五「貰った側が文句言わないでください」
風「押し付けられたんだから言う権利あるだろ。残ったら保存に困るし」
五「?」
風「?」
五「自動販売機で買った飲み物は大体飲みきりじゃないですか」
風「お前の尺度で決めるな」
「やっと終わったー!」
「みんなお疲れ様―」
「花火って何時から?」
「19時から20時まで」
「じゃあまだ一時間あるし屋台行こー!」
らいはちゃんを交えた姉妹たちが水を得た魚のように生き生きとしている。かく言う私も気分が高揚しているようで、見る景色全てがキラキラしているようだ。
(アメリカンドッグ、チョコバナナ、りんご飴、焼きそば、お好み焼き・・・・・)
行き交う人々の賑わいと胃を刺激する匂いが、思考と歩みを迷わせてくる。
「上杉さん早く早くー」
隣で四葉が上杉君を呼ぶ。チラッと見ると、彼は簡易ベンチに座って死んだような目をしていた。四葉の声掛けにも視線を送るだけで動こうとしない。フランクフルトの屋台に惹かれながらもグッと堪えて、上杉君の下へ向かった。
「なんですかその祭りに相応しくない顔は」
「俺はなんて回り道をしているんだと思って―――」
ずっと遠い目をしていた彼は、近寄ることでようやく私に視線を向けた。彼の目が私をじっと見つめてくる。ふと私の恰好が浴衣だったことを思い出し、何か変だっただろうかと心配と羞恥が一気に来た。
「あ、あんまり見ないでください」
「誰だ?」
こういう男だった。その一言で心配と恥ずかしさは吹き飛び、ただただ彼への不満になった。
「い、五月ですぅっ・・・・・」
精神的に私は年上だという自分への言い聞かせで叫びたい衝動を押し潰す。この程度で苛立つようでは、パートナーとして彼の横に立てないだろう。
「ただでさえ顔が同じでややこしいんだから、髪型を変えるんじゃない」
「どんなヘアスタイルにしようと私の勝手でしょう!」
無理だった。そもそも、このデリカシー無し男を相手に気分を害さない人は少ないと思う。
「フータロー君、女の子が髪型を変えたらとりあえず褒めなきゃ。もっと女子に興味持ちなよー」
「そうなのか・・・・・?」
「・・・・・」
一花に抱きつかれている三玖が大人しい。一方抱きついている一花は何やら悪い笑みを浮かべると、三玖の下を離れて上杉君に何やら耳打ちを始めた。
気にはなったが、先程の上杉君にまだ腹が立つので近づきたくない。とりあえず近くにある屋台でやけ食いすることにした。
「すみません、アメリカンドッグを1本・・・・・いえ、3本ください!」
受け取ったアメリカンドッグは両手に持てないので、二本をパックに入れてもらい袋を貰った。一口かじるとカリッとした表面にフワッとした裏面、熱々の中身に頬が緩む。食べ物一つで機嫌よくなるのは、我ながら単純だと思う。
「ちょっと五月?早く来ないとはぐれるわよ」
「あ、ごめんなさい二乃。今行きます!」
気付くとみんなは人の波に乗っていて、私の位置から少しずつ離れていた。急いで合流しないといけないが、両手をふさがれた状態で人の波をかき分けるのはなかなかに難しい。他人にアメリカンドッグを当てないようにと両手を挙げて気を使いながら進み、なんとか6人の背中を見失わないように進んだ。
(四葉のリボンが離れている!らいはちゃんも一緒、かな・・・・・って!一花、そっちじゃないよ!これじゃあ二乃と上杉君しか・・・・・って、いつの間にか三玖がいない!)
