五等分の花嫁~五月のお団子が美味しい御話~   作:鈴木ヒロ

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一「転校早々やるねー五月ちゃん」

五「い、一花!彼そういう人ではなく」

二「五月が認めてもアタシが認めないから!」

五「いえ!だから彼とはそういう関係ではなく」

風「おい、さっき話した(家庭教師の)関係は嘘だったのかよ」

五「貴方はややこしくしないで!」


手探り進行①

あれから何とかみんなを説得して上杉君を家に招くことに成功した。

一花は面白そうな顔で、二乃は納得しておらず、三玖は興味なさそうに、四葉は嬉しそうに、私は頭痛をこらえながら、ベランダでお父さんと電話をしている上杉君を待つ。

「ふぁぁ・・・・・・私は部屋で寝ているよ。終わったら起こして」

「私もパース。あ、終わっても呼ばなくていいから」

「私も、部屋に戻ってる」

「え、えー!ちょっとみんなもう少し待とうよ!五月も止めてよー!」

「あー、いえ・・・・・・私も他人事ではないというか、私が止める権利はないと言いましょうか」

つい四葉から目を逸らす。過去に自分も部屋に戻って四葉たちを困らせたことを思い出すと、後ろめたさでどうしても他の姉妹に口を出しづらかった。

私と四葉を除く姉妹は部屋に戻ってしまった。自分はこれからどうすればいいか分からず、右手でこめかみを挟むようにマッサージした。

「えぇ、事情を話して部屋に集まってもらってま―――」

ベランダのドアが開いて上杉君が戻ってくるが、部屋にいる人数が自分の考えていた人数と違ったためか、言葉が詰まり顔に多量の汗が浮かんでいた。

「ま、全く問題ありません。おいおい押すんじゃないよ。全く困った生徒たちだ!」

焦った様子で変なジェスチャーを含めながら一人芝居を見せる。過去の彼も同じように慌てふためいていたんだろうか。いや、この世界も過去の彼だから、今思った彼は未来の過去の彼と表現するのが正しくて、この世界の彼は過去の過去の彼―――

頭痛が強くなった。

思考能力が格段に落ちたのが分かる。とりあえず元々私がいた世界を「未来世界」、今私がいる世界を「過去世界」と呼称することにする。

上杉君はピッと電話を切ると部屋の中央にあるソファーに腰を下ろした。

「はぁ・・・・・・おい五月、あいつらはどこに行った」

「すみません今は少し休ませてください・・・・・・」

「みんな自分の部屋に戻りましたよ」

隣で四葉が申し訳なさそうな顔で説明する。その顔を上杉君はじっと見つめて、あろうことか未来の奥さんに「四葉だっけ?0点の」とデリカシーの欠片もない問いかけをした。その類の問いかけを二乃や三玖にしていたらどうなっていたことか。

「つまり他の奴らは逃げたと・・・・・・逃げてないお前らは家庭教師に協力的ってことでいいのか?」

「はい!同級生の上杉さんとなら楽しそうです!」

「私も家庭教師には賛成ですから」

「お前ら・・・・・・抱きしめていいか?」

「さー、他のみんなを呼びに行きましょー!」

気持ち悪い目でセクハラ発言をしてくる上杉君を困り顔で誤魔化す四葉。立ち上がって階段に向かう2人だったが、座ったままの私に気づき足を止めて振り向く。

「あれ、五月いかないの?」

「私は色々と準備があるので、すみませんがそちらはお願いします」

鞄から勉強道具一式を机に並べる。と言っても何をすればいいか分からないため、筆記用具とノートだけだが。

「分かった。じゃあすぐに呼んでくるから待っててね。行きましょう上杉さん」

四葉を先頭に二人が二階へ昇っていく。その背中を見届けて私は一つ深呼吸をした。

今日まで考えていた私の行動方針。それはなるべく干渉せずに最低限のサポートに徹すること。そもそも波乱万丈はあるとはいえ、レール通りにいけば二人の恋は成就し、未来世界と同じように進むのだ。

それよりも問題なのは、私の身に起きている現象。

何が原因かは分からないが、私は間違いなく未来世界から過去世界にやってきて、それは夢でも幻ではないのは今日まで過ごして納得している。

通学鞄から「自主学習用」とラベルされたノートを取り出す。それは自主学習用とは名ばかりの現状整理用のメモ帳。

ページをめくると今日まで分かったこと、思ったことが箇条書きされており、空いたスペースに「予め五つ子だと伝えるも顔合わせに変化なし」と新たに記入した。

一枚ページを戻す。前のページには「干渉は最低限」と大きな文字が丸に囲まれており、その下に「現状の問題点 戻る方法」と書かれていた。

そのページをシャープペンの先でトントンと叩く。同じ状況になったことがある人がいるとは思えないが、もしも自分と同じ状況になった人に聞いてみたいことがある。

それは「割り切る」か「割り切らない」か。

今いる過去世界は私が通ってきた過去のため、自分の知っている人物や環境があるのは当然であり、それは全く知らない異世界とは違う。

ただ、私は相手を知っていても、相手は未来世界までの私は知らない。果たしてそんな関係を、同世界と割り切れるのか。

(ここは同じ世界であって違う世界)

私にはどうしても割り切ることができず、今日まで接してきたよく知っている姉妹でさえ、「本物の姉妹の別人」といった矛盾している存在に思えてしょうがなかった。

(未来世界の最後の記憶は階段から落下していた。それが過去世界に飛んだ条件なら)

視線が階段に向く。それと同時に階段からジャージ姿の二乃が降りて来るのが見えた。

慌ててノートを閉じて鞄にしまう。こんなノート、私以外の人が見たら頭がおかしくなったと思われてもおかしくない。特に二乃は心配性だから大変な目に合うのは容易に想像できる。

「あれ五月、ここで勉強するなんて珍しいわね。あの男にそそのかされたの?」

「そそのかされた訳ではありませんが、偶にはいいかと思いまして。二乃こそ上杉君たちに説得されたんですか?」

「冗談。三玖の部屋から二人の声が聞こえたから面倒になる前に降りてきたのよ。それに、クッキー作りが途中だったしね」

あんたも食べるでしょ、と言い残してキッチンに消えた。そういえばと、あの日は二乃のクッキーを食べたのを思い出したと同時に、これから彼の身に起きる不幸も思い出す。

二階で何やら驚いた声が聞こえる。今何をしているかは分からないが、苦戦しているのは容易に想像できる。

(はぁ・・・・・・どうしようかな)

幼き頃の彼の妹に会いたい欲求と、再び自分がその立場になる後ろめたさ。

一難去ってまた一難。状況整理と今後の計画を立てるため、一週間くらい時間が進まない環境が欲しいなどと非科学的な発想が出てしまう程、私は疲れているようだ。

 




更新遅くなってしまい申し訳ありません。
五つ子誕生日のイベント編を先に執筆していたら、本編がかなり遅くなってしまいました。
ただでさえ忙しくて更新できなかったのに・・・・・・

今月いっぱいは亀更新になってしまいますが、長い目で待っていただくと幸いです。
イベント編更新しました。よければそちらも読んでみてください。

次回の更新予定は5月17日です。
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