五等分の花嫁~五月のお団子が美味しい御話~   作:鈴木ヒロ

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二「もう五月!一体どこに行ったのよ」

三「五月が行く所なんて、どうせ一つだけ」

一「そうだね。きっとあそこだよ」

四「じゃあみんなで行こうよ」

姉妹「お好み焼き」「クレープ」「焼きそば」「チョコバナナ」

風(食べ物屋台なのは確定なのか・・・・・)




「みんな大丈夫かな・・・・・」

同時に、私の心配を励ますように花火が上がる。

二乃に無事と現在の様子を伝えると待ち合わせ場所を教えられて「あんたは迷子にならないように待っていなさい!」と強く言われた。

上杉君はというと「俺はいなくても問題ない」と言って他の姉妹を探しに行った。何だかんだ言ってもこの頃から面倒見は良いみたいだ。

皮肉なことに迷子になった私が一番乗りだったようで、屋上には誰もいなく持参していた食べ物も全部食べてしまい、一人時間を持て余してしまう。

(かといって私も探しに行けば、ミイラ取りがミイラみたいなものになりそうだしなぁ)

最初こそ罪悪感はあったが、二十歳を過ぎれば精神的成長と理想的な展開をなぞった安心感もあり、気持ちを割り切れる姉妹への信頼がある。

屋上の柵に上半身を預けて軽く身を乗り出すと、行き交う人々と良い匂いを漂わせる屋台がよく見えた。

待っている間に姉妹の分を買っておこうか。決して自分が食べたいわけではないと心に強く言い訳して。

「あれ、五月さんだ!」

突然名前を呼ばれてビクッと震える。声に振り向くと、いつの間にか四葉とらいはちゃんがいた。花火の音があるとはいえ、階段を上がる気配に気づかないほどボーっとしていたようだ。

「らいはちゃん、それに四葉も」

「良かった五月、無事だったんだね」

「心配させてすみません。迷子だったところを上杉君に見つけてもらいました」

「お兄ちゃんも偶には良いことをするんだね」

意外なところで自分の兄が活躍したことに、らいはちゃんが笑顔になる。こんなに可愛い子が彼の妹という事実を誰が認めることができるだろうか。

「ここまで来るのに大変だったよー。送られてきた位置情報はなかなか読み取れないし、人混みは凄いし」

浴衣の襟をパタパタする四葉は少し汗ばんでいた。普段は子供っぽい四葉も紅潮した表情と汗ばんだ姿で、あまり男性に見せてはいけない雰囲気を出している。

「と、とりあえず2人とも椅子をどうぞ。二乃には私から連絡しておきます」

屋上の中央にある丸テーブルに2人を誘導する。本来は5人で予定していたため、椅子は5人分しかないが、らいはちゃんが座るならば誰も文句言わないだろう。

四葉はテーブルに自分で買ったものを広げ始める。たこ焼きや唐揚げなどの食べ物や、何かの景品なのか手持ち花火やぬいぐるみ等を並べる。

「また色々と買ってきましたね」

「いやー、らいはちゃんが欲しそうにしているとついつい買ってあげたくなって」

なんとも四葉らしい理由で未来の義妹を甘やかしている。でも、その気持ちはとても分かる。

「五月もなにか食べたら?色々あるよー」

テーブルに並べられる食べ物は、屋台出身ということもあってとても美味しそうに見える。思わず「ではお言葉に甘えて」と言って食べそうになったが、ここでは私が精神年齢最年長者。迷惑をかけた身で先に食べるわけにはいかない。こんな我慢、大学時代のダイエットに比べれば大したことない、はず。

「い、いえ!みんな来てから食べましょう!私、全員分の飲み物を買ってきますね!」

食べ物の誘惑から逃げるようにテーブルに背を向ける。

「えぇ!?いいよ五月!私が行くから!」

「四葉はらいはちゃんと一緒にいてください。自販機はすぐ下にあるので迷子にはなりませんから」

先ほど屋上から見下ろしたときに自動販売機が近くにあったのは確認済み。人数分を買って戻るのも苦労ないだろう―――

「―――まぁ、そうですよね」

少し考えれば予想できたことだった。人目に付きやすい自動販売機は全部が売り切れだった。こんな暑い中、飲み物が売り切れないはずがない。目で見える範囲にカップドリンクの屋台はあるが、蓋が不安定なものを人数分抱えるのはさすがに無理がある。

恰好はつかないが一度帰るしかない、と考えたところで、ふと遠くの方に自動販売機の光が見えた。

遠くと言っても見える範囲だ。このくらいなら迷子にならないだろう。ダメもとで見に行こうと人の流れに乗る。

遠くに見えた自動販売機にはあっという間に着いたが、こちらはコーヒー系以外売り切れという偏ったラインナップだった。

完売だったほうが悩まずに済んだのに、中途半端に「コーヒーでもいいかな」と考えていると「五月」と後ろから声をかけられた。

「なんだ、また貴方ですか」

「それはこっちの台詞だ。待ち合わせ場所にいろって言っただろうが」

「ちょっと飲み物を買いに出ただけです。といっても、売り切れだったんですが」

彼は一瞬だけ自動販売機に視線を移したがすぐに私に視線を戻す。

「脇道に三玖が休んでいる。ひとまず合流しよう」

「分かりました」

私は人の流れをキョロキョロと見渡して横入りできる隙間を探す。すぐに大きな切れ目が見つかりスッと入ると、後ろから上杉君が話しかけてきた。

「一つ聞いていいか。俺たちってどんな関係?」

「・・・・・そういえばそんな気持ち悪い質問ありましたね」

昔はなんて答えただろうか。もちろん、今ならもっと親しい関係を提示できるが、この頃の彼に親しさを示しても否定されるだけだろう。

(この頃の私たち・・・・・知り合い、同級生、赤の他人、は流石に言いすぎでしょうか)

何ともしっくりくる言葉が思いつかず、沈黙してしまう。

「―――いや、何でもない。忘れてくれ」

私の無言を否定的な意味と捉えたのか、彼は質問を取り下げた。顔だけ後ろを向くと、何となく恥ずかしがっている様子だった。そんな彼を見ると思わず頬が緩んでしまい、それを隠すようにすぐ前に向き直った。

「私に聞かずとも、貴方はその答えを既に持っているじゃないですか」

「え?なんだよそれ」

勉強はできるが頭は良くない、というのは彼のことを言うのだろう。職業柄、質問に対しては親身になって答えたくなる。

「それに、その答えは人から教えてもらうものではありません。私たちとの関わりを通して、貴方なりの答えを出せれば、それ以上の答えなんて」

教示に熱が入りそうになった瞬間、脳裏にとある記憶がよぎった。反射的にバッと振り向くと、後ろを歩いていたはずの彼はいなかった。

「あー・・・・・、あぁー!もう!」

思わず出た叫び声は打ち上がった花火の音が重なり、祭りの喧騒に消えていった。

 




こんばんは
古いPCが生きていたので、そちらにデータ移して何とか投稿です。そのうち買い替えます。
次回投稿も少し遅れると思いますが、熱中症と感染症にはお気を付けてください。


※更新確認のために逐一サイトを見てもらうのも悪いので、読者の皆様方にはこちらのTwitterアカウントをフォローして更新を確認してもらえると幸いです。
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