誰を追うべきか即断即決できなかったせいで、気付くと二乃たちの背中すら見失ってしまった。それでも何とか前に進もうと、人に迷惑をかけない程度に人波を身体でかき分けて進んだ。
両端に屋台がなくなると、ようやく人波から脱出できた。荒れた呼吸を整えて、急いで振り返るが、やはり5人の誰も姿はなかった。
(アメリカンドッグを欲張ってしまったばかりに・・・・・)
右手に持つそれをジッと睨みつけ、恨みを込めてかぶりつく。アメリカンドッグはまだ熱々で皮肉にも美味しいと思ってしまう。
「このまま人波に沿っても追いつかないだろうし、待ち合わせ場所に先回りしようかな」
右手のアメリカンドッグを大きな一口で食べ終えて、串を左手の袋に片付ける。なるべく混んでいない道を探そうと見回したタイミングで、そういえば集合場所がどこか分からないことに気づいた。
スマホを取り出して一花に電話するが、通話中のコールがなって繋がらない。
(みんな電話しているのかな・・・・・とりあえず二乃にかけてみて―――)
「ねぇお姉さん、もしかして迷子?」
「え」
あまりにも近く聞こえたその声に振り向くと、赤みのかかった髪をした大学生くらいの男性がいた。あまりにも突然のことに固まっていると「もしもーし」とさらに声をかけてくる。
もしかしなくてもナンパというやつだろうか。どう対処したらいいか分からずに脳内がパニック状態となる。
「あ、いえ、あの、大丈夫です何とも平気です、問題ないです」
パニック状態で導かれた答えは逃走。今すぐにこの場を去ることにした。
「あ、ちょっとお姉さん!?」
背中越しに呼び止める声が聞こえるが、それに振り返るわけなく、一心不乱に歩き始める。急に汗ばんだ額を拭って人の波に潜る。そのまま何も考えずに波に揺られ、自然と空いたスペースに飛び出た。
「はぁ、はぁ・・・・・はぁぁー・・・・・・・」
手近な縁石に腰を下ろして、大きく深呼吸をする。慣れない出来事に体力を奪われてしまい、急に喉が渇いてきた。だが、手持ちにはアメリカンドッグしかなく、屋台や自動販売機に買いに行くほどの気力はまだない。
(ナンパなんて、大学生のとき以来、かな)
あの時は一緒にいた二乃が追い払ってくれたけど、私には二乃のような対応はできない。一部の女性はこれを嬉しいと思うのだろうか。私にはどうしても理解できない。
(好意を持ってくれるのは嬉しいけど、あの欲っぽい視線が、どうしても・・・・・)
当時のことを思い出すと、疲れた体が尚更重くなったような気がした。
みんなを探すのは少し休んでからにしよう。そういえば過去世界の花火大会では、どうやって合流したかな。
ボーっと視線を正面に動かすと、先程まで人混みで見えなかった屋台が見えることに気づく。いつの間にか、人混みは人通りほどに落ち着いていた
バーンッ!―――その変化に疑問を持った瞬間、頭上から大きな音と閃光が夜空を照らしす。
歩いていた人々は足を止めて、各々が夜空を見上げている。
花火の音はよく響き、耳から入る轟音は脳内にいつまでも反響するよう。刺激された脳内は、忘れていた記憶を思い出させる。
それは一人で見上げる夜空。そこに花開く大きな花火の情景。
パラパラと小さな音が聞こえて、再び静寂になった公園。
そして遠くから聞こえる誰かの足音に、視線を向けて―――
「おい!・・・・・さ、探したぞ」
聞いた事のある声にハッと現実に引き戻される。
「え、う、上杉君・・・・・!?」
勢いよく振り向くと、そこには息を荒げて膝に手をついて立つ上杉君がいた。
こんばんは。
夏至を越えて、次第に日が落ちるのが早くなりますね。
五等分の花嫁も未だに盛り上がりを見せて、色々なブランドとコラボしていてオタ活動が捗ります。学生の皆様は難しいとは思いますが、無理のない範囲でオタ活動楽しみましょう。
そういえばこの作品は不定期投稿のため、投稿報告用のTwitterアカウントを作成していたのですが、ログイン不可になっていて放置していました。
しかし、奇跡的に再ログインができたので、今後は使用していきたいと思います。
※更新確認のために逐一サイトを見てもらうのも悪いので、読者の皆様方にはこちらのTwitterアカウントをフォローして更新を確認してもらえると幸いです。
アカウント:@GotoyomeDango
※2022.6月30日に一部表現を修正しました。物語に支障はないです。