間違った「世界」の正し方!   作:/\三瀧/\

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初めまして!あるいはお久しぶりです!三瀧です!

思いつきで始めた作品ですが、感想やお気に入り一つでも貰えたら続けます!

要は、構ってもらえると頑張ります!

なかなかヘヴィな話ですが、是非最後までお願い致します!

では、どうぞ!


プロローグ

 俺の腕の中で、魔法使いの衣装を身にまとった少女が眠りにつこうとしている。

 

「なぁ、こんな所でなんてお互いに嫌だろ?起きて帰ろうぜ?まだ虹の半分を見つけられてないんだしさ。」

 

 何せ、ここは荒野のど真ん中。

 

 枯れた大地に乾いた風が吹き荒れる、人が住むにもなんなら少し過ごすだけでも辛い環境だ。

 

 オマケに、人を襲う魔物だってウヨウヨいる。

 

 虹なんて見えそうもない曇天の下、俺は彼女に語りかける。

 

「あ、ははは……。そう……だね。私も……ここは嫌だね……。」

 

 力なく笑ってみせた彼女だが、しかしうつらうつらし始めてしまう。

 

 もう限界は近いのだろうか。

 

「おい、起きてくれよ。こんなとこで寝たら来世まで後悔するぞ。」

 

「うん。うん……。分かってる……よ。」

 

 分かったって言ってるくせに、彼女は今にも眠ってしまいそうだ。

 

 食後の赤子みたいに目を開こうとして、襲い来る眠りに負けて閉じての繰り返し。

 

「分かってるなら起きろよ。立ってその足で帰るぞ。」

 

 発破をかけるが、彼女は曖昧に笑って誤魔化すばかり。

 

 その身体から力が抜けていくのを感じる。

 

 どれだけ揺すっても反応があまり無いのだ。

 

「あの……さ。聞いて欲しことが……あるんだよ……。」

 

 彼女は、弱りきった瞳で俺を見据えて今にも消えそうな声で言葉を紡ぐ。

 

「なんだよ。そんなの今じゃなくたって良いだろ?帰って風呂は入ってからでもゆっくり話せば良いだろ?」

 

 あたかもこれが最期かのような言葉が気に食わない俺は、全力で遮る。

 

「私ね……レイが誘ってくれたから……こんなに……自由に……さ……。」

 

 それでも続く力無い言葉はもう、風が邪魔をしてろくに聞こえない。

 

「喋る余裕があるなら起きろよ!後で出来ることに無駄な体力使うなよ!」

 

「だから……ね。」

 

 __ありがとう。

 

 最後の言葉は彼女の口から出てきたのか、俺の妄想なのか分からない。

 

 ただ、何か伝えようとして、それを完遂すること無く彼女は眠りについてしまった。

 

 それも当然だ。

 

 彼女の一つに結んだ艶やかな黒髪も、服が破れてむき出しのお腹も、彼女を支える俺の手も全てが真っ赤に染っている。

 

 眠りについた彼女は少しも息をしていないし、多分心臓だって止まっている。

 

 そう。

 

 彼女がつくのは永遠の眠りで。

 

 何も出来ない俺は現実から逃げるように彼女に呼び掛けていた。

 

 風穴の空いた彼女の腹部からは今も真っ赤な血が流れ出しており、俺の脚を濡らし続けている。

 

 俺と彼女はこの荒野に指名手配されていた魔物の討伐に来て、彼女の犠牲を対価に勝利したのだ。

 

 ただ、今となっては正直そんなことはどうでもいい。

 

 自分の不甲斐なさで大事な人を死なせてしまった。

 

 恩人であり、親友でもある彼女を。

 

 その事実は、俺の思考を停止させるに十分な重さをもってのしかかってくる。

 

 だから、

 

「ねぇ君。今、後悔してるんでしょ?この私がどうにかしてあげようか?」

 

 という荒れ果てた地には場違いに思える少女の明るい声にも何も反応出来なかった。

 

「えぇ?無視ー?酷いね、君は!」

 

 いきなり現れた少女は空気が読めないのだろうか。

 

 俺の現状を見てそんなノリで話せると思うのか?

 

 まぁ、さっきまで誰もいなかったはずのこんな荒野にいきなり現れる時点で、常識を求めるのは違う気もするが。

 

「……うるさいな。そっとしておいてくれ。」

 

「やだよーだ!悪魔は人の嫌がる事をするもんだからね!」

 

 悪魔……?

 

 悪魔とは、魔物を生み出した?

 

 人の平穏な生活という願いを一蹴してしまった、人類史上最低の敵か?

 

 彼女を殺したあの魔物を生み出した?

