間違った「世界」の正し方!   作:/\三瀧/\

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めっちゃかかって申し訳ないのです。

伏線とか色々考えてたらこんなにかかってしまって……。

オマケに部活引退目前だったり進路やらで忙しいのでまた遅くなることもあるけど、気長に待ってやってもらえると幸いです!


平和な日常へ

 むかしむかし。

 

 まだ人間と悪魔が仲良しだった頃。

 

 虹は半円ではなく円形をしていて、よく人間達の傍にも現れていました。

 

 その七色の姿は美しく、あらゆる生物を魅力して止みません。

 

 人間も悪魔もこの虹を大切にし、その美しさを共有していました。

 

 その状況を虹も快く思っていました。

 

 しかし。

 

 ある日、平和な日常は崩壊します。

 

 欲に溺れた悪魔が多数の人間を操り、虹の半分を切り取って持ち去ってしまいました。

 

 半身を失った虹は人間達を恐れ、絶対に人間達の手の届かないところに逃げてしまいます。

 

 この事件を機に人間と悪魔も対立状態になり、今でも和解は出来ていません。

 

 はたして、悪魔は虹を返し人間と和解する日は来るのでしょうか……。

 

 

 

 さて、これが何かと言うと、この国の状況をよく表した昔話だ。

 

 虹が何かの比喩なのかそのものなのかは不明だが、実際に人間から何かが奪われたらしい。

 

 その事件で悪魔と人間は仲違いし、お互いに牽制し合っている。

 

 いや、人間が一方的に嫌ってると言う表現が正しいのかもしれない。

 

 昔から今でも変わらず、悪魔はちょっかいを掛けたり、怪しい契約を仕掛けてしてくるのだ。

 

 変わったのは人間の方で、徹底して悪魔を排除するようになっていった。

 

 もちろん欲に負けて契約を結ぶ者……例えば俺みたいな奴はいるが、国全体としては立ち入り禁止や契約を結ぶ事を規制している。

 

 そんで、その管理を行う大臣が俺の育ての親であり、彼女……リンカの実の父親でもある。

 

 俺がまだ七歳の頃、フラっと現れた悪魔に両親を殺され、更には家まで焼かれ完全に孤児となった俺は、親同士で仲の良かったリンカの父に拾って貰ったのだ。

 

 つまり、俺は恩人の娘であり兄妹のような存在であるリンカを守りきれなかった訳だ。

 

 だから悪魔との契約に応じたし、悪魔をあんな目に遭わせた。

 

 後悔はしてない。

 

 どうせ時が戻るのだ。

 

 だったら、別に悪魔がどうなろうが知ったことじゃない。

 

 そもそも、これについては悪魔が言い出したことで……。

 

「ねぇレイ。考え込んじゃってどうしたの?さっきから変だよ?」

 

 一人考え込んでいるのを、リンカの声が遮る。

 

 駄々をこねるリンカをどうにか説得し帰路に着いたのだが、何分ついさっきまで地獄のような状況にいたもんでつい考え込んでしまうのだ。

 

 本来の朝の俺はハイテンションだった気もするし、ずっとしんみりしてるのは気持ち悪いだろう。

 

「いやな、俺は重大な事実に気付いちまったんだよ。」

 

 だったらここは一つ、ビッグニュースでも伝えてやろうじゃないか。

 

「え、なになに?」

 

 やっと構ってもらえたとばかりに食い付いてくるリンカに至って真面目な顔で報告する。

 

「実はな、肘と顎って付かないんだよ。そう、まるで月と太陽のように……。」

 

「えぇ!……どうでも良すぎるよ。オマケにセリフがなんか痛いし。」

 

 呆れた様な顔でそう言いながら、どうでもよさそうに肘を顎にすぃーっと寄せる。

 

 そして。

 

「うわっ、本当に付かない!なにこれ!」

 

 白いローブに包まれた肘を必死に寄せるリンカの姿は、とても女の子とは思えない。

 

 うーん、うーんと踏ん張るリンカだが、骨格上絶対に付かないのだ。

 

 子供っぽいなんとも微笑ましい光景に少し気が緩む。

 

 改めて安心出来るところに来れたんだ。

 

 そう思った瞬間、リンカはすぅっと目を細め、咎めるような表情に豹変した。

 

「なんてなると思った?十年も一緒にいて誤魔化せるわけないでしょ?いい加減教えてよ。」

 

