風「あー、あの手のやつは確率で取れるから、結局は買った方が安く済む―――」
五「取れました!」
風「安く済む・・・・・・」
五「100円でこんなに貰えるなんて、ゲームセンターはお得ですね!」
ら「お兄ちゃん?」
風「確率も食い意地には勝てないか・・・・・・」
『モードを選択してね』
『プリティモード』
『素敵な笑顔でキメちゃお☆』
薄い幕で覆われた狭い個室に三人。正面のモニターにはカメラを通した私たちが映っている。笑顔のらいはちゃん、心底嫌なそうな顔をする上杉君、そして感情を失った顔の私。
「二人とも顔が硬いよ・・・・・・って五月さん!?凄い顔になってるよ!?」
「ソンナコトナイデスヨ」
自分の不注意が招いた結果とはいえ、あまりに間抜けな展開に自己嫌悪を通り越して無感情に近い。
ここで過去をなぞったところで四葉の未来に大きな影響はないとしても、諸々の事情を知っている身としては何となく後ろめたい。
「やっぱりお前ら2人でやってくれ」
そう言って逃げるように幕から出ようとする上杉君だが、「逃がさないよ」とらいはちゃんの左手がそれを許さなかった。
『カメラを向いてね』
私たちの気持ちなんかお構いなしに、可愛い声のシステムは淡々と進んでいく。
「・・・・・・上杉君、観念してください。らいはちゃんのお願いなんですから」
小さなため息が漏れると同時に、自分の表情筋がほぐれるような感覚がする。自然と口角が緩み、上杉君を見る余裕もできた。
「この程度のこともできないとは、上杉君もまだ子供ですね」
指輪の件のお返しとばかりに挑発すると、こんな安い挑発でも効果があったようで「あ?この程度余裕だわ」と態度を一変させてカメラに向き直る。
「お前こそ余裕ないんじゃないのか?俺なんてノリノリで撮れるぜ」
急に強気になった上杉君は、らいはちゃんにくっ付く様に歩幅を一歩寄せた。得意げに私を見るその表情にイラっとして、対抗するように私もらいはちゃんとの距離を縮めた。
「その程度がノリノリですか?私なんてもっとノリノリですよ。上杉君こそ余裕がないんですね!」
少し腰落として顔をらいはちゃんに近づける。これには彼女も驚いたようで「五月さん!?」と声を上げた。
フフンッと上杉君を見ると、流石の上杉君も面を食らっていた。しかしすぐさま挑戦的な表情になると、真似をするように腰を落として顔の位置を下げ、らいはちゃんの肩を抱いてカメラに一歩近づけた。
「お、お兄ちゃん!?」
「ふっ、俺たち兄妹の仲だ。これくらいしないとな!」
もはや本人でさえ何を言っているのか分からないのだろう、挑発的な表情をしているが彼の目はどこか落ち着きがない。しかしもう引くに引けず、彼の性格上こうなるのは当然だろう。
だが、ここまで来て引けないのは私も同じだ。彼の挑発的な顔を着火剤にして気合を入れる。
『3、2―――』
「そ、それを言うなら私とらいはちゃんの仲です!男性に割り込む隙はありませんよ」
勢いよく近づけた頬がらいはちゃんの柔らかい頬に触れる。「い、五月さん!?」と戸惑いの声を上げる彼女に心の中で謝りつつ、先程より近くなった上杉君の顔を見て「フフンッ」と笑って見せた。
『1―――』
もはやショート寸前の3人の無動は、決定的なシャッターチャンスとなった。
パシャッとフラッシュが撮影ブースを照らし、それをスイッチのように3人の時間が動いたように、私と上杉君はらいはちゃんから弾けるように離れた。
「あ、あはは・・・・・・お兄ちゃんも五月さんも積極的過ぎて私が照れちゃった」
恥ずかしそうに笑う彼女の頬は僅かに赤い。しかし対面する上杉君の頬の方がもっと赤かった。
「う、上杉君、頬が赤いですよ。そんなに恥ずかしかったんですか?」
精一杯の虚勢を張って挑発すると、彼は左手で口元を隠した。
「お前こそ、人のことを言える顔かよ」
自分の顔がいつも以上に熱を持っていることくらい、言われる前から自覚している。
『次は両手を挙げてガオー、食べちゃうぞのポーズ!』
「まだあるのかよ・・・・・・」
その後もシャッタータイムは続いたが、合計何枚撮ったのかは覚えていない。落書きコーナーで5枚の写真がモニター映し出され、おぼろげながら何とか思い出せた。
「ちょっ、上杉君!なんで私の上にバカって書くんですか!」
「お前こそ!俺の顔に変な落書きしやがって!」
「二人とも、落書き時間終わっちゃうよー!」
落書きタイムでも一波乱あったが、撮影に比べれば大したことはない。
プリクラ機体の側面から手のひらサイズの写真フィルムが出てくる。それをらいはちゃんが取り出すと、軽い足取りでハサミが置いてあるテーブルへと向かった。
「なんか付き合わせちゃって悪いな」
「え?」
楽しそうならいはちゃんの後ろ姿を見ていると上杉君から話しかけられた。彼を見ると先程の私と同じく、らいはちゃんを見つめていた。
「らいはには家の事情でいつも不便をかけている。本当はやりたいことがもっとあるはずだ」
そう話す上杉君の顔は優しいもので、記憶の中にある過去の上杉君を思い出せた。
「―――『あいつの望みは全てかなえてやりたい』」
思わず口に出したその台詞に、上杉君がギョッとこちらを見た。驚いたその表情に思わず口角が上がり「してやったり」の気分になる。
「ちゃんとお兄ちゃんしているんですね」
「うっせーな」
そう言って視線を外す彼は明らかに照れている。そのことに尚更気分よくなった私は、わざと彼の正面に立つ。
「そういう優しさは良いと思いますよ、義兄さん」
「ハッ、お前に兄さんと呼ばれる筋合いはない」
彼は逃げるように正面に立つ私を避け、少し早足でらいはちゃんのもとに向かった。
彼らの方を見ると、小さな写真を巡って何やら言い合っていた。
その光景を微笑ましく思うと同時に、自分の胸に手を当てて静かに深呼吸をする。
「―――久しぶりだったから、かな」
手で感じ取れる程の大きな鼓動はどうしてなのか。追求すると胸がモヤモヤする不快感から逃げるように、私も彼らのもとへ歩き出した。
気付いたらもう12月になりますね
年末になると学生さんも社会人さんも、主夫・主婦さんも一気に忙しくなります
かく言う私もそうなのですが、遅い更新をどう謝罪すればいいのか分からないまま後書きを打っています(白目
亀更新でも読んでいただける読者の皆様には感謝しかありません
最近は忙しくて好きなゲームすらあまりできず、執筆する手も止まってました
ですがこのサイトに来るとモチベーションが上がりますね
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次回を書いたらようやく一花編の予定です
頑張ります
※
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