 

「はい、ステイステイ!何も君をおちょくりに来た訳じゃないんだよ!」

 

 振り返り睨み付ける俺の目に映ったのは、へらへらとニヤけた少女だ。

 

 身長は百六十センチ程で、ピンク色の髪を肩のあたりで切り整えている。

 

 露出の多いバニーのような衣装の背中からは黒い翼が、おしりからは尻尾が生えており、ゆらゆら楽しげに揺れる。

 

 まだ幼げな顔立ちは、十六歳程に見える。

 

 悪魔、と言うには随分可愛らしい容姿だ。

 

「なんの用だ?」

 

 悪魔とはきまぐれな種族であり、何をするか分からない事で有名なのだ。

 

 害意は感じられないが、悪魔が人間の為に何かするとも思えない。

 

 まぁ、仮に俺が今襲われたとして、抵抗出来る余力はないが。

 

「私が来たのはね、救済だよ!ほら、そこに転がってる死体をどうにかしてやろうってね!」

 

 なかなか酷い物言いだ。

 

 だが、内容は非常に興味深い。

 

「で?どうするんだ?」

 

「時を戻すんだよ、魔法でね!」

 

 俺の圧なんてものともせず、仰々しくてを広げた悪魔はウィンクしてみせる。

 

「そんな都合のいい事出来るわけないだろ?」

 

 「魔法」というのは神様の力じゃないんだ。

 

 俺だって火を出したり電気を流したり出来るが、時間なんて言う絶対的なモノに干渉なんて出来っこない。

 

 科学と並ぶ人類の武器ではあるが、所詮はその程度である。

 

「それが出来るんだね!もちろん代償は伴うけど。ずばり、「他者を殺すこと」だよ!」

 

 ニィと意地悪く笑った悪魔は、心底楽しそうに続けた。

 

「どうせ時は戻るからね!大切なものの為に何かを犠牲にする!人間様の得意で大好きな事だね!さぁ、どうする?」

 

 語りきった悪魔は、俺を試すような顔で見下ろす。

 

 荒野に吹き荒れる突風の中、座り込んだ俺を見下ろすその姿は、なかなか迫力があり、そして悔しいが美しかった。

 

「どうするもこうするもない。そんなことが出来るなら、やらせてくれよ。」

 

 もうやぶれかぶれだ。

 

 悪魔にだってなににだって魂を売ってやる。

 

 風に舞う砂粒一つ分でも可能性があるなら、そこに賭けるんだ。

 

 例えその賭けの結果が世界を滅ぼすことになろうとも。

 

「うんうん!素直で良いね!じゃあ、手を貸して?」

 

 そう言って差し伸べられたのは、黒いネイルの華奢な手だ。

 

 こちらも手を伸ばし、悪魔と握手する。

 

 思ったよりも小さくて柔らかな悪魔の手に少し戸惑いながら。

 

 しばらくすると、悪魔と繋がった手と手と間で光が生じ始める。

 

「さぁ、これから君は精々頑張って誰かを犠牲にそこの女を助けるんだね!」

 

「言われなくてもそうする。だが、お前にメリットがあるのか?」

 

 この際理由なんて何でも良いのだが、それでも知ってるに越したことはない。

 

「それはね、君が困っているからさ!私も困ってるんだけどね!いや、むしろ私のが困ってるも?無関係な話じゃないんだけど、まぁ、そこら辺はそのうち分かるかもね!とりあえず、これは悪魔ちゃんとの契約だよ!」

 

 含みのある言い方だ。

 

 俺と悪魔の間に何らかの因果関係があるというのか。

 

 両親のことが脳裏に過ぎったが、それを考えると今理性が保てないかもしれない。

 

 とにかく、考えるのは彼女を救った後だ。

 

 悪魔は契約は絶対に破らない。

 

 その単語を使った以上、信頼は出来るのだろう。

 

「はい、終わり!君が誰かを殺した上で戻すことを求めれば時は巻きもどるよ!ただし、気をつけて欲しい事が二つある!」

 

 パッと手を離した悪魔は、二本指を立てる。

 

「一つ!時は関係の深い人物を殺す程遠くに遡れる!二つ!残忍な殺し方程時戻しの効果は強くなるよ!」

 

 なんとも悪魔らしい悪趣味なルールだ。

 

 つまりは、戻したければ仲のいい人……考えたくは無いが、例えば彼女のような人間を、痛めつけなきゃいけないと。

 

「分かった。どうせ今回しか使わないから問題は無い。」

 

 殺人なんて普段の俺には出来そうもない。

 

 それこそ、彼女の死のような大層な出来後でも起きない限り。

 