 俺より少し低いリンカは上目遣いで見つめてくる。

 

 その瞳には嘘をつく俺への怒りの中に、心配の色も見え隠れしていた。

 

 あぁ、そりゃそうだ。

 

 もしリンカがずっとこんなテンションだったら心配するに決まってる。

 

 だが、本当のことなんて言えるはずが無い。

 

 何せ、悪魔を排除しようと活動する家に育ててもらった癖して、悪魔と契約したのだから。

 

 それにそもそも、自分が死んだなんて言われたら不快にこそなれど楽しくは無いだろう。

 

 オマケに、時間が戻るなんてのも嘘くさいし、本当のことを言える理由が見当たらないのだ。

 

 しかし、嘘はつけない。

 

 とてもじゃないが、今のリンカは騙せないだろう。

 

「あのな、実は大事な人が大怪我してな。今はもう何ともないんだが、またそうなりかねないんだ。それを考えたら不安でな。」

 

 だから、嘘をつかず、しかし本当の事も言わない。

 

 ただ、曖昧に誤魔化すしかないのだ。

 

「そうだったんだ……。」

 

 大事な人という単語にピクリと反応したリンカは、少し考えるような仕草をし、

 

「なら私を頼ってよ、水くさいなぁ。困ったらいつでも呼んでもよ?レイより私のがそういうの得意なんだからさ。」

 

ニコッと笑顔を返した。

 

「ま、まぁちょっと合わせられないけどな。困ったら頼むよ。」

 

 今度は演技じゃない、心からの笑顔だ。

 

 そうだ、これで良い。

 

 やっぱり嘘なんてつくもんじゃないよな、幼なじみに。

 

 

 

 すっかり機嫌を直したリンカと共に石畳の街中を進むこと二十分。

 

 レンガ造りの住宅街を抜けた先に広がるのが俺とリンカの住む家。

 

 大臣の家とだけあって、館という言葉が似合うこの街で一番大きな建物だ。

 

 しかし、使用人数人で管理される広すぎない適度な面積で、茶色を基調としたデザイン。過度な装飾もなく至ってシンプルな建物でもある。

 

 悪魔除けの結界を張る門を抜け、

 

「ただいま帰りました!」

 

「ただまー!」

 

玄関を抜けると、目の前には階段が二階に伸びている。

 

 床は赤いカーペットが敷かれていて、慎ましくも美しいデザインだ。

 

「それじゃあ、荷物置いて朝ご飯食べいこっか。」

 

「おう、そうするか。」

 

 これから二階にあるそれぞれの部屋に荷物を置き、そのまままた一階の食堂に向かうのだ。

 

 多分、今俺は一周目とおなじ行動パターンに入っている。

 

 というのも、俺のローテンションでリンカは一周目と違う行動をとったのだが、機嫌を直してからは朝と同じ会話だった。

 

 空が何故青いのか、とか雲が灰色の理由だとかとにかく他愛のないことを一言一句変わらずリピートされていく。

 

 前回は依頼を嫌がる俺の機嫌をとるために明るく振舞っていたが、今回はあんな重い話をした俺を気遣ってハイテンションで励まそうとしてたのだ。

 

 そして、この後出かける準備までは同じことの繰り返しなのだろう。

 

 だったら流れに身を任せよう。

 

 ベッドや勉強机が置かれてなお物寂しさを感じる程広い部屋の隅にバックやライトアーマーを投げ捨てて、うぅーんと伸びした。

 

 丸一日くらい続いた緊張の糸がやっと切れたのだ。

 

 ここからは誰かを殺す必要も、誰かに殺される心配もない。

 

 ただ、危険が危なくないよう静かに過ごせばいいんだ。

 

 あんな殺伐とした状況思うと、考えるだけで頭痛が痛い。

 

 なんて冗談みたいなジョークはさておき。

 

 俺の部屋も一周目と何一つ変わらない。

 

 いや、部屋の景色なんてものはそんな頻繁に変わったりしないが、我らが屋敷の名物、ドジっ子メイドのララさんが風魔法を活用した掃除機を忘れて行っていることまで同じだ。

 

 彼女は角部屋である俺の部屋を最初に掃除するのだが、他の部屋の掃除はどうしたのだろうか。

 

 さっき廊下ですれ違った時はルンルンで外箒を抱えていたから、恐らく何らかの方法で完遂したのだろう。

 

