めた。

上杉君の言った一昨日。その日は自作のテスト用紙を持った上杉君が家にやってきた日。彼は未来世界と同様に「合格ラインを超えた奴には金輪際近づかないと約束しよう」と宣言し、私たちに実力テストを課した。結果は過去世界と同じよう、採点後に姉妹全員で逃走することになった。

(テストをわざと間違えるのはかなりの罪悪感でしたが・・・・・・)

一昨日の自分の愚行を思い出して首辺りがムズムズした。誰もいないところなら頭を抱えて叫んでいるだろう。

「よく見ろ!俺は手ぶらだ害はない!」

そう言って上杉君は自分の丸腰を証明するように両手を開く。その動作に姉妹たちは足を止めるが警戒を解くことはなく「騙されねーぞ」「参考書とか隠してない?」「油断させて勉強を教えてくるかも」と野次を飛ばす。昔も同じことを思ったが、丸腰や参考書の有無はこの場において意味があるのだろうか。

恐らく私だけ方向が違う考えをしていると、上杉君がコソコソと近づいてくる。

「それで、その五月・・・・・・うちのことなんだが」

私にだけ聞こえる声量で訊ねてくる。それに対して「口外しません」と約束をすると、彼は安心したように息をついた。

そして昨夜から温めておいた突き放す台詞を脳内に用意して、それを読み上げる準備をしてから彼を正面から見る。

「私たちが力不足なのは認めます。ですが私たちはまだ貴方のことをよく知りません。ですから今は急ぎ家庭教師をせず、少しずつ歩み寄るのはどうでしょうか」

未来を知っている身としては彼に全面的に協力したい気持ちはあるが、それは過去の私が最も嫌った行為であり、それをしてしまえば今後の展開を予想するのが難しいのは目に見える。最低限のサポートに徹すると決めた以上、彼と姉妹たちの中間に位置するのがベストだと判断した。

肯定的とも否定的とも捉えられる曖昧な意見に、両陣営どちらからも異論は挙がらなかった。上杉君の方に至っては痛いところを突かれたような顔で「確かに・・・・・・」と賛同を得られたようだ。

「それなら一応聞くが、一昨日のテストの復習は当然したよな」

その言葉に先程まで攻めるような目線を送っていた姉妹陣営は、私を除いた全員が視線を明後日の方向に逸らした。その様子を見た上杉君は信じられないものを見たような顔になる。

「問一、 厳島の戦いで毛利元就が破った武将を答えよ」

(す、陶晴賢!)

と答えたいのをグッと堪えた。この問題は素で分からずに間違え、その日の夜に他に分からなかった問題含めて復習済みだ。社会のような暗記科目は忘れている範囲もあり、分からなかったのが教師として悔しかった。

この日の出来事が三玖の大事なターニングポイントなのは、未来世界の三玖に聞いたことがある。詳しいことは分からないがここは素直に過去をなぞろう。

期待するような目で見てくる上杉君には申し訳ないが、視線を切るようにプイと背を向けて教室へと向かい、その日の午前は何も変わりなく過ぎていった。

もう三玖と何かあったのだろうか。しかし午前中の上杉君におかしな様子はなく、授業中にコッソリと観察していたが至って真面目に授業を受けていた。

昼休みになり食堂で三久の様子を確認しておこうと席を立つと、仲の良いクラスメイトに昼食を誘われてしまった。せっかくの行為を断るわけにいかず、残念ながら三玖の様子を見ることは叶わなかった。

それならば上杉君の様子を確認しよう、と授業の準備があると一言残して先に教室に戻る。

(でも彼、いつも、難しそうな顔しているから何かあっても様子変わるかなぁ)

結果的に言うとそんな不安も杞憂で終わり、教室にいると彼の机の前に不審者がいた。

「・・・・・・自分の机の前で何ニヤついているんですか気持ち悪い」

「ば、バカ!ニヤついてねーし!真顔過ぎるほど真顔だ!」

絶対に何かあった。ニヤついているのだから良い事があったのだろうが予想がつかない。

(告白・・・・・・はこの時期ではありえないし、三玖からの協力の申し出だったらニヤける程ではないはず。いや、それ以前に三久の事とは限らない・・・・・・)

複数仮説を立てるがどれも納得のいくものはない。それに仮説は仮説、正解ではない。

(少し、行動してみようか)

今日に何か起こるとは限らないが一応、と放課後の尾行計画を企てた。

 




いざ章ごとに区切るとアンバランスになってしまいますね
章ごとの区切りは少ししたら整理したいと思います

タイトルがナンバリングしかないのは、最後のナンバリングを書き終えた時に「あれ、コットの方がタイトル良くね?」と思うことがあったので、その章を書き終えたらまとめて編集したいと思います。

今更ですが、ごとよめ映画化決まりましたね。今から涎を垂らして楽しみにしてます。
最近はごとよめ作者さんの元アシスタントさんが新連載した「甘神さんちの縁結び」の沼に住んでいます。ごとよめファンなら好きな漫画だと思うので、ここで布教させてください。

次回の更新予定は6月上旬です。
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