五等分の花嫁~五月のお団子が美味しい御話~   作:鈴木ヒロ

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二「五月、今日のお昼も少なめなの?」

五「はい、最近考え事が多くて食欲がなくて」

二「じゃあ、今日の夕食もなるべく少ない量で栄養価高いものを考えておくわ」

五「すみません、迷惑をかけます」

一(少なめって言ってもしっかりと一人前食べてるんだよなぁ・・・・・・)


リスタート④

先生が帰りのホームルームの終わりを告げる。

それから少ししてスピーカーから放課後用のBGMが流れ始めた。

放課後を迎えたクラスメイトはというと、改めて席に着いて談笑するグループ、急いで部活動に向かう女子生徒、無言で荷物をまとめて下校する男子生徒と様々。

そんな中、引きつった笑みで私に近づく不審者がいた。

「や、やぁ五月・・・・・・さん。ちょっと時間いいかな」

控えめに言って気持ち悪い。率直に言っても気持ち悪い。

この顔を見ても未来の姉たちは好きだというだろうか。

「・・・・・・はぁ。クラスメイトですし五月でいいですよ」

ため息が漏れた。私の知っている彼と目の前の彼とのギャップに頭痛がしそうになる。

「そ、そうか五月。急で悪いがちょっといいか?」

少し顔をそらしながら言う。その不自然な動作が気になったが、周りを見て理由が分かった。普段から誰とも絡まない彼が、転校してきた女子生徒に話しかけたら注目を集めるのも無理ない。

しかし注目を集めるのは彼に限らず私にとっても居心地が悪い。

「分かりました。丁度私もお話ししたいことがあったので」

一緒に帰りましょうか、と彼を誘った時にクラスメイトの視線が一気に集まった気がした。

 

「なんだお前、俺が家庭教師やるってこと知っていたのかよ」

「え、えぇ。ちょっと小耳に挟んだので」

彼の家庭教師業務を円滑に進めるには私が姉妹たちを説得しなくてはならない。その為には最初からこちら側に立っていた方が違和感なく進められる、はず。

「それならこんなに気を張る必要はなかったって訳かよ」

肩の力が抜けたからかぶっきらぼうな口調になった彼は、私が知っている彼に近くなって少し安心する。

「気張るも何も、まずはその態度を改めてください」

彼と姉妹たちの関係がマイナスから始まった原因の一つにコミュニケーションがある。隔離空間で過ごしていた猫が、いきなり他の猫と同じ空間に入れられたら喧嘩するイメージに近いかもしれない。

「食堂でのあの態度はマイナスです。初対面の相手に威圧するような態度は悪印象しか与えませんから」

「威圧してねーよ。つか、お前はもうそこを理解してるんだから直す必要ないだろ」

「あのですね、私はいいとしても他の姉妹が―――」

「あれー?五月だ!おーい!」

元気の良い声が響く。呼ばれた方に振り向くと、大きく手を振る四葉と一歩後ろで歩く三玖がいた。

「んん?隣にいるのは・・・・・・上杉さん!?2人は仲良しさんだったんですか?」

「別に仲良しじゃねぇよ。こいつに用があって話していただけだ」

別にやましい事はないのに四葉に見られた罪悪感で身構えてしまう。幸いにも引きつった笑みや不自然な態度は指摘されず、上杉君と四葉の会話は今日のテスト用紙の件で進んでいた。

「つーか、お前ら下校も一緒とかどんだけ仲良しなんだよ。友達ってのはみんなそうなのか?」

自身に友達がいないような闇を感じる発言をする上杉君。本人がそれを苦に思っていないことを逞しいと捉えるか寂しいと捉えるかは人によるだろうが、少なくとも今の私は寂しいと感じる。

「別に、私たちは友達じゃないから分からない」

三玖の発言に上杉君の表情が固まる。目の前で地雷を気にせず踏んでいく狂人を見たような顔だ。

「いやお前、こんな堂々と、え、え?」

戸惑う彼を見て思い出す。そういえばこの時点で姉妹なのは知らないんだった。

確かにその事実を知らない人が聞けば三玖の発言は奇怪なものだろう。

「いえ、三玖の言ったことはそういう意味ではなく―――」

ヴゥー、ヴゥー、ヴゥー

三玖の発言を説明しようとしたタイミングで私のスマホが着信を伝える。言おうとしたことを遮られた形になったため「えっと、あの、えぇっと」と右往左往してしまったが、まずは電話に出ることにした。

「もしもし五月?今どこにいるのよ」

「に、二乃ですか」

電話相手は二乃だった。反射的に上杉君に背中を向けて、空いた手で口周りを覆って隠す。昼間の上杉君の件で二乃にも罪悪感で身構えてしまった。

「一緒に新作カフェを買って帰ろうと思ってクラスに寄ったのにいないんだもの。他のみんなも一花以外捕まらないし」

「あ、三玖と四葉なら今一緒にいるけど」

「何よ私たちだけハブいたわけ?今行くからどこにいるのか教えなさいよ」

「え、い、今からですか!?」

この場にいるのは三玖と四葉、そして二乃と言い争った上杉君。ここに二乃たちが合流すれば喧嘩勃発回避不可だ。

前に三玖のゲームをやらせてもらった時、「各個撃破するのは戦の基本戦術」と言われたのを思い出す。四葉は最初から好印象だからいいとして、残りの姉妹をまとめて説得するのは難しい。

「すみません!ちょっと用事を思い出したので先に帰ります!あとは三玖と四葉にお願いします!」

スマホの向こうで二乃の戸惑った声が聞こえたが構わずに通話を切った。

「どうしたの五月?二乃なんか言ってた?」

慌てた私の様子を見て四葉が心配してくれた。しかしその優しさに答える余裕はなく、頭の中はどう立ち回るのべきかで一杯だった。

「すみません四葉、少し考えたいことができたので先に帰ります。上杉君、行きましょう」

「え、あ、あぁ」

状況が呑み込めない彼は腑に落ちない顔をしながらもついて来てくれる。

本当は今すぐベッドに飛び込んでゆっくりと考えたかった。しかしここに彼を置いておくと合流した二乃と鉢合わせし、私の知らないところで状況が悪化するかもしれない。

「おい状況がよく分かんないんだがいいのか?その、友達・・・・・・を置いて行って」

「そちらも後々お話しします。とりあえず近くの喫茶店でお話ししましょうか・・・・・・」

言葉尻になるにつれ声が小さくなってしまう。もしかしたら自分のしている行為は意味をなさないのではないか。

(変に気を使わず、過去を綺麗になぞった方が良かったのかな・・・・・・)

今更あとに引けない状態が余計に悪いイメージを作り上げる。

見上げた空に浮かぶ雲が、灰色よりも重い鉛色に見えて仕方がなかった。

 




自分で執筆してて一向に進まないなって思いました。
次回で時系列的に原作一話目は終了です。

部活動を引退した後の放課後は、人生で一番自由だった気がします。
放課後に教室でバレーボールをし、教室用の壁掛け時計を壊したことは一生忘れません。
石井先生、すみませんでした。

次回の更新予定は4月29日です。
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