 だったら、どれだけ重いペナルティだってそんなに負荷にはならないだろう。

 

 彼女を失った今のような精神状態なら、どんなことだってしでかしてしまうだろうし、倫理観なんて消し飛んでいるだろうし。

 

「イヒヒ。君がどんな行動をとるのか心底楽しみだよ!誰を殺すのかな?どうやって殺すのかな?街に帰ってからが楽しみだよ!それじゃ、バイバイ!また会う時はどうなってるかな?」

 

 こちらに背中を向けて手を振りながら悪魔が立ち去ろうとする。

 

「……けどな。」

 

「ん?なんて?」

 

 風に掻き消された俺の独り言が引っかかったのか、悪魔が振り向く。

 

 そして、その大きな瞳を驚きに見開いた。

 

「あぇ……?」

 

 間の抜けた声を上げた悪魔は、「どうして」と言わんばかりに俺を見つめる。

 

「そんなに意外か?」

 

 俺の酷く冷めた声に、悪魔は混乱しているようだった。

 

「だって、君は私を信用してくれて……。」

 

「それとこれじゃ話が違うんだよ。」

 

 悪魔に突き刺した剣を、その背中を蹴るようにして引き抜く。

 

「あぅぅ……!」

 

 血の尾を引くようにして、うつ伏せで悪魔が砂地に倒れ込む。

 

 普通の人間なら苦痛に悶える所だが、流石は悪魔だ。

 

「待ってよ、私悪いことしてな……。」

 

 地を這うようにして後ずさる悪魔だが、

 

「だから、お前は悪魔だ。それ以上でもそれ以下でもない。」

 

 オマケにピンク髪なことはさておき。

 

「うくぅっ!」

 

 逃げられないよう右足に剣を突き立てる。

 

 筋を断ち切られだらんとした右足を引きずりながら、更に逃げようとする悪魔はそれでも説得にかかる。

 

「私があげた魔法じゃない!そんな恩知ら……あぁ!」

 

 黙って振り下ろされた剣は左足を貫き、地面と縫い合わせる。

 

 さっきまで銀色だった剣は、足から引き抜いた時には真っ赤に染まっている。

 

「あ、取り引きをしよ……。……ぅ……。」

 

 絶対に逃がさないよう二の腕も切り裂く。

 

「うぁぁ!」

 

 間髪入れず羽ばたこうとした翼をまとめて切り落とす。

 

 その度に今まで見たことが無いほどの血が溢れる。

 

 流石に翼は堪えたらしく、

 

「うぅ……。はぁ……。あ……。」

 

 呻き声を上げながら悶えている。

 

 こちらを覗く顔は絶望的に満ちていて、もはやさっきまでの余裕など微塵も感じられない

 

 息を荒らげ血の泉に沈む悪魔はすっかり力を失ってしまった涙目で俺を見つめた。

 

「なんで……なんでこんな酷いこと……。」

 

 俺からすれば悪魔なんてこんな目にあって当然だと思うのだが、悪魔の中で俺や自分の評価はどうなっているのやら。

 

「悪魔にはろくな思い出が無いんだ。親も、彼女も、国も、何もかも悪いことばっかりだ。こんな機会、滅多にないからな。」

 

 時を戻す魔法なんて大それた事を言われても信じられる程、悪魔は強大な力を持つのだ。

 

 それこそ、不意打ちでもしない限り俺なんかじゃ勝てない。

 

 苦しむ悪魔の姿に罪悪感が無いと言ったら嘘になる。

 

 だが、ここまで来たらやるしかない。

 

 トドメを刺すために俺が近付くと、悪魔は近寄るなと言わんばかりに尻尾を振り、体をうねらせ逃げようとする。

 

 しかし。

 

「あぅぅ。」

 

 そんなことで逃げられるはずもなく、俺が馬乗りのになる。

 

 圧迫されたことで翼の傷跡から血が溢れ、悪魔は情けない呻き声を上げる。

 

「……なぁ、死にたかないんだろ?もし嘘だってんなら見逃してやる。ただ、二度と陽の当たるとこに出てくるな。」

 

 悪魔を押さえ込んだはいいものの、いざトドメとなると少し気が引けてくる。

 

 完全優位に立ったことで冷静になった頭が、あまりに哀れな悪魔に同情している。

 

 様々な感情で麻痺していた倫理観が戻りつつあるのだ。

 

「……悪魔の……契約は……はぁ……。絶対……だから……ね。」

 

 嘘をつけば良いくせして、悪魔は苦しそうな顔で笑ってみせる。

 

 ……やるしかないんだ。

 

 自分で始めた癖して後悔しながら。

 

「そうか。両親の、彼女の、国の為だ。」

 