 昔から謎の多いメイドさんだが、一応仕事はきちんとこなしていたりする。

 

 黒胡椒と屋敷にあるはずもない火薬を間違えてチキンを爆破したり、怪しいキノコのシチューで皆笑いが止まならなくなったりしたが、見逃せばやる気もあり優秀な人なのだ。

 

 さてはて、今はそんなことどうでもいい。

 

 というのも、きっと扉の向こうにはリンカが出待ちしているはずだ。

 

 一周目の時も俺が遅くてリンカが待ちくたびれていたのは記憶に新しい。

 

 俺がそっと扉を開けると。

 

「わぁ!」

 

「うわぁぁ!」

 

 俺が自室の扉を開けて廊下に出ると、案の定リンカが扉の影から飛び出してくる。

 

 もちろん脅かしてくることは知ってたが、ここで無反応過ぎるとまたしても怪しまれるからここはあえてのオーバーリアクション。

 

 全力のバックステップで唐突に現れたその姿に驚いた感を演出。

 

 景色が高速で巡っていき、かなりの浮遊感を感じる。

 

 その動きはさながらキュウリにビビる猫のようだ。

 

 リンカはさぞかし満足しているだろうと思い

表情を盗み見ると、その顔には驚きが満ちている。

 

 てっきりドヤ顔でもしてるかと思ったのだが意外だ。

 

「……え!……ろ……よ!」

 

 あまり聞こえないが、リンカが手メガホンで必死に忠告してるような仕草をしている。

 

 よく分からないが、これで怪しまれることは無いだろう。

 

 尻もちでもついて勢いを殺そうと思い手を後ろに伸ばすと、何か機械的な物に手が当たった。

 

 バフン!

 

 その瞬間、突如背中を突風が襲う。

 

 フワリと浮かされた俺はそのまま窓を突き破り、二階からまっさかまさだ。

 

 落ちる寸前見えたのは、呆れ顔のリンカと逆噴射する掃除機。

 

 ……どうやら、ララさんは掃除機を壊したから俺の部屋に捨てて行ったようだ。

 

 いや、持って帰れよ。

 

 てか、どういう壊し方したら逆噴射すんだよ。

 

 脳内でツッコミを終えた俺は、庭の芝生に着地……もとい墜落した。

 

「あのー、坊ちゃま!ララが集めたゴミ撒き散らかさないで下さいよ!」

 

 クラクラする頭の中で、明るい声が聞こえる。

 

「……。」

 

 文句も言う気になれない俺が目を開けると、掃除機から吐き出されたチリがその瞳に直撃して……。

 

「うぁぁぁぁ!」

 

「ぼ、坊っちゃま!」

 

 悶える俺の悲鳴が、街の静かな朝に響き渡った。

 

 

 

 朝から踏んだり蹴ったりの俺とアホを見る目のリンカが食堂に向かうと、既にリンカの両親が朝食を食べ始めていた。

 

 白髪に白い髭を生やしたダンディなおじ様がリンカの父親だ。

 

 優しげな顔立ちからわかる通り、温厚で慈悲深い人物である。

 

 行き先のない俺を拾ってくれた事もそうだし、他にも悪魔の被害にあった人々への支援も積極的に行っている。

 

 その隣に座るのは、ブラウンの髪を下の方で結った女性。

 

 言うまでもなくリンカの母親だ。

 

 父親似た雰囲気を纏った柔和な女性で、今年で五十になるとは思えない程若い。

 

「おはようございます。ユリウさん、ミキさん。」

 

「おはよー!」

 

「はい、おはよう。」

 

「朝から元気ね。」

 

 挨拶を交わしながら座った席には、既にハムエッグとパンが用意されていた。

 

 二人揃って食べ始めてからは、予想通りの展開だった。

 

 聞き覚えのある話ばかりだ。

 

「私トマト嫌いだから残していい?」

 

 多分これには、ミキさんがこう答えるんだ。

 

「「ダメだよ。残したら作ってくれた人に申し訳ないでしょう?」」

 

 頭の中で再生された声と現実が重なる。

 

「それでね、今日指名手配された魔物の討伐の依頼行きたかったんだ。」

 

「あぁ、いい事じゃないか。気をつけるんだぞ?」

 

 きっとユリウさんは笑顔でそう答える。

 

「いや、危ないからやめた方がいいんじゃないかな?リンカ達にはまだ早い。」

 

