五等分の花嫁~五月のお団子が美味しい御話~   作:鈴木ヒロ

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風「ていうかお前のその量なんだよ」

五「これくらい普通です。貴方こそそんな少しで足りるんですか?」

風「俺は小食なんだよ」

五「そんなことでは体力付きませんよ」

風「うるせーな、お前こそそんなに食べてふと」

五「太りません」

風「いやまだ何も」

五「太りません」


リスタート③

「ど、どーも五月・・・・・・さん」

翌日の昼食時、食堂にて。お世辞にも爽やかと言えない引きつった笑顔で話しかけてくる上杉君。

普段使わなそうな表情筋が痙攣するまで待つのも面白そうだが、この顔を見続けて笑わない自信がないので反応することにする。

「どうしましたか上杉君?」

午前の授業が終わり、他の姉妹たちと待ち合わせした席に向かう途中で声を掛けられた。

「いやぁー、また君と机を並べたくて来てしまったよ!どうだい一緒に!」

わざとらしい声で提案する彼。イケイケな発言とは裏腹に目は凄く泳いでいた。

大方、家庭教師の件を聞いて食堂での悪印象を取り除こうとしているのだろう。

慣れない行為と努力に免じて頷きたいところだが、記憶が確かなら2日目のお昼は四葉と大事な出会いがあったはず。

ここは誘いを断り一人になったところを四葉が会いに行く、という流れに持っていきたい。

しかし気になるのが声を掛けられたタイミング。前に声かけられた時は他の姉妹もいた気がする。

(でもこれは好都合かも。昔は他の姉妹との出会いは最悪だったけど、いま紹介すれば皆との関係も良い状態から始められる、はず)

「それならあっちで―――」

「あれ五月?何してんの早く行きましょうよ」

聞きなれた声に振り向くと、そこにはトレーに控えめな昼食を乗せた二乃がいた。

「げ、お前は」

「あぁー!アンタは!」

・・・・・・え?

「えぇっと二乃、2人は知り合いなんですか・・・・・・?」

額を伝う汗が冷たい。二乃が好きな彼はまだ先のはずで、好印象ではないのは今のやり取りで何となく察せた。

「こいつ!さっき五月をストーキングしてたのよ!アンタの知り合いじゃないの!?」

「いや、俺はストーキングしてた訳じゃなくて―――」

2人の異常なやり取りが徐々に周りの視線を集める。形勢不利と判断した彼は、あははは、と乾いた笑いを残して一目散に撤退した。

ちょっと待ちなさいよ!と最後まで威嚇する二乃を何とか抑えながら小さなため息を落とす。

(どうして予想してない展開に・・・・・・)