 言い訳のように、自分に言い聞かせるように呟い俺は、悪魔の肩甲骨辺りに剣を深く突き立てる。

 

 一度では力尽きないから、何度も刺し込む。

 

 その度にビクンと震える悪魔は、次第に呻き声すら上げなくなっていく。

 

 手に伝わる肉を切り裂く感触や生暖かい血液に吐き気を覚えながら、後戻り出来ない俺はひたすらに続ける。

 

 あと何回この手を動かせばいいのか。

 

 そもそも自分は何のために何をしているのか。

 

 意識が徐々に遠のいていく。

 

 ぼーっとした頭の中で、今日の出来事が走馬灯のように浮かぶ。

 

 腕の中で弱りゆく彼女の姿。

 

 魔物の凶刃が彼女を貫く瞬間。

 

 この荒野の環境への文句。

 

 長い道に疲れ果てた彼女の駄々をこねる可愛らしさ。

 

 忘れ物に気が付き走り帰った街道。

 

 遅れた朝食のベーコンエッグ。

 

 機嫌を取ろうとする彼女の気遣い。

 

 俺の制止を聞かず依頼を受ける身勝手な姿。

 

 人助けをせずには居られない彼女のそそっかしさ。

 

 そして……。

 

「ねぇ、見てよ。私この依頼受けたいんだけど、ダメかな?」

 

 彼女の甘えるような声。

 

 上目遣いでこちらを見る彼女は生気に満ちている。

 

 疲れた精神が見せる幻覚だろうか。

 

 今朝の一連のやり取りの巻き返しのようだ。

 

「ねぇ、聞いてる?おーい。」

 

 ぼーっとする俺の顔の前で、彼女がブンブン手を振る。

 

「ねぇ寝てるの?お目目開けて寝てるの?」

 

 俺が無反応なことにイライラしてきたのか、少し煽り口調になる。

 

 ……こんなやり取りあっただろうか。

 

「もうそろそろ怒るよ?」

 

 頭が追いつかず呆然する俺に痺れを切らした彼女は大きく右手を振りかぶり、

 

「はい!起きる!」

 

バチン!

 

「ってぇ!」

 

 彼女の平手がもろに入った俺の頬に強烈な痛みが襲いかかる。

 

 それは現実そのものであり、幻や妄想なんかじゃない。

 

「良かった。起きたみたいだね。」

 

 暴力をふるった癖して満足気な彼女の笑顔に思わず、

 

「あ……。」

 

 言葉を失い立ち尽くしてしまう。

 

 そんなの当然じゃないか。

 

 今俺の目の前にいるのは、眠ってしまったはずの彼女で。

 

 その可愛らしい顔には、笑顔がいっぱいに咲いているのだから。

 

 こんなの嬉しくないはずがない。

 

 こんなに嬉しいんだから、感情が溢れてるんだから頭が回る訳ないじゃないか!

 

「え、なに?そんな痛かった?」

 

 明らかに様子のおかしい俺に彼女が戸惑い始める。

 

「うわ、泣いてる……。ごめんね、ちょっと強すぎたよ。」

 

 少し申し訳なさそうな彼女は、顔を目と鼻の先まで寄せて俺の頬を少し冷たい手でさする。

 

 それでようやく自分が泣いている事を自覚した俺は、

 

「いやいや、問題無い。おかげでよく目が覚めたわ!」

 

そう言って彼女の顔を両手で挟み込んでやる。

 

「ひょっひょ!はにふるの!」

 

 タコみたいな顔で暴れる彼女の姿は元気そのものだ。

 

 しばらく眺めていると、

 

「もう!ウザイ!ぼーっとしたりちょっかいかけたりどしたの?」

 

 俺より二十センチ程低い小柄な彼女はするりと抜けて、不思議そうにしている。

 

「何でもないよ。今日は一日休もうぜ?なんかかったるいわ。」

 

 あんなことがあったなんて、彼女に教えられるはずがない。

 

 どうやら、戻れたらしい。

 

 あの惨劇が起きる前へと。

 

 だったら、俺の歩める道は一つだ。

 

 「彼女を守りきる」

 

 これを全うするため、俺は二回目の今日を、そして未知のこれからを過ごしていくんだ。

 

 彼女の死ぬ世界なんて間違っている。

 

 だったら。

 

 例え、どんな傷を負ったとしても。

 

 他の誰を犠牲にしたとしても正してやるんだ……。




かなり重い雰囲気の話ですが、楽しい日常だって待ってます!

温度差に風邪を引かないよう体温調節ファイトです!

最後までお付き合い頂きありがとうございます!次の話もお願いします!

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