 はずだったのに、真剣な顔でリンカを制止した。

 

「え……?」

 

 別におかしくは無い受け答えに声を出してしまった俺に、二人が注目する。

 

「あ、いや、なんでもないです。ほらな?俺が止めて良かっただろ?」

 

 慌てて取り繕いながら、俺は首を傾げる。

 

 今の今まで一周目と同じだったのに、ここの部分だけ前回と違うのだ。

 

 その後話を聞いていても、それ以外は違わなかった。

 

 もしかしたら、俺がどこかで話をそらしてしまったのかもしれないな。

 

 分からないことだらけだが、一つずつ学んでいけばいいか。

 

 

 

 俺が体調が少し悪いと言い訳して依頼を受けなかったおかげで、残りはゴロゴロしながら本を読んだりお菓子を食べたり自堕落に過ごせた。

 

 特筆すべきものもない平坦な一日。

 

 自分が何をしたかを忘れかかっていた。

 

 それなのに。

 

 目を覚ますと、俺は荒野にいた。

 

 それまでベッド寝ていたのに、だ。

 

 俺の手には剣が握られていて、目の前ではうつ伏せの悪魔がうめき声を上げている。

 

 完全に、一周目と同じ状況。

 

 何が起きたのか把握しようと思い辺りを見回そうとするが、体が動かない。

 

 風の感触も剣の重みも感じるのに、動かすことだけは叶わない。

 

 ふと俺の体は勝手に歩きだし、悪魔に腰の辺りに座り込む。

 

 あとは、語る必要もないだろう。

 

 強制的に人を殺す感覚を与えられ続けた。

 

 一周目とは違い、冷静な頭でその感覚をただ味わう。

 

 意識がぐちゃぐちゃになっていき強烈な吐き気が襲う。

 

 それでも時間の感覚を失う程に続いた。

 

 一時間か、一日か、十分たった頃。

 

 ふと俺の手が止まる。

 

 滅多刺しにされ意識を失っていたはずの悪魔がこちらを振り向いたのだ。

 

「ねぇ?楽しい?」

 

 笑顔で、尋ねる。

 

 その狂気に満ちた質問に、答えなかった。

 

 トドメとばかり手に持っていた剣を、血に染った首元に振り下ろし……。

 

 

 

「あぁぁぁぁ!」

 

 強烈な不快感とともに飛び起きる。

 

 今度は体が動くし、いるのは自室のベッドだ。

 

「夢……だよな?」

 

 悪魔に剣を突き立てる感触が今も残っている。

 

「う、吐きそうだ……。」

 

 それがあまりにも生々しくて、あたかも本当にやっていたかのような感覚に陥っているのだ。

 

 夕食や夜食のお菓子が喉元まで迫っているのを感じる。

 

「ねぇ、君体調悪そうだけど大丈夫かい?」

 

「いや、大丈夫じゃない……。」

 

 心配する声をかけられてもそれどころじゃない。

 

 明るい声に少し気分が軽くなりつつ、頑張って逆流物を押し返そうとする。

 

 声の主が優しく背中をさすってくれるおかげで、一分とかからず落ち着いた。

 

 良かった。一人だと危うくゲロをぶちまけるところだった。

 

 ありがとう。

 

 そう声の主に伝えようとして、固まる。

 

 誰だ、こいつ。

 

 俺の自室には基本俺しかいないはずだ。

 

 まして月も傾き始める深夜に、起きてる人間などこの館にいるのだろうか。

 

 さっきとは違う恐ろしさに駆られて、ゆっくり、そっと後ろを向く。

 

 そこに座っていたのは。

 

「やぁやぁ!随分なことをしてくれたじゃないか!恩知らずも良いところだよ!」

 

 ピンク髪の、ヘラヘラとニヤけた悪魔だった。

 

 俺がめちゃくちゃにした、あの悪魔が今目の前にいるのだ。

 

「また無視するの?君って奴は相変わらず酷いね!」

 

 そんなふざけたような言葉に、俺はただただ固まってしまった。

 

 どうして、どうしてここに悪魔がいるのか。

 

 理解出来ない俺に、悪魔はふと真顔になり呟いた。

 

「君に会いに来たんだ。」

 

 その言葉に、俺は……。




マジで書いてると鬱になる気がします。

気がしてるだけでニヤニヤしてますけどね。

次話もお楽しみにお願いします!

感想頂けるととんで喜ぶので良ければ……
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