私が関与しなければ同じ展開になる、とは限らないみたい。そもそも未来の私がここにいる時点で知らないところで少しずつズレているのかもしれない。

「バタフライ効果、だっけなぁ」

「急にどうしたのよ」

思わず漏らした小さな呟きに反応する二乃。姉妹に対する細かな配慮が二乃の美点だとは思うが、今の呟きは無視してほしかった。

「何でもないです!さ、早くみんなのところに行きましょう!」

考え事をするのは一人の時にしよう。二乃を引っ張るように先を歩くと、後ろで二乃が何かを拾っていた。

「何これ、テスト用紙?」

「あ、それは―――」

「上杉、ふう、たろう・・・・・・。さっきの男の名前ね!」

「いや、それはあの―――」

次々と予想外の出来事に襲われ、頭が真っ白になる。そのテスト用紙は四葉が届けるはず。四葉と上杉君の再開。それを逃したら未来が大幅に変わる可能性が―――

「二乃!それは私が彼に返しておきます!彼とは同じクラスなので!」

少し強引だったけど、二乃からテスト用紙を受け取ることに成功した。

「大丈夫・・・・・・?私が一言言ってやってもいいのよ?」

「いえ大丈夫です!さぁ、早くお昼を食べましょう!」

これはこっそり四葉にパスしておこう。みんなのいるテーブルへと動かした足はさっきよりも重く感じる。

過去の細かい部分は覚えていないが、今回の昼食は二乃が上杉君の愚痴を言うくらいで特に何事もなく終えた。

個々のペースで食事を楽しみ、周りの生徒が少しずつ席を立ち始めたタイミングで私たちも解散することにした。

「五月―、さっきの人にプリント渡してきたよー」

「ありがとうございます」

二乃に言った手前、みんなの前でパスを出すわけにもいかなかった。そのため昼食を下膳するタイミングで四葉に「このプリントあの隅で食べている人のものなんだけど、無くして困っているかもしれない」と伝えた。

明らかに不自然な発言だったが、困っている人に弱い四葉は素直にお願いを聞いてくれた。

「でも上杉さんって五月と同じクラスなんでしょ?私が渡さなくても教室で渡せばよかったのに」

「ま、まぁちょっと色々ありまして。私が行くのは都合悪いんですよ」

まさか貴方の未来の旦那さんに会わせるため、とは言えない。

「え、五月何かあったの?」

「そ、その話はまた今度で!さぁ、午後の授業が始まりますよ」

頭上に?が沢山浮かんでいる四葉を強引にはぐらかしてして教室に戻った。

午後の授業が始まる。昼食後の教室は眠気で満ちており、半分以上の生徒が瞼を重そうに黒板を見つめ、一部は睡魔に身を任せて各々の姿勢で夢に落ちていた。

それは私も例外ではなかった。

現役高校生の頃は授業についていくために必死で眠気も感じなかったが、今の私にとっては高校レベルの内容はほぼ熟知しており、昼食時のターニングポイントを乗り切った安堵で気が緩んでしまう。

(この後は・・・・・・彼と一緒に帰って、みんなに・・・・・・せつめい、して・・・・・・)

「中野さん?」

脳に直接冷水を掛けられたような衝撃がきた。柔らかくなった背骨と首をピンと張って目を開く。

「眠そうですね。では眠気覚ましにこの問題を解いてもらっていいですか?」

怒っている、いうよりは面白がっている口調で先生が指示する。

眠そうに船を漕いでいた他の生徒も一気に目を覚ました辺り、もしかしたら私は人柱になったのかもしれない。

油断していたとはいえ授業中に寝ていた自分が恥ずかしい。自覚できるほど熱くなった顔を完全に上げることができず、やや下を向きながら黒板に向かう。

仕事で何度も握ったチョーク。新人の頃に持ち方から教わり、綺麗な文字を書けるように何度も先輩に教えてもらったのを思い出して苦笑いしてしまった。

親指人差し指中指の3指でチョークを持ち、黒板の数式に新しい数式を加える。

(この問題、よく見るとすごく分かりやすい。今度授業する機会あったら同じのだそうかな)

職業病というのか、良い教え方や例題はチェックしてしまう。そう考えると今の環境は都合の良い勉強期間と捉えられる。

「お、正解です。応用問題だったんですがよく解けましたね」

でも居眠りはダメですよ、と笑いながら念を押された。その笑みに「すみません」と小声で謝罪し、やや早足で席に戻る。

一度上がった心拍数のおかげでその後の授業は眠気に襲われることなく、仕事に生かせそうなポイントをノート端にメモして過ごした。

 




本筋は原作をなぞる予定なんですが、ビックリするくらい進みませんでした。
あんまり濃くすると飽きを感じてしまい、あんまりカットすると中身のない文章になってしまいそうです。
今は週1くらいの更新頻度ですが、今後の進行状況によっては週2くらいにするかもです。
試行錯誤しながら頑張ります。

ちなみに鈴木は授業中の睡魔には勝てないタイプでした。寝不足って訳ではないのに眠くなるのはどうしてでしょうか。

次回の更新予定は4月22日です。

※4月15日のイベント編更新しました。
「イベントでも五月のお団子が美味しい御話」もよろしくお願いします。
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